泣いて、泣いて、泣き続けて目の周りが赤くなり、もう涙が出なくても泣き続けているとどこかで聞いたことのある声で話しかけられる。
「誰か泣いているのか?」
そう言いながら茂みから筋骨隆々なエルフが現れる。
「………魔族の少女だと……左腕が無い…!」
そう呟いたエルフに僕は警戒する。師匠は僕には僕の人生を歩めといった。ならば絶対に死んではならない。
彼の発言で腕がどちらも使い物にならなくなったのを思い出した。右手はイオを持って殴ったせいで使い物にならず、左手はあのハゲに斬られたんだった。
『ベホイマ』
そう唱えると緑色の光が僕の全身を包み込み、暖かいという感覚と共に傷が癒えていく。
「今のは……女神様の魔法か……?」
「?」
女神の魔法?確かに僧侶が使う呪文だし神様系の呪文かもしれない。
そして警戒を続ける、両手も治ったことでいつでも反応できるように身構える。
「そう警戒しなくてもいい。魔族だからと言って問答無用に殺すことなんて俺はしない……それは女神様に褒められる行為じゃないからな。それにお前は人を殺していないだろう?」
「どうしてわかるの?」
「目が違うからな、人であろうと魔族であろうと人を殺せば瞳がそれを物語る。それに見るからに涙の跡が残るまで泣き真似をする魔族なんて俺は知らない」
その人はクヴァール師匠とは違う雰囲気でありながら似たような強者特有の覇気があり、一目見ただけで僕が人を殺していないと見抜いてきた。
「そうだ信頼を得るならばまずは自己紹介からだ、俺は
「…………どうして魔族の僕に優しくするの?人と魔族は戦争中でしょ?」
「本気で泣いている者が目の前にいるのに助けなかったら女神様が褒めてくれないからな」
そう言いながら首にかけた木彫りの何かを見せてくる。それは羽の生えた何かだとは思うのだが何かはわからない。
僕は全く敵意を出さないクラフトを少しは信用して色々省きながらも大事なところだけを話し、今までの経緯を説明する。
クラフトはそれを黙って聞いてくれた。
「そうか、お前は悲しくて、寂しくて泣いていたのだな……」
寂しい?……そうか、僕は寂しくて泣いていたのか……僕の初めて出来た家族と何十年間も会えなくなって寂しいんだ。
「……魔族のお前に聞くのもなんだが、お前は女神様はいると思うか?」
突然として女神について聞いてくる。僕の答えは昔から……この世界に来た日から決まっている。
「……女神が誰かは知らないけどきっと神様はどこかにいると思う。その人が男なのか女なのか、老人なのか子供なのかはわからないけど神様はいるよ」
そう言うとクラフトはとても驚き、目を丸くさせる。
勇者たちは神に選ばれたり邪神を打ち倒してきた。元の世界に神はいなかったとしても魔法や魔物、戦技があるのならドラクエの世界と同じように神様はいるのだろうと僕は考えている。それにこの世界に僕がきた理由は神様だと考えれば納得がいく。
「信仰心が篤いのだな、他の魔族と違い本心からその言葉を言ってくれたのはお前が初めてだ」
「そうなの?」
「というよりもここまで感情を露にする魔族も初めて見た」
えっ、そうなの?クヴァール師匠とかはかなり感情出してたけど……そういえば本来魔族は僕ほど感情豊かじゃないって師匠は言っていたな。
「そういえばさっき女神様って言っていたけどクラフトはなんで神様を信じているの?」
「女神様を信じる理由か……俺は女神様に褒めてもらいたいんだ。
俺の成してきた偉業や正義を知っている奴はもういない。だから俺が死んだら天国で女神様に褒めてもらうため……よく頑張ったと言ってもらうためだよ」
「褒めてもらうため?」
「そうだ…俺は褒めてもらうためにここまで頑張ってきた。お前もきっと信じていれば天国で女神様に褒めてもらえるはずだ」
「魔族でも褒めてくれるのかな」
「女神様は差別なんてしないさ、誰であろうと良いことをしたら褒めて、悪いことをしたら叱ってくれるだろう。もしもそれが不安だと言うなら先に俺が褒めてやる」
その言葉に昨日の師匠の言葉を思い出す。
『おめでとう、お主は儂の自慢の弟子じゃ』
そうだ、僕は師匠に褒められてとても嬉しくて…また褒められたくて。
「遠慮しておくよ、僕はとっくに師匠に褒められたし、数十年後、いつになるかはわからないけどまた師匠に褒められるつもりだから」
そう言うとクラフトは優しく微笑む。
「そうか、ならその師匠に褒められるように頑張らないとな」
「うん……相談に乗ってくれてありがとう」
僕はこの時にはクラフトに対する警戒心は失せて普通に会話をしていた。
「泣き止んだのならいい……そういえばお前の名前を聞いていなかったな」
「そういえばそうだったね……僕の名前はリーニエ、腐敗の賢老クヴァールの弟子のリーニエです」
「そうかリーニエというのだな。もしお前がよかったら俺の旅に付いてこないか?」
そう言いながらクラフトは右手を僕に向けて手のひらを上向きに見せて、手を取るのを待っている。
「旅に?」
「そうだ、きっと俺たちがこうして出会えたのも女神様が導いてくれたからだろう。ならこの機会に俺はお前を知りたい。
人を殺さない魔族は初めて見たからな、それにお前は強いだろ?殺せない訳では無いことぐらいわかる」
旅か……そういえば師匠と出会ってからはしてなかったな。
良いかもしれない、成長するためにも世界を見て回り勇者のように人助けをしたりダンジョンを探索したりしてみたいかも。
僕はクラフトの右手を自分の右手で握り返しながら
「お願いします」
「よし、ならまずは腹ごしらえとしようか。今から夕飯を作るのだがリーニエは料理できるか?」
そう言うとクラフトは歩き出したので僕もついて行くと、焚き火の音が聞こえて来る。
「そこは任せて、11年間師匠のご飯も一緒に作ってたから自信はある」
「なら魚の下処理を任せてもいいか?俺はその間スープを作る。このナイフを使ってくれ」
クラフトは僕に持ち運びがしやすそうなナイフと2匹の川魚を渡しスープを作り始める。
僕は戦闘用では無い雑用ナイフを使い、川魚のエラを取り、内臓の処理をした後、クラフトが汲んできた川の水で血を洗い流し、口から背骨側の身に串を刺し、魚をくねらせながら刺し串が骨で固定する。
「珍しい串の刺し方だな」
「これは僕の故郷の伝統的な刺し方で見た目が良くなるのと串から外れにくくなって食べやすくなるよ」
打ち終えた串に塩を全体に振りかけ、焚き火の周りに刺して焼いていく。
クラフトの方もスープを作り終えたのか皿にスープを入れて僕に渡して、僕も焼き終わった魚を1匹彼に渡す。
食べようとした時にクラフトは両手を組み合い神に祈るように目を瞑る。
僕はその行為を不思議に思い見ていると気づいたのか説明してくれる。
「この行為は食事に、命に感謝をするために祈っているんだ」
つまりいただきますということか。僕もクラフトの真似をして両手を組み合い、目を瞑り心の中でいただきますを唱えたあと魚を一口食べる。
うん、なかなか美味しい。塩がしっかりと効いていて川魚の旨みがしっかりと味わえる。
「……美味いな」
「……うん」
そんな短い会話をした後は無言で食べ進め、全て食べ終わる。
またもやクラフトの真似をするように両手で組み合い心の中でごちそうさまを唱える。
「そういえばリーニエ、お前はどこで寝るつもりだ?」
「僕は木の上で寝ようかな。1人で旅をしている時はそうやって寝てたし」
「ならこの毛布を使え、今夜は少し冷えるからな」
「ありがとう」
クラフトから渡された布を持ち、頑丈で太そうな枝の上に飛び乗り、幹を背にして座りそのまま寝ることにした。
魔法のカッコについて、どちらがいいですかね?下のやつなら今までのも修正してきます
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『』
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