「大丈夫か?」
「うん!ありがとうエルフのおじさん!!」
クラフトと旅を始めて4年ほど経ち、今はとある村に向かう途中の森で魔物に襲われていた子供を助けたところだ。
「リーニエ、この子の傷を治してくれ」
子供をよく見てみるとどこかで転んだのか膝が擦りむいていた。
「わかったよ、『ホイミ』」
緑色の光に光ると擦り傷が跡形も無く治る。
「お姉さんすごいね!ありがとう!!」
お礼を言われた後、子供を連れて村へ向かいとりあえず一軒家の貸し宿を取った後に足りなくなっていた食料や日用品を買うために別行動を取った。
僕は今日の夜ご飯の分の肉などの食料を買うために店を探していると開けた場所で先ほど助けた子供が他の子供達と遊んでいた。
「さっき森に行って魔物に襲われた時にね、エルフのおじさんとおっきなリボンをつけたお姉さんに助けられたの!」
「いいな!その人達冒険者だろ?」
「たぶんそうだよ、パンチで魔物を倒したり、私の傷を治してくれたもの……あっ!あそこにいるお姉さんがそうだよ!」
子供達がこちらに駆け寄り僕の周りを囲むように動いてきた。
「姉ちゃん冒険者なんだろ?何か魔法とか見せてくれよ!」
「それよりも冒険の話を聞きたいぜ!」
うーん、やっぱり男の子はこういうの好きだよな。僕も好きだからよくわかるよ。
「さっきはありがとう!」
森で助けた子がお礼を言ってくる。
「別に大した事はしていないよ。それよりもどこかでお肉が買えるお店とか知らない?」
僕もこの4年間旅をしているとさすがにコミュニケーション能力が鍛えられたのか平然と話せるようになっていた。
ちなみに角に関しては大きなリボンをつけて隠すようにしている。
「それなら俺の父ちゃんの店に置いてるぜ!!」
なんだかやんちゃ坊主のような男の子が自慢げに言ってくる。
「じゃあ教えてもらってもいいかな?」
「いいぜ!ただし俺が今から言うことができたら教えてやる!」
えー、めんどくさいな。でも仕事で大人達から無理難題をふっかけられた時よりはマシと考え聞いてやることにする。
「あそこに使えなくなったカカシで作った的が見えるだろ?あそこに魔法を」「あれだよね?『ヒャド』」
腕から発射された氷の礫はまっすぐ的に飛んで行き朽ちたカカシを破壊した。
「………と言うのは冗談で、あそこにある大きい岩を破壊したらだ!」
チッ、きちんと聞き終わった後に撃てばよかったな。
「あの岩を壊すのは魔法じゃなくて拳でもいいの?」
「おう!破壊できるものならやってみろ」
「二言は無いよね?」
「無い」
僕はその言葉を聞き届けた後、大体8メートルぐらいだろうか?そのぐらいの大きさを持った巨大な岩の前に立つ。
腰を落とし両手を握り、全力で岩を右手で殴りつける。
『せいけん突き』
この時、僕の身体から2つの感覚が消える。
僕の視界は何も見えない暗闇に閉ざされ、何も聞こえない無音の世界へと変わる。
その感覚を無くした分だけ生まれた脱力を瞬時に力に変えた拳を岩にぶち当てた瞬間、岩に大量のヒビが入り、一瞬のうちに砕け散る。
「す…………すっげえええぇぇぇぇ!!!!」
この技はまだ未完成だ。完成形は全ての感覚を無くすことだが僕ではまだまだそこまで辿り着けていない。
「今のどうやったんだ!?」
「…………リンゴを食べていればいつかはできるよ」
「え?」
「それよりも約束通りに教えてもらってもいいかな?」
「まあいいか、付いてこいよ」
少年に連れられてきた店で牛肉を買うと店員に話しかけられる。
「俺の息子と遊んでくれたんだってな、さっき一緒に来た息子の友達に聞いたぜ。遊んでくれたお礼に少しおまけしておいた」
「ありがとうございます」
なかなか面倒なことだったけどあの程度のことで少しおまけしてもらえるのなら運が良かったと考えよう。
店から出た後、貸家に荷物を置きに行くとまだクラフトが帰ってきていないことに気づく。
どこに行ったのだろうかと外に探しに出かけると小麦畑の方で村の人と何か話しているのが見えた。
僕は何の話をしているのかが気になり駆け寄った。
「最近山の方で魔物が多く見かけられて飼っていた牛なんかが被害にあったせいで大人達はみんな怯えてしまって、子供達は好奇心で森に行ったりしてでとても困っている状況なんだ」
「人が襲われたことはあったか?」
「はい、村の若いのが1人木こりの最中に襲われて腕を怪我しました」
「そうか、俺たちで調査してこよう。リーニエ、今から行けるか?」
「大丈夫だよ」
「本当にありがとうございます」
村人からの感謝の言葉を貰った後、僕とクラフトは僕たちが通ってきた森とは反対方向にあった山に入り、魔物を探す。
「透明になる魔法をかけられるか?」
「わかった」
『ステルス』
その呪文を唱えると僕とクラフトは半透明になる。しかしこの呪文は魔物から見た時だけ透明になり、人には全く効果がない。
それにこの状態で敵を攻撃することはできず、戦闘に入ろうとするとステルスの効果が無くなってしまう。
半透明に見えているのはパーティー内では魔物である僕もクラフトを視認できるようになっているからだ。
そこから歩き続けて1時間程度だろう、山の中で木が薙ぎ倒されていく音が鳴り響く。
「聞こえた?」
「……今のはなかなか大きい音だからな」
「僕が偵察してくる、クラフトは警戒しながら来て」
そう言い残し僕は道が凸凹で木が障害物になっている山の中をすごい速度で駆け抜ける。クラフトには偵察と言ったが倒せそうなら倒すつもりだ。
もうすぐ音がした地点なので身構えながら顔を出すと大きな熊がハチミツを食べようと蜂の巣を舐めていた。
さっきの木が倒される音は蜂の巣を取りたかった熊が木を折ったのだろう。
その熊は全長6メートル、幅2メートルほどの大きさに、魔物と一目でわかる雷を纏った三角コーンのような角を持っていた。
熊がハチミツを舐めて無防備なうちにステルスを解き、後ろから接近する。
『ばくれつけん』
熊の無防備な背中に4発の拳が当たり、肉がクッションになり死ぬようなダメージは負っていないはず。それでも気絶はしてもらうけどね。
大きいやつは倒したことだし帰ろうと考えていると突如として背中に焼けるような痛みが走る。
痛みには慣れているので冷静に後ろを向いて痛みの原因を目だけで探すとそこそこ離れたところに赤いドラゴンが飛んでいるのを見つける。
紅鏡竜か?なら食らったのは炎のブレスか……
そう考えていると後ろからクラフトが現れる。
「大丈夫か?さっきブレスが直撃したように見えたが…」
「そこそこ痛い……たぶんあいつが現れて他の魔物が人里近くまで降りてきたんだと思う」
紅鏡竜を指差しながら僕の推測を伝える。
「なら追い払うか退治するかしないとな」
「ここも僕がやるよ。その代わりに明日の食料品の買い出しはクラフトがして」
「……わかった」
よし、なら一分以内に片付けて早く帰るとするか。
右手でその辺の小石を拾った後に魔法とは違う、自分の中にある魔力だけを使い魔法を発動するのでは無く、自然と調和し操るために自然に含まれる魔力を己の魔力と混ぜ合わせ、技を発動する。
『かまいたち』
突然紅鏡竜の下から発生した突風は紅鏡竜に向かって風の刃を作り出しその翼を切ろうとしていた。
紅鏡竜は本能から察したのか無理やりにでもその不可視の風の刃を避けようと体を傾け、体勢を崩しながらも避けた。
不安定な飛行をしている紅鏡竜に向かって、右手で握った小石をプロ野球選手のピッチングのように全力で投げる。
『石つぶて』
高速で飛んでいった石は紅鏡竜の飛膜を突き破り、飛行能力を失った紅鏡竜は落下していく。
落下地点に走っている途中にあることを思いついた。紅鏡竜も魔物ならドラゴンクエストモンスターズのように仲間にできるのでは?
僕も魔物だしスカウトアタックできるのでは?
僕はそう考え見えてきた紅鏡竜の顔面を殴りつけた。
『スカウトアタック』
1発殴った紅鏡竜はこちらに炎のブレスを吐こうと口の中に炎を溜め込んでいるのが見えたので
『スカウトアタック』
それでも対抗して僕を攻撃しようと爪を僕にぶつけようとしたが
『スカウトアタック』
爪に向かって拳をぶつける。
それでも反省せずに抵抗しようとするので
『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』『スカウトアタック』
スカウト……む?反撃してこなくなったな。
もしかしてこれはスカウトできたのかな?
僕はそう思い紅鏡竜に話しかける。
「仲間になった?」
その言葉を言うと紅鏡竜がめちゃくちゃ震えている。なぜだ?もしかしてまだ仲間になっていないからか……これはもう一回…
「紅鏡竜が怯えているぞ」
「え?これって怯えていたの?」
後ろから追いかけてきたクラフトが僕に真実を伝えてくる。
つまりスカウトはできなかったのか…………殺すか。
「この怯えようだとお前の言うことを聞くのではないか?」
なるほどそういうこともあるかもしれない。
「人を襲わない?」
紅鏡竜が高速で首を縦に振る。
「人里近くに降りてこない?」
同様に首を振る。
「北部の人がいない地域に引っ越したら許してあげるよ」
何か希望を見つけたような目でこちらを見ながら首を縦に振ったあと飛んで逃げようとするが上手く飛ばず悲しそうな顔をしていたので回復してあげることにした。
『ベホイム』
僕が破った飛膜の穴がどんどん塞がり、気づいたらできていた顔の傷は完治とはいかないが戦える程度にはなった。
傷が治ると紅鏡竜はすぐさま飛び立ち、北の方向へ飛んでいった。
「もう悪さするなよ〜」
飛んでいく紅鏡竜を見ていると紅鏡竜から何かを落とした。
『アポート』
遠くにあるものを自分のところへ持ってこられる魔法を使い紅鏡竜が落とした物を見てみるとそれは本だった。
「リーニエ、その本は?」
「なんか、紅鏡竜が落としていった」
「なら奴を殺さずにいたお礼として受け取っておけ。お前ほどの魔術の腕ならその本も使えるだろう」
「この本が何か知ってるの?」
「いいや知らない。だが紅鏡竜は魔力を持つ素材で巣を作る習性がある。あいつは若かったから巣を作っている最中だったのかもな」
「じゃあこれは魔導書?」
「そうだ、そこに何が書かれているかは知らないがな」
「ふーん、あとで読んでみるよ」
「原因は解決したことだし村に帰るとするか。でもその前に服が燃えているのに気づいているか?この布で隠していけ」
布を貰い体全体を隠した僕とクラフトは山を降りて、村へ戻りさっきの人へと問題が解決したことをクラフトが伝え、僕は一足先に貸家帰り服を着替えてクラフトが帰ってくるのをベッドの上で本を読みながら待っていた。
「…………古エルフ語かな?読めないや」
そうだ、なぜか公用語は生まれつき話せたし、読めたというのに古エルフ語とかは読めない。
師匠が教えようとしてたけどいつも教えようとするたびに逃げ出してたのが仇になっちゃった。
しっかり勉強しておけば良かった!
どうしよう、クラフトに読んでもらおうかな?でも何だか恥ずかしいな……クラフトの記憶や頭脳が得られる魔法があればいいのにな。
「あれ?記憶や脳みその模倣ってできるのかな?」
好奇心でやってみることにした。
『模倣する魔法 クラフト』
クラフトの知識が流れ込んでくる、格闘術、語学、ありとあらゆる知識そして記憶。
「グッ…イッッ!!ああぁぁぁ!!!!か、解除!!!」
…………めちゃくちゃ頭が痛い。僕の脳みそが雑巾のように搾り取られてそこにクラフトという水がつけられていく感覚だ。何というか模倣した先のクラフトに置き換わりかけた。もう少し解除が遅ければ僕という心は死んでクラフトをコピーした人格ができるところだった。
だけど古代エルフ語は覚えたし、クラフトの格闘術の動きも知識として覚えたぞ!!
それにしてもあの人たちは誰だったんだろう?多分あれはクラフトの記憶だとは思うのだけどあの人たちがクラフトの仲間でもう亡くなってしまった人たちなんだろうか……
まあ、とりあえずこの話は置いておいて魔導書を読むことにする。
「えーと、
この魔法は肉体の一部にかけることができて、かけられた部分は透明になり自分を含めた全ての生物に見えなくなる。
一度にかけられるのは二箇所までであり誰かがその部分に接触したり、その部分に液体などが触れると解除されてしまう。
なるほど……これって角にも使えるのかな?
『
効果が本当にあったのかを確認するために鏡を確認する。
おぉ、本当に片方の角が消えている。
『
両方の角が消えた!見た目だけならただの人と変わらない。
正直言ってあのクソデカリボンは恥ずかしかったからこの魔法はすごくありがたい。
雨の日に使えないのは残念だけど角を隠して街中を歩けるのは便利だ。
ウキウキで鏡の前に座っているとクラフトが帰ってくる。
「戻ったぞ……角はどうした?」
「さっきの魔導書あったでしょ?あれのおかげで隠せるようになった」
「そうか、それは良かったな。さて、今から飯にするか」
「そうだね、牛肉買ってきたから塩で焼いてパンに挟んで食べようと思ってたんだ」
「なら、俺は村の人たちからお礼として野菜をいただいたからサラダを作ることにする」
そうして2人で調理をして出来上がった物を皿に乗せ、机の上に並べる。
そして2人で両手を組み合い、目を瞑り、女神様やこの命に感謝をしたあとに食事を開始する。
食べ終わったら皿を洗い、明日の準備をした後に眠ることにする。
最初のうちは2つの部屋を取っていたのだが自然と一つの部屋で寝るようになっていた。もちろんベッドは別々だけどね。
僕からしてもクラフトはお兄ちゃんみたいな感じだしあんまり気になっていない。というよりも元男の自分だしね。
「じゃあおやすみクラフト」
「おやすみ、リーニエ」
そうして今日も目を閉じて暗闇の中意識を落とした。
魔法のカッコについて、どちらがいいですかね?下のやつなら今までのも修正してきます
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『』
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