『追放』の力を授かった俺!今から人生を満喫してやるぜ!納得できねー奴は追放だあ~!   作:でぃくし

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母ちゃん!オレオレ!アタケだけど!

 

「親父~俺のことを追放したくなるってどんな感じなんだ?」

 

「……いやパパはな?自分でも変なことを言ってるなと思ってるんだよ?でも何故かこう、口とかが勝手に動いて、出ていけ出ていけと……ぐすっ、もう二度とお前と暮らせないのか俺は……」

 

「へへへっ、大丈夫だって、そういうのは時間が解決してくれるもんだからよ!」

 

「ううっ、俺みたいな駄目親父にやさしくしてくれるなんて……やっぱりはお前はママに似てとても聡明で優しい子だ。……ぐすっ、明日には出て行ってくれよ!」

 

「わかってるって!」

 

 

 

俺もなんだか酔っぱらったような気分になってきた。

 

それからも俺は大冒険の話をしながら父親を元気づける。

そして話がひと段落し食器を片付けていると、親父はいつの間にかテーブルに突っ伏して、静かに寝息を立てていた。

 

 

 

「しょうがねーなー」

 

親父の背中に毛布をかけてやると俺は大きくあくびをする。

どうせ親父はもう朝まで起きないだろう。

 

「は~……超眠てえ」

 

明日もいちごの世話があるしもう寝てしまおう、とベッドに寝転びながらハーゲンからもらった鎧を眺める。

 

 

 

「あ~あ、明日からどうすっかなー……」

 

 

 

結局、ハーゲンとの冒険では<追放>の力の出番はなかったが、どうして神々のチャイムなんていう力がこの世にあるのだろう。

 

こんな力を持っている奴らがあちこちにいたら、世の中めちゃくちゃになっちゃうんじゃないか。

 

 

 

まあいいか、神様の考えてることなんて俺にはわかんねえしな。

 

寝返りを打ちながらそんなことを考えていると俺はいつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 

‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥

 

 

 

「あーくん、あーくん」

 

「あれ?母ちゃん?なんか用?」

 

俺のことをあーくんと呼ぶのは母ちゃんしかいない。

 

 

 

俺が母ちゃんの声で目を覚ますと空は真っ昼間のように明るくなっていた。

しかしすぐに自分が夢を見ていると気がつく。

 

なにしろ母ちゃんは妹を流産した後、体を悪くしてずいぶん前に死んでしまったからな~。

 

だからそう、これは夢なんだ。

 

 

 

俺は空の上からいちご畑を見下ろしていて、そこには懐かしい姿の母ちゃんが5歳くらいの俺の手を引いて歩いている。

 

 

 

「あーくん、あのね」

「うん?」

 

「いちごはどうしたら美味しくなると思う?」

 

 

 

てんとう虫を掴もうと見苦しく手を振り回していたガキの頃の俺に向かって、母ちゃんは優しい口調でそんなおかしなことを言う。

 

 

 

……いや、別におかしくはないよな。

いちご農家なら誰だって知りたいことだからな。

 

…………。

 

そういえば母ちゃんはいちごが大好物で、毎日でも食べたいって言ってたっけな。

俺の親父と結婚してくれたのもそれが理由で……。

 

 

 

だけど出産後の肥立ちが悪くて結局治らず死んでしまったんだ。

 

ガキの頃の俺は太陽に向かって走るてんとう虫に夢中になっていたのか、母ちゃんの顔を見向きもせずに答える。

 

 

 

「そりゃアレだよ。日の当たるところで育てて、余分なつるをちゃんと切ってさ、栄養がいちごに行きわたるように気をつけるんだろ」

 

 

 

5歳くらいの俺は今と変わらない話し方だ。母ちゃんからすればめちゃくちゃうざかったに違いない。

 

それでも母ちゃんは俺の言葉を聞くとおかしそうにクスクスと笑う。

 

 

 

「うふふ、違いまーす」

 

「違うの?」

「うん、だいたい合ってるけど。あーくんは育てたいちごが何に使われるか知ってますか?」

 

「何って……食べるんじゃねー?」

 

「うん、だから美味しいかどうかを決めるのは人なの。人の口に入ることを考えて育てたいちごが一番美味しくなるの」

 

「へへ、なんだそりゃ!母ちゃん、農業は科学だぜ!」

 

 

 

……うぜー。

 

ああ、ほんと俺ってばクソガキだよな~。

今の俺は母ちゃんの話をもっと聞きたいのに気のない返事しかしない。

 

 

 

「そうね」

 

それでも母ちゃんは嫌な顔ひとつせずにまたクスクスと笑う。

 

「でもあーくんが頑張っていちごを作っても誰も食べてくれなかったら、それは美味しいいちごって言えるかな?」

 

「そりゃ……うーん……」

 

当時の俺は答えようとするがうまく言葉が出てこないようだった。

 

 

 

「だからね?誰かが食べてくれたいちごだけが私たちが作ったいちごなの」

 

 

 

ああ、母ちゃんの言うとおりだ。

 

みんなに食べてもらうために俺たちはいちごを作ってるんだ。

 

誰の手にも渡らないとしたら俺は何もしてないのと同じだ。

誰にも食べてもらえないいちごなんて存在してないのと同じなんだ。

 

 

 

「そう、だからね……」

 

母ちゃんはそこで言葉を区切り空を見上げる。

そして上空から見ていた俺と目が合うと、嬉しそうに微笑んでくれた。

 

 

 

夢だとわかってるのに熱いものが込み上げてきて、思わず目から涙が溢れてしまう。

 

 

 

「だから、誰かのために出来たことだけが、あなたがいま出来ることなの」

 

 

 

ガキの頃の俺は母ちゃんの話などロクに聞いちゃいない。

よっぽどてんとう虫を捕まえたいのか、母ちゃんの手から逃れようともがいている。

 

 

 

(母ちゃん、ガキにそんなこと言ってもわかるわけねーじゃんか……)

 

 

 

ちなみにてんとう虫は厄介なアブラムシを一日で二十匹も食ってくれる益虫だ。

 

ただ俺はいちごの話よりも夢の中で久しぶりに出会えた母ちゃんにどうしても聞きたいことがあった。

 

俺は思わずその疑問を口にする。

 

 

 

「か……母ちゃん、俺の名前の……その、アタケって、どういう意味なんだよ……」

 

所詮は夢だ。

答えが返ってくるはずもない。

 

 

 

(バカだな~俺って)

 

 

 

しかし、そう思っていたら母ちゃんは上空にいる俺に親指を立ててみせ、悪戯っぽくぺろりと舌を出した。

 

 

 

「ふふっ、それはね~」

 

聞こえてるのかよ!

 

だがその時、急に後ろに引っ張られるような感じがした。

母ちゃんの姿が急に霞んでゆく。

 

 

 

(ああ、もう終わりか……)

 

やがて俺の視界は真っ白になり夢の世界から引き離されていった。

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