彼の夢そして彼女たちの夢   作:ひめ

6 / 19
今回は本編ではなく
唯の過去です


過去

例えばの話だ。

人より一回り体が小さく、人より声が高く、人より中性的で少し女顔だったやつがいたとする

僕じゃないよ?

日本の平均より身長は高いし、声だって低い方だと思う、顔も男らしい――と思いたい…………

そんな残念なやつの末路は女子の玩具だ、そのため男子の友達は少なく学生時代を楽しく青春できないだろう

この残念なやつが小学校卒業と同時にとった行動は高校デビューならぬ中学デビューだ。 この残念なガキんちょは頭まで残念だったらしく中学デビューの意味を明後日の方角に考え同じ小学校の野郎どもが来ることもおかまいなしにデビューしてしまう。

そして実行してしまった結果がこれだ…………

 

「あはは! どうしたの唯ちゃんその髪!」

同姓同名くらいいるよな?

その唯ちゃんの髪は気合の入った金髪、普通なら不良だと勘違いされるだろう、女顔の補正がかかり逆にプラスになり周りからはおしゃれな女の子みたいなレッテルが貼られ、見事に中学デビューは失敗に終わった。

そして教室で大声をだし注目を集めているのが幼馴染の水原結、奇遇なことに、こいつも結だ。 そして奇遇なことに認めたくはないが、僕の顔にすごく似ている隣にいれば兄妹だと間違えられる程だ。

姉妹じゃないぞ?

さらに奇遇なことに夢も一緒だったりする。

唯はメンズのスタイリングで世界一位を――

結はレディースで世界一位を――

僕は本気だがこいつの方はよくわからない…………

唯には幼馴染が二人いる一人はこいつ、そしてもうひとりは伝統日本日舞の家元の家に跡取りだ、双方とも唯と仲がいいのもかかわらずまったくと言っていいほど絡みがない、ほぼ他人と言ってもいいほどだろう。

「ふっ……かっこいいだろ! 365度どの角度から見ても不良だろ!?」

今世紀最大のドヤ顔を浮かべ応答する

「全然っ!! むしろかわいいよ!」

 

「はぁぁぁ!? いや金髪だよ!? 超怖いよ? 朝、鏡で見たけど自分でもびびってたよ?」

 

「それは唯ちゃんだけ。 ほら証拠に周りの男子がそわそわしてるでしょ?」

たしかに周りを見渡せば男子の唯のみる視線が男子が男子の見る目が違った、

それに気づき結に耳打ちをする形で会話をする

「なぁ結」

 

「なーに唯ちゃん?」

唯の意図に察しくれたの結も小声で話す

「今の僕……俺さ男に見えない?」

俺に言い直したの男らしいからだ

 

「今っていうかいつもだよ? 唯ちゃんが男の子に見える人いるーーー!?」

こいつ声でけーよ! 

クラスの反応はというと全員が顔を横に振っている擬音をつけるとしたらブンブン! が正しいだろう

 

「しょうがないよ唯ちゃん! 髪の毛はサラサラ、肌はプニプニ、そんでもって美少女だもん!」

僕は男だ……

 

「美少女はお前だろ? いや、そもそも男の俺が美少女だったお前は美少女どころじゃないな、女神だ!」

このなんとも言えない空気のせいでガラでもないことを発言してしまった。

 

「え? え?そ、そうかな?」

頬を赤く染め照れくさそうにこちらを見る結いつもよりしおらしとても魅力だったと思う。

だがその頃の僕はただのガキんちょでその魅力に気づくことはなかった

あ、認めちゃった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやでも人は歳をとる歳とれば身体だって大きくなる――

声だって低くなる――

顔だって男らしくなる――

入学当初はかわいい! かわいい!言われてた僕だか次第にそれは改正されかっこかわいいに変わっていった

大きな進歩だ、小学校の頃は女子より体が小さく何度親を恨んだかわからないが今はその頃の僕を殴ってやりたいくらいだ。

 

入学から半年たった僕は今身長が162cmある同年代と比べてもさほどかわらないとても平均だと思う。

声は――これからもっと低くなるだろう……

そして成長すれば周りの態度だって変わる、入学当初はこの女顔のせいかよくわからないがどんな不良行為したって先生には苦笑い程度で終わっていた。

正直その頃はこの学校大丈夫なのかと不安になっていたくらいだ。

不良行為と言ってもいじめや窓ガラスを割ったりなどの映画にありそうなベタな感じではない

わざと授業に遅れたり、授業中に騒いだりなどの思い出せば恥ずかしくなるレベルのものだ。

だが今は違う、遅れれば反省文は書かされるし、騒げばゲンコツだってくらう

その時はやっぱり僕は男なんだと実感できた。

そしてお恥ずかしい限りではあるが、僕の不良人生はたったの半年で終わった…………

 

「きゃはは! なに唯ちゃんその髪!」

なんだか聞いたこのあるセリフが僕に放たれた

 

「なにって黒髪だよ、金髪は地毛じゃないからな」

 

「えー? なんで染め直ししたの? 俺は不良だ!って言ってたじゃん」

 

「あーあれか……辞めた」

 

「なんでー?」

追求するな! 恥ずかしくなるだろうが

 

「なんでもいいだろ……あと結お前近すぎ」

 

「近い?」

結は質問の意味がわからないようだった思春期の男は女子と距離を置くものだ、それがこいつにはわからない様子でいつも通りの唯に近づいてくる

それに唯だって年頃の男だ幼馴染だからいつも一緒にいたが、いくら兄妹のような存在だとしても本物の兄妹ではないのだ、いやでも意識してしまう、それに加え唯が成長すればもちろん結だって成長する。

 

「あーもういいよ! 部活行くぞ」

結を置き去りにし早足で部室に向かう

 

 

 

誰もいない廊下で結は静かに呟く

「…………また失敗かぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩こんにちはー」

唯と結が所属している部活はアイドル研究部というよくわからないが、アイドルを研究するのが目的で設立されている、要はアイドル好きな人集まれーで認識は合っていると思う

この中学は部活強制参加、初めは運動部に入部しようと考えたが、男子バスケ部、バレー部、剣道部とさまざまなところに入部届けを出したが、入部は許してもらえなかった。

先生に相談したところ――それだった女子の方に参加しないか? と返されてしまった、その時は何度聞き返したかわからない。

結局、運動部は諦め、文化部に入部しようと考えたが自分に合ったのがなくまた先生に相談した結果同好会のアイドル研究部に入部した

「遅い! なにしてたのよ!」

いきなり怒鳴り散らしているこの先輩は矢澤にこ先輩、正直小学生にしか見えない、たぶん僕も入学当初はこんな感じだったんだろう。

 

「てっ……どうしたのよその髪」

今日何回されたか分からない質問が僕に向けられた

 

「僕地毛は黒髪ですよ」

 

「そうなの!?」

 

「当たり前でしょ? 僕目の色青くないでしょ?」

その言葉と同時に先輩に顔を近づけ瞳の色を確認させる

 

「ちょ、ちょっと近いわよ! 離れなさい!」

 

「先輩確信してないでしょ? ちゃんと見てくださいよ」

その瞬間後ろのドアが開くたぶんもう一人の部員だろう。

もう一人と言ってもあいつなのだが……

 

「あー! にこちゃん先輩と唯ちゃんがイチャイチャしてるー!」

決してイチャイチャはしていない、僕が純日本人だと確認を取ってもらっていたところだ、それと声がでかい

 

「だぁぁれがこんなやつと!」

恥ずかしさのせいか今のにこちゃん先輩の顔は真っ赤だ。

 

「まぁとりあえず、にこちゃん先輩ツインテ解いてくだいさいよ」

 

「唯ちゃん無視はひどいなーお姉ちゃんないちゃうなー」

他者からしたらいきなりなに言ってんだと思うのが普通だろう、だがアイドル研究部は違う、これが日課なのだ。

といっても先輩が僕と結の練習台になるだけなのだが…………

それと僕らは姉弟じゃない、兄妹だ――それも違うか

 

「またぁ? あんたもよく飽きないわねー」

飽きるはずがない髪に触れること自体が好きなのだから、そうでもなきゃスタイリストの道を選んだりしない。

 

「飽きませんよ、先輩の髪触るの好きですし、それに文句言いつつちゃんと解くんですね」

不敵な笑みを浮かべながからかう。

 

「そ、それは――解かないとあんたが拗ねるからよ!」

今の間はなんだったのかについてはなんとも思わないが、僕は決して拗ねたりなんかしない。

 

「おーいお姉ちゃんほんとに泣いちゃうよー?」

だから逆だろ……

 

「お前はお姉ちゃんなんかじゃない!」

ビクっ! 肩を弾ませさっきまでの温和な表情が怯えた犬のような顔は変わる

 

「僕がお兄ちゃんで結が妹だ!」

 

「なんでやねーん!」

にこちゃん先輩はどこから持ってきたかわからないハリセンで僕の頭部を軽く叩きながら、ベタなツッコミすかさず入れてくる。

このやるとり何度繰り返したか忘れたな……

でも嫌いじゃないむしろ好きだ

 

「あ、そういえば」

なにか思い出しかのようにバックに手を伸ばしバック内をくまなく詮索する

 

「お、あったあった」

その正体は手紙、場所は下駄箱にだ。 ふつうの男子ならすぐに察しがつくだろう。 だが唯にはこれがなんなのかわからない。

 

「あんたそれ……」

 

「唯ちゃんそれ……」

二人がどこか悲しそうでもあり、寂しそうな表情でこちらを見上げてくる。

 

「これってなんなんですか? 先輩もらったことあります?」

受けごたえはないが視線が泳いでる、おそらくないのだろう

 

「結は?」

聞く必要はないことは解っている、現にコイツは僕の目の前でもらっていたからな。

 

「それラブレターだよ?」

この時の唯にとっては初めて聞く単語だった、中学生でその単語を知らないのは世界中探しても唯くらいだろう、それくらい唯の精神年齢は低く幼いのだ。

 

「それなに? なんで手紙なのにLOVEなんだ?」

LOVEの意味くらいは知っている、レターは手紙日本語に訳せば愛の手紙、おそらくこれであっているはずだ、だけど何故家族やペットじゃない僕にわたすんだろう…………

 

「そ、それは……」

俯いたまま答えようとしない、これではらちがあかないため、手紙の内容を確認するため中にある手紙を拝見する。

にこちゃん先輩と結は一瞬なにか言いかけたが無視する

 

「――あ、なるほど」

何故ラブレターなのか今この瞬間に知った、自分の愛を相手に伝えること。つまり僕のことだ。

初めて貰うものだが人から好意を受けるのは素直にうれしい。

自然と口元が緩んでしまう。

それを見たのか結は大声で叫ぶ

「唯ちゃん笑ってる!! 嬉しんだ!!」

 

「あんたそれどーすんよ……」

にこちゃん先輩は結とは正反対でとても冷静でなにかに怯えるように小刻みに震えている

 

「そうですね……この人には悪いけど、断らさせてもらいますね」

二人共キョトンとした目でこちらを見てくる。

理由は単純僕にも想い人がいるからだ。

しかも二人

 

「唯ちゃん! 送り主だれ!?」

そういえば僕も確認してなかった

 

「えーと……白石さんって人だな、誰だろ」

 

「白石さん!? あのすっごい美人の!?」

 

「いやだから知らないって…………」

 

「なんで!? いつもあいさつしてるじゃん!」

 

「あ、あの人か……名前今知ったよ」

 

「そ、そーなんだ……」

ここでようやく落ち着きを取り戻して聞かれたくない質問をしてくる

 

「で、でもなんで断るの?」

少し震えなが聞いてくる

 

「んーまぁいいじゃん! お前は僕と白石を付き合わせたいの?」

冗談交じりでそんな返答をする。

これで、付き合っちゃえー あははなんでやねーんでこの話にピリオドを置くことができる

 

「そんなことない!!」

今までとはうって変わり真っ直ぐな瞳でこちらを見てくる、その瞳若干涙で潤んでおり、今にでも泣きそうだった。

 

「ご、ごめん」

何故かなにもしてないはずの僕が謝るはめになってしまっすた。

にこちゃん先輩にアイコンタクトで助けてアピールしるがさっきから目も合わせてくれない

 

「この話はここまでそろそろ部活開始するわよ」

手たたき話の腰を折る先輩は女神に見えた

ナイス先輩…………

 

「そ、そうですね初めましょう! ほら結席つけ! 何するかわかんないけど」

ここでようやく我に返る結を席に誘導させ、座らせる

だが結はまだ納得いかないようで僕に質問攻めしてくる

 

「なんで断ったの? あんな美人に告白されたらふつうだれでもokするよ?……」

 

「たしかに気になるわね……」

助け舟だった先輩もそれに参加し逃げる選択しはほぼ皆無になっていた

もう告白しようかな……

 

「…………にこちゃん先輩と結のほうがかわいいから」

 

「え? なに? もう一回」

どうやら恥ずかしさのあまり相当小声になっていたようだ、今の僕の顔をゆでダコだろう。

 

「だから! お前と! にこちゃん先輩のほうがかわいいから! 付き合うなら二人みたいなほうがいいの!! それに白石さんのことよくわかんないし」

二人の顔がボッと赤くなるたぶん僕も同じくらい赤いだろう。

だがこれが手っ取り早く納得いく解決方法だろう、そのくらい僕は焦っていた

 

「そ、それなら仕方ないよね……」

 

「そ、そうね……」

 

「でも今のっ「はい終り! これで終り! にこちゃん先輩ツインテ結ばせてください!」

結がなにか言いかけていたが露骨に遮り、無理やり話を逸らす。

 

「え、ええ、しょうがないなね」

どうやら先輩は察してくれたようでなんとか逸らすことに成功した

これで一安心

結はまだ納得してない様子だったがそれも無視する

「じゃあやりますねー」

 

「うひゃん!」

え なに!?

 

「にこちゃん先輩どうしました!?」

手グシをした途端今までに聞いたことのない声が聞こえたため不安になり声をかける

 

「なんでもないわよ!」

さ、左様ですか

 

「は、はい」

もう一度手グシで髪を解いていく

 

「うひゃん!」

先ほどとまったく一緒のなんのうでさすが心配になる

 

「どうしたん「結変わってみて」」

 

「はーい」

結はようやくいつもどおりに戻っていった、天真爛漫の四字熟語が似合う少女に

 

「はぁ……なんで僕が結に……」

 

「私じゃやなのー?」

決してそんなことはないため息をついたのは、こいつがレディースのスタイリストを目指しているからだ、レディースに関しては結のほうが詳しい少しでもご希望にそぐわなかったら後からダメだしだろう。

 

「いいえ、お転婆幼馴染さん」

皮肉を言いながら同様に手グシを開始する

 

「うひゃん!」

まったく同じ反応ここまでくるとワザとだと勘違いする

 

「どう?」

にこちゃん先輩が感想を結に聞く

どうもこうもないだろう

触った瞬間拒まれるのだから……

 

「ヤバ過ぎですね!」

グッと親指をたて今の気持ちを体現する

どうやらダメなわけではないようだ

 

「あんたそれむやみにやるの禁止ね! わかった!」

 

「はいはい…………」

反論しても意味がないことがわかっているため素直に頷く

 

 

 

 

今日この時上井草唯の手グシが開花した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光があれば闇があるのと同じく、出会いがあれば別れがある。

たぶん後数時間僕は死ぬだろう……朦朧とする意識、心中でそんな弱音を吐く。

周りからは、にこちゃん先輩の声が強く耳に響く、おそらく僕の両親、結の両親もいるだろう、その声が微かに聞こえる…………

 

 

数時間前のことだ

 

部活を終え、自転車置き場に向かう、いつも通りのことだ。

 

「唯ちゃんはーやーくー」

後ろを振り向けば唯がいる、これもいつも通り

そしていつも通り結を自転車の荷台へ乗せる

ほんとは危険かつ交通違反なため、僕はあまり乗り気じゃない

だが乗せないと結がうるさい

 

「はいはい、準備できましたよお嬢様」

 

「うむ、よきにはからえ」

うーんそれちょっと違うな

 

「それじゃ先輩また明日」

 

「にこちゃんばいば~い」

こいつ先輩だってこと忘れてないか? たしかに先輩ぽくはないけどさ

 

「ええ、また明日」

 

あいさつを済ませ

ペダルに足をかける、最初は重く感じたが、今ではどうってことはない、むしろ結が乗ってないと違和感を覚えるくらいだ

 

「しゅっぱーつ!」

こいつ…………

 

「しっかり捕まれよー」

背中になにやら柔らか感触が伝わるが敢えてスルーし漕ぎ始める

 

 

「唯ちゃん女の子泣かせたらだめだよぉ? でももし泣いちゃったらその時はしっかりやるんだよぉ?」

泣かせたことなんか一度もない、たぶんこれからも

「いつ僕が泣かせたよ」

苦笑しながら返答する

 

 

 

 

 

 

長い坂道を上がり、下る、この時間帯の夕日はとても美しく下る際僕に当たる風の心地良さは至福のものだ。

 

「やっぱり綺麗だね! 風も気持ちい」

結も同意見のようだ、この坂を下り終えたくなってしまうくらいだろう。

だが終わりはある、名残惜しいが下り終え左に曲がる。あと約500mくらいでお互いの自宅だろう。

 

 

――いつも通りだったら

 

 

 

 

 

 

 

曲がった先には大型トラックこの近辺にはとても珍しい、そのトラックがあと数mで接触する。

やばいと感じすぐにハンドルを傾け接触を免れようとするが、トラックもこっちも猛スピードだ、避けようがなくそのまま激突し道路は二人の血で染められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん」

気が付けば白いベット、白い天井、おそらく病院だろう。

「響さん! 響さん! 唯が目を覚ましました!」

母さんの声が病室中に響き渡り、それに父さんが反応する

 

「すぐに真琴を読んでくる! 咲は唯についてなさい!」

母が手を握ってくる、その手の温もりはとても優しく、安心させくれるものだった。

真琴さんさんってことはおそらく西木野総合病院だろう。

 

すぐに真琴さんが駆けつけてきた、それに少し遅れにこちゃん先輩も、あの時は声しか聞こえないかったが、今では視界もしっかり確保できている。

あの……時?

 

「ゆ、ゆいは!?」

 

その言葉を発する前までは笑顔だったはずの一同が一瞬で暗くなった

 

「あ、あのね…………」

 

母から聞かされた話はあまりにも衝撃的で今僕が正気を保っているのが不思議だ。

なんでも僕と結が轢かれた後、その運転手が救急車を呼んでくれたそうだ、男である僕にほうは結に比べ骨折が少なく幸い出血も少なかったようだが、心臓に大きなダメージを負っていたらしい、結は逆に出血が酷く、身体全体が複雑骨折だった。

このままでは二人が亡くなるのも時間の問題だったらしいが唯なら助けることならできたそうだ。

 

その方法は心臓移植、ダメージの少ない結の心臓を移植すれば唯は助かる。

だがそんな方法僕の両親は反対だったそうだ。

唯のために結が死ぬ僕だって反対するだろう。たとえ僕が死んでも

しかし結の両親は反対しなかった、結のおかげで唯が生きることが出来るならと…………

 

「な、なんで」

視界が涙で滲む、自分への激しい怒り、それと結が死んだ悲しさで再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約二ヶ月が過ぎた頃だろう、ようやく退院が許されたがすぐに学校に通うのには抵抗があった。

――結のいない教室

――結のいない部活

想像しただけで胸が苦しくなる。 リハビリの何倍もだ。

夢なら覚めてくれと、いつも願う。

伝えたことも伝えられず、ただただ苦しかった。

鏡の前に立てばいつも自分を恨んでいた。

だがいくら、辛くても僕は学生だ、いつまで親がほっとくはずがない退院から三日間は許されたが、今さっき母に家を追い出されたところだ。

 

そして今は公園のベンチであの日のことを悔やんでいる。

思い出せば何粒もの大きな涙がでる。

 

「くっそ……くっそ」

手で顔を覆い誰もいな公園でなんどもその言葉をリピートする。

人前では泣かないようにしていたため、溜め込んでいた分も一斉に出てくる。

 

「君、大丈夫?」

ゆるふわ系のパーマにおっとりした声、制服が違うためおそらく他の学校の生徒だろう。

 

「……ええ」

大丈夫なんかじゃない、今にでも崩れてしまいそうだが、人前では決して弱音は吐かないと決めている。

唇を噛み締め、辛さを無理やり閉じ込める。

 

「隣いい?」

 

「……はい」

 

「辛いなら泣いてもいいよ? 大丈夫だから」

 

「……っ!」

何分この人に抱きつき泣いたかはわからないが、この人の暖かさにはどこか安心させられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでなにがあったの?」

 

「…………」

 

いまの僕には一番聞きたくない質問だ、この人も悪気あった訳ではないだろうが答える気にはなれなかった。

 

「ごめん、無神経だったね」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「優木さん……学校行かなくて大丈夫なんですか?」

この人は優木あんじゅさんUTX学園中等部3年に通う生徒、なんでも某大手企業の社長令嬢らしい。

しかしそんなことはどうでもいい、今は一人になりたい気分だ。

 

「それは君もだよ、唯くん」

 

「たしかにそうですね……」

 

「私よくここに来るの……家があれだから、色々とね」

 

「…………」

 

「君も私と同じ顔してる、だから何となくわかるのほんとは誰かに支えてもらいたいって」

 

「……っ!」

図星だった。誰かに支えてもらいたいその気持ちは本物だ、でも誰に? 誰もこの気持ちは理解できない、失って初めて気づくのだから。

しかし何故だがこの人にならうち開けてもいいそんな気がした。

 

「大切な……とっても大切な人を失いました」

 

「その人のことが好きだったの?」

こくんと、頷く。

好きだった、この気持ちはもう伝えられない、そう考えるとまた涙が出てくる。

すると突然、よこから抱きしめられた。

「大丈夫、大丈夫」

こんなシンプルな慰めの言葉でも今の僕には身体の芯にまで突き刺さったかのように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません迷惑かけて」

 

「いいよ、いいよ私の胸でよければいつでも貸してあげる」

唇に人差し指をあて小悪魔のような笑顔をみせる。

胸って…………

 

「む、今いやらしいこと考えたでしょー」

 

「いやいや、決してそんなことは!」

 

「ほんとにー?」

 

「すみません、少しだけ……」

これが僕の本音だ、僕だって男ですから……

それを聞いて優木さんは大爆笑している。

それに釣られ僕も無意識のうちにいつぶりだか分からない、笑い声を腹からだす。

 

「あ、やっと笑った、君は笑っているほうがかっこいいよ!」

笑顔か……前までは気にしなかったが、笑顔は自分にとってもとても心地良いものだな。

それとお返ししないとな

 

「はいどうぞ、次は優木さんですよ?」

腕を大きく広げ、迎え入れる準備をする

 

「え? どうしたの?」

 

「僕だけが慰めてもらったら不公平です、それと困った時はお互い様でしょ? だから次はあなたです」

優木さんは言っていた、なにかあったらよくここに来ると、そして今いるってことは、なんらかの悩みがあったんだろう。

 

「優しいね、それ、他の子にやっちゃだめだよ? それとあんじゅでいいよ」

 

数歩進み僕の背中に手を回し、抱きついてくる。

 

「やっぱり男の子だね、なんだか安心する」

その気持ちはわかる。 どうしてだか、抱きしめられると安心する。

「で、あんじゅさんはどうしたんですか?」

 

「友達と喧嘩しちゃって……」

 

「えっと、友達ってあの人ですか?」

公園の物陰からこちら凝視している人物に指を指しあんじゅさんに報告する。

おそらく僕より高い身長に若干つり目が特徴の人だ。

 

「わ、わ、は、離れて」

突然僕を突き飛ばし、顔を真っ赤にし恥ずかしそうにする。

 

「み、見られたかな?」

そりゃ見られただろう、僕と目が合っていたからな

その人はというとズカズカとこちらへ近づいてくる。

 

「あんじゅ大丈夫か? 心配になって探しに来たら、変態に抱きしめられているじゃないか」

突然罵声を浴びせられる。 もちろん変態ではないお互い了承し合っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは失礼した、あんじゅがお世話になったな」

 

「いえ、こちらこそですよ。」

あれから数分、今までのことを説明した、僕は男だが彼女より身長が低い上に年下だ、正直すごく怖かった。

 

「唯くん、英玲奈にデレデレしないの!」

そんなことはない、むしろ怯えている

 

「唯くん、抱きしめてもいいかな?」

 

「どうしたんですかいきなり」

あんじゅさんはいきなりなことに驚いている、ぼくだってそうだ。

「あんじゅとはしたが私とはできないのか?」

 

「ご、ご自由にどうぞ……」

だって怖いもん

彼女より身長が低い僕は無理やり抱きしめられる形になり、顔にあれが当たる。

 

「唯君、君はかわいいな! ほんとに男の子なのかい?」

たしかに僕は女顔で身体もまでひょろいけど立派な男だ。

力だって……あれ? 引き離せない

 

「英玲奈だけずるいー私も」

続いてあんじゅさんも抱きついてくる。

これなんてギャルゲ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく二人のおもちゃにされた僕だが今はようやく解放された。

 

「あんじゅさん喧嘩してたんじゃないんですか?」

さっきから喧嘩しているようにはとても見えない

 

「もう解決しちゃった!」

たしかにそのようだ。

 

「あんじゅ、そろそろ学校に戻るぞ」

 

「そうね、またね唯君」

 

「また抱きしめさせてくれよ唯君」

今は平然を装っているが内心すごく怖い。

 

「え、ええ」

 

 

二人が公園の入口を出たところを言い忘れたことを思い出す。 いそいで二人を追いかける。

 

 

「あんじゅさん! ありがとうございました!」

振り返ったあんじゅさんの笑顔はとても美しく、1つの決心を植え付けた。

立ち止まっていられないな。

ベンチのバックに手を伸ばし、全力疾走で学校へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校門についた時刻は10時おそらく二時限目だろう、だが関係ない。今は一秒でも先輩に会いたい

3年生の教室は3階なため上についた時には息が苦しかった

 

「病み上がりできっついな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にこちゃん先輩!」

教室のドアを盛大にあけ、先輩の名前を呼ぶ。 そうすればもちろん周りの視線が痛い――しかし今はそんなこと気にならなかった。

 

「唯あんた、欠席してるんじゃないの!?」

 

「ここにいますよ」

先輩の方に近づき、手を握る、そのまま無理やり廊下に連れ出す。

先生の注意を無視する。

女子の先輩方はキューキャー騒いでいるがそれも無視だ。

 

「な、なによいきなり!?」

さっきあんじゃさんがしたことをそのままにこちゃん先輩にもやってあげる。

 

「先輩……すみません心配かけました」

対する先輩は涙を流し、僕に身体をあずけている。

結と約束した、泣かせちゃだめだけど、泣いちゃったら、しっかりやれって。

今の僕にできるのはこのくらいだ。

 

「先輩いきなりですけど、僕アメリカ行きます」

 

「な、なんで!?」

 

「結の分の世界一取らないとかっこ悪いじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親の説得は思いの他すんなり通った。

明日からはアメリカ――寂しさもあるが、それ以上に夢を叶えたい、一秒でも早く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ先輩いつ会えるかわかりませんが、必ず帰っています。」

 

「…………」

空港まで見送り来てくれたが一向に口を開けてくれない

 

「矢澤にこ! 俺はあんたのファンだぞ! そのファンに笑顔を見せないでなにがアイドルだ!」

 

「っ!」

柄にもないことをしていしまった、だがこれでいい。

驚いたにこちゃん先輩はすぐに、いつも通りに戻る。

 

「にっこにこにー! わかってるわよ!」

 

「よかったです……」

 

「今度はあんたが暗くなってどうすんのよ!」

 

「にっこにこにー!」

今度はお返して僕がやる、おそらく周りから見れば変人二人組にしか見えないだろう。

 

「いい? あんたは一生わたしの追っかけなんだから、今は離れても必ず戻ってくるのよ!?」

 

「わかりましたよ、僕のアイドルさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい」

その時みた先輩の笑顔は今まで見てきたの違い、紛れもないアイドルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




展開が早いような感じですみません

誤字の指摘や、アドバイスお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。