シャングリラ・フロンティア〜福耳ピアス、神ゲーに挑まんとす 作:蠣崎 湊太
『遥かな太古、神代と呼ばれる時代があった。 』
ほう、太古と来たか。俺は恋愛以外のポエティックについてはあまり得意じゃないが、それでもほかのポエムを見るのは大好きだ。
『偉大なる神人達は後世に命を紡ぎ、その姿を消した。』
命を紡ぐ...?この表現はよく分からないな。これから先でいつか判明する類いのものなのか?まあいい。とりあえず続きを読もう。
『時は流れ、神人の遺志継ぐ我々は彼らが願ったように地に広がり、そして大いなる命の流れを紡いでいく……』
地に広がる...!これは北原白秋の老いしアイヌの歌にも似たような表現があったな。確か、オー・トイヤン・クツタリ(汝地上に拡張せる者よ)だったか。案外製作者も、ポエマーだったりしてな。
いや、普通にそのままの意味か。ポエミーに脳を侵食されすぎるのは良くない...。自作ポエムを考えて中和しなければ...。
『今を生きる我々は、歴史と遺跡の中に息づく過去の遺産から神人達の軌跡を辿る。 』
『貴方は開拓者。東よりの風と共に現れ、幾度となく膝をつき、されど進み続け……そして風と共に消えるかもしれない者。』
風と共に去りぬ。恋愛詩から生み出された海外小説だな。そうか、ゲームのプレイヤーも恋と同じく、飽きてしまえばすぐに去ってしまうもの。
されど進み続ける。俺はどれだけ挫けようと、斎賀さんを諦めることは無い...。そういう事だなシャンフロォ?!
おぉ、この儚さをゲームのプロローグで表現するなんて!やはりあいつの言う通り、このゲームは神ゲーみたいだな。
『貴方の生きる意味は?』
人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ。俺の生きる意味、それは恋を綴ること。たった一度のポエマー人生、びた一文も無駄にする気は無い!
『一振りの剣に己が身命を託す?』
『魔道の深淵を覗いて魔道の高みを目指す?』
『あるいは戦いの道を選ばないことも出来る。』
その通り。俺は戦いの世界に身を置くことは無い。たとえ壁一枚を隔てた隣で戦争が起きていようと、俺は恋を書き綴り続ける。それが俺の、生きる意味。
『その全てがここにある。』
『その全ては貴方の中にある。』
『さぁ、一歩踏み出して。 』
なっ....!背中まで押してくれるのか?!全く、このゲームは一筋縄じゃいかねえみてぇだぜ!これがあいつの言ってた、ギャルゲーってやつなのか?!
いや、違うか。なんかピザがどうとか言ってたもんな。シャンフロはピザ出てこないだろうし。そもそもシャンフロで留学とかできんのかな。
『未知を、未来を、そして可能性を切り拓いて。』
言われなくてもそうするさ。だって俺は、ポエマーだから。いいや、もう違うか。俺は彷徨える吟遊詩人。シャンフロ世界じゃひと味もふた味も違うんだぜ。
『それがこの地に生まれ落ちし、神代よりの子らに課せられた使命なのだから。』
プロローグが終わったのか、視界が真っ白になって辺りを覆い尽くす。それからしばらくして、俺が目を開けた時、目の前には様々な人がひしめき合う町が広がっていた。