「三人でユニットになったのですね。ライブは観客席で拝見させてもらいました。とっても素晴らしくふわふわかわいかったですよ」
「えへへ、ありがとうございますっ」
でへへへへ~。ほよほよ~。姫花さんわたしたちふわふわぱ~ふぇくとのライブ見てくれたんだ~。
今わたしは姫花さんと通話しています。ベッドの上で足をパタパタさせながら気分はルンルンです。
姫花さんとは、この前パラダイムハートのライブを見て衝撃を受けた後に連絡先を交換していたのです。
「ほよんちゃん、今度またお会いできますでしょうか? 明日はレッスンがありますので、是非ご一緒にできればと思って」
「いきます!」
ということで。
「今日もやってきたよ! ふわプリ!」
「また私のクールさを増す糧となってもらうわ、パラダイムハート」
くぅあちゃんは今日も貪欲にクールのことだけ考えています。
「この経験をちゃんとティピファたちの血肉にしないとリボン」
パラダイムハートとレッスンをすることはわたしが連絡する前に二人とも知っていました。というよりそれぞれスイさんとシルフィーさんから伝えられていたみたいです。
さあみんなで張り切っていくよ!
「はああああああああああああああああああ!!!! ふわプリぃぃいいいいいいいい!」
そこにはものすごい速さで腕立て伏せや腹筋背筋したあと、足を踏み外したら死んじゃいそうなコースのパルクールをすごい動きで何周もするパラダイムハートの皆さんの姿が!
「え、なにこれは」
姫花さんに案内されてやってきた広いレッスンルームで、突然この光景です。
ありえない運動量なのに、姫花さんたちは筋肉ムキムキになったりしていない。そんなかわいくない姿になったりしない。しなやかでプリプリなお肌に、一番ふわふわかわいい体のカタチです。
「すごい」
「すごいなんてもんじゃない。やばいリボン……」
「一般人だったら確実に体を壊すエヘ。トレーニングは適切に体に負荷をかけて無理をさせずに体を休ませるのが、普通ならいいエヘ」
エヘさんは怒ったように、空飛ぶ太陽とハートがついたお馬さんのマスコットへ向き直ります。
「こんなものを見せて、なにが目的エヘ? ミカエル」
「別になにもありませんミカ。ただこれぐらいはできませんとパラダイムハートと並ぶことは不可能ですミカ」
「焚きつけてふわふわぱ~ふぇくとに危険なことをさせる気エヘ? そんなこと許さないエヘ」
「やはりあなたとは方針が合いませんミカ、エヘイエー」
「とにかく裏社会へのお誘いじみた真似はやめるエヘ」
「いえ、ミカが勝手に言っているだけでわたくしたちにそんなつもりはないんです。わたくしはただ、ほよんちゃんたちに見て覚えていてほしかったんです」
「そうそう、いつかスイたちみたいにできるようになるかもしれないからねぇ」
「もちろん危険なことをさせたいわけじゃないけど……少しだけでも、ふわプリアイドルとしてやっていける材料になってくれたらなって、ワタシ的には、そんな感じ……」
「ずいぶん舐めてくれるじゃない……私はやってやるわよ」
「舐めてるんじゃなくてぇ、くぅあちゃんたちのことをただ気に入ってるんだよぉ」
スイさんはくぅあちゃんに後ろから抱きつきます。
「期待されてるってことだよね! わたしも頑張る!」
「うえ~……これティピファも一緒にやらなくちゃいけない流れリボン……?」
「やめるエヘ! 怪我するエヘ」
やります!
「いくよおおおおおお!!」
腕立て伏せをなるべく速くやります。腕を曲げて伸ばして曲げて伸ばして――。
「はぁ……はぁ……もう動けないよ……ほょ……」
腕立て伏せを百回もできませんでした。姫花さんたちは千回ぐらいやってたように見えたのに。わたしはパルクールに挑戦する以前の問題でした。
「ティピファももう無理リボン……」ティピファちゃんは腕立て伏せ十回ぐらいでバテていました。
「そもそもティピファたちぐらいの年齢だと、筋トレはあまりやりすぎちゃダメリボン。衝撃や反動に耐える筋肉がないと怪我しやすくなるって聞いたことあるリボン」
「ほよ~……そうなんだ」
「普通なら、だけどねリボン。ここは、ふわプリは普通じゃないから、もうどういうやり方が正しいのか……」
「危険は回避して適切なレッスンが一番いいに決まってるエヘ」
「私だってパルクールくらい!」
くぅあちゃんは腕立て伏せと背筋を軽々千回こなした後、パラダイムハート特製パルクールコースに足を踏み入れました。「待つエヘ!」エヘさんが止めようと飛んでいきますが、くぅあちゃんは無視して進みます。
わたしの身長の何倍もある縦に置かれた丸太の足場をひょいひょいとジャンプして進んでいきます。足を踏み外したらと思うと怖いです。
「でも、くぅあちゃんすごいよ!」
「やっぱりくぅあは身体能力だけは並外れているリボン」
ぶんぶん勢い良く揺れている丸太が何個も道を阻んでいるエリアまで進みました。
丸太を危なげながらも何度もよけていくくぅあちゃんですが、何度目かによけた後バランスを崩してしまいました。
「くっ」
「あぶない!」
バランスを崩した隙に振り子の丸太が勢いよくぶつかって、くぅあちゃんは叩き落されてしまいます。地面に叩きつけられたら大けがじゃすまないかもしれません。
「あー見てられないリボン!」両手で目を覆うティピファちゃん。
わたしはバランスを崩したのが見えてから走り出していたけどこの距離じゃ間に合わないよ!
エヘさんも間に合いそうにない!
「っとぉ」
颯爽と飛び上がったスイさんがくぅあちゃんをお姫様抱っこで受け止めました。華麗に着地です。ほっよかった。
「黙って見てたけど怪我させるわけにはいかないからねぇ」
「案の定エヘ! 言わんこっちゃないエヘ! それに怪我はしてるエヘ!! ここ! 丸太がぶつかった左腕が打撲になってるエヘ!」
「それは申し訳ないと思ってるけどぉ、くぅあちゃんの挑戦心を無駄にしたくなかったしぃ」
「これぐらい勲章よ」
「なにが勲章エヘ。怪我は怪我エヘ。エヘが回復させるからじっとしてろエヘ」
エヘさんがくぅあちゃんの打撲してる部分に手を当てると、エヘさんの手が光りました。エヘさんが手を離すと、打撲痕がなくなっています。
「すごい!」
「これがふわプリの技術エヘ」
「ほえ~やっぱりふわプリには不思議が溢れているリボン。いつか解明してティピファも使えるようになってみたいリボン」
「企業秘密エヘ」
「いろいろと騒がせてすみません。気を取り直して、みんなでできる基礎のレッスンをしましょうか」姫花さんが場を和ませるように笑顔で両手を合わせて言いました。
「最初からそうしろエヘ」
「さっきからうるさいですミカ。このクレーマーマシュマロ」
「なんだとエヘ」
「「喧嘩はダメ(です)!」」あ、姫花さんとハモった。うれしいっ。
「私が気にしていないのだから落ち着きなさい、エヘイエー」
「ふぅ……今回はくぅあに免じて許すエヘ。だけど次は気をつけろエヘ。あと、せめて下にクッションくらい置いとけエヘ」
この後は姫花さんが言ったように普通にダンスやボーカルのレッスンをしました。パラダイムハートは基本も見惚れるほどアイドル力が高かったです。また圧倒されちゃいました。
パラダイムハートとの楽しいレッスンを終えて、次の日です。ふわふわSHOPのあるぱわ町の森林公園にふわふわぱ~ふぇくとの三人で集まりました。噴水の縁におしりを乗せています。
「ねえ、考えてみたんだけど」
「なによ」
「今はまだパラダイムハートと同じすごいレッスンは無理だけど、ちょっと簡単にしたのならどうかな?」
「グレードダウンさせるリボン?」
「そう、たぶんそのぐれーどだうんだよ」
「少しずつ階段を上るってわけね」
「エヘイエーには伝えるリボン?」
「それはどうしようか迷ってるんだけど」
「伝えないほうがいいわ。変な邪魔が入るわよ」
「でも見ていてもらわないと危険かもしれないリボン」
「ふわプリアイドルとして強くなるためよ、リスクなくしてクールの頂点はならずよ」
「なるべく怪我しないようなのを考えれば伝えなくても怒られないかな?」
「それならティピファにお任せリボン」