ふわプリ   作:ソウブ

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9話 花園姫花さんの優雅な一日

 

 

 

 目覚ましの音が聞こえます。少しずつ意識を覚醒させていきます。わたくしはいつもふわプリアイドルのライブ曲を目覚ましにしているのです。スマホに設定していつも聞いています。日替わりで気に入っているユニットのみんなの曲をかけているんです。今日はふわふわぱ~ふぇくとの曲。「とりぷるなパーフェクト」、いえ「とりぷるなPerfect」です。聞いていてとってもふわふわ幸せな気持ちになる曲です。特にほよんちゃんたち三人の歌声が。

 しばらくまどろみの中で聞き入ってから、体を起こします。壁掛け時計を見ると6時です。

 

 部屋の中にある洗面台で顔を洗い、髪を整えます。

 ネグリジェの上にエプロンをつけて、朝ごはんはフレンチトーストとミネストローネを作ります。少し時間はかかりますがどちらも美味しくて、野菜ゴロゴロなミネストローネは栄養満点です。

 

 これらの朝の支度、以前は使用人の皆さんにやってもらっていたのですけれど、ここ数年は自分でやっています。自分で何でもできなければふわプリの頂点はやり続けられないのです。

 いえ、白状するとたまにメイドさんにやってもらうことはあります。疲れてる時などに、ちょっとだけです。そういうときも必要です。しょうがないです。……わたくしは誰に言い訳をしているのでしょう。

 

 朝食後はスポーツウェアに着替えて軽い運動(十キロランニング)をします。運動の後にシャワーを浴びるのは気持ちいいです。

 バスルームから出たら、白いロングスカートのワンピースを着て黄色いカーディガンを羽織ります。ロングですけど脛は出てます。

 

 今日はお休みの日。お稽古とかその他もろもろがない日です。

 町へ散策に出たいと思います。

 

 お屋敷を出て、今日も新しいふわふわかわいいものを求めて街を歩きます。

「あ、あれっ、かわいいですっ」思わず指さしちゃいます。はしたないです。

 雑貨屋の看板かわいい。

 総菜屋のショーケースに並んだ総菜が、配置の具合がかわいい。

 首輪に繋がれて散歩しているブルドッグさんかわいい。

 お花かわいい。これはラベンダーですね。

 お菓子かわいい。30円ドーナツ小さくてかわいい。

 10円ガムかわいい。でもガム噛んでるところ見られるのは恥ずかしい。

 世はふわふわかわいいものに溢れています。

 でも最近一番ふわふわかわいくて気になっている存在は、ほよんちゃん。とってもかわいい。すべての要素がかわいい。ふわプリアイドルとしてのポテンシャルも高いです。

 

 さらに歩いていると、小学生くらいの女の子に目が留まります。

 あ、あの子せっかくかわいいのに、コーデが残念でかわいい指数が下がっています。

「もったいないです!」思わず大きな声を出して目の前まで近づいてしまいました。

「ええ!? 急に何!? って姫花さん!? パラダイムハート、のっ!?」

「もっとかわいい服を着ましょう! もったいないです」

「だって私、おしゃれとかよくわかんなくて……」

「ならわたくしに任せてください」かわいくないものはかわいくしたくなる性分です。

 あれよあれよという間に近くの洋服屋さんのフィッティングルームへ。ドレスアップです!

 コーデを選んでさらっとわたくしがお会計して、着てもらいます。

 しゃっとフィッティングルームの中が露わになります。そこにはかわいい服を着てちゃんとかわいくなったかわいい女子小学生の女の子が!

「かわいいです」

「あ、ありがとうございます姫花さん! でもお金……」

「いいんですよ。ふわふわかわいいのためなら大したことありません」

 

 また歩いていると、悲しんでいる人がいました。

 おじさんです。叔父さんではありません。知らないおじさんです。公園のベンチでうなだれています。

 かわいくないです。こちらまで悲しくなります。かわいくしなければなりません。

「おじさん!」

「……俺かい?」

「はい、おじさんです」

「なにか用かい嬢ちゃん」

「今のおじさんはかわいくないです。かわいくなりましょう」

「そりゃくたびれたおじさんなんてかわいくないだろうよ」

 結構ダンディ味があるところ、かわいいと思いますけど。

「笑ったらかわいくなりますよ」

「急に笑えって言われてもなあ」

「はい笑って笑って、スマイル~」

 両手人差し指をほっぺにあててニッコリ笑顔。

 ……。

 ……。

 わたくしだけニッコリ笑顔。

「ごめんな、嬢ちゃん。笑えないよ」

 

「ところで、わたくしふわプリアイドルをやってるんです」

「唐突だが、そうなのか。ふわプリアイドル、聞いたことはある、というよりかなり有名なのは知ってる。世界の中心を担っているしな。でも見たことはない」

「わたくしのライブを見たらまた笑顔になれますよ。わたくしのでなくても、ふわプリアイドルのライブなら」

「そこまで言うんなら……まあ、見てみるよ」

「スマホをお持ちならいつでも見られますからね。お持ちでなくても街頭テレビとかでも」

「ああ、スマホなら持ってるよ。スマホぐらいなら、さすがに」

 少しだけ表情が明るくなったおじさんを背に、また街を歩きます。

 どうか、ライブを見ておじさんが、笑顔かわいいになりますように。

 

 

 今度はかわいくない不良さんを見つけました。

「よおよお姉ちゃん遊ぼうぜ遊ばないとこの手が出るぜえ」

「ひぃぃぃぃ……」

 小学生の女の子の肩に腕を回して絡んでいる、中学生の女の子不良です。

 ボロボロな制服をワイルドに着こなせているわけでもなく、髪もぼさぼさで目も当てられません。

「ちょっとそこの不良さん、来てください」

「あ? え、あ、力つよ……!?」

 まずは、コスメやお洋服、アクセサリーでパパっとかわいくします。けれど不良さんはそれだけではだめです。

 かわいい意識を教えなければなりません。

「かわいい意識第一、人にやさしく」

 かわいい意識とは人がふわふわかわいくなるために重要な事柄です。

「知らない女の子と遊びたいなら、あの場合は怖がらせるような高圧的な態度ではなく、かわい~く、一緒に遊びませんか~と尋ねます。遊びたい自分の気持ちを前面に出しながらお願いするんです。断られたら潔く相手の意思を尊重しましょう。かわいくないすれ違いが起こってしまうからです。そしてかわいい意識第二――」

 

「姫花さん、私をふわふわかわいい女の子にしてくれてありがとうございました!」

 不良さんはとってもかわいくなって、喜んで帰っていきました。

 

 でも、すぐにはかわいくなってくれない人もいます。かわいいものを脅かす悪い人たち、いえ、現悪い人たちです。いつかはかわいくなってくれるはずですから。

 

 手をうまく動かすと、悪い大人の体が路地裏のコンクリートに沈みます。

 次は足をうまく動かしますと、悪い男の人の体が吹き飛んで宙を舞います。

 悪い大人たちを次々に気絶させていきます。この人たちは誘拐犯です。先ほど「感」のままに歩いていたら、偶然誘拐現場を目撃しました。

 路地の行き止まりで、最後に残った悪い男の人が、小さな女の子を抱えながらナイフを構えています。

「誘拐なんてして何が目的なのですか。お金が欲しいのですか」

 多分違うのだとは思います。

「俺は特別なんだ!」

 意味不明な言葉ですけれど、大体わかりました。お金が必要なのではなく、女の子に変態さんなことをしたいというわけでもないと思います。多分誘拐という行動自体が目的です。けれどそんなことはどうでもいいことです。

 どのような理由があろうと、かわいいを傷つけていいはずがないのですから。

 かわいいを傷つける人が、特別なわけがないのですから。

「動くな。動いたらこの子がどうなるかわかるな」 

 悪い人は、小さな女の子の首にナイフを近づけました。あと数センチでも刃を動かしたらかわいい首が傷ついてしまいます。

 このままでは女の子の命が危ないです。けれど脅されるままわたくしが動かなくても女の子は誘拐されてその後の無事は保証されません。

 普通に考えたら、今から走っても女の子を助けられません。わたくしが助ける前にナイフは女の子を襲います。あの悪い人が本気なら、ですけれど。多分本気です。目が血走ってます。だから、この数メートル離れた距離では、常識的に間に合うわけがありません。

 人の体の構造的に、ありえないことです。

 ですけれど。 

「諦めなければ、なんでもぶっ倒せます!」

 わたくしは1秒もかけずに、刃が女の子の首に触れる前に接近してナイフを奪いました。

「は……? え……」

 手をぐるんと動かしたら悪い大人は気絶します。

 女の子は泣きながら抱き着いてきました。

「もう大丈夫ですからね」

 悪い人たちは警察の方に任せました。

 

 

 パトカーを見送ると、スマホが鳴ります。

「ライブの予定が入りましたミカ。すぐ来られますかミカ?」

 ライブの依頼がやんわりと入ったようです。

 

 ふわふわSHOPまで走り、ふわプリに入り、ふわパレスのライブアイドル控室へ到着しました。

 スイちゃんとシルフィーちゃんはもう着いていました。わたくしは最後に到着したようです。

「姫花ちゃん、どうぉ?」

 スイちゃんが今日も決まってるセクシーポーズで出迎えてくれます。斜めに反らした体がとてもいい感じです。

「ふふぅ、ありがとぉ、はいこれプレゼントぉ」

 10円ガムをプレゼントしてくれました。わたくしこれ好きなんですよね。好きなのをスイちゃんは知ってるから、度々ガムをプレゼントしてくれることがあります。

「姫花ちゃんぅ」

 スイちゃんが両手を伸ばしてきます。なので両手で握手します。スイちゃんの手、しなやかで綺麗でセクシーな雰囲気、コケティッシュというのでしょうか、とにかくふわふわかわいいです。握っていて気持ちいいです。

「あらら、でもこれも好きだからいいかなぁ」ちょっと不満げな顔をした後笑顔になるスイちゃん。手を握る以外にしてほしいことがあったのでしょうか。

 

 シルフィーちゃんはパイプ椅子に座ってマスカットジュースを舐めるように少しずつ飲んでいます。

 あまりにも愛らしいしぐさだったので、思わず後ろから抱き着いちゃいます。

「姫花……邪魔、熱い……」

 鬱陶しそうな顔をしてそんなことをいうシルフィーちゃんだけど、引きはがそうとはしてきません。かわいいです。

「むむむぅ」

 スイちゃんがこちらに向かって 足を前に出したり後ろに下げたり、手を前に出したり引いたり、不思議なダンスをしています。面白いです。

 かと思ったら。意を決したようにわたくしとシルフィーちゃん二人分を包むように抱きついてきました。

 スイちゃんは結構甘えたがりです。

「熱い……離れて」

 シルフィーちゃんは体を振り回してわたくしたちを吹き飛ばしました。

 

 

 ステージ衣装を着て、三人でステージに立ちます。

 観客の皆さんから歓声をいただけて、今日も期待してくれているのを感じます。

「さあ、みんなが幸せになるふわふわかわいいライブの始まりです」

 ~~♪

 喉を震わせて息を吐きだして、お腹の奥から声を出します。

 一声一声に皆さんの幸福を願う感情を乗せて、透き通るときめきを届けます。

 そしてわたくしも全開で楽しみます。踊る動きに感情を宿らせます。わたくしが楽しんでこそ、この楽しいという感情を皆さんに届けられるのです。

 スイちゃんとシルフィーちゃん、二人と歌を、ダンスをユニゾンさせて、心が二人と繋がっているような、それでいて離れたまま暖かさに包まれているような、トランスとも違う、ふわふわな、いいなにか。ふわプリライブは、とてもいい。

 どうか、みんながふわふわかわいいになりますように。

 

 

 夜、お屋敷の中庭にあるガゼボ(柱に支えられてる西洋風の屋根みたいなものです)にある円形テーブルで日課のティータイムです。

 今日もふわふわかわいいものがいっぱいあって楽しい一日でした。

 ああ、紅茶がおいしい。ふわふわと香り高くて、かわいくわたくしの舌を楽しませてくれます。夜なので定番のアールグレイです。

 この優雅なティータイムが、いつもわたくしの心を安らげてくれます。

 

 スイちゃんからいただいた10円ガムの包装を丁寧に解いてたたみます。ガムをゆっくりと口に入れて噛みます。何度も噛んでいきます。噛むたびに幸せが広がっていきます。最初の数噛みが一番幸せです。思わず顔がほころびます。

 味がなくなってきたころにぷくーっと膨らませたりもしちゃいます。

 こんな姿、スイちゃんとシルフィーちゃん以外のみんなには見せられません。

 でも、これが好きなんです。

 

 ほよんちゃん。

 ほよんちゃんともっと遊びたいです。

 あの子は今まで見つけてきたふわふわかわいいの中でもトップクラスです。だからもっと一緒に過ごしてみたいです。

 けれどしつこく誘ったらいやに思われるかもしれません。

 考えどころです。

 ほよんちゃんたちふわふわぱ~ふぇくとには、できればわたくしたちと同じぐらいに輝きを放つユニットになってほしいです。そうしたらもっと一緒に楽しいが広がると思うのです。

 

 

 

 AIモコの、ふわプリコーデ紹介のコーナー☆

 

「今回紹介するコーデは花園姫花さんの私服お嬢様コーデですモコ」

 

「白いロングスカートワンピースがお姫様のような清純さを際立たせ、黄色いカーディガンが姫花さんのパワフルさにマッチしていて、姫花さんにぴったりなとってもピュアキュートなコーデですモコ」

 

「以上、ふわプリコーデ紹介のコーナーでしたモコ~」

 

 

 

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