「今日もスイはセクシーに決まってますねミカ」
「えへへぇ、ありがとぉ」
今日はふわプリのフォトスタジオで、セクシー写真を撮るお仕事だよ。いや撮るのはセクシーな写真じゃなくてもいいけど、スイの取り柄はセクシーさだからね。だからセクシー写真を撮るお仕事。
ミカエルがカメラマンをやってくれて、パシャパシャと何枚も撮っている。
今日も魅了しちゃうぞぉ。
いろんな角度で体を見せていくよ。
おへそがよく映えるような角度、太ももがよく見える角度、流し目が輝く位置、今までたくさん研究したセクシーな魅力を出せる見せ方を発揮していくよぉ。
カメラのパシャパシャという音が気持ちよくて、ストロボのフラッシュ光がスイを彩るイルミネーションみたいだねぇ。一色だけだけど。
人を魅了するための行動は、楽しい。愛されるのが嬉しいから。
だから何人も魅了してきた。スイを見てくれるように。男の子も女の子も魅せ方次第で好きになってくれる。女の子が魅力的に思ってくれるセクシーさってのもあるんだよ。それがスイには感覚でわかるんだぁ。
でも、一番魅了したいのは姫花ちゃんとシルフィーちゃん。一緒にふわプリプリンセスになったユニット仲間であり、大切な友達、だけどもっとスイに多くの感情を入れ込んでくれたら、もっとふわふわかわいく幸せになれるんだろうなぁって。
時折アタックはしているんだ。最初の頃はプレゼント作戦なんてことをしていたっけ――。
「姫花ちゃん、シルフィーちゃん、これプレゼント」
二人はスイのセクシーさにはあまりなびかないタイプの子だから、どうすればもっと仲良くなれるかは手探りになるんだ。スイはセクシーさを発揮する以外に方法を知らないから。
だからとにかく気持ちを込めて贈り物をしたらいいかなって思ったんだぁ。
女の子が喜ぶものはなにかなって考えて、いろいろあるけどとりあえず宝石かなって思ったから、最初は宝石をプレゼントすることにしたよ。スイも女の子だけど、スイが欲しいものってみんなからの愛だけだし。自分の感覚はあんまり参考にならない。
いつも集まっているアオリンゴ学園中等部の部室で、小さな箱を二人に渡した。
箱を開けた瞬間にシルフィーちゃんが一言。
「高そう、受け取れないよ……」
宝石のことはよくわからなかったから、二人にそれぞれ似合いそうな緑色っぽいのと金色っぽいのにしたよ。
「だいじょぶぅ、お小遣い貯めたからぁ」
「なおさら受け取れないんだけど……」
「お母さまたちのおかげでわたくしはお金に不自由せずに過ごすことができていますし、ものすごく申し訳ないですよ」
「でも二人にプレゼントしたくてお金貯めたんだしぃ、受け取ってよ、返品もできないし、でないと本当に無駄になっちゃうぅ」
「自分のものとして楽しむことはできないの……?」
「プレゼントしたかったのぉ」
「それでは受け取らないわけにはいきませんね」
「うん、そうだね……」
そんな感じに最初のプレゼントは、変な空気になっちゃって、失敗しちゃった。
だからその次はお金のかからない手作りネックレスにしたんだぁ。
「ねえ、スイ……」
「なあにぃ?」
「このネックレスね、確かにお金はかかってなさそうで貰うのも嫌じゃなかったけど、スイからのプレゼントだし大切にしてるけど」
「ありがとぉ」
「でもスイ、わかってるの?」
「なにをぉ?」
「これで、十個目なんだよ……!?」
部室の長机に、スイがあげた手作りネックレスが十個並べられている。
「アイテム収集コンプリートした気分だよ……」
「クリアおめでとぉ」
「そうじゃなくて、やりすぎだって言いたいの……! こんなにもらっても、困るよ……!」
「わたくしは全部額縁に入れて飾っていますよ」
「それもたいがいだけどね……」
「時々取り出して、全部身に着けて楽しんだりもしてますから安心してください」
「ありがとぅ」
「首ジャラッジャラしてそう……」
シルフィーちゃんは仕切りなおすように息を吸いました。
「なんでそんなにプレゼントしたいの?」
「親愛の証だよぉ。それにもっともっと仲良くなりたくてぇ」
「そんなことしなくても仲いいでしょ……」
「でもぉ」
「とにかく! なにもくれなくていいから……。そんなことしなくても友達だから。一緒に過ごして楽しいってことだけあれば友達、でしょ……」
「シルフィーちゃんぅ……」
「こんなにプレゼントされるとなんか利害関係っぽくていやだよ……」
「ありがとぉ」
感極まる。そう、これが感極まるって感覚なのかな。体が動くままにシルフィーちゃんへ抱き着いちゃった。
「ふふふふ、美しくてふわふわかわいい友情です」
「うるさいよ姫花……本当はこんな恥ずかしいこと面と向かってあまり言いたくないのに、スイが情けないから……」
「でもそれはそれとして何かあげたいな。これはもう趣味みたいなものだよぉ」
「ああ……そう……」
シルフィーちゃんは諦めたように溜め息をつきました。
「だから一番安くて、手軽に渡せて、消費したらすぐになくなるようなもの教えてほしいなぁ」
「注文が多い」
「でもこれならもらいすぎても困るって程にはならないでしょぉ?」
「それはそうだね……」
「実はわたくし、10円ガム、好きなんです。……ちょっと恥ずかしいですね」
「なんでぇ? 10円ガムおっけーだよぉ。シルフィーちゃんもぉ?」
「ワタシはガムはちょっと……飲み物がいいかな。姫花に倣って駄菓子系にするなら、駄菓子屋でよく見るジュースもどきみたいなやつなら何十円とかじゃなかったっけ……」
「それなら普通に飲み物渡すよぉ」
「そう……たまにでいいよ」
「うん、わかったぁ」
そんなわけで、以来スイは10円ガムやジュースを差し入れするようになったんだぁ。
過去への物思いにふけるのをやめて、写真撮影が終わって、姫花ちゃんとシルフィーちゃんの二人と合流してライブしたりしながら過ごしていたら夕方になってたよ。
今日はもうお開きにして、帰宅する。
「ただいまぁ」
「おかえりスイちゃ~ん! 今日もライブかわいかったよ~!」
一戸建ての玄関を開けるなりお母さんがドタドタ寄ってきたよ。
問答無用で抱きしめられてなでなですりすり。
「お母さん離れてよぉ……恥ずかしいぃ……」
「あぁ~顔赤くなってるスイちゃんかわいい~」
「やめてぇ~!」
しばらく好きにされた後、解放されたよ。
「夕ご飯できてるからね~」
キッチンでは火を消されたばかりのポトフから湯気が上がっている。
一緒に食器を用意してテーブルに着いたよ。
「「いただきますぅ」」二人でおててを合わせて。
淡々とポトフとお米を食べていく。
「何かいいことあった?」
「なんでそんなこと聞くのぉ?」
「なんだかうれしそうな感じがしたから」
「……新しい友達ができたからかなぁ」
くぅあちゃんのことだよぉ。
「それはいいことね。大切にするのよ」
「うん」
お母さんの料理はおいしい、スイの料理と違って。
夜遅くになったよ。
「スイただいま!」
お父さんが帰ってきた。
「ケーキ買ってきたよ! 食べるかいスイ!」
「そんな、いいよぉ。この時間だと太るしぃ」
「冷蔵庫入れとくから明日食べればいいさ」
「う~ん、わかったぁ」
スイは、そそくさと自室に戻ることにしたよ。
二階に上がって、自室のドアを開けて、閉める。ばたんっと音が寂しく鳴って、電気もつけずにベッドへ転がる。
お母さんとお父さんのことは好きだけど、未だにしっくりこない気持ちがある。
スイの本当のママとパパには、捨てられちゃったから。
今の両親は養父母で、本当の両親じゃない。優しくて、大好きではあるけれど。
なんでスイが捨てられちゃったのかは今でもわかっていない。
ママとパパはスイを愛してくれていたと思うし、スイも大好きだったのに。
突然いなくなっちゃったんだ。
死んじゃったとかでもなくて、どこかにいなくなっちゃった。
行方不明、なのかな。
多分そう。
捜索願いとか出されたのかな。わかんないや。
なんで確かめたことなかったんだろう。
まあいいや。とにかくスイは、捨てられちゃったんだぁ。
だから、今の家は好きだけど、ずっとどこかしっくりこない違和感が付きまとって、いつもその感覚を忘れたくて。
こうして一人で部屋にこもったりする。
一番いいのは、姫花ちゃんやシルフィーちゃんと過ごすこと。
その時だけはしっくりこない感覚もなくなって、幸せな時間でいられるんだ。
ポロンっとふわリネ(メッセージアプリ)の音、即座にベッド脇へ置いてあったスマホを手に取る。スイにふわリネで連絡してくる人は、スイが大好きな人しかいないから。
「あ、くぅあちゃんからだぁ」
<クール学習したいの、明日ぱわ町のふわプリにこれる?>
要は一緒に遊ぼうっていうお誘いだねぇ。
<おっけぇだよぉ>
スマホに充電器を挿して目を瞑る。
明日が楽しみだぁ。
くぅあちゃんと一緒にダンスの手振りを重ねる、腕をスイング、手を綺麗に伸ばす。ふわプリのレッスンルームで、ステップ。
髪が揺れる、デッキケースが揺れる、汗が飛ぶ、レッスン服にしわが寄る。
同じ曲のダンスをしているわけじゃないのに、妙な一体感があった。
くぅあちゃんは、ダンスの最中に時折クールなポーズを差し挟んでくる。それはダンスの流れに合ったものも、唐突なものもあった。
それを我が道を行くクールな動きだと捉えるか、ただダンスを台無しにするワガママな動きだと捉えるかは人によって意見が分かれそう。
ふわプリアイドルとして、「思うままに」はいいことだけどね。
それに加えてスイに攻撃まで仕掛けてくるから、くぅあちゃんは困ったちゃんだよぉ。攻撃というか捕まえようとしてるっぽい動きだけど。この前のリベンジなのかなぁ。スイを捕まえられたら、スイよりうまく動けたことになるって思ってるのかなぁ。くぅあちゃんの考えてることなんて推測しかできないけど。まあ対処できない攻撃じゃぁないから、次々にいなしていくよぉ。
「確認するけど、ライブは格闘技じゃないよぉ?」
「知ってるわ」
「こんなことするよりはユニットの三人で同じダンスと歌の練習をするほうがアイドル力は上がるよ」
「私は今日、スイのような強いクール力を学びたい日なの。三人でのレッスンもちゃんとやってるわ」
「そうかぁ。でも、前にも言ったけどくぅあちゃんが求めているクールとスイのやり方は違うと思うよぉ」
「そうかもしれないわ。でも学ぶことはあるの」
「それに、スイはクールとはちょっと違うと思うよぉ」
「いいえクールよ」
「表面上だけ、ちょっとそう見えるだけじゃないぃ?」
「表に出す部分というのは重要よ。ライブでのスイ、とてもクールで素敵だわ」
「ありがとぉ……姫花ちゃんの方がクールじゃない?」
「いいえ、スイの方が表面クール力は上よ」
「シルフィーちゃんはぁ?」
「あの子はもろにラブリー系じゃない。見た目が」
「スイはセクシーでクールってことだねぇ」
「そう、セクシークール、とてもしっくりくるスイを表す言葉だわ。そして私が目指してるのはクールの究極、ということね。スイは派生形、私は基本の極致を目指していたのよ」
「まあスイはくぅあちゃんと遊べるならそれでいいかなぁ」
「遊びじゃないわ。クールを学ぶための、ふわプリアイドルレッスンよ」
くぅあちゃんはひたむきだ。
クールを真っ直ぐに求めている。
スイがふわプリアイドルになることを決めたのは、スイのことを一番みんなに見てもらえる場所だと思ったから。見てもらえるなら、アイドルでなくてもよかったんだ。そんな、他のみんなと比べたら不純といえる、自分のためだけの理由。
でも才能だけはあったみたいだから、ここまで来れてしまった。セクシーな魅力を出すのも特別得意だったから。ふわプリプリンセスなんて称号をもらっちゃうほどに。
そんな自分を卑屈に思った時もあったけれど、いろいろあって今は自分を認められている。愛されたいから頑張る、それでいいんだなぁって。
だからくぅあちゃんは、やっぱりスイとは違うんだなぁ。
スイは愛されたいだけだけど、くぅあちゃんはもっと孤高でかっこいい感じ。自分が望む自分として上に行ってやるんだーって強さを感じるよ。
くぅあちゃんは、ふわふわぱ~ふぇくとは、どんどん強くなるだろうねぇ。
いいねぇ。
AIモコの、ふわプリコーデ紹介のコーナー☆
「今回紹介するコーデは西条スイさんの私服コーデですモコ」
「足をほとんど露出したグレーの超ミニスカートに、黒いTシャツの右側の裾を縛ったへそ出しルックがセクシーさとクールさを醸し出していますモコ。スイさんのポテンシャルを最大に引き出しててベリーグッドですねモコ」
「以上、ふわプリコーデ紹介のコーナーでしたモコ~」