「ほよ~! ちこくちこく~!」
今日はお寝坊して遅刻しそうだよ~! ぽるんも先に行っちゃうし~!
必死に走って走って走りまくります。
ここから学校までの信号全部青になってて~!
とりあえず今先に見える信号は青です。
でも、なんでか、シカさんの大群が道路を横切ってるよ!?
横断歩道前で立ち往生してしまいます。思わず地団駄じみた足踏みしちゃいます。
「信号は青なのに~!」
そうだ。迂回をしたらどうだろう。ダメだよ、迂回してる時間もない、どっちにしても遅刻しちゃうよ。
「もうこれ絶対遅刻だよ~!」
待って。まだです。シカさんとお話してみましょう。お願いすれば聞いてくれるはずです。
「シカさんお願いちょっとだけ止まって、通らせて~!」
両手を合わせて頭を下げて必死にお願いします。
シカさんたちは、一度わたしの方を見てくれました。でもすぐに、ぷいっと首を元の位置に戻してまた歩き始めます。
「ほよ~……っ!」
こうなったらシカさんの背をピョンピョン飛んでいって渡るしか!
でも、やっぱりシカさんを怪我させちゃうかもしれないし、足を踏み外して落ちちゃったらわたしも怪我しちゃうし、やめといたほうがいいかもしれません。
「もうだめほよ~!!」
~♪
あれ、歌が聞こえるよ? 綺麗な歌声。
どこから。隣から。
わたしの隣にいつの間にか立っていた、わたしと同じくランドセルを背負った明るい髪色の女の子が微笑みながら歌っています。
「シカさんどいてね~♪ ここを通りたいの~♪ お願い~♪」
シカさんの行進がピタッと止まって、歌う女の子とわたしの前に道を作ってくれました。
「す、すごいね」
歌うのをやめて女の子がわたしに振り向きます。
「ほよんちゃんのおかげなんです」
「え、わたし?」
「お姉さんじゃなくてほよんちゃんです。お姉さんはわたしよりはお姉さんっぽいけど、ほよんちゃんは中学生くらいだと思いますよ」
あ、ふわプリの中でのわたしと、今の、ふわプリの外にいるわたしの姿は違うんだった。
「わたし、ほよんちゃんに勇気をもらったんです」
「勇気?」
「はい、私、歌を聴くのは好きでも、自分で歌うのは苦手だったんです。でも楽しそうにライブするほよんちゃんを見ていたら、元気をもらったんです。歌うのってこんなに楽しいんだよって言われてるみたいで、私も歌ってみたいって思えるようになって……」
わたしは自分がふわプリを楽しんでいただけだったのに、そんなふうに思ってくれてたんだ……。 そういえばわたしも、姫花さんたちのライブを観てふわプリアイドルになりたいって夢をもらったんだった。
「あ、遅刻しちゃいそうなんでした! 急ぎます!」
「ほよ! わたしもそうだった!」
「ほよんちゃんのマネしないでください」
わたしがほよんだよ~……。
キーンコーンカーンコーン、と。小学校の授業を終えて放課後です。
「くぅあちゃん一緒に帰ろー」
「そうね」
くぅあちゃんと一緒に教室を出て、靴箱で上履きを靴に履き替えて歩いていくと、校門でティピファちゃんがキョロキョロしているのが見えました。
ティピファちゃんはわたしと目が合うと、安心したようにちょっとにっこりしてから近づいてきます。
「ティピファちゃんどうしたの?」
「今日はティピファの学校は早く終わったリボン。だから来てみたリボン」
「私たちに会いたくて仕方なかったのね」
「そ、そんなことはないリボン」
「照れなくてもいいのに~」
「そうよ。友達なのだから」
「照れてないリボン。あとくぅあ、急にストレートに言うの何なのリボン……デレ期か?」
「私は常に、世界へ向けてデレ期よ」
「意味わからんリボン」
「ほよよ、なら一緒に今日もふわプリ行く?」
「逆にふわプリに行かない日を作る意味があるかしら?」
「……いや家でのんびりしたりしたい日もあるリボン……?」
みんなでわいわい、楽しくふわプリまでの道を歩いていきます。
そんな、今日も明るく楽しい雰囲気に、どよーんとした気配を感じました。
振り向くと、道の隅を思いつめた表情で早歩きしていく女の子がいました。
わたしと同じ白い制服を着た、わたあめ小学校の生徒です。
なんだか気になります。後を追いかけてみよう。
細い道に入った女の子の後をとてててと。
「ほよんどこ行くのよ」
「尾行なんて趣味が悪いリボン」
そう言いながらついて来てくれるティピファちゃんが大好きです。
しばらく女の子を追っていると、廃工場地帯に入ってしまいました。
ここはもう使わなくなってしまった昔の工場がいっぱいある場所です。
その地帯の奥まったところにある廃工場へ、女の子は入っていきました。
わたしたち三人は電信柱の陰から串団子みたいに顔を出して様子を伺います。上からくぅあちゃん、わたし、ティピファちゃんの順です。
「ほよ、あの中に何があるんだろう?」
「きっと闇取引よ。何かしらクールな闇取引が行われているんだわ」
「クールな闇取引って何リボン」
「そりゃクールな闇取引よ」
「とにかく確かめてみようっ」
わたしは電信柱の陰から飛び出て、なるべく静かに歩いて廃工場に近づきます。
両開きの扉の近くまで行った時です。
「きゃーーーーー!!」
女の子の悲鳴が工場の中から聞こえてきました。わたしはびっくり飛び上がっちゃったら、扉が壊れて吹き飛んで、わたしのすぐ鼻先を横切っていきました。
「ほよ~っ!?」
道の反対側まで飛んで行った扉をよく見てみたら、吹き飛んでいたのは扉だけじゃありませんでした。わたしたちが追っていた女の子が扉と一緒に倒れています。女の子が吹き飛んできて、扉ごとわたしの前を横切って行ったということなのでした。
「なにごとリボン!?」
「闇取引決裂!?」
「大丈夫!?」
倒れている女の子に近づいて助け起こすと、女の子は泣いていました。
「うぅ……ひっく……もう願いが叶わないよぉ……」
怪我は見る限りなさそうに見えるから、そこは安心だけど……。
「あはははははははっ……! 私が最強!」
廃工場の中から高笑いが聞こえてきました。
泣いている女の子はわたしの手を離れてどこかへ走って行っちゃいました。
あの子は心配だけど、今は廃工場の中へ向かわなければならない気がします。
でもやっぱり追った方が……。
「制服が同じなら学校は同じリボン。あの子の所属クラスは後でも探せるリボン」
「ほよ! そうだね!」
「突入よ!」
三人で廃工場に突入すると、黒いアイドル衣装を着た、黒い髪をツインテールにしている女の子が、謎の黒く光るカードを掲げてクレーンの上に立っていました。
「そんなとこに立ってたら危ないよ!」
「その黒いカードはなんなんだリボン!」
「あなた、ここでなにをしていたの。答えなさい」
「あなたたちもふわプリアイドル? ならバトルしようよ」
「バトル? なにを言っているの?」
「会話をしてほしいリボン」
「さっき扉から出てきた女の子になにがあったのか知らない? 教えてほしいよ」
「そこのあなた!」
黒い女の子はわたしたちの方を指さします。
「私かしら」
「違う! ツインテール!」
「ほよ!? わたし!?」
「私と同じ髪型やめて!」
「ほよ~! わたしもツインテール好きだからやめたくないよ~!」
「なら、私に負けたら髪形を変えてもらう」
バアアアアアアビリビリィィイイイイイ、みたいな音が響き渡ります。
「なになに!?」
紫色の半透明な壁みたいなものがわたしたちのいる廃工場の周りを囲っていました。
触れてみると、硬い感触がして通れそうにありません。
「閉じ込められたリボン!?」
「ぶっ壊すわよ」
くぅあちゃんが助走をつけてドロップキックを叩きつけたけどびくともしません。
「ぐっ……なにこれ硬すぎるわ」
「この壁は壊せないよ。そしてふわプリバトルが終わらない限り出られない」
「なにそれ~!?」
紫色のスポットライトがどこからともなく黒い女の子を照らし出します。
「クレーンの上がステージリボン!?」
~♪
曲名「ブレイクワールドイドウ」
「私は!
私は私は私は私は
こ こ が 嫌だー!
こ こ が 嫌だー!
ウォー! ウォー!
ウォー! ウォー!
ダダンズンダンダンッ! ダダンズンダンダンッ!
居心地が悪い キラキラしたい でも辿りついた場所は 胸に
私はどうしたらいいの 私はどこに行けばいいの
Discover My The Road
そうよ私は外れモノ でもヴィクトリー掴んで見せる
私の雷よ
私はここにいる」
黒いツインテールの女の子が黒いマイクを高く掲げて目を閉じうつむいたら、ライブが終了しました。
すごいライブです。あの子の気持ちが大きな竜巻みたいです。
「なにこの悲しみに溢れたメロディーは」
「世界への反骨心が燃え上がっているリボン……って」
ティピファちゃんがノートパソコンをカタカタ操作しています。
「これふわプリのシステムリボン!? ふわプリの外でなんでふわプリのシステムが使えているリボン!?」
「どういうこと?」
「わからないリボン。でもあの黒く光る謎のカードが関係してると思うリボン」
「さあ、あなたたちのターンだよ」
「ターン制!?」(わたしとティピファちゃん)
「早くふわプリのライブをしないとここから出られないし、そこの子はツインテールをやめてもらう」
「ほよ~!」
このままだとツインテールをやめさせられちゃう!
「それに、ふわプリに誘われたからには断らないよ」
「クールな戦士は逃げないわ」
「ティピファの頭脳で導き出した結果、あの子のライブにティピファたちのライブが劣ることはないと判断するリボン」
ふわプリのシステムが使えないので、腰に付けたデッキケースのボタンを押して曲を流します。
衣装もないので、わたあめ学園の制服、白色が基調になった制服をわたしとくぅあちゃんが着ていて、ティピファちゃんはリボンまみれな私服です。ふわプリの外だから見た目も小学生のままで、ちっちゃいです。マイクもないです。
でも、わたしたちは何度もレッスンをしてきました!
~♪
曲名「とりぷるなPerfect」
「ほよっ! と来たらクールが一番、リボンがほどけておはようだ
はい! 手を繋ごう 三人のカラフルが希望のレールに乗って いち にー さん さん
ふわふわプリティ わたしたちのリレーション キラキラ
トリニティくるんくるんフェスティバルタイム
るー るー るー
クールに始まる私の独壇場 約束の氷結時間 私だけのストーリー 刮目しなさい
パリ パリ パリ パリ アイスブレイク
ほよっとわたしもぽよっと飛び出す トゥインクルくるくる ふわふわかわほよ☆
私の計算 頭脳で生産ブレイン混乱 それでもそれが最適解」
ふわふわ劇場 オープン!
「ふわふわかわいいアイドルは」
廃工場の中にある廃材に、三人並んで高く一回転ジャンプして着地、かわいいポーズをとります。
「だんだん地道にコツコツと」
さらに回転ジャンプして階段に着地、階段の手すりへ、ジャンプして着地するごとにバリエーション豊かにかわいいポーズをとります。
「かわいいを育むよ」
クレーンの上へ着地したところで、みんなで手をつないで回転ジャンプっ!
わたしたちには見える画面(カメラ)に向かって勢いよく接近します! 画面いっぱいに三人の顔がぎゅうぎゅう詰めになる感じで、ふわふわクールかわいい笑顔!
「スプラウトキュートっ!」
「トリプル輪になって 光が灯り スピンジャンプ
ふわふわと クールが リボンに結ばれ
ジャスト ドキドキオンリーフェア
とりぷるなパーフェクト最大ガールズ」
ライブ終了です!
ふわチケGETはふわプリないじゃないのでできません!
観客のみんなや鎧の人の言葉も聞けません!
「さあ、勝負だよ」(黒いツインテールの女の子)
わたしたちのデッキケースと、黒いツインテールの女の子が持つ謎の黒く光るカードから衝撃波みたいなのが発生して、ぶつかり合い始めました。わたしたちふわふわぱ~ふぇくとの衝撃波は白色、相手のは黒色です。
ビリビリと肌に、感覚全部に、不思議なせめぎあいが伝わってきます。
「こ、これがふわプリバトル……?」