「これぞひりつくふわプリバトルだよ。思い知って」
「負けないよほよ」
「思い知るのは、あなたの方よ」
「ずいぶん余裕そうだね……」
「そりゃ余裕よ」
そう、わたしたちは気づいています。
あの子のライブには、ふわふわ劇場がなかったのです!
ふわプリのライブにおいて、ふわふわ劇場があるかないかでは大違いなのです。
「ティピファが導き出した結論通りになったリボンね」
白い衝撃波が黒い衝撃波を押し返して、塗りつくすように消しちゃいました。白い衝撃波がクレーンの上にいる女の子を吹き飛ばします。
わたしたちの勝ちです。
いや吹き飛ばすのはどうほよ?
「きゃああああああああ~!?」
怪我しちゃう!
わたしもクレーンから飛び降りて、黒いツインテールの女の子を受け止めます。お姫様抱っこみたいになっちゃいました。
「なにこのふわプリ力……!? あなたたちただものじゃないね……」
「ふっ、私たちを知らないなんてにわかね」
「わたしたちはふわふわぱ~ふぇくとだよ!」
「ふわふわぱ~ふぇくと……あなた自身の名前は?」
「わたしは
「私は、
「ヤミミちゃんだね!」
わたしの腕から降りて、ヤミミちゃんは走り去りながら叫びました。
「ふわふわぱ~ふぇくと! これで勝ったと思わないことよ~!」
「あ! 去るならいろいろ教えてからにしてほしいリボン!」
「私が捕まえてくるわ」
くぅあちゃんは猛ダッシュで追いかけて行って、すぐに帰ってきました。
くぅあちゃんに片手で襟首を掴まれて、宇宙人さんみたいに宙吊りにされたヤミミちゃんです。
「うっうっ……さっきのセリフで去ったならこんなみじめに連れ戻さないでほしかったよぉ……」
「ごめんね。でも聞いておかなくちゃならないことがあるから」
「なにを聞きたいの」
「さっきわたしたちがこの廃工場に入る前に、外に出てった女の子とは何があったの?」
「あの子は私とのふわプリバトルに負けただけ」
「負けたらどうなるの?」
「ポイントを奪われて、願いを叶えるまでが遠のくんだよ」
「ポイント? 願い?」
「もっとわかりやすく説明してほしいわ」
「順序だてて説明してもらえると助かるリボン」
「まず、この黒いカードはエラーカードって呼ばれてて、謎のおじさんにこれを渡されて、ふわプリバトルに勝ってポイントを溜めればどんな願いでも叶うらしい」
「謎のおじさん?」
「謎のおじさんは謎のおじさんだよ。姿がわからないおじさんにある日突然渡されるの」
「不審者リボン……」
「そういえば、私負けたのにカードからポイント減ってない。なんで? 相手もエラーカード持ってないと意味ないのかな」
ヤミミちゃんは黒色のカードを
「ほよ、じゃあこれは没収だね」
そのエラーカードをヤミミちゃんの手から取り上げます。怪しいし、衝撃波とか危険だし。
「あー! あー! だめー! 返して! 私にはそれしかないの!」
ヤミミちゃんはくぅあちゃんに抑えられながら腕や足やツインテールを振り回して暴れます。
「でも……またヤミミちゃんが誰かを泣かせてしまうかもしれない」
すごく必死で悲しそうだから、わたしの胸もキュッとしちゃうけど。
ほよ~……。
「ほよん、この問題は根本的な部分を調べて解決しないとどうにもならないと思うから、今は返してあげてもいいと思うリボン」
「そうなの? なら、はい、ヤミミちゃん」
「あ、ありがとう」
ヤミミちゃんはエラーカードを大切そうに抱きかかえました。
ふと響く声。
「喋りすぎよ」
「おしおきしないとね」
知らない女の子の声が二人分聞こえました。
「誰!?」
振り向くと、穴の開いた天井の先、廃工場の屋根の上に二つの人影があります。
半分だけの黒い仮面をつけて、サイドテールの髪を鏡合わせにした女の子二人です。
シュタッと飛び降りてきてわたしたちの前に着地しました。あんなに高いところから落ちたのに全然痛そうじゃありません。
「あ、あれは、最近ふわプリバトルで暴れまわっている二人組!?」
「ヤミミちゃんのお知り合い?」
「知り合いっていうか、会ったことはない有名危険人物たち」
「ほよ~……!」
危険人物さん……! 大変です……!
「黒い仮面!? しかも半分!? あづうっ!? クール指数が高いわ……!?」
「くぅあちゃん!?」
危険人物さんたちだけでもびっくりなのに、突然片目を押さえて苦しみだすくぅあちゃんにわたしの気持ちもてんてこまいです。
「私達はダークツインズ」
「ダークツインズ! 名前までやばクールだわ!」
「一旦黙るリボン」
ティピファちゃんがくぅあちゃんの口を片手で塞ぎます。
「ふわプリバトル、ライブ開始」
ダークツインズがそれぞれ持ったマイクから、ビームみたいな黒い剣が生えて伸びました。
~♪ どこからともなく曲がかかります。
「闇の中進んで往くの 双翼広げ陽に仇名す」
歌いながらダークツインズは斬りかかってきました。
斬りかかってきました!?
物理的。
「きゃー!」
「ほよほよほよほよほよー!?」
反応もできないままに、わたしたち四人は斬られまくります。ザシュザシュザシュです。
「りぼーん!?」
「ああー!?」
「ほよー!?」
さらにあっちこっちへ吹き飛びまくります。それはもうゴム毬、蹴鞠、スーパーボールです。
一旦攻撃が止み、わたしは転がって、息も絶え絶えに起き上がります。
体を見下ろすと、怪我はしてない。でも、なんか、変な感じ。風邪をひいちゃって体がだるい時みたいな、でもそれともまたちょっと違ってて。とにかく怪我は負ってないけど何もないわけでもないんだよ。周りのみんなも怪我してないように見えるけど、わたしと同じ気だるい様子です。
それはそうと抗議したいです。
「やめてー! こんなのライブじゃないよ!」
「おかしいリボン!! なんでアイドルが剣なんて持つリボン!!」
「許して―! こんなところでやられたくなーい! 私は地下ふわプリで最強になるのー!」
問答無用でまたダークツインズは襲い掛かってきます。
くぅあちゃんがデッキケースからカードを引き抜いて、黒い剣の刃に合わせて対抗し始めました。
刃物に触れたのにカードは切れちゃったりしてません。剣と打ち合って、くぅあちゃんは戦っています。
「ほよん、ティピファ、私たちもライブで対抗よ」
「そんなこと言ったって……!」
「わ……!」
ダークツインズの一人がくぅあちゃんと切り結んでいるうちに、もう一人がヤミミちゃんに迫りました。
「これでまずは一人、とどめ」
ヤミミちゃんに振り下ろされようとする黒い剣が危ない感じに光を強くしました。
あれがヤミミちゃんに当たったら、なんか絶対ダメな気がします!
「ヤミミちゃん!」
気づいたら、ヤミミちゃんの怯えた顔が目の前にあって、わたしの肩から黒い光が生え出ているのが見えます。斬られた、刺された、貫かれてる……?
でもヤミミちゃんには当たってなかったっぽいから良かったよ。
さっきよりも、ものすごく体がだるくなって、膝をついちゃいました。
「「ほよん!」」
くぅあちゃんとティピファちゃんの心配してくれる声が聞こえます。
くぅあちゃん、このままだとライブで対抗してダークツインズに勝つのは無理そうだよ。
だから。
「ほよ! 逃げるよみんな!」
「「!」」
くぅあちゃんがすぐに勝とうとするのをやめてくれて、黒い剣を青いカードで弾いてバックステップしていきます。
わたしも頑張らないと。
「ふわっ、プリィィィイイイイイイイッッ!!」
気合で立ち上がって、刺さってる黒い剣を抜いて走ります。ヤミミちゃんの手も握りつつ。
くぅあちゃんとティピファちゃんも隣まで来てくれてみんなで逃げます。
ダークツインズは歌いながら黒い剣を振りかざして追ってきます。
「くぅあ! そこ蹴るリボン!」
ティピファちゃんが叫びました。
くぅあちゃんが何か、どこかを蹴ったみたいです。
後ろから大きな崩れる音が聞こえて、振動を感じます。
走りながら少し振り向くと、角材やら何やらが道を塞いでいました。これならダークツインズはしばらく追ってこれないでしょう。逃げる時間は稼がれました。
ティピファちゃんの機転とくぅあちゃんとのコンビネーション、とても素敵です。
わたしたちは必死で走り続けます。
そんな感じで、わたしたちは翻弄されるままにやられちゃって、
ふわふわぱ~ふぇくとたちがいなくなった後の廃工場で、ダークツインズは立ち尽くしていました。
「モネのせいで逃がしたからオレンジグミ一個私のね」
「なにそれ。お姉ちゃんはいつも横暴。横暴ポイント一つで私にグレープグミを一個渡すべき」
廃工場の入り口からパラダイムハートが歩いてきました。
「ふわふわかわいい女の子たちを傷つけるあなたたちを、ちょっと成敗いたします」
パラダイムハートが持ったマイクからそれぞれのイメージカラーに光る剣が生えて伸びました。
「悔い改めてふわふわかわいくなってください!」
~♪
ザンッ! ドンッ!
歌いながらパラダイムハートがダークツインズのいる場所を通り過ぎると、ダークツインズは高く吹き飛んで、ドサドサッと倒れ伏しました。
瞬殺です。
ほよんちゃんたちがなすすべなく敗走するしかなかったダークツインズを。
仮面も砕け散って破片が固い地面に落ちています。ダークツインズの素顔は、かわいい童顔をしています。二人は中学生一年生の女の子です。
「そろそろ、わたくしたちも動きましょう」
「お、ついに? 楽しみだねぇ」
「面倒だけど……しょうがないね」
「サマートーナメントパラダイスを、開催しましょう」
AIモコの、ふわプリコーデ紹介のコーナー☆
「今回紹介するのはこちら、
「ゴスロリタイプのスカートが大きく広がったワンピースですモコ。漆黒の中に白色のアクセントがいくつもあって、ふわふわかわいいですモコ」
「闇未さんが、おばあちゃんに黒いのがいいと頼んで繕ってもらったらしく、孫への愛を感じられるコーデですモコ」
「以上、ふわプリコーデ紹介のコーナーでしたモコ~」