「お名前まだ聞いてなかったよね。わたしは
お名前は大事です。できれば会った瞬間に聞きたかったぐらいです。
「わたしは
「ロロちゃんだね。わたしたち、ロロちゃんの力になるよ」
しばらく黙っていたロロちゃんは、囲んでじっと見つめるわたしたちへ根負けしたように話し始めます。
「……お友達のメレちゃんが引っ越してしまうんです」
「それは、悲しいね」
わたしも、くぅあちゃんやティピファちゃんが引っ越しちゃって、今みたいに頻繁に会えなくなっちゃったら悲しいです。
「スマホで連絡はとれるだろうけど、直接は全然会えなくなっちゃう。だからメレちゃんが引っ越さないようにしてって、エラーカードにお願いしようと思ったの……」
「多分あのカードは使わないほうがいいよ」
エラーカードには、すごくほよほよしない何かを感じるのです。
「でも、いつもそばにいられないと心が離れて行っちゃう……」
「そんなことない! 離れていればもっと会いたくなるよ」
「そんなの、信じられません」
「不安なら元気づけるよ」
「元気づける……? そんなことされてもメレちゃんが引っ越してしまう事実は変わらないんです」
「元気づけるよ!」
「お昼休みの時間もあまり残ってないので……」
「それなら放課後だね!」
「あの、話通じてます……?」
いったん解散して、午後の授業、体育と社会を終わらせます。
放課後になりました。
急いでくぅあちゃんと二人で教室を出て、玄関でロロちゃんを待とうとしたら、校門から走って出ていくロロちゃんの背中が見えました。
「捕まえてくるわ」
くぅあちゃんに捕まったロロちゃんを連れて、ふわプリのある森林公園でティピファちゃんとも合流しました。
「うう、逃げられなかった」
「あきらめるリボン。この二人は天災みたいなもの。それに別に取って食おうっていうわけじゃないリボン。ちなみにティピファは天才リボン」
「あなたも天災の一人だと思います」
「そう、天才リボン」
「さっそく元気づけるよ!」
「で、具体的にどうするリボン」
「元気づけるならふわプリのライブが一番だと思うけど、今はライブができないから、他の方法で何かないかなって考えてる」
「実はティピファ、すでに用意しているリボン」
「さすがティピファちゃん!」
「とくと見よリボン!」
ティピファちゃんはノートパソコンを身に着けている大量のリボンの中から取り出して、公園のベンチに乗せてカタカタと何かをし始めます。
「これが、離れても友達のままでいる人たちの例を表したデータリボン」
ティピファちゃんがパソコンの画面をみんなに見やすいように向けてくれます。
わたしにはちんぷんかんぷんなグラフ? っていうのかな。とにかく何かの数字が画面に表示されています。
「この通り、離れて住んでいても友達な人たちは数えきれないくらいいるリボン」
「離れて友達じゃなくなった例は?」
ロロちゃんがききます。
「それは、そうなっちゃうことだってそれなりにあるリボン。人と人との関係だから……リボン」
「わたしはそうなっちゃうなんだー!」
「でもそれだけ離れたくないほど仲良しで、相手も仲良しだって思ってくれてるならそうそう友達じゃなくなることはないと思うリボン」
「ああーー!」
「話聞いてないリボン……」
ロロちゃんはポケットから黒いカード、エラーカードを取り出してすがるように握りしめました。
「全然元気づけられてないじゃない」
「この子がネガティブすぎるのもあると思うリボン……」
「次は私の番ね」
くぅあちゃんが公園のトイレにロロちゃんを連れて、二人で体操服に着替えて戻ってきました。公園のトイレというと汚いイメージがあるかもしれないけど、ふわプリのある森林公園のトイレは綺麗です。
体操服は、白い半袖に赤いハーフパンツです。このハーフパンツはちょうど膝までぐらいの丈です。ハーフパンツはショートパンツに近いようで違います。ショートパンツよりもそれなりに丈が長めなのです。
ブルマという体操服が昔あったらしいです。デザインがかわいかったのでいつか着てみたいですね。ハーフパンツもかわいいけどね。ハーフパンツ姿のくぅあちゃんとロロちゃんはふわふわかわいいです。
「体を頑張って動かしまくれば、暗くなってしまう気持ちに対抗できる力が湧いてくるはずだわ」
「というと?」
「走り込みよ」
「わたしあんまり運動得意じゃないんですけど……」
ロロちゃんはくぅあちゃんに手を繋がれて一緒に走っていきます。
わたしもついていきます。ティピファちゃんも続きました。
森林公園の外周を一周ぐらいしたころです。
「ぜえはあぜえはあ……」
ロロちゃんが汗だくで足がふらふらとおぼつかなくて転びそうです。
「うぇ……吐きそう……」
「ロロちゃんが大変だよ! 休まないと」
全員立ち止まって、ロロちゃんはへたり込んでしまいました。
「はあ……はあ……あぁ……」
「どう、力が湧いてきたかしら」
「むしろ具合悪いです……」
わたしは日々のレッスンでそれなりに体力がついてきていたので、まだ余裕があります。ロロちゃんにタオルとスポーツドリンクを渡しました。
「ありがとうございます……」
ロロちゃんはタオルで汗を拭いて、スポーツドリンクをごっくごっくとラッパ飲みしたあと叫びました。
「でも元気なんて出ません! メレちゃんがいない! もうだめです……!」
ロロちゃんはまたエラーカードを取り出して、両手の間に挟んで目をきつく閉じました。拝んでるみたいです。
「くぅあも失敗リボンね」
「なにがいけなかったのかしら」
「ほよ~~! 最後はわたしの番!」
みんなをわたしの家に連れてきました。
「わたしの家はパティスリーなんだ。だからスイーツを作ろう!」
「どういうことよ」
「ロロちゃんがスイーツを作ってお友達にプレゼントするんだよ。ロロちゃんはお友達のメレちゃんが引っ越しちゃって、仲良しのお友達じゃなくなっちゃうかもしれないのが怖いんだよね。だったらいい思い出を作ればずっと覚えていられて、仲良しのままでいられると思うの」
「楽しい記憶を脳に焼き付けて、ずっと仲良しでいられる可能性を高めるということリボンね」
「ほよ、多分そういうこと」
お店の方ではなく、家の方のキッチンにみんなをお招きしました。お店の方はパパが使ってるからです。お店のキッチンを変に触って怒られるのはほよほよしません。家の方のキッチンでも、お菓子屋を経営しているからか結構広めで、道具も充実しているのでちょっとスイーツを作るぐらいなら問題ないです。
「ロロちゃんはお菓子作れる?」
「お菓子どころか簡単な料理すらしたことありません」
「ならわたしたちが教えるから作ろう!」
「それで、なにを作るのよ? ケーキ?」
「ケーキ屋の子だからってケーキを作れるわけじゃないよ」
わたしは料理が得意なわけではありません。
「ならなぜスイーツ作りの提案をしたのよ」
「難しいのは作れないけど、簡単なのならぎりぎり作れるよ。だからホットケーキを作ろう」
「初心者に教えながら作るのに、複雑な料理は向いていないもんねリボン」
薄力粉とかいろいろ使うのはよくわからないので、ホットケーキミックスを使います。ホットケーキミックスと卵と牛乳をボウルに入れて混ぜ混ぜします。
熱してから冷ましたフライパンに、混ぜたものを垂らして焼きます、フライ返しで裏返して反対側も焼きます、それで完成です。ホットケーキの大まかな作り方は、大体こんな感じだと思います。
あとは冷蔵庫に入っていたクリームを乗せてハチミツかけちゃおう。ふんわりあまあまです。
「完成! とりあえずまずはわたしが作ってみたよ。お味はどう?」
「普通においしいじゃない」
「スマホで調べたまんまの作り方な感じだけど、結局レシピ通りに作るのが一番リボン」
「おいしいです。今見たように作ればいいんですよね?」
「そういうことほよ」
「よし……やってみます」
ロロちゃんが一度目に完成させたホットケーキは、紫色のうねうねした生き物みたいなものでした。襲われかけたのではたき落としたら動かなくなりました。
二度目は羽の生えた青い何かが完成して天に昇っていきました。でも天井があったので何度もぶつかって落っこちてしまいました。青い何かが床に転がっています。あとで片付けましょう。
三度目は爆発しました。フライパンが、キッチンが爆発して木っ端みじんです。
「なんでホットケーキがあ!?」
吹き飛びながらティピファちゃんが叫びます。
爆発四散したキッチン跡地で、びっくりして飛んできたママにしこたま怒られました。
「ホットケーキすら焼けないなんて……! わたしはほんとうにだめです……!」
焦げたホットケーキをかじりながらまたエラーカードを取り出すロロちゃん。
「やっぱりどうにか地下ふわプリで勝ってエラーカードに頼むしか!」
「これは没収します」
わたしはロロちゃんからエラーカードを取り上げます。
「あああ返してえぇ」
「だめほよ!」
ロロちゃんがしがみついてきてかわいそうだけど、返すことはできません。
「ヤミミちゃんのは返したのに、なぜまた没収するリボン?」
「ヤミミちゃんはエラーカード自体が必要そうだったけど、ロロちゃんはそうじゃないから」
「ロロちゃんはお友達が引っ越しちゃうのが問題で、エラーカードが手段でしかないから、その手段はティピファたちが担おうってことリボンか」
「ほよ」
その後、どうにかロロちゃんはホットケーキを完成させました。
一つ一つの工程を、わたしとまったく同じようにしてもらうように何度もお願いしながら作ってもらったら、なんとかなりました。
「さっそくメレちゃんを呼ぼう」
「電話してみます」プルルルルル。「今ふわプリのある森林公園にいるよ。メレちゃん助けて」
ロロちゃんは森林公園にメレちゃんを呼んで、わたしたちも移動します。
噴水広場につきました。
メレちゃんは走ってきてくれました。青色のポニーテールを揺らしながら息を切らしています。
「ゆっくりきてくれてもよかったのに」
「あんな電話されたら誰だって急ぐよ!? それで助けてって何!?」
「ああ言ったら確実にきてくれると思って……」
「そりゃあくるよ!? でも私の心労も考えて!? 何事もなくてよかったけど!」
「ごめんなさい」
「いいけど、で、遊びに誘ってくれた、ってわけじゃないのかな、知らない人いるし」
メレちゃんがわたしたちを見て訝しそうにします。