「このお姉さんたちはわたしを手伝ってくれたの。メレちゃんに、これを渡したくて……」
「くれるの?」
「うん、プレゼント」
「ありがとう」
「えへへ」
「わ、ホットケーキじゃん。ロロちゃんが作ったの?」
「うん」
「おいしい」
「下手だけど」
「いいんだよ、ロロちゃんがこんなにちゃんと食べられるものを作れただけで感動だよ」
メレちゃんはロロちゃんがすごく料理下手なことを知っていたみたいです。
「ほよ、いい思い出ができたね」
「はい!」
笑顔で頷くロロちゃんを見て、これにて一件落着かと思えました。
「一人だけ食べてるのも気まずいのでみんなで一緒に食べませんか」とメレちゃんが言ったので、四人でロロちゃんが作ったホットケーキを食べます。
もぐもぐしながら噴水と周りの木々をなんとはなく眺めていると、ロロちゃんがぽつりと零しました。
「もう、この公園でメレちゃんと会えないんだね」
「そう、だね」
「ねえ、不安と喪失感がわき上がって消えないよ」
「それは困ったね。でも、毎日電話とかふわリネとか、顔見て話したいなら、何ならリモート通話するから大丈夫だよ」
「うん……でも、でも……うわーん離れたくないよー!」
ロロちゃんはメレちゃんに抱き着きました。絶対に離れてやるもんかと言わんばかりにぎゅーっと強く抱き着いています。
「ロロちゃん……ちょっとだけ痛いから緩めて」
メレちゃんは困ったような笑みを浮かべて、よしよしとロロちゃんの頭を頭をなでています。
ロロちゃんは抱き着いたまま横にある噴水を指さして。
「この噴水は思い出なんだよ。もうここで会えないのは嫌だ」
「確かに、ここではよく会ってるけど、夏祭りの待ち合わせとか」
「奇遇ね。私も先日、この噴水に落ちたのが思い出に残ってるわ」
「くぅあ、少し黙ってろリボン」
ロロちゃんは結局、どんな手を尽くしてもメレちゃんが引っ越してしまう時点で悲しみに包まれてしまうのでしょうか。
そしてメレちゃんが引っ越す事実は変えられません。
引っ越す事実が変えられないのなら、ロロちゃんは必ず悲しんでしまいます。
いえ、そうでしょうか? メレちゃんのママとパパを説得すればいいのです。メレちゃんが引っ越さなくなればロロちゃんは悲しみません。
「メレちゃんのママとパパにお話しさせてほしいな」
「え?」(メレちゃん)
「さすがによそ様の家庭事情に突っ込むのはマズいリボン」
「でも!」
このままだとロロちゃんが笑顔にならないよ。元気づけられないよ。
「ままならないこともあるリボン」
「ほよ~……」
「私は、パパのお仕事で引っ越すけど、パパのお仕事は応援したいから。パパとママも私のこと考えてくれてるし、説得して引っ越しをなしにしてもらいたいとは思ってないよ。それに、ロロちゃんと友達でなくなるつもりもないよ」
「うう……でもぉ……」(ロロちゃん)
「ほらロロちゃんが泣きそう悲しんでる! 全然解決した気がしないよ!」
「解決した気がしないって、それほよんの自己満足ではないのかリボン?」
「そもそもロロは勝手に立ち直るんじゃない? どうせメレとはこれからも連絡とり続けるのだし、どこかでその時の現状に納得してしまうのではないかしら、私たちがこれ以上余計なことして意味あるのか不明だわ」
「くぅあ、昼休みに言っていた呉越同舟はどうしたリボン。まあティピファも同じ意見ではあるけどリボン」
「うるせーほよ! しゃらくせーほよー! ほよほよほよほよーー!!」
「うわあほよんが壊れたリボン!?」
「割といつもこうじゃない?」
つまり、ロロちゃんがメレちゃんと離れても友達でいられることをちゃんと信じて、笑顔でいられればいいってことだね!
そしてそれ以外は変えられない。友達が引っ越してしまうという、ロロちゃんにとって悲しい事実は変えられないのです。
「ほよーー! こうなったら!」
できないなんていってられない!
「いくよ、くぅあちゃんティピファちゃん」
「いくってどこへよ」
「もちろんふわプリへライブしに」
ロロちゃんが悲しむのを解決するには、やっぱりふわプリのライブしかないのです。
「ちょっと待つリボン。ティピファたちは今ライブなんてできる状態じゃないリボン」
確かにライブには失敗しちゃったばかりです。あの全然体が動かなくなっちゃって、動き方もわからないような暗闇の如き感覚は恐ろしいです。
「それでも、今はやる時だと思うからやるよ。わたしたちふわふわぱ~ふぇくとならできる、でしょ?」
「当たり前でしょう。私を誰だと思ってるの?」
「二人とも己を過信しすぎリボン。いつか三人そろって転びそうで怖いリボン。ここはいったん落ち着いてライブは見送った方が……」
「ティピファちゃんお願い、一緒にライブして」
わたしのワガママを聞いてお願い~という気持ちを込めてティピファちゃんの手を握ります。
「うっ」
両眼を見つめながら、手を握り続けます。
「はあ……わかったリボン。この前ダークツインズに三人仲良く負けたばかりリボン、次転ぶ時も一緒リボン」
「ありがとうっ」
これでライブしに行けます。ではゴー! ほよー!
「ロロちゃん、メレちゃんと観客席で見ててね!」
「あ、はい……」
「楽しみにしてます」
ふわふわSHOPを抜けてふわプリに入り、ふわパレスのエントランスでライブのエントリーを済ませると、奥の扉を開け放ちます。
不思議な色合いの部屋に出ると、正面にでっかい綿あめ、ふわふわポイントです。
デッキケースを開けると、キラキラと光ってるカードが新しく四枚入っていました。
「今回のライブ用に新調したカードですモコ」
AIモコさんの声がどこからともなく聞こえてきます。
「今日に限ってどうしてリボン?」
「今、ふわふわぱ~ふぇくとのみなさんは誰かのためのいい気持ちに燃えていますよねモコ。その気持ちを新しいコーデに変換してライブしてもらうともっといいライブになるので、そういう時は新しいカードを渡すことがあるんですモコ」
「そっか、ありがとう」
「ふ、気が利くじゃない」
「相変わらず充実したサポートリボン」
「ふわふわポイントにデッキケースとコーデカードをセットしてくださいモコ」
カード四枚とデッキケースをわたあめに触れさせると吸い込まれていきます。ぴろりんっ。これでスキャン完了です。
光が広がって、服が一旦消えて新しいコーデがわたしの体にぴったりと着せられました。
「蝶とイチゴと花のような形をした三種類のアクセサリーが散りばめられたコーデですモコ」
わたしはキラキラの空間をくるくるっと回って。
「エールフォーユーピンクコーデ!」
決めポーズ! ダブルピース☆
「ほよっ!」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
「蝶とイチゴは、元気を送りたい意味を持つ花言葉に関係しているとも言えるのですモコ」
「エールフォーユーブルーコーデ!」
くぅあちゃんはクールなポーズ!
「ふっ」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
「カラフルなアクセサリーが三人分、目に楽しいコーデですモコ」
「エールフォーユーイエローコーデ!」
ティピファちゃんは手でリボンの形!
「りぼんっ!」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
それぞれのイメージカラー、ピンクと青と黄色の、蝶とイチゴと花が散りばめられたコーデを着て、三人でライブステージに飛び出します。
「前回中断してしまったリベンジなるか!? ふわふわぱ~ふぇくとの新コーデライブです! 刮目しましょう!」(鎧の人)
「きゃーー! ほよほよほよほよほよほよ!」「頑張って~!」「負けないでいいライブ見せて~!」「くぅあさま~!」(観客)
それぞれピンクと青と黄色のマイクを持って、音楽が鳴り始めます。
~♪
曲名「とりぷるなPerfect」
「――っ」
歌おうとした瞬間、踊ろうとした途端、めまいが、体の動かし方がわからなくなる感覚が、大きな波みたいになって襲い来ます。
このままライブの流れに乗れず、曲に置いていかれたらライブ失敗です。
だから数秒以内に体を動かさないといけません。難しいのはわかっています。とても難しいです。前回よりはほんの少しマシになっているような体調ですが、全然動けそうにありません。
台風の中みたいに体がふらついて、底なし沼の中のように動きが鈍いです、ライブなんてできる状態ではないのは変わっていません。
それでも今ライブできなきゃいけないと思うし、二度の失敗はファンをすごくすごくがっかりさせちゃうと思うから、私はライブをするのです。ライブを成功させるのです。
理屈。そんなの、わからないよ。
「ふわっ、プリイイイイイイイイィィっっ!!」
捻じ伏せます。
「ほよっ! と来たらクールが一番、リボンがほどけておはようだ
はい! 手を繋ごう 三人のカラフルが希望のレールに乗って いち にー さん さん
ふわふわプリティ わたしたちのリレーション キラキラ
トリニティくるんくるんフェスティバルタイム
るー るー るー」
ダンスと歌にロロちゃんを元気づけたい思いを込めます。それがふわプリのシステムがなんやかんやしてくれてよりいいライブになっているのを感じます。
「クールに始まる私の独壇場 約束の氷結時間 私だけのストーリー 刮目しなさい
パリ パリ パリ パリ アイスブレイク
ほよっとわたしもぽよっと飛び出す トゥインクルくるくる ふわふわかわほよ☆
私の計算 頭脳で生産ブレイン混乱 それでもそれが最適解」
ふわふわ劇場 オープン!
「ふわふわかわいいアイドルは」
ふわふわかわいいデザインなおっきい階段を、三人並んで高く一回転ジャンプして着地、かわいいポーズをとります。
「だんだん地道にコツコツと」
さらに回転ジャンプしながら上っていきます。一段上るごとにバリエーション豊かにかわいいポーズをとります。
「かわいいを育むよ」
三段上ったところで、みんなで手をつないで回転ジャンプっ!
画面(カメラ)に向かって勢いよく接近します! 画面いっぱいに三人の顔がぎゅうぎゅう詰めになる感じで、ふわふわかわいい笑顔!
「スプラウトキュートっ!」
「トリプル輪になって 光が灯り スピンジャンプ
ふわふわと クールが リボンに結ばれ
ジャスト ドキドキオンリーフェア
とりぷるなパーフェクト最大ガールズ」
ライブ終了です。三人ともちゃんと動けてました歌えていました!
ふわチケGET!
「キャ~! 元気がもりもり~!」「ほよほよほよほよほよほよ~~!」「今回も最高だった~!」(観客)
「ほよんさんとくぅあさんのふわふわランクが羽ばたきたいアイドルからド根性アイドルへ、ティピファふわふわふーアイドルから強いかもしれないアイドルへランクアップしました! おめでとうございます!」(鎧の人)
「だらっしゃあ! やったったわよ!」
「どうリボン! これが! 時間が経っていくらかはふわプリバトルのダメージが回復していたのと、ロロちゃんを元気づけたことで光の思いを育んだことによるエネルギー発生の後押しによる成功リボン!」
そんな理屈があったらしいです。とにかくライブできたなら万々歳! ほよほよ~!
ロロちゃんとメレちゃんはライブを観て瞳をキラキラと輝かせていました。ロロちゃんなんて涙すら流しています。
「友情の繋がりはふわプリだったんだね……。メレちゃんとずっと繋がっているのを感じる……」
「そうだね。おばあちゃんになっても、ロロちゃんとこうして隣り合って喋ってる映像(ビジョン)が視えたよ」
ライブ終了後、わたしたちはロロちゃんメレちゃんと、ふわプリのぷろろ~ぐ広場で合流しました。
「ライブすごくよかったです! メレちゃんと友達じゃなくなるなんてネガティブな考えは吹き飛んじゃいました!」
「私もライブ感動しました。ロロちゃんも元気になったようで安心ですよ」
「ほよ! よかったよ!」
「はい! もうわたしは大丈夫です。いろいろしてくれてありがとうございました!」
「やっぱりふわプリのライブが答えだったね。問題の解決にはふわプリのライブがいいよ」
「確かに、そうかもしれないリボン」
「不調なんて何のそのなふわふわぱ~ふぇくとのクールでパワーな力のおかげね」
よーし、ロロちゃんも元気になったし。
「ほよっと解決ほよほよ~!」
ダブルピースしたままくるくる回ります。
満足してお家に帰ろうとしたとき、わたしの腰にあるデッキケースと、その中のカードが、一瞬光ったように見えたような気がしました。
AIモコの、ふわプリ世界紹介のコーナー☆
「今回紹介するのはこちら、「わたあめ学園」ですモコ」
「ほよんさんたちが住む「ぱわ
「広大な敷地にある巨大な校舎は、俯瞰するとわたあめのような形をしていますですモコ」
「以上、ふわプリ世界紹介のコーナーでしたモコ~」