ふわプリ   作:ソウブ

28 / 31
15話 サマートーナメントパラダイスほよ!(3/3)

 

 

 

「さあそろそろゴールしそうなユニットが増えてきてますよ」

 姫花さんのアナウンスが心を急き立てます。

「急がないと」

「このままゴールまで一直線よ」

「むしろ会場までゴールしてからがサマートーナメントパラダイスのスタートリボン」

 AIモコさんの画面に映る地図を見て走り出します。

 

 しばらく走っていると、ようやく会場のゲートアーチが見えました。

「まだ誰もゴールしてないようね。トップで抜けられるわ」

 

 ピリイイィィンッ! みたいな音が頭を走り抜けていきました。誰かに狙われているのを感じます。方向もわかります。後ろから。

「二人とも気をつけて!」

「え? なによ?」

「うひゃああああ!? ほよん危なーリボン!」

 影が降りました。わたしの真上になにかすごく重いものが落ちてこようとしています。考える前に飛びのきました。

 瞬きをする前にわたしがいた場所が黒いハンマーによって陥没していました。

「ほよ!? あ、あぶなっ!?」

 こんなの当たったらぺしゃんこになっちゃうよ。

 

 ハンマーの柄の先には、それを持っている女の子がいます。あのパンクロックなゴスロリワンピース姿は。

「ヤミミちゃん!?」

 なんでヤミミちゃんがふわプリに?

 ヤミミちゃんが持っているマイクの先に、おっきなハンマーが伸びています。黒い光で形づくられたような不思議な見た目をしているのは、ダークツインズさんが持っていた黒い剣に似ています。

「あれはふわプリバトルの武器リボン!」

「ヤミミちゃん、わたしたちもう友達でしょ。なんでこんなことするの」

「戦って!」

「え」

「私と戦えー!」

「ほよー!?」

 ブンブンと大きなハンマーを軽々振るいながら近づいてくヤミミちゃん。体にも闇のオーラを纏って、廃色の炎を燃やしています。

 絶対に普通じゃないです。ヤミミちゃんは何かが原因でいつものヤミミちゃんではなくなっているのかもしれないです。

 

 何度も追撃されます。「わあっ!?」「ほよぉっ!?」ハンマーが横に振られ縦に振り下ろされ、

どうにか退避していくと、いつの間にか森のなか深くです。

 ゴールが視界から途切れました。会場までの道からどんどん逸れて離れていっちゃいます。

「もうこんなんやだリボン!」

「トップで抜けられそうだったのに、酷い邪魔が入ったものね」

「それよりヤミミちゃん様子がおかしくないかな?」

「確かに前に会った時と明らかに違うリボン」

 目が血走ってて、すごく苦しそうです。

 

 

「さあ、エネルギーを回収しろ。僕たちの役に立て」

 闇の奥で暗躍の美青年が吐息交じりに呟く。

 

 

「私と戦ってー!」

「ほよ。戦わないよ」

 誰かが傷つくのは嫌だし、ヤミミちゃん苦しそうだし。

「いいえ受けて立つわ」

「くぅあちゃん……」

「私が勝つ!」

 くぅあちゃんが腰につけている氷の宝石のようなデッキケースに手をかけます。

「また以前のようにぶったおしてやるわ」

 むむ~……っ。

「相手が戦いを望んでいるのなら、負かしておとなしくさせるのよ」

 でも、ぶっ倒す、なんて。それでいいのかな。

 ふわプリバトルの影響で、二度とふわプリライブができなくなっちゃった人もいる……。

 エヘさんから聞いたことが頭をぐるぐるしています。

 わたし、こんな素早く動き回らなくちゃいけない状況なのに、すごくまごまごしちゃってる。

 

「なんでふわプリでこんなことばかり起こるリボン。りぼりぼりぼりぼりぼん」

 ティピファちゃんは頭を抱えて混乱しています。

 くぅあちゃんはデッキケースから青色のキラキラとしたカードを取り出しました。親指と人差し指と中指でかっこいい持ち方をしています。

 

 ヤミミちゃんが思い切りよく踏み込んできて、黒いハンマーがわたしたち三人をまとめて薙ぎ払うべく振りぬかれます。風を押し潰すように鉄塊が迫力満天に接近します。こわいです。感じる風がビュンビュンごうごうです。

 

「はあっ!」

 くぅあちゃんが、剣と渡り合えるほどの強度を出せるカードと、体を上手く回転させてハンマーの一振りを受け流しました。すごいです。

 

 でも、受け流された勢いを利用して、ヤミミちゃんはくぅあちゃんを無視してわたしに向かって突っ込んできました。

 

「まずはそこのツインテールからあ!」

「ヤミミちゃんもツインテールでしょ!」

「そう! だからあなたはツインテールをやめて!」

「この前いやだって言ったでしょー! わたしもツインテール好きなんだから!」

「ほよん戦いなさい!」

「それもいやー!」

「敵が目の前に来てるのよほよん!」

「ヤミミちゃんは敵じゃないもん!」

 真正面に黒い平面です。ハンマーの平たい部分が迫って。

 

 咄嗟にデッキケースを盾にできました。ハンマーの角とぶつかってギイイィィィと火花が散って拮抗してます。

 なんかヤミミちゃんの闇のオーラの背中側からスラスターみたいのが噴き出しています。スラスターって何だろう? とにかく噴き出しています。その勢いに巻き込まれてわたしの体も浮いたまま後ろに押し出されていっちゃってます。

 

 森の緑ばっかりだった視界が急に開けて、ふわプリ内の青い空が見えます。

「ほよん!?」

 くぅあちゃんとティピファちゃんのわたしを強く呼ぶ声が聞こえました。

 下には流れる川が見えます。

 そう、押し出されたその先は急な崖だったのです。

 重力のままにわたしは落ちてしまいます。ヤミミちゃんはスラスターで飛行しているから飛んだままです。

「ほよ~~!?」

「ほよ-ん!」

「あなたたちも!」

 わたしに手を伸ばして助けようとしてくれてる二人にもハンマーが振るわれました。

 

「一組ゴールしましたモコ。あと三組ですモコ」

 落下しながらそんなアナウンスを聞きました。

 

 

 三人で仲良く川に落とされてしまったわたしたちは、溺れているくぅあちゃんを二人で抱えながら泳いで、どうにか川の岸へと上がりました。

「げほげほっ」

 せっかく泥がなくなって綺麗になったばかりのコーデが、水でびちゃびちゃです。

 

「ごほごほっ……なぜ迷ったのよ?」

 くぅあちゃんが視線で問い詰めてきます。さっきまで溺れてたのに。

「だって……」

 

「ほよん、勝たなければ何もクールに為すことはできないわ」

「ふわプリは勝つとか負けるとかじゃなくて、みんな幸せになれる場所なんだよ」

「でも、今は競争性のあることをしているわ。というか競争そのものよ。そこに勝ち負けが発生してしまうのも事実だわ」

「それでも、みんながふわふわかわいい笑顔になれないのはいやだよ。ほよほよしないとふわプリじゃないんだよ」

「問答無用で襲ってきたのだし、一度勝ってわからせてから話を聞いた方がいい。でなければこうして崖の下に落ちるのよ」

「だとしても……」

 うつむく。それぞれ手首に付けたピンクと青と黄色のシュシュが目に映りました。みんなで選んだ、三人でお揃いの、仲良しの証。

 どうしてわたしとくぅあちゃんは言い合ってるんだろう。ほよほよしないよ……。

 顔を上げます。

「ティピファちゃんはどう思う」

「ティピファの頭脳は、どちらも正しいと導き出しているリボン。だからお互いの意見を混ぜて合わせて昇華(しょうか)するリボン」

 

「そうです。いいですよふわふわぱ~ふぇくと」

「わ、姫花さん」

 こんなところにもAIモコさんが降りてきて姫花さんの映像を届けてくれます。

「この間のダークツインズを思い出してください。それをふわプリ流にすればいいんですよ」

「なぜパラダイムハートがダークツインズを知ってるリボン?」

「あー……今それは重要じゃないからスルーしてくれると嬉しいな……」(シルフィーさん)

 一瞬三人で視線を交わして協議した結果、あとで追及することにしてスルーすることになりました。

「でも、ありがたいヒントリボン。いい感じにイメージが固まったリボン」

 ティピファちゃんが防水スマホを素早くポチポチとタップ乱打しています。

「頭脳で導き出したリボン。光に変換するリボン!」

「というと?」

「ふっふっふ。こういうことリボン」

 ティピファちゃんがいろいろ説明してくれました。

 

「くぅあちゃん。これなら納得してくれる?」

「オーケークールよ」

 手を差し出します。手を三人で重ねてシュシュも三つ触れ合わさりました。三人で仲良く楽しくほよほよしながらふわプリアイドルするんだよ。

 

「でも会得するのに時間がないよ。練習している間に他のみんなが大会始めちゃうよ」

「既存のできることを組み合わせるだけだから、ティピファたちならできるリボン」

 

「それじゃあ、元のコースに戻ろっかほよ」

「この崖を登ればいいわけね」

 切り立ったほぼ垂直な、結構高い崖を三人で見上げます。

 

「崖登り……なんだか別のやつみたいリボン」

「別のやつってなに?」

「なんでもないリボン」

 

 まず崖のでっぱりに手をかけます。体重移動とかいろいろ駆使して気合で登っていきます。

 根性を振り絞るために掛け声も欠かしません。

「ふわプリ! ふわプリ!」

「ふわプリ! ふわプリ!」

「ふわプリ! ふわプリ!」

「本当にこの掛け声を言ってしまってよかったのかリボン」

「なんで?」

「いやなんでもないリボン」

「ティピファ、それを言うなら今さらよ」

「確かにそうリボン」

「??? わからない話ばっかりしないでよ」

 ぷんぷんほよ。

 

「三ユニットまで会場に到着しました。残り枠はあと一ユニットのみです」

 急がないと。

 

 崖の上まで登りきると、大会会場までの道をゆきます。

「なにこれ……」

 何人もの参加者が倒れている光景が道中にありました。

「推測するに、ヤミミちゃんが無差別に襲い掛かったんだと思うリボン」

「だからまだ規定人数までゴールされていないわけね。言ってはなんだけれど、だからこそ私たちはまだ間に合う」

「早く止めないと。ふわプリでこんなこと、ダメだよ」

 

 黒いハンマーを引きずって、ヤミミちゃんが現れました。こちらに振り向きます。

 

「まだ生きてたの? ならまた地の獄まで叩き落してやるわ」

「ヤミミちゃん、もう苦しまなくていいんだよ。わたしたちが今助けるから」

「なにをいっているのかわからない」

 ヤミミちゃんが黒く光るハンマーを振りかざし襲い掛かってきます。

「ウォー! ウォー! ウォー! ウォー!」

 自分の歌を口ずさみながら武器をふるう。ふわプリバトルの形式です。

「ダダンズンダンダンッ! ダダンズンダンダンッ!」

 ヤミミちゃんの歌には、ヤミミちゃんのもやもやした気持ちが痛いほど詰まっているのを感じます。

 

「さあ見せてやりましょう」

「うん、ヤミミちゃん、これがふわプリアイドルだよ」

「地下ふわプリバトルのシステムを、ふわプリライブに変換するシステム、スイッチオンリボン」

 ティピファちゃんがスマホをタップしました。

 

 わたしたちふわふわぱ~ふぇくとの体が光のオーラを発し始めます。それは黄金のような。お日様のような色合いの光。

 

「なにそれ。目障りな光。消えて」

 振るわれるハンマーを光まとう手で逸らして、わたしは舞います。

「ほよっ! と来たらクールが一番、リボンがほどけておはようだ」

 ダークツインズさんがやっていた、今ヤミミちゃんがやってるふわプリバトルのやり方を、本家ふわプリ流に、人に夢と希望を与えるやり方にするのです。

「パリ パリ パリ パリ アイスブレイク」

 くぅあちゃんが光のマイクを何もないところからその手に握り、ヤミミちゃんのハンマーにマイクを当てました。黒いハンマーにひびが入ります。

「私の計算 頭脳で生産ブレイン混乱 それでもそれが最適解」

 わたしとティピファちゃんも光のマイクを手に握って、歌い、歩き、走ります。

 

 ヤミミちゃん、安心して。今このライブを観てるみんな、暖かい気持ちになってくれたらいいな。

 そんな思いが、ライブとまとう光に乗せられて広がります。

 

 もやもやとした、人を傷つける気持ちじゃない。人を元気にする気持ちを強く抱いて移動しながらするライブ。

「これが進化したふわプリライブ、ウォークダッシュライブ」

 歌いながら希望を振り撒きながらするライブバトル。

 

 ロロちゃんの笑顔を思い出します。そう、アイドルなら――。

 人を傷つけてはいけない。

 

「この手は相手を打ち負かす武器を握るためにあるんじゃない。キミを抱きしめるためにあるんだよ」

 くぅあちゃんとティピファちゃんのマイクが、ヤミミちゃんの光を黒く固めたようなハンマーと激突しました。ハンマーはひびから亀裂が大きく入り、粉々に。黒いマイクごと形を崩壊させて塵と消えていきます。

 わたしはそんな光景に飛び込んで、ヤミミちゃんに抱き着き、強く抱きしめるのです。

「なにを」

「ヤミミちゃん」

 ふわプリの光がヤミミちゃんの闇を晴らしていきます。黒いオーラが浄化されて消滅していくのを感じます。

「私はこんな安い光に救われたりしない」

「うん」

「私はエラーカードを使って地下ふわプリで頂点に立つ」

「そうするといいよ」

「……っ」

「何度でも抱きしめるから」

 

 黒いオーラはなくなって、今は穏やかな光だけがあります。

 

 他のふわプリアイドルユニットの女の子たちが会場まで走っていくのが視界の端に見えました。

「ほよん!」

「うん!」

 ほよ!

 抱きしめてるヤミミちゃんをそのままお姫様抱っこに移行させて走ります。

 サマートーナメントパラダイスに参加するには、残り一ユニットしかない枠に収まる他ないのです。

 

「あなたたちは!」

「ジャンケンポンロン!」

 以前、といってもほんの少し前に歌詞バトルをしたユニットの女の子たちがわたしたちの前を走っています。

「歌詞バトルでは負けたけどね、結局は会場まで先に着いた方が勝ちなのよ」

 ジャンケンポンロンのみなさんもコーデを完成させたようです。いい感じの色合いのハート柄のコーデがきちんと完成されています。素敵です。

「相手に不足なしね」

 これが、サマートーナメントパラダイス会場までの最後の競争。

 

 ヤミミちゃんをお姫様抱っこしたままだから走る速度はジャンケンポンロンの面々の方が上です。 どんどん引き離されていっちゃいます。

 でもヤミミちゃんをここで降ろすのも気分的に締まらないです。ヤミミちゃんに悪いです。

 それにヤミミちゃんをケガさせないようにゆっくり降ろしてからまた走る、なんてことに時間を割いていたら先にゴールされちゃいます。

 

「まだウォークダッシュライブの効果が残っているリボン」

「私たちの前には誰も行かせないわ」

 ティピファちゃんとくぅあちゃんがわたしの背を手で支えて押してくれます。

「この光のオーラが背中の方でエネルギーを発して推力を出して、スラスター(推進システム)となるリボン」

 とにかくふわプリの光を使って二人がわたしの速度を上げてくれています。

 ジャンケンポンロンを抜きました。

 会場のゲートアーチをくぐって、ゴールです。

 気の抜けた勢いのまま、四人でもつれるようにしてあおむけに寝転がりました。

 

「サマートーナメントパラダイスの選出メンバーが埋まりました。予選は終了です。一時間後にサマートーナメントパラダイスの本戦を開始しますので、観客のみなさんは安全なルートを走るふわプリバスに乗って会場へお越しくださいね」

 

「やったー! ほよ~~!」

「だらっしゃあやったったわよ!」

「どうにか予選突破リボン」

 

「あれ」

 また、デッキケースの中のカードが少し光っていました。

 今度は気がするとかじゃありません。ちゃんと光ってるとわかります。

 ピカピカっとカードが光を放っているのです。

 

 

 

 AIモコの、ふわプリコーデ紹介のコーナー☆

 

「今回紹介するのはこちら「即席水玉コーデ」モコ」

 

「その名の通りにふわふわぱ~ふぇくとが即席で作った水色のスカート、水玉模様のシャツ、レアコーデパーツの色可変式リボンからなるコーデですモコ」

 

「即席でありながらレアコーデパーツが使われていたりとそれなりに見れるコーデなんですモコ」

 

「以上、ふわプリコーデ紹介のコーナーでしたモコ~」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。