サマートーナメントパラダイスの会場へ一番に着いて、ふわふわぱ~ふぇくととヤミミちゃんの四人で地面に身を投げ出していたら、腰のデッキケースが光を放っているのに気がついたところです。
起き上がってデッキケースからカードを取り出すと、ピカッと光っていました。キラキラのピンク色のカードがピンク色の光を放っています。
くぅあちゃんとティピファちゃんのカードもそれぞれ青色だったり黄色だったりと光っているのがデッキケース越しにわかります。
「あ、消えちゃった」
光はすぐに静まって、うんともすんとも言わなくなってしまいました。
「今のは……」(くぅあちゃん)
「もしかしてティピファたちも強いふわプリアイドルに――」
「今はそれよりも、ヤミミちゃん」
ヤミミちゃんは朝起きたばかりのように眼をしょぼしょぼさせています。
「ヤミミちゃん、さっきのはどうなってたの?」
闇のオーラを出してハンマーブンブンしてきた状態のことです。
「どうなってたって、わかんない、私は家にいたと思うんだけど……というかここどこ」
「ふわプリだよ」
「え、ふわプリ!?」
ヤミミちゃんは両手で口を押えました。
「うっぷ」
「具合悪いの?」
ヤミミちゃんの背をさすります。
「私、ふわプリアレルギーなの」
「なんで!? ふわプリはいいところだよ!?」
「ほよん、人には好みがあるリボン」
「そうだね……吐き気まで催されちゃったからちょっと気が動転しちゃったよ」
「私はもう帰るね……」
ヤミミちゃんは立ち上がって背を向けます。
「せめて、大会の終わりまで見ていくことは――」
「無理……さよなら」
諦めきれなくて立ち去っていく背中に叫びます。
「スマホで配信もやってるからー!」
「それじゃあ、行くわよ」
「うん!」
振り返ると、おっきなおっきなドームがありました。
白い雲がかぶさったコロッセオのような。ポップコーンが溢れてる円筒形の入れ物のような、炭酸の泡が膨れ上がってるような、そんな見た目の建物です。
「そう、ここがサマートーナメントパラダイスの会場、ふわふわドームですモコ」
「アーチをくぐるまでこんな大きな建物なのに見えなかったリボン。見えないようになっていたリボン?」
「ここまで辿りついて初めてわかるサプライズってことね」
「パラダイムハートの粋な計らいですモコ」
ふわふわドームの中に入ると、廊下の先からエヘさんがやってきました。
「よくやったエヘ。危なっかしすぎてハラハラし通しだったエヘが、ちゃんとふわプリアイドルとして成長してるみたいで安心したエヘ。いや危なっかしいのは安心できないエヘ。エヘがまだまだ監督しなきゃならんエヘ」
腕を組んでうんうんと頷くエヘさん。
「なんか偉そうね」
「エヘはマネージャーエヘ。当然エヘ」
「そんなことより、エラーカードとかいろいろ調査してるのはどうなったの」
「そんなこととは何だエヘ」
「ヤミミちゃんが大変だったんだから、もうあんまり待ってられないよ」
「調査は、まあ大体終わってるエヘ……」
「そうなの? ならもう解決?」
「あとは待つだけエヘ」
よくわからないけど、待つだけなら待ちます。
サマートーナメントパラダイス開始まで休むために、待合室に向かいます。
待合室までの廊下に、自動販売機とベンチがある休憩所を通りかかると、壁の上部に取り付けられたディスプレイにトーナメント表が映っていました。
大会最初の対戦相手は。
「フラワーアルタイル?」
「知らない名前ね。ぽっと出キャラに私たちの道は阻めないわ」
「あら、もう勝ったつもりですの? それならあなたたちの道はここで途切れますわね」
「なにっ?」(くぅあちゃん)
振り返ると、女の子が三人。
真ん中にいるのは、瞳の中に星が瞬くようにきらめいた、シイタケみたいな目の女の子です。
ひしひしとカリスマ感を漂わせています。
「アンシリウス・スターパークですわ」
そんなアンちゃんの髪色は……何色だろう? 濃いベージュみたいな薄い茶色みたいな……なんともいえないけどアンちゃんの髪は綺麗です。
「赤白橡色ですわ」
「これがアカシロツルバミ色……」
アンちゃんの左右にいる二人は、どちらもふんわりぽわぽわぼんやりした雰囲気です。悪い意味じゃなくて、ふわふわかわいい感じです。
「
「
ひまわりちゃんは茶髪ロングでひらひらワンピース。お胸が小さめで元気ポヤポヤな感じです。
サクラちゃんは黒髪ロングで、髪がとても長いです。桜色と水色が合わさった服を盛り上げる胸が大きくて、ボンキュッボンな体をしています。おっとりポヤポヤな感じです。
そこではたと、わたしは気づきました。
「――ちょっと待って、この人たち、強いっ!」
シャランッ……。という音が鳴っている感覚とともに三人の後ろからオーラが湧きだしました。
「今さら気づきましたの?」
ただのオーラじゃないです。花が咲き誇り
「わたしたちの花のふわプリ力に気づかないなんて、その程度では勝ち進めませんわよ」
「くっ……」(くぅあちゃん)
「先を見るのはいいことですが、先しか見えていないのなら、今目の前にいるわたしという花のスターを見るのですわ」
「シリちゃんはすごいんだよー! 舐めないでよねー!」
「私たちを、ちゃんと見てくださいね~」
ひまわりちゃんとサクラちゃんがふんわり体を傾けながら言います。
「でなければわたしたちに轢かれますわよ」
廊下の向こうに去っていくフラワーアルタイルさんたち。
「確かに、のぼせ上がってたかもしれないわね」
「いや調子こいたセリフ言ってたのはくぅあだけリボン」
「でもわたしたちはツッコまなかった」
「……確かにリボン」
「とにかく。このままじゃ勝利も危ういわ。フラワーアルタイルに向き合って真剣に勝負しましょう」
とりあえず到着したアイドル控室にて。
「ほよ~! どうしようどうしよう。今のままじゃ勝てる気しないよ」
今の対戦相手と真剣に向き合うとは決まりましたが、大会開始まであと一時間もないのです。
そんな短時間でできる強敵への対策は限られています。
でも中途半端な気持ちのまま、あんなに強そうなフラワーアルタイルに太刀打ちするのはとても厳しいです。
このままでは敗北の気配濃厚です。
「どうしましょう」
そう言いながらくぅあちゃんはクールなポーズをとっています。
ティピファちゃんは、泥沼を渡る前に置いてきた(AIモコさんが届けてくれた)ノートパソコンをカタカタとやっています。
わーわーわちゃわちゃドタバタジタバタと三人でてんやわんやです。
「そうだ。わたしたちの新しいライブ法、ウォークダッシュライブなら」
「あれは、ふわプリの理を破壊する闇に対して有効なのであって、まっとうなふわプリアイドルには通用しないリボン」
「なら新しいふわふわ劇場をつくるのは」
「それだ!」(ティピファちゃん)
どう作ろうとなった時、以前ふわふわ劇場を作った時にイメージが大事だったことを思い出し、とにかくライブ動画を見漁ってイメージのとっかかりを掴もうということになりました。
「ほよ、ももももトゥインクルのこのコーデ、ピンクの色合いが素敵!」
「ギザギザパッションズのパッション、クールでいいわね」
「ジャンケンポンロンのこの動き、中々考えられてるリボン」
――――。
「で、もうサマートーナメントパラダイス始まる時間エヘが、新しいふわふわ劇場は完成しそうエヘ?」
「「「いや全然」」」
わずかな猶予数十分が、ライブ動画を見漁って素敵素敵言ってたら終わっていました。
「ほよ~!?」
ティピファちゃんはキーボードをカタカタどころかガダガダやってノートパソコンを爆発させてしまいました。
くぅあちゃんはクールなポーズをとっています。
わたしたちは何もできないまま無為に時間を使ってしまいました。
時間がないよドタバタドンガラと大慌て大騒ぎです。
「もう潔く誠実に今の力で向き合うしかないよ。覚悟を決めよう」
今のわたしたちで全力ぶつかるしかないのです。
「そうリボンね。今からできることは、結局他にないリボン。勝とうが負けようが」
「いえ、勝つのよ。いつも通りにやって、そして勝つのよ」
ステージ上のパラダイムハートにみんな注目しています。開会の言葉をいっぱいの観客が聞き入ります。
「それでは、サマートーナメントパラダイス本戦開始です」
パラダイムハートが静かに壇上を下りて、わたしたちは舞台袖でドキドキしながらフラワーアルタイルのライブを待ちました。
「フラワースターコーデ」
「宇宙色の、星が瞬くようなコーデですモコ」
「っフィー☆彡」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
両手を広げて優雅に花開くようなポーズ。
「フラワーコメットコーデ・アイン」
「ひまわり色のひらひらしたコーデですモコ」
「ぽやっ」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
「フラワーコメットコーデ・ツヴァイ」
「桜色のひらひらしたコーデですモコ」
「ぽやぽやっっ」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)
ポーズというより、二人はゆっくり回り続けます。
小さな惑星がいくつも浮かんでいるステージに三人は立ちました。
~♪
曲名「超ド級プラネット
「わたしたちの 花の世界 咲き乱れ舞え
このワールドに芽生える蕾が 星に願いを送り届けて
キラキラキラキラ しいたけ☆
格の花を大きく咲き誇らせて わたしたちは一つ伸び立つ」
ふわふわ劇場 オープン!
「乱れ咲け」
ふわふわ、楽しそうにジャンプしていきます。何度もリズミカルに踊るように。
「ひらぽわなわたしたちの」
ジャンプする度に、着地した地点から花がいっぱい芽生え咲き乱れます。
「フラワープラネット!」
やがて一つの星全土に、花が咲き誇りました。
「ぽわぽわぽわぽわ プラネット☆
ふわふわふわふわ 信条☆
ひらひらと花が降り落ちれば フラワースパイラル☆彡
そう私たちは 花っ☆」