ふわプリ   作:ソウブ

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2話 大ピンチ!? くぅあちゃんライブできない!

 

 

 

 わたしがライブした後、わたパレスのエントランスでくぅあちゃんと合流したよ。

 

「ねえねえくぅあちゃん、わたしのライブちゃんと見てくれた?」

「ええ、素敵だったわ。私もライブすれば、ふわプリで望んだクールが得られるかもしれないと思えたわ」

「よかった! なら今すぐライブしよう!」

「でも、改めて考えてみたら、ほだされるままにライブしてしまうのはクールではないのではないかしら?」

「ずこー! 今ライブする流れだったよ!? なんで?」

「もっとクールな感じで自分から進む感じでいきたいわ」

「めんどくさいよ~」

 

「今日は帰るわね。もっとクールな雰囲気になったらいつかライブするかもしれないわ」

「いつかっていつ?」

「わからないわ。一日か、一か月か、一年か」

「そんなこと言ってるうちにおばあちゃんになっちゃうよ!」

「さすがにそんなにはかからないわ」

「ねーライブしようよー。ライブすればくぅあちゃんがなりたいクールなアイドルになれるよ?」

「せかされても、ダメよ」

 

 む~! こんなにつれないくぅあちゃんだけど、わたし諦めないよ。

 絶対にライブしたいって思わせてみせるんだから!

 でも、どうしたらライブしたいってなってくれるかな。

 

 クールになれるってことはわかってくれたみたいだし、でもくぅあちゃんが言うにはもっとクールな感じで自分から進む感じでいきたいって……う~ん、わかんない!

 

「なんでもいいからライブしようよー。絶対に楽しいからー」

「ノー、よ。バイバイ。また会うかもしれないわね」

 くぅあちゃんはスタスタとふわプリの外に向かって歩いて行っちゃう。

「待ってよー」

 こうなったらせめて普段どこにいるかでも聞いておこう。誘いやすくなるし。

 

「学校どこ?」

「わたあめ学園の小等部よ」

「わたしと同じ学校だった! それに小学生だったの!? わたしもだよ、何年生?」

「五年生よ」

「これまた同じだった! すごい偶然だね!」

「ふわプリから一番近い学校がわたあめ学園だからそうでもないわ」

「今まで会ったことないのはずっと別のクラスだったからかな?」

「多分そうよ。今私は1組よ」

「わたしは2組だよ!」

 

 よしっ。これでいつでもくぅあちゃんと会えるよ。ふわプリに誘う機会はこれから幾らでもあるね。

 

 くぅあちゃんと一緒にふわプリを出ると、わたしの姿は中学生ぐらいのお姉さんから小学生の元の姿に戻っちゃった。くぅあちゃんもわたしと同じぐらいの背丈だったよ。

 

「ほよんってふわプリの外だとこんなにちんちくりんだったのね」

「くぅあちゃんもそう変わらないでしょー!」

 

 そのままくぅあちゃんと一緒にふわふわショップを出て、森林公園をおしゃべりしながら抜けた先の交差点をさらにちょっと進んだ分かれ道でばいばいしました。

 

「ばいばーい! また明日ね」

「また明日も会うつもりなのね。まあいいけれど」

 

 

 次の日、わたあめ学園で会ったくぅあちゃんはとてもげんなりした表情をしていました。

「どうしたの?」

 机に着いているくぅあちゃんの正面に回って、くぅあちゃんの机に両手で頬杖をついて、くぅあちゃんの顔を覗き込んでみる。

「0点のテスト答案がママに見つかってしまったのよ」

「0点!? 0点って、ありえるの?」

 小学校のテストで。

「ありえるわよ。現にこうして証拠があるわ」

 0点の答案を堂々と掲げるくぅあちゃん。それ持ち歩いてるんだ。

「ドヤ顔で言ってもなんかかっこ悪いよ」

「ならほよんは勉強できるのかしら。私はこの通りのざまだけれど」

「わたしだって勉強できるほうじゃないけど」

「ほよんは最近のテストで何点取ったの?」

「40点だけど……」

「たっっか。点数たっっっか。天才かしら?」

「わたしここまでテストの点数で褒められたの初めてだよ。わたし実は勉強できるのかなって思えてきちゃう」

 

「ということでママにもう0点を取ってしまうことがないように勉強しなさいといわれて、他のことをしようものならママに烈火のごとく怒られてしまう状況よ」

「そっか……なら無理にふわプリへ誘えないね」

 

「いいえ、だからこそ今とてもふわプリでライブしたい気分だわ」

「ええ~? くぅあちゃん言ってることコロコロ変わりすぎだよ」

「できないってなると、とてもとてもしたくなるのよ」

「わかるけど~、くぅあちゃん天邪鬼だよ~」

「でも今は勉強頑張るわね。そうしたらライブするわ」

「えらい! わたしも手伝うよ」

「放課後私の家にきて。勉強会しましょう」

「しようしようっ」

 

 というわけで、ランドセルを背負いながら一緒に下校してくぅあちゃんの家にやってきました。

 くぅあちゃんのお(うち)は、まっ四角です。

「モダン建築ってやつらしいわ、ママが言うにわね」

「そうなんだ! モダンってどういう意味?」

「現代って意味らしいわ」

「現代……ならわたしのお家は古いのかな。そのうちみんな四角い家に住むことになるの?」

「そうでもないわ。モダン建築は合理性しか重視していないもの。クールな飾りは必要よ」

「たしかに! ほよっ」

 

 くぅあちゃんに連れられて入ると、白い髪が長くて綺麗な女の人が出てきました。くぅあちゃんのお姉さんかな?

 

「おかえりなさい。あらお友達? 珍しいわね。いらっしゃい」

「スタイルがすごくいい……」

「私のママはクールでしょう? モデルをやっているのよ」

「ママだったんだ。ほへ~、じゃなくてほよ~」

 

 階段を上ってすぐの扉を開けて通されたのはくぅあちゃんの部屋です。

 水色のベッドに白い机、全体的に水色で涼しい雰囲気の内装です。くぅあちゃんのイメージに合っててふわふわかわいいね。

 白い四つ足のテーブルにくぅあちゃんと向かい合って座ったよ。

「それじゃあ勉強始めるわよ」

 宿題のプリントや教科書を広げたところでくぅあちゃんのママがお盆を持って入ってきました。

 

「甘いもの食べて頭回らせながら勉強するといいわよ」

 そう言ってくぅあちゃんのママが置いていったのは、バニラアイスにコーヒー? がかかったみたいな見たことないデザートでした。

「アフォガートっていうのよ。基本的にはエスプレッソっていう一番苦いコーヒーを甘いアイスにかけたもののことをいうらしいわ」

 スプーンですくって食べてみました。

「ほよ~♪ 甘いのと苦いのが混ざっておいしい~」

「ふふ、クールなスイーツでしょう?」

「うんっ」

 

 とりあえず数口アフォガートを食べた後、勉強に移ることにしたよ。残りは勉強しながら逐一パクパクしていきます。

「くぅあちゃんはどこの問題がわからないの?」

「全部。と言いたいところだけど、まずは掛け算ね」

「掛け算!?」

「0点を取る私を舐めない方がいいわ」

「掛け算割と難しいもんね。七の段とか」

「さすがに一の段ぐらいは言えるわよ」

「じゃあ、二の段からいってみよう。いくよ? 2×1が?」

「2よ」

「2×2が?」

「8、いや6……いや……」

「あ……」

 長くなりそうだな、と思っちゃった。

「ほよんは何の段まで言えるのかしら?」

「6の段までならスラスラ言えるよ」

「……遥か高みね」

「そう? えへへ~」

 あれ。わたし勉強できるんだっけ、できないんだっけ。

 わかんなくなっちゃった。ほよよ。

 

 何日かあとにテストが始まって、くぅあちゃんは10点、わたしは40点を取りました。

 

「ぼへ~……」

 教室でくぅあちゃんの机に集まってぐで~っと力を抜きました。

「くっ……どういうこと。ちゃんと勉強したのに」

「あんなに算数頑張ったのに……」

「そもそも以前0点を取ったのは国語のテストだったわ」

「ほよ~~!!」

 そうだった。わたしも勉強できない子だった。

 

 勉強ができない二人だけで頑張っても、当然いい点なんて取れるわけないんだ。

 誰か先生とか、勉強ができる友達とかに教えてもらいながらじゃないと、できるようにならないのかな。

 

「でも、一度頑張ったのが徒労に終わると、やる気がバーナーに炙られたアイスのように溶けていくわね」

「それは、ほよっと同じ気持ちだよ……」

「やっぱりふわプリに行けないとなると、なんとしてでも行きたくなるわね……。

 このまま帰って勉強せずにふわプリに直行してしまおうかしら」

「ほよ!? そ、それは、いいのかな? とっても悪いことな気がするよ。あとでママにもすっごく怒られると思うよ?」

「だとしても、ごーとぅーざへる――よ」

「なんとなくだけど、その英語ちょっと使い方違う気がするよ」

「とにかく行くわよ」

「うぅ~、せっかくふわプリに行く気になってくれたんだし、わかったよ! ほよっ!」

 

 わたしたちは点数が低いテストの答案をランドセルの奥に突っ込んで、それを背負って学校を出ました。

 

 しばらく歩いた後、いつもの帰り道から外れて、緑がいっぱいの並木道を進みます。

「夏休み最後の日にやってない宿題を放って遊びに行くみたいなドキドキがあるよ」

「夏休みの宿題なんてちゃんと提出できたことないわよ」

「ほよ~……くぅあちゃんはたくましいね」

 

 

「くぅあ? 今日テストだったでしょう? どこいくの?」

 くぅあちゃんのママが突然木の影からモデル歩きで登場してきました。

「ひえっ……!?」

 くぅあちゃんが怯えた声を出して立ち止まっちゃいました。

「どうしてママがここに……? 今日はモデルのお仕事をしているはず」

「その情報はダミーよ。私は今日お休み。くぅあを油断させるために嘘をついてしまったけれど、案の定勉強を放り出したわね」

「くっ……謀ったわね。ずっと監視していたの?」

「そうよ」

「私を捕まえて何をさせようっていうの」

「勉強よ。流石に0点はくぅあの将来が暗闇になってしまうわ」

 

「逃げるわよほよん!」

「ほよ!?」

 くぅあちゃんに手を引っ張られて横道に走っていきます。なぜかわたしの足浮いてるよ。くぅあちゃんに凧揚げされてるみたいに。くぅあちゃんの「ふぃじかる」がそれだけ凄いんだ。

「待ちなさい」くぅあちゃんのママが全力疾走で追いかけてきます。こわい。

 

「なんでわたしまで追いかけられてるの!?」

「一蓮なんとかってやつよ」

「一蓮托生! それぐらい覚えなさいくぅあ」

「いやなこったわ」

 

 くぅあちゃんのママは、なんか途中から普通に走ってません。通る地面が凍って、滑って追いかけて来ています。

 

「私のママはクールでしょう?」

「クール!? なんか違うと思う!」

 確かに動きはダンスみたいに優雅でクールだけど。

「くぅあ、観念しなさい」

「ほよ~! 追いつかれる~!」

「くっ」

 くぅあちゃんママの手が、もう、すぐ後ろにまで迫ってるよー!

 地面を滑る大人になんてかなわないよー!

 

「ほよん、二手に分かれましょう」

「ええ!?」

「一緒に追いかけられてはいるけれど、結局ママが捕まえたいのは私だけよ」

「それはそうだろうけど」

「ほよんは先にふわプリに行ってて、あとで合流しましょう」

「一人だけ捕まっちゃうよ」

「一人の方が狭い場所に素早く入っていけたりして有利よ」

「大丈夫なの?」

「もーまんたいよ」

 

 くぅあちゃんに押されるままに、わたしだけ左の道へ転びそうになりながら進みました。「わったっと……」くぅあちゃんとそのママは一直線にわたしの後ろを通って行っちゃった。

 すぐに二人が走ったり滑ったりする音は小さくなって聞こえなくなります。

 わたしは立ち尽くしてしまいます。

 

「ほよ~」

 本当にこのままふわプリに行っちゃっていいのかな。

 

 

「ふっ、余裕余裕、よ」

 塀に空いた小さな穴をくぐり、人波をくぐり、狭い所を通れないママを引き離していく。

 ふわプリに繋がる森林公園まであっという間に着いたわ。

「もうふわプリは目の前ね」

 ほよんはもう中で待ってる頃かしら。

 

「くぅあ」

「ひえっ……」

 ママがふわふわショップの前で仁王立ちしているわっ……!

「ここから先は通行止めよ」

「先回り、していたの……!?

「私も昔はふわプリによく通ったものよ。道は良く知っているわ」

「ぬかったわ……」

 負け、ね。ここからママを突破する手はない。

 私はふわプリに辿り着けないのだわ。

 私に残されている道は、勉強だけが支配する日々という、BADEND、なのよ。

 ほよん、ふわプリはあなた一人で楽しみなさい。

 

「ともだちはぁあああ! 見捨てない!!!」

「え?」

「ほよおおおおおおおおおお!!!!」

 

 ふわふわショップ前の茂みからわたしは飛び出して、くぅあちゃんママに後ろから抱きつきました。

「ほよん!?」

「わたしはいいから、くぅあちゃんはこの隙にふわプリに入って!」

「それだとあなたの命が!」

「私は怪物かなにかなの?」

「早く~! このままだと二人とも捕まっちゃうよ~!」

「くっ、骨は宝物にして飾ってあげるわ」

「毎日スイーツお供えしてね!」

 くぅあちゃんはふわふわショップの自動扉の中に体を滑り込ませていきました。

 

 柔らかな風が吹きつけて静かな時間が漂います。くぅあちゃんママはため息を一つ吐きました。

「いいわ。ほよんちゃんも行ってらっしゃい」

 くぅあちゃんママはわたしの抱きつき攻撃を優しくほどいてくれたよ。

「ほよ、いいんですか?」

「くぅあには、一度このままライブをやらせてみるわ。あの子も今のままでは本当のクールにはなれないと気づくでしょう」

 よくわからないけどくぅあちゃんがライブすることは許してくれたみたい。

 色々あったけどなんとかなったようで良かった良かったよ。ほよ~。

 

 

 私はふわふわショップに入って、ふわプリに続くゲートを通り、ぷろろ~ぐ広場を通って進んだ先のふわパレスに入った。

 

「そういえば、ライブをするにはマネージャーが必要だったわね」

「ライブするならエヘに任せるエヘ」

 金色の王冠を被った白いマスコットが耳ざとく近寄ってきた。

「エヘイエー」

「後々のことを考えてくぅあもエヘがマネージャーになっといた方がいいと思うエヘ」

「よくわからないけど、マネージャーをやってくれるならなんでもいいわ」

「これがくぅあのデッキケースだエヘ。大事にするエヘ」

 長方形の氷の宝石みたいなケースを受け取る。

「デザインがクールでとてもいいわ」

 氷のような質感の青色が気に入ったわよ。大切にするわ。

 

 奥の扉をくぐると、狭い不思議な空間に出る。

 

「ふわふわポイントにデッキケースとコーデカードをセットしてくださいモコ」

 

 デッキケースからふわプリカードを四枚取り出す。

「ふっ、決めてあげるわ、クールに」

 ふわふわポイントにデッキケースとふわプリカードをセットしていく。

 

 目の前から光が広がり、服が一旦消えて新しいコーデが私の体にサイズぴったりに纏われる。

 

「ブランドは涼やかなクールスタイルが特色の「グラースドール」モコ。ショートパンツスタイルの青色チェック柄の中には氷の結晶が描かれていて、くぅあさんの雰囲気にバッチリ似合っていますモコ。腰に黒いマントのようなもの(腰布)がついていてクールさも際立っていますモコ」

 

 くるくるっと回って。

 

「スタイリッシュふわアイスコーデ!」

 

 決めポーズ。顔に右手をかざす。

 

「ふっ」シュパーンッ。(光の粒が飛び散るサウンドエフェクト)

 

 着地したときには、ライブステージの真ん中に立っていた。雪が降り氷柱が張り付き氷の結晶が回る私だけ(固有)のイメージが表されてるステージ。

 

「さあ! またまた新しいふわプリアイドルの誕生ですよ! 祝いましょう! 氷原くぅあさんのライブが始まります! みなさん刮目してくださいね!」

 

 鎧の人がほよんのときと同じように私を讃えているわ。

 

「かっこいいー!」

「期待してるー!」

 観客の声が私の気分を押し上げるわ。

 

「クールクーラークーテスト!」

 私のライブの始まりよ。

 

 ~♪

 

「クールを 目指せ

 クール クーラー クーテスト

 私の求める氷のかっこう

 ダサい真似などした日には 氷結が溶けるわ」

 

 あ……。

 気づいてしまった。

 自然と湧いて来た自分の歌詞に気づかされた。

 私は、今すごくダサいわ。

 全然クールじゃない。

 

「中止よ」

 

「「「「え?」」」」

 

 ほよんもエヘイエーも鎧の人も観客も、会場にいる全員がポカーンと止まったわ。

 

「ほよん! 今日は帰るわよ!」

 ライブステージから飛び降りてほよんの手を取り、ふわプリの外に出る。

「ええ!? ライブの途中だよ!?」

「中途半端なものを見せるぐらいなら中断するわ。こんなものをデビューライブにしたくないのよ」

「ほよ……くぅあちゃんがそう言うなら」

 

 ふわプリを出て、ふわふわショップから出ると、ママがいた。

「くぅあ、どう? ちゃんとライブできたかしら?」

「できなかったわ。ママもわかっていたんでしょう?」

「そうよ」

「勉強ができるできないが問題じゃない。逃げ出して放り出して、全然クールじゃない状態でライブしたから、ふわプリのサポートがあっても本当のクールになり切れなかったんだわ」

「そうよ。だから、ちゃんとママが教えてあげるから勉強しに帰るわよ」

 

「ほよん、またね」

「またねくぅあちゃん、頑張ってっ」

 ほよんが笑顔でガッツポーズをして激励してくれたわ。

 

 ママに連れられて帰り道を私は歩く。

「くっ……この私が、勉強をしなければならないというの……?」

 本当に嫌だわ。

 勉強なんて嫌いよ。大嫌いよ。

 

 でも、やらなければならないのね。

 

 くっ。

 ぐっ……。

 

 はあ~~~。

 

 

 つづく

 

 

 

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