ふわプリ   作:ソウブ

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6話 憧れだよ! パラダイムハート!(2/3)

 

 

 

 ティピファは今日もふわプリのライブデビューをどう飾ろうか考えながら、ふわプリへ向かっているリボン。

 もっと体力を鍛えてから、もっとふわふわ劇場のイメージを練ってから、いや、もっと盤石に固めてから――。

 ふわプリのある森林公園に着いて、並木道を歩く。 

 すると道の真ん中に、リス? がいるリボン。珍しい。街中ではそうそう見ない動物リボン。

 クルミをかじる姿がキュートリボン。ほんの僅かだけ気分が晴れるような気分リボン。

 静かに近づいてみて、しゃがんで至近距離から眺めてみる。

「……」

「危なーい!」

「へばりぼっ!?」頭への衝撃の後、べちゃっと頬が地面にたたきつけられる感覚。

 な、なん、なにリボン!? 頭に何かぶつかったリボン!

 振り向くとボールがポンポンとバウンドしているのが見えた。

「ごめんなさーい!」

 小さな女の子が謝りながらボールを持ち上げて走り去っていったリボン。

 まったく。

 

「そこの子」

 振り向くと、木の間から走り寄ってくる女の子がいた。さっきとは違う女の子だ。エメラルド色の、長いおさげのような二つ結びの髪を跳ねさせながら、エメラルド色のパーカーを着ていて、白いスカートと白いニーハイで健康的な絶対領域を作り出している女の子が。

 どこかで見たことあるような見た目リボン。どこだっけ。

「ワタシのお友達を助けてくれてありがとう……」

「友達? 何のことリボン?」

「そこのリスさんのことだよ」

 このリス、この子のペットだったのかリボン。リスはクルミを口にくわえながら女の子に駆け寄り体をよじ登って肩に座り、再度クルミをガジガジ齧り出した。

「助けたって、偶然近くにいてボールにぶつかっただけリボン……」

「それでも、アナタがいたからワタシの友達が助かったことに変わりはないから」

 確かにティピファがいなかったらリスにぶつかってたかもしれないけど。

「だから、ありがとう……」

「はぁ、どうもリボン」

 あ、思い出したリボン。この、静かでとても顔がいい感じ、パラダイムハートの三人の一人、森林シルフィーさんリボン。

 

 そうだ、森林シルフィーさんにふわプリのライブやふわふわ劇場について詳しくご教授してもらえれば、今日にでも――。

 今日にでも。

 今日にでも……。

 

「そんなに、怖がらなくていいんだよ」

 急に森林さんがそんなことを優しく微笑みながら言ってきた。

「な、なんのことリボン?」

「ふわプリはとっても優しいところだから」

「い、言ってることがわからないリボン。失礼するリボン……っ」

 なぜか心臓がバクバク鼓動するけど、とにかく森林さんの言葉をこれ以上聞きたくない。

 踵を返して早足でこの場を去る。

「あっ」

 去ろうとしたけれど、何もないのに躓いて転んでしまった。

 地面に叩きつけられる前に、手を握られ体を支えられて、くるりと回る。

 森林さんに助けられたままダンスをするように。

 というか、そのまま森林さんはティピファを巻き込んでダンスをし始めた。

 森林さんの動きが、ティピファにダンスの心得がなくても自然に一緒に踊らせている。

 静かな柔らかい笑顔で自分と踊る森林さんが妖精みたいに魅力的で、思わず身を任せてしまう。

 

「リボンちゃん……」

「ティピファはリボンじゃなくて、ティピファリボン」

「ややこしいよ。リボンちゃんって呼んじゃダメ? リボンに埋もれてるし、かわいいと思うんだけど」

「……いいけどリボン」

「やった。それでねリボンちゃん、ふわプリのライブはね、やりたい気持ちさえあれば絶対にできちゃうんだよ」

「ティピファが臆病だって言いたいリボン……?」

「そうじゃないけど、怖がってるように見えたから」

「怖がってるって、そこまでじゃないリボン」

「失敗しちゃうのが嫌なんだよね」

「よ、余計なお世話リボン」

「そっか。ごめんね」

 困ったように笑って森林さんはそれ以上何も言わなかった。

 ティピファは天才なんだリボン。臆病になる必要がないくらい頭がいいのだから、ティピファは臆病ではないのだリボン。

 でも、突っぱねちゃった森林さんに対して罪悪感が滲んでいくリボン……。

「なら、ワタシのお友達たちとたわむれよう」

「え?」

 いったいどこに隠れていたのか、新たにリスが、フェレットが、犬が、猫が、小熊が、狸が、文鳥が、インコが、カナリアが寄り集まってきて踊り始めた。びっくりした、というよりちょっと怖いリボン。

「ひょわ!?」

 フェレットがティピファの体を上ってきて首に巻きついてくる。ふわふわもふもふな感触が首と頬に伝わる。これもふわふわかわいいの一つリボン?

 

 

 

 私は今日もクールにライブするため、ふわプリに向かうわ。

「?」

 すると町の一角に人だかりができている。珍しいわね。

 私よりも目立つものがあるのかしら。反骨心が湧き上がってくるわ。

 自然と足は人だかりの中心めがけて動いていた。この目で確かめてやるわ。

「な!?」

 人だかりの中心、私の目に飛び込んできたのは一人の女の子。

 水色の髪をツーサイドアップにして、太ももが全部見えてしまっているのではないかと思える超ミニスカートに、右側の裾を縛ったへそ出しルック、いたずらっぽい笑みがセクシーな女の子。

「なにあの人のクール力は!?」

 パリーンと私の目元の氷製スカウターが割れたわ。

 あのセクシーお姉さん? 女の子? 私より少し上ぐらいかしら、たぶん中学生くらい、は、私が現時点で負けを認めざるを得ないほどのド外れたクール力を有している。

 老若男女関係なく魅了している光景は、やばいほどのクール力だわ。

 肌をさらしまくっているノーガードな出で立ちは、自信の表れでしょうね。

 それに、ただ色気を振りまいているというだけではないわ。

 対応が神がかっている。

 みんな笑顔で話して帰っていく。満足して、厄介ファンにならず、彼女の魅力に惹かれていながら変に執着していない証拠だわ。

 とにかくあの人と話してみたいわ。つかず離れずで様子をうかがいながら待ちましょう。

 

「…………」

 

 人がはけてきた。突貫するわ。いくわよ。はいよーっ。一歩踏み出す。どんどん踏み出す。目の前に水色の髪の少女。

「たのもー!」

「え?」キョトンとした顔で私の方へ振り返る。

「魅了の魔女さんちょっとお時間頂けないかしら?」

「たはは。魅了の魔女って。なにそれぇ?」

「あなたのクール力はすさまじいわ。いろいろとご教授をお願いできませんか?」

「会話成立してるぅ?」

「とにかくしばらく、そばにいさせてもらえないかしら?」

「なんだか愛の告白みたいだねぇ」

「あなたのクール力に惚れ込んだという意味でならそうね」

「クールぅ? う~ん」

 なにその顔は。困ったような、なにかわかってるような。なんとも言えない顔は。私変なこと言ったかしら。言ってないと思うけれど。

「まぁ、ついてきてもいいよぉ」

「っしゃ! ありがとう。迷惑をかけるわ」

「そういえば名前まだ言ってなかったねぇ。西条(さいじょう)スイだよぉ。あなたの名前はぁ?」

「氷原くぅあよ。よろしく頼むわ」

 

「それじゃぁ行こうかぁ」

「どこへいくの?」

「人と触れ合いながらゆっくりふわプリに行こうと思ってたけどぉ、くぅあちゃんもいるしこのまま真っすぐ行こうかなぁ」

「私も元々ふわプリに向かっていたの。目的地は一緒だったのね。西条さんもふわプリアイドルなの?」

「スイでいいよぉ。スイは割と結構有名なふわプリアイドルだと思っていたけど、くぅあちゃんみたいに知らない子もいるんだねぇ。もっと精進しないとぉ」

 

 とにかく質問してみるわ。

 

「それで、スイはなぜそれほどのクールさを身につけられたの?」

「クールっていうかぁ、う~ん、ひみつぅ」

「いきなり秘奥は教えないということね」

「ちょっと違うけどぉ、そうだねぇ」

 これ以上何か訊いても答えてくれるかわからないわね。

 次は観察してみましょう。

 

 ……やっぱり露出が多いわね。

 それでいて下品ではない。セクシー。そしてクールよ。

 私も同じ格好をしてみれば何かわかるかしら。

 ペロッと自分の服をおへその上あたりまでめくってみる。

「なにしてるのかなぁ」

 スイに迅速華麗な動きで服を下ろされた。

「周りに人もいるのに、そんなことしちゃだめだよぉ」

「スイもしてるじゃない」

「スイのはへそ出しルック。最初からそういうファッションなの。普通に服着てる状態からめくっちゃうのとは違うのぉ」

「どう違うのよ?」

「う~んぅ、ちょっと危ない色気が出ちゃうんだよねぇ」

「それってクールではないかしら?」

「違うよぉ」

 それならスカートを短くしてみても同じかしら、そもそも私が履いているのはショートパンツだし。

 かっこうを真似るのは無意味みたいね。

 クールの先への道は険しいわ。

 

 それはそうと、スイがどこまでクールを保てるかも気になるわ。

 動揺を誘ってみましょう。

 

 スイの正面に移動して反復横跳びを始めるわ。

「なんかまた不思議なことし始めたねぇ」

 さあ、どうでる?

 ……。

 ……。

 スイはしばらく、何も言わずにいたずらっぽく目を細めて微笑みながら、私を眺めるだけだった。

 私はその間反復横跳びをし続けなければならない。

「いつまで続けられるかなぁ」

 っ!? スイを試すつもりが、私の方が試されている!?

 やってくれるわね。ならこれはどうかしら。

 

 スイの周囲をぐるぐると走り回るわ。私がドーナツだとしたらその穴にスイがいる状態よ。

 くるくる回転。体は回転させない。スイの周りというトラックをただ全力で疾走する。

 

 だが私は、ひょいと、あっさりスイに捕まえられて抱きすくめられた。後ろから抱きすくめられている。

 

「な!? 今まで運動方面で私が負けたことなんてないのに」

 華麗に対処されてしまった。

 この人、やはりできる!

 敬意の噴水が湧き上がって止まらないわ。

 

「スイ以外にはこういうこと絶対にしないほうがいいよぉ?」

「する人は何となく選んでるから心配いらないわ」

「めっちゃ心配ぃ」

 

「そろそろ放してくれないかしら」

「う~んぅ」

 なんか放してくれないわ。

 

「やっぱりいうけどさぁ」

 首をひねって後ろを見上げると、困ったような、けれど楽しそうでもある笑みをスイはしていた。

「くぅあちゃんが目指してる場所は、スイとは違うと思うんだよねぇ」

 そう、かしら?

 

 

 

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