7日後、彼女は死ぬ。死にたくなかったと呟いて 作:ラスコーリニコフ
ふと、意識が明滅するようにして浮かびあがってくる。
視界はいつまでたってもぼやけたままで、声もうまく出てくれない。曇りガラスの向こうで、カートが手を握りながら何事が言っているのが見えて。
……ああ、これが最後なんだとわかった。
「リリ!リリ!」
聞こえてはいるんだ。ちゃんと聞こえているんだけれど、返事ができないだけなんだ。握られた手から、君の体温を感じることもできる。愛を感じることもできる。ただ、私からうまく伝えられないのが、すごくもどかしい。
「……カー…………ト…………」
「…………‼……ああ、そうだよ。僕だよ、リリ」
「……ごめ…………ん………」
ごめん、カート。先に死んでしまってごめん。君を置いていってしまってごめん。君に、もっと幸せを返せなくてごめん。君に重荷を背負わせてごめん。君を悲しませて、ごめん。
「そんなことない‼……そんなことないよ、リリ。君が僕を幸せにしてくれたんだ。君のおかげで僕は生きようって思えたんだ」
「あ…………りが…………とう…………」
ありがとう、カート。私を見つけてくれてありがとう。私を救ってくれてありがとう。私を幸せにしてくれてありがとう。私を、愛してくれて、ありがとう。
「それは……僕の方が…………‼」
ぽたぽたと、頬に熱いものが滴り落ちる。この熱さを、熱を、もう感じられないと思うと寂しい。でも、君がこうやって私のために泣いてくれて、すごく嬉しいんだ。どれほど私を想ってくれているのか伝わってくるようで、すごく。君は悲しんで泣いているのに、ごめん。でも、ありがとう。
そろそろ、限界が近い。意識が再び沈み込もうとするのを感じる。たぶん、もう浮かび上がることはない。永遠の暗闇が、すぐそこに迫っている。
だから、最期にこれだけは言いたかった。
「…………あい……して…………る………………」
愛してる。君のことをいつまでも、死んでも愛してる。
「……っ、僕も愛してる‼君のことをずっと、これから一生死ぬまで、死んでも愛し続ける‼」
……君の、せめて良い悔いを残すという人生哲学。私は、たぶん悪い悔いとやらは残さずに済んだのだと思う。ちゃんと君に想いを伝えられた。君のお嫁さんになれた。君に愛していると言えた。君にたくさんの愛をもらえた。
けれども、やっぱり君は正解だ。カートと、どこか遠くに旅行にいきたい。君と一緒に、料理をしてみたい。君と二人で、家でのんびりと過ごしたい。君と、もっと触れていたい。君と、もっと話していたい。もう一度、君の体温を感じたい。
君と、もっとずっと一緒にいたい。
嫌だな。後悔ばかりだな。悔いがたくさん残っている。まだまだやりたいことがたくさんあって、欲しいものもたくさんあって。
まだ、カートと別れたくない。もう少しだけでいいから、一緒にいたい。嫌だよ、こんなところでお別れなんて。やっと一緒になれたのに。やっと、やっと…………
死にたく、なかったな……………………
これでおしまい