トワイライト・エネルゲイア   作:サムラビ

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寮区画にて

「さて、ちょい早めでも許してくれそうな感じではあったな。依頼なんだけど、これはもう普通に中原の存在が必須だから、よろしく頼む」

 

「どのような内容ですか?」

 

 必須と言われても、今の声色ではふざけているようにしか聞こえない。

 

 個人的には既に家と認識するまでに馴染んだ寮区画は、四方を森で囲まれている以外は高級住宅地のような整備が行き届いた空間となっている。

 

 区画は学年毎に大きく三つのエリアに分かれており、メインポータルからしばらく歩くと右が一年、左が三年、そのまま進めば二年の寮へ繋がっている。学年は便宜上色分けされており、一年が青、二年が緑、三年が赤で、来年度の新入生は現三年と入れ替わって赤学年となる。

 

 寮は一学年で九棟あり、一つの建物に30人弱が住んでいる計算になるだろう。私は二人部屋とされる空間を一人で使用しているが、広さ自体は四人で生活しても成立するように感じられる。

 

 加えて、浴室は一か所だが、トイレは各々で二か所設置されており、共有のリビング、キッチンに加えて一人二部屋も与えられているため、実家が富豪でなければ文句は出ないだろう。他の感想としては、各寮一階の食堂の料金が平日昼の時間帯だと倍になる点は、理にかなっているように思えた。

 

「現象としては登校渋りだ。一年女子、オリエンテーションと次の日は日程をこなしてるけど、三日目以降は今日まで全欠、このまま長期欠席が続くと不登校になる」

 

「……」

 

 先の二名はある程度、というより十分充実した高校生活をスタートさせているように見える。しかし、むしろ彼女のような例が一般的なのかもしれない。望んだ進路が得られていた所、突然エネルゲイアが覚醒し、価値観の変容を余儀なくされ、先輩が言うように、この学園に軟禁された。そのような人も一定数いるだろう。

 

「本人は問題ないって言うけど、後輩女子の一人部屋に野郎が単独で行くのはマズい。具体的にはレイカが黙ってない」

 

「本質的なマズい点はそこではないと思いますが、心中はお察しします。つまり話を聞いて、登校を促すのが依頼内容ですね」

 

 聞いた限り、間違いなく自分には向かない依頼であると考えられる。加えて、この軟禁状態にネガティブな感覚がない私では、心からの共感もしにくいように思える。

 

「詳しい内容は直接話を聞くって形だから、登校を促すかどうかはまだわからないな」

 

「……話を聞いた結果、このまま登校しなくてもよい、という結論もあり得るということでしょうか?」

 

 それだと、先程考えていたポイントの枯渇に繋がってしまうのではなかろうか。

 

「ある、とは思う。実際不登校はいるし。けど、ひきニートは本人的にも望まないだろうから、登校NGなら、オンライン授業も含めて、何かしらで充実した学園生活をしてもらう、ってとこが目指す着地点だな」

 

「なるほど」

 

 ただ、それは簡単なことではないだろう。

 

 望まない形ではあっても現環境を与えられ、前を向けずに自身の殻に閉じこもるのであれば、きっと積極的に取り組みたいものがなく、そうであるならば今日までの成功体験も少なく、そんな自分に失望してしまう。

 

 一度そうなれば、人はなかなか変われないし、変わりたいとも思わない。祖父の言葉だ。

 

「へぇ、青寮結構変わったなぁ。青モチーフにハズレは無さそうだけど、俺はこっちの方が好きかもしれん。あ、知ってる? 毎週金曜におでん、土曜にラーメンの屋台出るの」

 

 つまり、毎年寮は建て替えられるということか。確かに、宛がわれた部屋は以前に誰かが住んでいたとは思えなかった。だがしかし、そんなことはどうでもよく。

 

「いえ、詳しく聞かせて下さい」

 

 ラーメンはあまり食さないが、おでんの屋台には惹かれるものがある。

 

 教えてもらった屋台の出現位置をマップアプリに記録していると、目的地であるF棟の手前、E棟が見えてくる。

 

「うーん、中原。あれって何やってんの? もしかして、麦わら帽子に続くトレンド?」

 

「麦わら帽子を現在のトレンドだと認識しているなら掛ける言葉もありませんが、あれとやらについては、私にも何をやっているのかはわかりません」

 

 E棟の入口、男子学生が二人、顔に見覚えはないがおそらく一年、二人は金属バットを手に繰り返しE棟の壁を打ちつけるも、手応え無くバットは押し戻されている。

 

「……話には聞いていましたが、建物に使われている素材も、地球由来の物ではないと考えていいんですか?」

 

 あれだけ何度もバットと接触しているのに、一見コンクリートに準ずる何かにしか見えない壁からは、衝撃音が全くしない。

 

「細かいことは知らんけど、この星であんな感じの素材が手に入ったら大ニュースだろうな」

「確か、寮区画で破壊、殺傷等を行うと、ガーディアンが出現すると表記されていたのですが」

 

 オリエンテーションの際、配布されたスマートフォンに入っていた大量の文書データ、その一部を思い出す。

 

「あれを何回やっても破損には繋がらないから、破壊行為には該当しないな」

「その、ガーディアンというのは、どのようなものなのですか?」

 

 寮区画内でも、その疑問に関する話題は耳にしたが、今の所その出現は目撃されていない。

 

「えっ? 書いてある通り、名目上は寮内で争うとのんびりできないでしょってことでの治安維持システムだけど。いや、まぁグラフィック的には西洋風で、鎧に伸縮性の高い手が生えてて頭はアメフトみたいなヘルメット、ショックハンマーっていうスタンガンの上位互換みたいなのを二刀流してる感じ。で、浮遊してて下半身はない」

 

「……」

 

 つまり、ゲームの敵キャラクターに近い風貌だと考えられる。

 

「けど、破壊、殺傷を行えるような輩にとっては全く以て抑止力にならないからな。無限湧きがウザい位で、ちょっと組織的に動かれたら全然対処できちゃうレベル。だから、実質的な治安維持は、学生会が行ってるっていうのが現状だな」

 

「……なるほど」

 

 その話から、上級生には多くの実力者がいるということがわかる。

 

「まだ多少時間はある、か。野球部がないことに絶望した球児が抑えらぬ感情を壁にぶつけているとも取れるが、周囲の人間から見たら誤解されかねない絵面とも言える」

 

 そもそも、先輩のその解釈が誤解であることは明白だが、そう言葉を返す前に、件の男子学生二人は私達の接近に気付き、明らかに狼狽している。

 

「おぉっと……中原、入学して一月も経たずに同級生を怯えさせるような武勇を積んだのか? まぁナメられるよりは全然いいと思うけど」

 

「特に自覚はありませんが、オリエンテーションでの先輩を見ている新入生が恐怖を抱くことについては、十分考えられるかと」

 

「ほぅ、じゃあ、確かめてみようか。長引きそうになったら退散したい所だけど、真面目な話、彼ら二人の学園生活が充実しているようには見えないから、由々しき話ではあるか」

 

 本来なら通り過ぎる進路であった所、面舵を切った先輩は彼らに正対して歩みを進める。すると、壁への攻撃を止めていた男子二人は、こちらに対して竹刀を構えるようにバットを向け、交戦の意思を向ける。ただ、その表情は一様に硬い。

 

「えっと、オリエンテーションで少し話をしたんだけど、覚えてる?」

 

 軽薄に声を掛ける。

 

 先輩としては友好的な態度を示したつもりかもしれないが、二人は明確に狼狽を深めている。

 

「ふ、副会長と、中原サヤ……何で一緒に……」

 

 少なくとも、自分の名前が学年に知れ渡っている可能性については、そろそろ観念するべきかもしれない。

 

 ともあれ、麦わら帽子に指定ジャージ、伸ばされた姿勢を二人分見た後だからか、私服姿の二人は学業に対して不真面目に取り組んできたような印象を受けてしまう。

 

「キミっ! そう、そこの茶髪のキミだっ!」

「っ!」

 

 突然の指名に、戸惑う茶髪の彼。

 

 一瞬、唐突に金井先輩のモノマネが始まったのかと思ったが、あの暑苦しさはそう簡単に再現できるものではない。

 

「今、彼女の名前を口にしたね? 通常なら、同級生の女の子が近付いてきただけで、そんな表情にはならない。彼女はキミに、何かしたのかな?」

 

「……」

 

 あの男の反応速度は常軌を逸している。どうにか不意を突ける機会はないか。状況は捨て置き、それだけに注力する。

 

「あ……いえ、ち、違うっ! そ、そいつは、やべぇ奴らと……つるんでたんだ……でけぇ木を軽々と手で切ったり、触れてもいねぇのに……引っこ抜いたり……」

 

「なるほど。中原、意外と積極的に交流する方なんだな」

 

「……いえ、私が先輩に手合わせを願った際、それに続いた人から後で声を掛けられ、少し話をしただけです。それで先日、エネルゲイアについて考察したいという人がいて、周囲の木々は他者に迷惑をかけない限りは自由にしてよいという注釈があったので」

 

 私のエネルゲイアは過剰に隠すメリットは薄く、同様の考えの人と話す中で、色々と試したいという流れになった。彼が言っているのはその時の事だと思われる。

 

「懐かしい……今じゃ手持ちバーナーだけど、最初はBBQする時に使った……はいいとして、確かにあの中には猛者感を出してる人もいたな。今度時間が合う時に紹介してもらってもいい?」

 

「構いませんが、今の所、その人達は全員、学生会に入る気はないようです」

 

「大丈夫だ、長期計画で攻めていくから。で、ごめん。あんまり関わりたくないみたいだから、止めておくけど、一応一つだけアドバイス」

 

「「…………」」

 

 一度言葉を切った先輩に対し、二人からの敵意に変化は見られなかったが、アドバイスとやらを遮ることはしない様子。加えて、絶対に学生会へ勧誘すると予想していたので、忠告だけとするのは意外ではあった。

 

「金属バットは持ち込めないし、まだ区画的に買えないから、それはエネルゲイアで出したで確定。金属を出す、好きな物を出す……そういうのじゃなくて、普通に金属バットを出すっていうエネルゲイア。で、それで殴るが最大攻撃手段なら、そういう悪目立ちする行為は控えた方がいい。ヤバめな上級生に見られたら秒で殺されるから」

 

「「――っ!」」

 

 最後のワンフレーズにより、二人の敵意は恐怖に塗り替わる。正直、それについては私も同感だった。そもそも、未だにその行動の意図がわからない。

 

「とは言っても、庶務全体に共有はしとくか……」

 

「あ、あのっ! お、俺ら、どうしたらいいんすかっ? こんな、ゴミみてぇなエネルゲイアで……無理ゲーっつぅか……爆死した俺らは、どうすりゃ……」

 

 もう一人、同じ髪色でもやや暗めの人が、何かに縋るように声を荒げる。

 

「……」

 

 無理ゲー、爆死というのはおそらく、自身に宿ったエネルゲイアの能力が著しく望まぬ性質のそれであったことを言っているのであろう。

 

 実際、エネルゲイアの能力はそもそも優劣を競うような体系を持っておらず、性質は唯一無二であり、その法則が結果として残酷なまでの格差を生んでいる。持つ者の価値観で、エネルゲイアの意味は変わる。そう説明してくれた稀崎先輩にも、理不尽を憂う様子が見られた。

 

「どう、って……逆に誰から見ても強力なエネルゲイアを得て苦しむ例もあるからなぁ……ちなみに、キミの能力は金属バットを生み出す? もうちょい細かく聞いてもいい? その、助けになれるかもしれない」

 

 ストレートな質問だが、確かに彼らは自身の持つエネルゲイアに明確な劣等感を抱いていると見える。なので、教えることを渋る気持ちは薄いかもしれない。

 

「はい……一日に一本、三日で消える。それだけっす……」

 

「だけって……まだいいぜ……俺なんて最悪も最悪……食った飯の献立と時間を遡って思い出せる……何の役に立つんだよっ! ふざけんなっ!」

 

 明るい方の人も、不平等感は同じ様子。つまり彼は数年前の今日の昼食を即答できるということだろうか。とても質問できる雰囲気ではないが、砂粒一つ程度の好奇心はあった。

 

「へぇ……じゃあ、キミ、十年前の今日の朝飯とか思い出せんの?」

「……」

 

 もしや、これが稀崎先輩の指摘していた波長の重なりなのだろうか。もちろん、まだまだ判断材料としては乏しい。

 

「…………マーガリンを付けたトースト一枚と目玉焼き一つ、掛けたのはケチャップ。後はピーナッツを7粒」

 

「凄げぇ……」「凄い……」

 

 想定以上の細やかさに、つい声が漏れてしまった。加えて、口をついた感想も重なってしまったことは、痛恨の極みだった。

 

「っ……凄くなんか、ねぇだろ……何に使えんだよこんなのっ!」

 

 凄いという思いは消えないが、有用性についてはその通りかもしれない。

 

「えっと、無念さは多少なりともわかった。でも、何で寮の壁を?」

 

 やっと根本の質問に辿り着く。

 

 少しずつ適応できてきたように感じられるが、先輩は脱線しながらでないと会話が進められない性質を持っているようだ。後日稀崎先輩と小林先輩、レイカさんにも確認してみようと思う。

 

「あ、申し訳ないっす……全部、訳わかんなくて、むしゃくしゃしてて、偶然バットがこの壁に当たったら、あり得ねぇぐらい手応えが柔らかくて、殴ってみたら、押し返されて……なのに手は全然痛まなくて……何か、この寮にまで馬鹿にされてるように思えて……」

 

「……」

 

 話を聞いても、十全な共感は困難だった。そう感じる人もいるのだろうと思うのが自分には限界なようだ。

 

「た、太刀川、先輩だよなっ? アンタは、全部わかってんだろ? 俺みたいな、何の意味もねぇエネルゲイアになる確率は、どんぐらいのもんなんだっ?」

 

「おっと、新入生からの質問ランキングベスト20に入るヤツが来たな。一応データがあって、ただ凄い能力の定義とキミで言うゴミ能力の定義が固められないから諸説って前提なんだけど、マジで戦闘向きが三割、その中の1%未満が星を滅ぼすレベル、で工夫すれば戦闘も可が三割、同様に1%未満が星を滅ぼす何某、残りの四割が非戦闘型、その半分が、有用性が認められないっていう統計になってる」

 

 これはつまり、戦闘に特化、もしくは工夫により戦闘に活かせるという時点で、一定の有用性が認められるということだろう。

 

「……俺ら二人は、下位20%ってことっすね……俺だって最悪だ……」

「常識的で、真面目だな……いや、待て。若き者達よ……」

 

「「っ?」」

 

 思わせぶりな言葉に、二人の動きが止まる。ただ私には、また悪ふざけを始めようとしているようにしか見えなかったが。

 

「まず、問おう。トイレットペーパーに触れる。それがシングルならダブルに、ダブルならシングルにそれぞれ変容させることができる。但し、変容させると長さが半分になってしまうという代償も抱える。さて、このエネルゲイアは有用だろうか? 答えるがいい」

 

 即答で有用ではないと考えられた。加えて、自分はシングル、ダブルにこだわりはない。

 

「ほ、他に……使い道は……俺の金属バットと同じ、トイレットペーパーに限定される……下手したら、俺らのエネルゲイアより、ゴミかもっす……」

 

「同じだ。ゴミは、ゴミだ」

 

「うん、一般的有用性は低いな。でも、歴代の残念能力ランキングはもっとエグい顔ぶれらしい。所で、要は、とりあえず喧嘩が強くなりたいってことでいいんだよね?」

 

「でっ? あ……べ、別に、そういう訳じゃ……いや、そういう話、なんすかね……」

 

 私はそういう話ではないと思う。というよりも、この場に対する関心はもう薄い。依頼の時間は平気なのか、それが少し気になった。

 

「いやいや、手で大木を切ったり、触れずに引っこ抜いたりできなくても現代社会では全く困らんし、文句も言われない。できても別に重機でやればよくね? って話だ。ガチャ爆死したけどリセマラ不可なクソゲーなのは事実でも、別にゲーム参加は強制じゃないし、むしろエネルゲイアなんて無視してやりたいことやろうっていうのが二、三年は半分だぞ」

 

 先程も似た話を聞いたが、そう考えると、確かに彼らの劣等感の根源は持つ暴力の弱さに起因しているとも取れる。

 

「そんな中でも、やっぱり超能力を手に入れたんだから漫画やゲームみたいに無双したいって思う層は一定水準存在するのが現状だ。つまり困った時、その困りに至ったのは自分が世界初、なんてことは今時ほとんどない。で、ここからが助けになれるかもしれない、の本題だ。この学園には修行部っていう部活がある。中原は知ってる?」

 

「……いえ、知りません」

 

 シュギョウと言えば、鍛錬の意味での修行だと思われるが、スマートフォンのファイルにあった主要な部活動の中にも、そのような部の記載はなかった。加えて、部としてその言葉を当てるのはインパクトがあるため、もしあれば記憶に残っているだろうと思われる。

 

「実は、あんまり大々的にしちゃうと、トラブルが起きちゃうから、必要に応じた開示って方針になってて、二、三年でも全く関わりのない人は、多分知らないんじゃないかな。で、入部には二つの条件がある」

 

 おそらく、その条件とやらが理由で、一般に載せないということだろうか。

 

「一つは、エネルゲイア練度向上による身体能力の強化を学園生活での第一目的とすること。これが結構厳しくて、途中で退部させられる例もある。一応退部の際は学生会も間に入るから、双方にとって悪い今後にならないよう努力はしてる」

 

 これはつまり、所謂ガチ勢のみが在籍を許されるという意味だろう。

 

「もう一つについては、キミ達二人は明らかに満たしてる。エネルゲイアの性質に明確な有用性がないこと。こっちの方はまだ柔軟かな。何より、一つ目の条件を満たせてれば後は部長さんが気に入ればってイメージだし、モチベがあれば誰も文句は言わない」

 

「修行部……」

 

 エネルゲイアの性質に満足できず、それでも尚暴力の向上を諦めなかった学生の集団。正直、興味は惹かれる。

 

「部長さんは三年で、ちょっと随伴で昨年度末から学園の外へ出てるから、今は二年の副部長が仕切ってるんだけど、その部長さんは、単純な近接格闘なら学園内でトップ……まぁ三十位には入る、かな、多分。まぁシンプルに小細工なしで強い」

 

「先輩、つまりその方のエネルゲイアが?」

 

「そう。さっき言ったトイレットペーパーの能力は修行部部長、天王寺先輩のものだ。それこそ、一年の時のあだ名は便所紙野郎とか、寺の便所虫とかだったらしいから、マジで努力の人だと思う。まぁ…………変わってるけど」

 

「……」

 

 その炎上確定のあだ名よりも、先輩の口から出た『変わってる』という表現の方に、危険な何かが感じられた。

 

「入部させてくれっ! 頼むっ!」

「お、俺もっ! お願いしますっ!」

 

「おぉ、即決の場合は、俺から推薦できることになってるから、体験入部は確定だな。細かい話は……ちょっと今から行かなきゃならんトコがあって、夜にメッセ送るから、ID交換させてもらってよい?」

 

 ゆくゆくは学生会に引き込むつもりだと予想されるが、そうとは知らず、彼らは既に金属バットを放り出して先輩とID交換をしている。

 

「……」

 

 ただ、彼ら二人のエネルゲイアについては、練度向上の方法もそうだが、向上によってどのような効果を得られるのだろう。金属バットを出せる数、消えるまでの日数延長、献立の内容だけでなく、カロリーやその他の成分までわかったりするのだろうか。ただ、仮説を立てた時点で全く興味は湧かない。

 

 連絡先を交換後、先輩が今回の件も含め、他者の迷惑となる行為がこの学園で持つ意味と、授業を受けることによるポイントの重要性についてそれぞれ説くと、二人は素直に学園区画の方へと向かって行った。

 

 思えば、当初彼らがこちらへ向ける視線から想像していたのとは、随分と違う着地点に至ったものだ。それについてはただ単に、彼らが話せる手合いであったというだけのことではあるのだが。

 

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