「――まさかこんなことになるとはなぁ……昨日寝る時は、遠足前日みたいなテンションだったのに……外部委託、クーデター、しかも水曜日、月一の連絡会まで被ってもう数え役満じゃねぇかよ……リゥが高級スイーツ食ってると思うと絶、萎える……」
「……」
相変わらずの緊張感の無さ。
マイクロバスを見送ると、先輩は門を超えた所にバイクを置き、以降は駆け足で学園を目指している。まだ走り出して数分だが、もうまもなく学園区画に辿り着けると思われる。
「先輩、クーデターというのはこの場合、何を目的として行われているのですか?」
首謀者は同じ一年生という意味で、質問自体はおかしなものなのかもしれないが、個人的な意見としては、何がしたいのかよくわからないのが正直な感想だった。
「学生会の占拠と、学園の秘密を暴くことがレギュラーかな。実際の所は、言い出しっぺの一年生の人に聞かないとわからん」
「学園の秘密……それは、地下にある大きな扉が関係しているものでしょうか?」
真っ先に思いついたのは金井先輩がいた空間で見た光景。ゲームで言えば異界へ繋がる門として描かれていても、遜色ないデザインとスケールなのは確かだろう。
「正解。ただ、学生会に入って色々とヤバいことに首を突っ込んでいけば自然に知る流れなんだけど、まぁそんなことは知ったこっちゃないだろうし、問答無用で軟禁されて文句も言わずに全員が三年間過ごすのも、クーデターを起こすのと同じ位不自然だろっていうのが一般見解」
「……話としては、尤もかもしれませんね」
現状、自分が積極的に交流している人物は稀崎先輩、レイカさんを筆頭に上級生に集中しており、一年生は、ルームメイトの佐藤さんに限られる。それ以外は、顔を合わせれば少し会話を交わす程度が最大であり、同学年の学生達がこの学園にどのような不満を持っていたのかは見通せないし、耳に入ってこなくても不思議ではないと考えられる。
「一つ覚悟しておいた方がいいのは、既に死亡者は出てる。まぁでも、佐藤さんはバリバリの非戦闘員だし、可能性は限りなく低いと思う。着いたら、無事を確かめるといい」
「はい」
午前中の件でも感じられたが、先輩は間違いなく人の死に慣れている。そうでなくても、危機的状況での冷静さは、通常の同年代とは比べるまでもない。加えて、このような表現を思い浮かべることなどあり得ないと、一か月前なら思っていたが、先輩は一年の間に無数の死線を潜り抜けてきたのだろう。
自分自身、佐藤さんの安否について想起することで、心臓が激しく撥ねる感覚に、走りながら肝を冷やしていた。
「っ……どうやら、学園区画に入ったみたいですね」
必要ないことだが、これでまた申請とやらが通らなければ、学園の外へ出ることは叶わないらしい。
「学生会館は無事だな。既に結構なドンパチが済んだ後らしい。無抵抗の学生に被害が及んでないといいんだけど、そこは先導した奴らを信じるしかないな……」
「扇動、とはどういうことですか?」
扇動なのか先導なのかよくわからなかったが、所謂裏で糸を引いている人物がいるということだろうか。
「まぁそこら辺は必要に応じて追々。おっ、さすがマコト」
「――シンっ!」
「っ……」
学生会館の裏手、駐車スペースまで100メートルを切った辺りだろうか。3階の窓を開けた稀崎先輩は既にこちらに気付いている。
「中原、ちょっと抱える」
「――っ!」
言葉を返す暇もなく浮遊感を受け、やや驚くが、横合いから先輩に抱えられたようだ。
「え……」
そして、気付くと先輩は私を抱えたまま坂道を駆け上がるように空中を走り抜け、数秒も掛からずに3階の窓から建物内へ入る。
「……」
妙な丁寧さで降ろされた所で、それが稀崎先輩のエネルゲイアによるものだったと気付く。
「マコト、教職員の避難は?」
「先程、全て完了した。杉浦教官には会ったのかい?」
「うん。それで、人的被害の方は?」
「初期段階で激しく抵抗した一年生が数十人、ほとんどは無力化に留められたが、仕掛けた学生の中にも、数人はいるだろう。怪我人の多くは、既に総合病院区画に運ばれている。学生会は、常室君が……」
「……わかった。ちょっと会長室の様子を確認して、色々準備してくる」
「了解した」
「あ、太刀川君? もう戻ってたんだ、よかった……」
奥にいた小林先輩も、こちらに気付いて走ってくる。
「ちょっと上行ってくる。情報まとめ頼む」
小林先輩とすれ違いに、先輩は4階へ続く階段に姿を消す。
「わかった」
「…………」
先輩の言った通り、既に死傷者は出ていた。
常室先輩。非常に声の渋い、独特の口調で話すのが印象的だった。長く会話をした記憶はなく、学生会の中でも、誰かと一緒にいるのを見たことはなかった。
心臓が、早鐘を打ち出している。
「っ……」
スマートフォンを取り出すと、佐藤さんからの発信だった。
「はい」
『あっ、やっと繋がった……良かったぁ……サヤちゃんは、無事なんだよね?』
毎日耳にする柔らかな声に、温かい安堵が広がる。
「はい。先程まで、少し先輩と学園を離れていましたが、今戻ってきた所です」
『あ、だから……あれ? 学園の外でも、スマホって繋がるよね?』
「何か電波障害を引き起こすものが使用されているようで、ただ、学園内なら問題なく通信できるとのことです。佐藤さんは、今何処にいますか?」
『そうなんだ。えっと、私は学生会の人に送ってもらって、もう寮の部屋なの。サヤちゃんは、やっぱり、まだ帰らない?』
「……はい。先輩の指示に従う形になると思います。とにかく、佐藤さんが無事で何よりです」
『うん……ご飯、作っておくから、気を付けてね……』
「はい、ありがとうございます。では————」
通話を終え、スマートフォンを戻す。彼女に心配を掛けることは忍びないが、その安全が確保されたならば、学園内に後顧の憂いはもうない。
「どうやら、佐藤さんの無事は確認済みだね」
「はい、ありがとうございます。あの、レイカさん――っ」
着地の衝撃と靴音に振り返ると、巨大なライフルを肩に抱えたレイカさんの姿。私達と同じく、窓から入ってきたようだ。
「っし……あ、えっ? あれ? サヤ? もしかして、あのバカもう帰ってきてる?」
「あぁ、今準備も兼ねて、会長室へ行っている所だよ」
「な…………」
持っていたライフルを落とし、レイカさんは何故か崩れるように膝を着く。
「――姐さんっ! 機械がぶっ飛ぶとこ、しっかり目に焼き付けましたよっ! 凄っげぇ一撃でしたっ! お、中原? ってことは、太刀川先輩も戻ったのか?」
「はい、先程」
興奮気味に走ってきたのは同じ学生会一年の柿沼君。馴染んでいるという表現が適切なのかは断言できないが、今も積極的に学生会庶務として活動しているようだ。
「よっし、んじゃとっとと行動開始だな。小林、状況の説明を————って、レイカ、どうした? 対物ライフルを床に置いとくのは、マズいんじゃないか?」
「……」
平常運転な精神状態で4階から戻ってきた先輩の姿に、自分の心も平坦なものへ戻っていくような感覚を得る。どうやら、心臓の鼓動も治まったようだ。
「おー先輩っ! さっき姐さんが――」
「――何でもう帰ってきてんのよっ! ダラダラ昼飯食って帰ってくるのがアンタじゃないのっ! もしかして偽物?」
柿沼君を突き飛ばして立ち上がり、レイカさんは先輩に怒りをぶつけるが、私にはその状況は呑み込めない。
「いやいやいや、寄り道なんかする訳ないだろ。放課後の小学生だって、一回家に帰ってからコンビニに行くもんだぞ」
「…………」
対物ライフルとやらを手にしたレイカさんは、ゆっくりとその銃口を先輩へ向ける。
「ちょいちょいちょいっそんなの人に向けちゃダメでしょっ! っていうか何でタイムアタック並に急いで帰ってきたのにキレられてんだよっ! とにかく落ち着け」
「アタシがどんだけ苦労してジャマーぶち抜いたと思ってんのよっ! 気持ちの悪い障壁が何重にも施してあって大破させるのに8発も撃ったのよ。8発よっ! 非殺傷弾と麻酔弾も含めて後で全額請求してやるから……」
全てを理解するにはまだ時間を要するかと思われるが、柿沼君の興奮も含めて察するに、所謂ドラマがあったのだろう。
「オーケィわかった俺が悪かったし弾代も払う。俺らがここで揉めるとかマジ地獄だから、今は抑えて協力してくれ。んで……よし、面子は揃ってるな。柿沼が頭を打って軽く気絶しているが、まぁいいだろう。庶務小林、現状報告を」
先輩に促され、各々がカフェスペースのテーブルを囲んで座る。柿沼君が放置されているが、彼の扱いとしては日常の範囲内なため、気に留めないでおく。
「はい。見ての通り、クーデターです。首謀者の学生は未だわからず。戦闘の開始は三時間目開始まもなくの午前十一時、場所は三号館で、10分で事実上の制圧、教職員と、関わりたくない学生の避難は概ねスムーズ。避難の際、李先生が一人戦闘不能にしてくれたみたい」
「やっぱ手ぇ出してんのかよ……」
「……」
生身の人間がエネルゲイア保持者を倒した。これも時折先輩が口にする、人の世の奥床しさというものか。
「学生会と無関係の二、三年生は静観、一年生の中には全力で抵抗した人もいて、被害は36人、今は食堂のある二号館と四号館が一応の中立地帯になってます。一と五も制圧されて、敵はそこから能力で学生会館を攻撃。桐島さんの防衛射撃と常室君の能力で建物の損壊はほとんどなし。現在、外に出ている学生は無差別に襲われる状況で小康してます。敵の数は現在33名、把握できてる分の顔写真と名前、能力は共有フォルダに上げてるので後で見て下さい。太刀川君、会長の方は?」
「寝てるから普通に逆転制圧でいきます。こっちでもザっと見た所、膠着状態ということで、我々の戦闘面子は?」
「今日はレイカさんのみです。なので太刀川君、中原さんを加えて3名になります。非戦闘員としては庶務が12人、協力者5人で全員この建物の中にいます。あ、えーっと……言い忘れました。穂村ナギが協力していて、一年生の被害の半分は、彼女によるものです」
「あー、だよな。先約って……ごめん、こっちもすまん。今日のクーデター、予想できてた人は挙手」
先輩は一同を見渡すが、誰の手も動かない。
「はい、そこら辺は後で。斑鳩先輩は?」
「寮の自室で配信中。後、寮の方にも手が回ってて、監視されてるみたいだけど、そもそもそれを振り切ってこちらに協力するような人はいませんので考えなくて大丈夫です」
「総勢50人超えてる……結構集めたな……マジで一年仲いいじゃんって言いたい所だけど……操る系か……上手く準備したもんだ」
「間違いないと思う。明らかに目の色が違う人が何人もいて、学園や学生会を恨むにしても、この短期間じゃちょっと考えられない熱の入れ方ね」
「……」
この有事において、斑鳩先輩が自室で配信していることについて、誰も疑問を持たないようだ。私にはそれが疑問だった。
「わかってる範囲で、ナギ以外の相手の主力だったり、厄介な能力について、レイカから見てどう?」
「33人残ってるっていうけど、満足に動けるのは半分位かな。強力なのは、漢字を飛ばしてくる人……かな。他にもいただろうけど、今日はもう戦えないと思うわ」
「漢字? どんなやつ?」
「補足すると、各館を制圧したのもその能力だ。おそらく、墨汁によって書かなければならないようだが『弾』という字がその意味の通りに高速で襲ってくる。様々なルールがあると考えられるが、非常に小さな『弾』の字が、通常の銃火器とは比べ物にならない威力で襲ってくるイメージだね」
「何かもう、夜なべして準備した感が凄いな。じゃあ『死』って漢字を喰らったらマジで死ぬのかな……ただ、文字を小さくしてることから、ルールは厳しそうだな。で、レイカが撃ち込んだのは、あのメッチャ怠くなる弾?」
「麻酔弾だと、何らかの方法で治癒できる能力があるみたい。だから、非殺傷弾の方に切り替えたの。アンタみたいに耐性がある人間じゃなきゃ、少なくとも三日は倦怠感が続くはずよ」
「えーっと……レイカ、後何発撃てる?」
「17発。結構無駄撃ちしちゃったわね……」
「一回分の戦闘はイケるな。おっ、ちょうどいい。今日の傭兵枠第一号が到着」
先輩の視線を追って振り向くと、階段の方から小柄な女子学生が姿を現す。
「あ、どーも初めましてぇ。二年の橋口タモツです。時給分は働きまーす」
やや珍しい女子の指定制服姿だが、強調されるのは圧倒的な緩さ。死者が出ていることを引き摺っているのは、もしかしたら私だけなのかもしれない。
「サヤ以外は初めましてじゃないでしょーが……後何人雇ったの?」
レイカさんがつまらなそうに先輩へ尋ねる。
「後一人。今二号館で昼飯食ってるらしいから、一発目は一号館を制圧し返す方向で」
「……ホント、土地を転がしてるヤツは違うわね」
「まぁ不労所得は現代人の夢だろ」
むしろ先輩が最も真面目に見える。先程から余計なツッコミを入れないのがそう思う理由だ。
「はい傾注。小林はここを死守、庶務の指揮も任せる。マコトはここに残ってサポートを頼む。俺は今からタモっちゃんを二号館に送ったら戻ってくるから、それまでレイカと中原は待機。基本は俺とレイカで何とかするから、各々いつも通りに頼む。ってことで、行動開始」
返事もなく、全員が立ち上がる。
「中原、これ入れとけ」
「っ……」
すれ違い様に握らされたのは、いつものスティック羊羹。そういえば、昼食をまだ取っていない。
先輩は既に橋口先輩と階段の方へ、小林先輩は転がっていた柿沼君を背負って稀崎先輩と掲示板の方へ、それぞれが指示通りに動き出す。
「サヤ。何か、ごめんね。今は、思う所はあるだろうけど……それ、大丈夫なら、今の内に食べちゃいなさい」
気遣うような笑みと共にそう言うと、レイカさんは噴水側の窓の方へ。片手に持っているのは小型の望遠鏡だろうか。それで外の様子を見ているようだ。
「……」
忠告通り、羊羹を手早く食べてしまうことにした。わかっていたが、食事を取れないような精神的ショックはなく、舌から穏やかな甘みが全身に広がるようで、不思議な活力が感じられる。落ち着いて自身を少し内観すると、罪悪に似た後ろめたさと戦闘機会を目の前にした高揚感が二律背反的に胸中を満たしており、あるがままを言えば、後者が勝っている。
「うん? どうかしたの?」
レイカさんの近くまで来ると、噴水前広場に人気はなく、現在が普段とは違うことがそこからもわかるが、ここから見える学園区画は静かだった。
「この一件は、仕組まれたものなのですか?」
先輩から聞いた扇動の話。学園の秘密や学生会の打倒と聞いても、そのやり方も含め、共感できない。
「……」
今度は、少し困ったような笑みを浮かべ、望遠鏡を下ろしたレイカさんは、窓へ視線を戻す。どうやら外では珍しく、小雨が降り出したようだ。
「学生会は大きな権力を持ってる。当然、学生会を動かすのは人。じゃあその人と仲良くできない人、学生会を疎ましく思う人はどうなるか。きっと、学園は過ごしにくい場所になるでしょうね。でも、私達は卒業までここから出られない」
レイカさんは話しながら、足元に置いてある巨大なライフルを、慣れた手付きで分解して、各パーツの状態をチェックしていく。
「シンはそれを気にしてるし、私もそこは同じ。シンは、レジスタンスって呼んでる。主力は外に出てるけど、学園内にもメンバーはいる。要はバランスって話ね。それでも正直な話、仕組みとして、学生会とは上手く付き合った方が楽ではあるわね」
「つまり、そのレジスタンスのメンバーが、今回のクーデターを?」
必要悪、とは違うのかもしれないが、似たような概念だろうか。ただ、この話自体、死者を出してまで考慮することなのか、正直疑問に思う部分もある。
「唆した、という訳ではないわ。それこそ、その人達に言わせれば協力したって話よ。やるにしても、一年生だけじゃ、準備段階で露見していたでしょうし、今日という比較的有効なタイミングもわからなかったはず。無関係な二、三年に被害が出てない点も、そうしないと明日から一年生全員学園内を歩けないわ。そういった配慮は、こっちにとってもメリットになる」
「……なるほど」
色々な考え方があるという前提で、一理ある話だとは思う。加えて、ちょうど良い機会だとも思った。聞けることは聞いておいた方がよいだろう。
「阿僧祇先輩は、来ないのでしょうか?」
彼女がいれば、単独で全てを終わらせることが可能だと思われる。実はこの疑問は、ここ一か月で、事あるごとに感じていたことでもあった。
「そうよね……阿僧祇さんは、一部の例外を除いて、学園内のあらゆることに関わらないの。その理由は……受け取り方で変わるんじゃないかしら。私は、そうね。例えば今日、彼女が一年生を全て操って事態を終わらせる。そうなったら、もうこの学園は彼女が支配する場所になるんじゃないかしら」
「それは……」
言う通りであることに加え、何故彼女はそうしないのか。いや、それはきっと、彼女にそもそもの関心がないからだ。
「ちょうど今日なのよね。サヤは、連絡会って聞いたことある?」
「……いえ」
この学園においては、初めて聞く言葉だった。
「原則、月に一度。簡単に言えば、学園最強の3人が集まって食事をするのよ。学園と国が共同で設けてる席で、効果があるのかは知らないけど、3人が敵対したり、暴走したりしないようにご機嫌を取ってる……別に取れてないと思うけど、そういう集まりがあるの。その3人の内の1人が、阿僧祇さんなの」
「…………つまり、残りの2人というのも、阿僧祇先輩と同等の力を持っているということでしょうか?」
不意打ちに特化したエネルゲイアだろうか。それとも、その力を打ち消すような効果か。いずれにせよ、私が持つエネルゲイアとは次元を異にするものなのは間違いない。
「そういうことになるけど、それでも阿僧祇さんがトップだと、私は思ってるわ」
「…………阿僧祇先輩には、どのような不意打ちも通用しないのですか?」
先輩がよく話す不意打ち、暗殺という概念。確かに、教職員への危害を除くタブーが存在しない学園内において、重要とならざるを得ない言葉なのかもしれない。
「しないわ。少なくとも単独ではほぼ不可能。それに、わざわざ彼女に敵対しようとする愚か者もいない。だって彼女は、ほとんど全てに興味がないんだから」
語気は淡々としていたが、その強い断定を受け、逆に疑問が深まる。
「あの……何故不意打ちが通用しないのでしょうか?」
「……へぇ、さすがバトルマニアサヤちゃんね……シンのアイテムが何か、もう聞いた?」
「いえ。様々なエイドスを事あるごとに使用しているのは見ますが」
自分でも適切な説明が困難なのだが、先輩に直接そういうことを聞くのは何故か憚られる。
「そうなんだ……別にサヤならいいわよね。って思ったんだけど」
「……」
振り返らなくても、先輩が戻ってきたのだということが何となくわかる。
「よし、行こ。細かいことは歩きながら説明する」
言われるがまま、私とレイカさんは先輩の後ろに続き、一階まで下りる。