トワイライト・エネルゲイア   作:サムラビ

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彼女を鍛えたいという名の緊急回避 前

 事後処理。

 

 この言葉が三度の飯より大好きだという人がいたら、是非紹介してほしい。いや、やっぱり紹介してほしくない。怖いもの見たさよりも、単純なげんなり感が勝るので。

 

 先日、何があったのかはもう細かくは憶えていないが、とにかくリゥが学園から勝手に出たことにより、我が国の中枢は大混乱、とあるお偉いさんが過労で倒れる最後の一押しにもなってしまったらしい。幸い、命に別条はないと聞いた。

 

 赤髪の悪魔、他にもいそうだが、リゥはそう呼ばれているらしい。結構前に、リゥとお偉いさん方の懇親会を開くことを提案し、瞬時に一蹴された身としては、色々と複雑ではある。

 

「まぁ……」

 

 兎にも角にも、事後処理はほとんど終わり、特に憂慮していた杉浦教官の教育という名の拷問メニューも、無事完了することができた。全くの冤罪であるセクハラ疑惑でキレ気味だったレイカも、今回ばかりは憐れに思ったのか、そこそこ優しくしてくれた。

 

 ただ、ラストがまた憂鬱なのである。

 

 記憶から消え去っていた、菊千代さんとの面会だ。

 

 そして都合の悪いことに、もうそろそろ出発しなければならない。

 

 本名を失念してしまったが、菊千代姉さんと会ったのは一度だけであり、接触時間は1分にも満たない。だが、ここは不思議の学園。俺は霊園の地下で、既に理事長の記憶にある菊千代さんという、異次元同位体のような何かに出会ってしまっていたのである。

 

 これは完全に俺のプレミである。一言で片付ければ、口は禍の元。アーメン。

 

「…………」

 

 少し、展開予測をしてみよう。

 

 

「えっと、今日は、どうかしましたか?」

 

「単刀直入に聞こう。何故貴様は私の技を知っている? いや、それだけではない。私が薙刀を修めていることも含めてだ。納得のいく説明をしてもらおう」

 

「いや…………何となく?」

「――っ! ふざけ――」

 

 

 駄目だ。テキトーなことを言っては、焼け石に火と油だ。

 

 次。

 

 

「えっと、今日は、どうかしましたでしょうか?」

 

「単刀直入に聞こう。何故貴様は――以下略」

 

「あの、ちょっとその際の記憶が曖昧なのですが、そのようなやり取り、本当にあったのでしょうか?」

 

「そうか……では録音データを――」

 

 

 ゲーム、オーバー。誤魔化すのも多分無理っぽい。

 

 もう少し頑張ってみよう。

 

 

「えっと、今日は、何故このような場を?」

 

「単――以下略」

 

「あ、すいません。実は、先日学園内で理事長の記憶の中にある貴女と立ち会う機会がありまして、その際に感じたことが、口から漏れてしまったのかもしれません。その、大変失礼を致しました。申し訳ありません……」

 

「…………何を言っている? そのような珍妙な事例など聞いたこともない。嘘を吐くならば、もっと――」

 

 

 いやもう駄目だな。楽しくなる気配がない。だって向こうキレてるらしいし。多分、根源的な相性が悪いのだろう。

 

「いぎたくない……」

 

 最後の書類に副会長印を捺し、普段ならすぐに離れたいデスクとの別れを惜しんで仕方なく部屋を出る。

 

「――っ」

「ん? 麻月さんか。珍しいな」

 

 薄桃色の髪というシンボルを持つ彼女。ピンク髪でクール系って意外だよなぁって話を男連中とした記憶が蘇る。ただ話題性としては、この前のウサ耳が生えた子が第一線か。

 

「あ……つまり学生会に入りたいと?」

「違う」

 

 こちらの閃きに対し、即座に否定する麻月さん。

 

 農園には結構顔を出すため、そこそこ会ってはいるが、話す機会は少なく、こうして副会長室前にいるのはかなりレアだと思われる。最近は不眠症も改善され、アオイちゃんの趣味であるホラー映画鑑賞にも、ある程度は付き合えるようになったと聞いた。

 

「じゃ、手続き関係? でも特にない……気が。迷った?」

「こんなシンプルな作りで迷う訳ないでしょ」

 

 久しぶりの会話だが、今日もしっかり刺々しい。だが、俺の持つ理不尽耐性はそんなものでは突破できん。

 

「っ……はい、中原を探しに来た」

「違う」

 

「マジか。うーん……何かヒント」

「貴方に用があって来ただけ。中原さんから、今日は久しぶりに依頼がないって聞いたから」

 

 単純且つ灯台下暗しな答えであった。

 

「でもそれが一番意外だな……で、何か困り事系、だよね? 参ったなぁ……」

 

 スマホを見ると、デッドラインは後10分程。

 

「……これから用事?」

 

 言いつつ、若干申し訳なさそうな表情を浮かべる、実は常識人枠の彼女。なので全然理不尽ではないのである。俺のことが嫌いなだけで、普通に優しいし。

 

 そして、俺は閃く。

 

 そう。彼女こそ、今ここでのメシアであると。

 

「いや、そういうことだったのか……ごめん、間違えた。全く参っていない。そんなことより、困り事か、それは困ったな。何を置いてもすぐに対処するべきだろう、うん。で、やっぱり、事情を説明するにも、結構時間が掛かるよね? よし、学生会の本分を果たすとしよう」

 

「やっぱり、今度にしてお――」

「――はいはい待って待って。それじゃ、そっちのカフェスペースで話を聞こう」

 

 何か不穏なことを言おうとした麻月さんを制し、開けたスペースへと案内する。憮然と諦めが半々といった表情を確認した瞬間、俺は既に発信中のスマホを耳に当たる。

 

「あ、小林、お疲れ」

『お疲れ様。えっと、もう出ないとマズい時間だよね? さすがに、出てるよね?』

 

 何と俺のスケジュールを把握している。まるで秘書のようなヤツだ。

 

「あぁ、ちょうど出るトコだったんだけど、トラブルだ。ちょっと手が離せないから、第二希望の日に変更してもらうよう、連絡お願いしてもいい? すまん……」

 

『うわぁ……何か依頼が空くと絶対トラブルで埋まるよね……ホント呪われ――あぁ嘘、連絡するくらいなら別に問題ないけど、気を付けてよ。今、あ、ちょっと離れてるけど、サヤちゃんにも伝える?』

 

 おぉっと。だが距離があったのは不幸中の僥倖か。

 

「いや、そこまでヤバい感じでもない。言うと、中原のスケジュールまで台無しになるし、今回は俺一人で対処しとくよ。キツくなったら連絡すると思うけど、今は伝えなくていい」

 

『うん、わかった。それじゃ』

 

 よし。目的の九割は達成。とりあえず何か飲むか。

 

「……嫌な予定をキャンセルする理由に使われた、ということ?」

「えっ? 緑茶押しちゃったけど、コーヒーの方が良かった?」

 

 読解力テストなら花丸の答えだが、今の俺には認識できない言葉の羅列だった。

 

「っ……緑茶でいい」

「ナイス」

 

 見た目は紅茶飲んでそうだが、この人は生粋の緑茶党になったらしい。情報源は番のアオイちゃん。

 

 相手が諦めるまで先送りにし続けようと心に決め、清々しい気分で着席、ブラックコーヒーが魂に沁み込む。

 

「で、ごめん。凄ぇ待たせちゃったけど、どうしたの?」

 

 恩返しのためにも、出来る限りのことはしたい。

 

「……貴方への借りを返したいの。それだけ」

 

「カリ? 返す……あぁ、そういう…………うん。ちなみに、どのくらいの借りだと思ってる感じ?」

 

 ここで、別に借りなんてないよ、って言っても不毛なのはマコトで何億回も経験済みだ。もちろん、億は爆盛りしたが。

 

「……そうね。私に出来ることなら、何でも一つ、言うことを聞くわ。それでチャラにしてほしい」

 

「……」

 

 テンプレだが、とんでもないことを言い出した少女。自分が超美人+ナイスバディだということを自覚しての発言なのだろうか。彼女の未来が少々心配になる。早くアオイちゃんを射止めて落ち着いてほしい。

 

 

「…………うーん」

 

 

 が、しかしどうするべきか。この金の卵は、天国へ誘う翼にも、地獄へ落す蛇にもなり得る。

 

「……」

「………………」

 

 一時的であれ、このチャンスを手中に収められる男が、どれ程存在するのだろう。

 

「……」

「そうだなぁ………………」

 

 

 あらゆる可能性を模索したが、やはりレイカと中原がいる以上、思い切った提案は困難か。

 

 

「……そこまで悩まれると、身の危険を感じるわ……」

「おっと」

 

 確かに、二人で話していてここまで長く沈黙するのは相当に珍しいという認識へ行き着く。

 

「まぁ月並みだけど、あんまりそういう言葉は言わない方がいいって。麻月さん、自分の外見的な評価、ちゃんと客観視できてる?」

 

「一応、それなりには。今の提案にしても、中原さんや桐島先輩、その他大勢が抑止力となって、如何わしいことは提示されないと踏んでの話よ」

 

「織り込み済みかよ……」

 

 神は死んだ。

 

 どうやら蜃気楼のような話だったらしい。まぁ綺麗なオアシスだったから良しとしよう。

 

「そうなると……うーん、特に……ないっちゃない、か……いやでもそれも酷い話だな。っていうかぶっちゃけ別に貸してる自覚ないからなぁ……どうしたもんか……飯、は間に合ってるしなぁ……」

 

 先日、団体様を率いての超牛武神覇斬で300万ポイント溶かして色々満足したしなぁ。

 

「……私が嫌じゃないことなら、別にしても構わないわよ」

「えっ? どゆ、こと。いや待った」

 

 急に流れがヤバい。麻月さんがややもじもじしているというだけで相当なものだ。

 

 だがしかし。現在時刻はまだ昼の3時半。正直、そういう話を求めている時間帯ではない。今一番欲しいものはもしや、深夜テンションか。

 

「いや、そもそもだった。アオイちゃんのこと考えたらなかったわ。俺、普通にアオカエのことはそこそこ推してるし」

 

「っ……その呼び方、かなり不愉快」

 

 だろうな。誰が言い出したかは知らんけど、一年の誰かだろ。

 

「と、いうことで、話を本筋に戻して、ちょっと質問なんだけど、麻月さんって、能力の使い方を工夫したり、練度を伸ばしたりすることに、関心ってある?」

 

「……ない訳ではないわ。けど、中原さん程の熱量でないことは確か」

 

 非常に常識的な答え。話していて癒しを感じる。

 

「あれは変態だから気にしちゃ駄目だってことで……なくはない、か……だったら、能力開発してみるのは、どう? あー、ただ、能力の詳細について、ある程度聞かせてもらうことになっちゃうけど……」

 

 そこを拒否られたら終了かな。

 

「……それは別に構わない……でも、それで貴方に何の得があるの?」

 

「得は別に。ただ、損得にそこまで関心ない、とか言うとまた偽善者っぽさが極まるから言わないけど、そうだな…………実は、一年生の能力把握、かなり順調でさ。まぁリゥの存在が効果的過ぎたんだけど、登録者70パー超えは何気にこの時期だと新記録らしい」

 

 加えて、登録していない学生の能力把握についてもほぼ終わっており、全く情報が無い一年生は皆無というのが現状だったりする。まぁ、リゥとか碓氷さんとかは裏で全把握してそうだけど。

 

「……それが?」

 

「それに関連して、正直な話、研究有用性、予想戦闘力の二点においては、今年度はしっかり有意差が出る程度には低いんよ。悪いことではないけど、簡単に言うと、練度を真っ平にしたとしても、学年別でバトロワとかしたら、一年生は厳しい戦いになるってこと」

 

「それは、二年生が化け物だらけなのが要因だと思う。三年生はよく知らないけど」

 

「いやぁ三年生もヤバいの多いよ。進路に全振りしてる人多いから表には出てこないけど」

 

 そもそも斑鳩先輩が真面目に戦ったらデバフ業界最大手だし。

 

「だとしても、貴方の学年は異常よ。特に、阿僧祇先輩とミオさんが余りにも規格外過ぎるわ」

 

「あの二人は除外。実際、どんなに世界が追い詰められても、あの二人が全力を出すことは多分ない。最大で後方支援かな」

 

 下手したら傍観。特に碓氷さんはスターゲイザーの異名を持つ程だ。

 

「……私のエネルゲイアは不作な中ではまだマシだから、強くなってほしいって話?」

 

「言葉の棘を抜けば、意味としてはそんな感じ。後、訂正しておくけど、あくまで量的と、研究の有用性って部分での少ない、低いって話だから。これは俺の勝手な考えなんだけど、一年生最強の一角は麻月さんだと思ってる」

 

「っ……勝手にそう考える分には、どうでもいい」

 

 そんな訳がないという顔だった。第一印象としては、誰にも負けないけど、って感じに見えたんだが、本当にそんな感じの人だったら不眠症にはならない。

 

「まぁでも最強云々はどうでもいいんだった。とにかく、極めれば少なくとも俺よりは戦闘能力高いから。それは普通に確定」

 

「嘘。それは絶対ない。貴方のそういう所が詐欺師で偽善者。レジスタンスの人も言ってたわ。俺は大したことない詐欺。最初に聞いた時は下らない響きだと思ったけど、今はこれ以上ない表現だって思ってる」

 

 言い出しっぺは多分モリス。酷い風評被害だ。

 

「わかった悪かった。まぁ俺はそこそこ強い。でもほら、リゥとか碓氷さんとかと比べたら羽虫未満だってことはわかるだろ? そういう話だって」

 

 何か誤魔化そうとしている訳ではないのにどうにも伝わらないから誤魔化してる感じになってしまう。

 

「阿僧祇先輩、初日に自分よりも貴方の方が強いと言っていたけど?」

 

「それは嘘だ。っていうか中原も言ってたんだけどそれ」

 

「当然でしょ。中原さんが質問したんだから」

 

「皆の前で聞いたのかよ……」

 

 アイツの胆力ぶっ壊れてるだろ。

 

「ってまぁまぁまぁまぁ。それこそ麻月さん、自分の能力の評価、もしかして低い?」

 

 修行部の連中が素ギレするぞ。

 

「高くも低くもない。強いて言えば、面倒ね。私、文系だから」

「……へぇ」

 

 理系かと思った。

 

「そういう風に、大抵の人に理系だと思われるけど。元素記号とか、興味ない」

 

 そう。麻月さんの能力は元素記号を指で描き、それに対応した現象を引き起こす。ビジュアルがルーン魔術みたいで中二心をくすぐる。

 

「じゃあ、あんまり調べたりもしてない?」

 

「……一時期、化学の先生に質問したことがあったけど、ずっと毒素の話をされてうんざりしたわ」

 

 JKに毒素。確かに病的な匂いしかしない。

 

「……よし。嫌なら意味ないな。鰻、はもう予約済みか……じゃあ寒くなってきたら鍋料理奢ってもらうって感じで――」

 

「――いい。やる。それに、エネルゲイアの、練度? 結構高いと思うから」

 

「……いや、正直な話、やりたくないことやらせんの、一番無理なんだわ、俺の方が」

 

 見ててつまらないだけでなく、居た堪れないし辛い。おまけに、モチベーションがあるヤツには絶対敵わないし、やりたくないってだけのことを嫌々やって得られるものに大した威力は生まれない。せめて目的がモチベーションになればいいが、それだって個人的には微妙だ。

 

「自分で言ったこと。貴方よりも強くなれるなら、十分楽しめる。だって、最終的には貴方を殺せるんでしょ?」

 

「いやいや……行事で一緒にチーム組んだ仲じゃん……」

「それ、明確な殺意を抱いた理由の一つだけど」

 

 どうやら、酷いディスコミュニケーションがあったらしい。マコトとはあれから仲良しな感じなのに、やはり異性の壁は高くて分厚いのか。

 

 ともあれ、頭の片隅にあった一年生強化計画の出鼻は、挫かれずに済みそうな様子。それだけは何よりだった。ただ、未来の自分の死という、新たな懸案事項も生まれてしまいそうなのだが。

 

「――それで、具体的には?」

 

 緑茶を一気飲みした麻月さんが先を促す。色々と切り替えたらしい。

 

「まずは移動だな。派手なことやっても怒られない環境は必須だし、あんまり見られない方がのびのびやれるだろう」

 

 ここでグダると最悪な流れになることを知っている俺は、スタートダッシュで軌道に乗せるべく、そう提案してみる。

 

「そう……考えてみれば、その環境がなくて、少しずつ関心が薄れてきた気もする。それに、エネルゲイアよりもアオイと一緒にいることの方が大事だから」

 

「だな。今更になっちゃうけど、クーデターの後で、色々サポートするとか言っておきながら、そっち関係は放置プレイだったかもなぁ……いや、ホントにそうだわ。ゴメン」

 

 実際、トワイライトモードを体験した直後の麻月さんとは、多少なりとも能力に関する会話を交わした記憶がある。その時期が正に、鉄は熱いうちに打て期だったようだ。

 

「忘れたの? 貴方は提案してたわよ。私が拒否しただけ」

 

「いや、後5、6回押せばうんざりして許諾する空気だった。やっぱもう少しスケジュールにゆとりが必要だな」

 

「口ではそう漏らしても、忙しさに変化はない。ミオさんの言う通りね」

 

 どうやら、ナギのリスポーン期間で親交を深めたらしい。碓氷さん的には珍しい話だ。

 

「……返す言葉もない、か。とにかく、それっぽい区画へ行こう。なので、一階のポータルから中央広場、でいい?」

 

 歩くのも走るのも跳ぶのも面倒臭いし、一階か二階にいるっぽい中原に見つかると非常に厄介な気もする。まぁ何となくだが。

 

「わかった」

 

 一度決まれば文句は言わない。生真面目というか、部分的に男らしいというか。アオイちゃんが近くにいない時の方が、ある意味で表情は豊か。

 

 ミニペットボトルをゴミゾーンへ置き、敢えて隅の階段から早足で一階、ポータルを経由して速攻で中央広場まで来る。珍しい組み合わせである我々に対し、奇異の視線を送る学生も散見されるが、例によって干渉してくるような暇人は皆無。

 

「……廃墟区画だと、ナギがキレそう。危険区画に行くのは危険……いや、海底神殿なら……でも一年生を危険区画へ連れて行った事実がNGになり得る……ならば」

 

 頭の中で取捨選択を進め、決定。

 

「それじゃ、行こう」

「――待って。今の不穏な呟きの後で黙って従う訳ないでしょ。何処へ行くか、それがどんな場所なのか説明して」

 

「えっ? 中原だったら、とりあえず従ってから文句言うんだけど」

「……貴方がさっき変態って言ってたこと、脚色して報告するわよ」

 

 マズい。これは本当にするタイプの眼だ。

 

「では、説明しよう。これから行く区画は『監獄島区画』で『監獄区画』とはまた別。何のギミックも危険もない。誰も来ない。監獄の反対側はそこそこ広いスペースになってるし、迷惑も掛からない。完璧なチョイスだ」

 

「………………監獄はあるけど、監獄島はない」

 

 すぐスマホで検索。まぁこれは常識だろう。

 

「そりゃあったら誰か来ちゃうかもしれんやん。そこは現状、俺とレイカしか出入りできない。んじゃもう逆に、その場所で何かあったら今度は俺が何でも一つ言うこと聞くから、それで手を打ってくれ」

 

 これ以上グダりたくないのが本音。

 

「っ……いいわ。それで手を打つ」

 

 驚きの後、不穏な笑み。酷いことをさせられるのは目に見えているが、強気なベットには確固たる安全性があるので気にしないでおく。

 

「「――――――」」

 

 メインポータルで言い合いしてたという後の供述を避けるため、アプリを起動してタップ、日常的な超常現象を受けて今日もまた区画を跨ぐ。

 

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