トワイライト・エネルゲイア   作:サムラビ

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8月下旬 終

「――――えぇっ!? さっき言ってたビッグフットってヤツっすかっ?」

 

「薄々そうなんじゃないかって思ってたけど、殺り過ぎると確定で湧くみたいね」

「だな。リゥとかヒカリとか誘って確かめる手間は省けたってことで」

 

『――いいからっ! 来るわよっ! 中原サヤの方っ!』

 

 気楽な会話から一転、切迫感のある報告通り、初手のヘイトは最寄りの自分に向いている様子。尚、件の裏ボス、ビッグフットのグラフィックは事前情報の通り、ゴリラ型と大差はなく、体表の赤黒さを増した上で、3倍程サイズアップしたような印象。

 

 これで今後、先輩が敵キャラクターのデザインに対し、水増し等の言葉で文句を言い出した際は、目の前の現象を用いて咎めようと心に決めた。

 

 そんな現実逃避的な考えの最中、やはりどう考えても現在の敏捷性では目標の追撃から逃れる術はない。単純に、躱せるスピードではないのである。

 

「一旦捕まりますっ」

「判断早っ! 総員、敵が止まった瞬間集中砲火で」

 

 開始前にシラユキさんへ伝えた通り、敵諸共撃たれた所で、味方から攻撃されるデメリットはなく、拘束時に動きが鈍化する特性を活かすという基本戦術を採用する。

 

「っ……」

 

 各種環境から見て、どう考えてもおかしいハイスピードにより接近を許し、せめてもの抵抗で迫る左手を跳躍して避けるが、直後に振られた右手でしっかりと身体を掴まれ、拘束を許す。

 

「――――――」

 

 瞬間、ビッグフットの頭部が爆ぜる。

 

 一番槍となった主砲に続いて、射撃による衝撃と轟音の連続が、目標の身体を硝煙で覆い尽くす。それによる怯み判定か、拘束は体感時間一瞬で解かれ、着地の後に離脱、目視可能な箇所目掛けてトリガーを引き続ける。

 

「っ……」

 

 完全に捉えた一撃だったが、さすが隠しボスと言った所か。チート級の最大火力を受けて尚、ビッグフットの頭部は健在であり、威嚇するように牙を剥いて戦車を睨み、気味の悪い呻き声を上げている。

 

『――ちょっと……マズいんじゃないの……』

 

『うーん……でも、戦車が捕まったらどんな感じになるのか、試してみたいってのはアリ寄りのアリだよね』

 

「サイズ的に丸呑みは無理っぽいけど、中から主砲パナしてみたいってのはあるな」

 

『っ!? 最初からずっとだけど……何でこの戦車にはヤバい人間しか乗っていないの……』

 

 その点については留意していなかったが、確かに自分ならその顔触れから、乗車を拒否していた可能性は十分にある。

 

「おーっと、こりゃもう戦車との間に入ったら死が約束される感じかもな」

 

『――いいから逃げてっ!』

『ほいさぁ』

 

 そして、ゲームは一旦タワーディフェンスを忘れ、化け物と戦車による壮絶なチェイスが開幕した。

 

 橋口先輩のエネルゲイアにより生まれたと思えば納得だが、戦車の駆動はどう考えても通常のそれではなく、無限軌道の概念を超越する動きが、次々と目の前で展開されていく。

 

 その中でも最も違和感を覚えた部分だが、戦車は旧時代のレースゲームのように独力で跳びはねることが可能な様子で、ドリフトによる急な方向転換と、キャタピラーを瞬時に高速回転させての緩急も合わせて、恐るべき地球外生命体の追撃から逃れ続ける。

 

『――もう3分よっ! 貴方達が撃ち続ける限り追い掛けてくるんじゃないのっ!?』

 

 3分前からそうだが、シラユキさんの一際ヒステリックな声が、陽の落ちかけたアウトレットモールに響き渡る。

 

「しゃーない。円谷っ! オトれっ!」

「了解っすっ! 俺の見せ場ぁあぁぁっ!」

 

 そういえばここ数分姿を見なかった円谷君が、ここで声を張る。

 

 そしてどんな言葉でそそのかしたのか。後輩を死地へ誘うあの男には、また違う形での制裁を検討したいが、現実的に有効な策であることに疑問はない。

 

「――――はっやっ!」

 

 大量の火炎瓶を抱え、ビッグフットと戦車のほぼ中間点へ躍り出た円谷君は、回避不能の振り下ろしにより体力バーが一撃で瀕死ラインへ。ただ、何をされても軽く押された程度の感覚しかないのは、このゲームの救いと言えるだろう。

 

 しかし、敵の攻撃はそれだけに止まらず、目標の左手で鷲掴みにされた円谷君は、そのまま巨大な口の中に姿を消す。

 

「――てええぇぇぇぇっ!」

 

 その硬直を見逃さず、先輩の号令に合わせて総員は全火力を目標に集中、銃弾散弾榴弾の一斉掃射により、ビッグフットは怯んだまま尻餅を着き、口から肉塊と化した円谷君を盛大に吐き出す。

 

「おいおい全く死ぬ気配ねぇんだけど……とりあえず中原っ、AEDっ!」

「っ……はい」

 

 戦車の上から元気よく投げ寄越されたオレンジ色の救急キットをキャッチし、要救助者の排出された地点へと駆けるが、横たわる円谷君は絶対に配信してはいけない塩梅のビジュアルに仕上がっている。

 

「あ、中原さん。ありがと」

「その状態で喋らないで下さい」

 

 どう考えてもAEDで救える範疇ではないが、システムと割り切ってセットし、スイッチを押す。すると、現れた時計マークの色が下から少しずつ変化していき、青で満たされた所で円谷君が見た目の上でも復活する。

 

「――見事なタンク役だったよ、円谷君。そしてどうやら、時間らしい」

 

 すぐに医療キットを重ねて使用してくれる稀崎先輩。その言葉通り、既に夕暮れ時の空から、唐突にヘリコプターが登場、芝生の中心へ向かって旋回してくる。

 

「シンっ! 倒せるかどうかの検証はまた今度よっ! 戦車組をラストにして、到着次第乗れる人から乗り込んでっ!」

 

「ってことでよろしくっ!」

 

 特に苦戦することなく、エンディングが迫ってくる。実際、もしビッグフットが登場しなければ、何の山場もなく脱出できる流れだっただろう。とはいえ、攻略の極まったゲームにおいては当然の展開ではある。

 

 裏ボスの登場で、やや一般兵ゾンビの侵入を許してはいるが、現状はゲームオーバーを予感させる光景には程遠いと言える。そんな中で、沈みゆく太陽によって運ばれたらしい救護ヘリが、芝生中央上空に到着する。

 

「じゃあ、敢闘賞の円谷からGOっ! その後、麻月さん、マコトと続いてっ」

「了解っす!」

 

 先程まで放送禁止状態だったとは思えない快活な返事で、円谷君はお約束の縄梯子を登っていく。救助現場などの映像を見ていると、風などの影響も受けて少しずつという印象だが、これはある意味現実ではないのですいすいと高度を上げていく。

 

「それじゃ、一応言っておくけど、女の子が梯子を使っている間、シンは上を向かないこと」

「いやいやいやっ! 一生バケモンと対面してる俺に言う必要あるっ!?」

 

 私からも一応言及しておくと、通常なら間違いなく指の感覚を失う程に、先輩は機関銃を撃ち続けてはいる。

 

「……あの、桐島先輩。次は、俺が行ってもいいですか?」

「久我谷君は、私と一緒に離脱する感じでお願い。多分戦車組の前になるわ」

 

「あ、はい。なら、俺が先に行きます」

「うん、お願いね」

 

「あの扱いの差よ……」

 

 何故だか、その小さな呟きは周囲の爆音にもかかわらず、耳に届いた。

 

 結果的に、荒れ狂うビッグフットからタゲを取り続ける戦車のおかげで、自分も含めてメンバーの離脱は順調に進み、久我谷君に続いてレイカさんもヘリに乗り込む。

 

「不自由な身体で暴れんのも、たまには悪くねぇなっ」

「……貴女の異常なスピードは、判断の早さから来ていることがよく分かったわ」

 

 余談だが、てっきりすし詰め状態を想定していた所、ヘリの内部は想定より広々としていた。ただそれ以上に、水着着用で乗り込んでいることへの違和感が先行してはいた。

 

「――っ!?」

 

 後は戦車に搭乗する三人を残すのみという所で眼下へ目を向けると、既に橋口先輩とシラユキさんは梯子を登っている段階だったが、あの男は未だ撃墜への未練からか、単独で機関銃をほぼ接射状態で撃ち込み続けている。

 

「――くっそ! 何なんだよコイツっ!」

 

 諦めの悪い先輩は、やっと戦車を放棄し、梯子に手を掛けるが、あの声は本気で悔しがっていると思われる。状況はギリギリだというのに、あのような部分が常々心底理解できない。加えて、あの怪物もその根源は自分自身の中にあるという事実を、忘れているのだろうか。

 

「っ……やり直しが可能だとしても、あの場に単独で残れる神経が理解できないわ……」

 

「いやぁそれより、戦車以上の火力って何だ……やっぱ列車砲か……」

「見る限り、周辺に路線はありませんが」

 

 シラユキさんに手を掴まれ、強引に引き上げられるが、やはりその胸中はモンスターを倒す方法に満ちている様子。

 

 

「「「―――――――」」」

 

 

 そこで、突然の衝撃と揺れ。

 

 その理由を考える前に、シラユキさんの両足がヘリから離れているのが目に入る。思考に反して、動かない身体がもどかしく、数瞬先にはもう手を伸ばしても届く距離ではなかった。

 

「――中原っ!」

「――っ!?」

 

 落下する前にシラユキさんの身体へ跳び付く先輩の姿から、その意図を察して続く。

 

「――レイカさんっ!」

「――っ!?」

 

 叫びながら跳躍、先輩の両足首をしっかりと掴む。

 

 そして無責任なリレーが開始される。当然何か言われたら、全力で先輩の責任をアピールするつもりだ。

 

「――マコトっ!」

「っ!」

 

 今度は私が、レイカさんに両足を掴まれる。

 

「ナギっ!」

「うっ! ぜぇっ! おいっ! 全員手ぇ貸せっ!」

 

「らーじゃ」

 

 その後はわからない。

 

 とにかく、レイカさんと稀崎先輩は私と同様の状態なのではなかろうか。

 

「――っ!? 嘘……どう、なってるの?」

 

「ようわからんけど、多分チームプレイじゃね? って中原、まるで爪立てられてるかのような感覚なんだけど?」

 

「いえ、比喩ではなく思い切り立てています」

 

 だが、やはりフレンドリーファイアオフ環境では、効果はイマイチか。

 

「っていうか何であのバケモンは文明の力を使ってんだよっ」

「っ……」

 

 眼下では、取り残されたゾンビの群れの中心、ビッグフットが、まるで拳銃を握るようにロケットランチャーをこちらに向けている。おそらくアレが衝撃の原因か。ただ、追撃もその一発で終わりだった様子で、ヘリはモールの敷地から離れ去ってゆく。

 

 そして1分未満の宙吊り状態を経て、我々は再び、ヘリの中へと帰還を果たす。

 

「生身の人間なら絶対に不可能な連携だったわね……」

「それにしても、よくサヤとレイカは迷いなく跳び付けたね」

 

「いや、こっちと片手ずつで掴んでた稀崎先輩も凄かったっすけど……」

 

 人間梯子と呼べばよいのか。とにかく、二度とやりたくないことだけは確かだった。

 

「ゴメン。ガチで油断したわ……」

「油断じゃなくて、バケモン退治にかまけてただけだろーがっ」

 

「まーまーともかく、これで一応、ミッションコンプリートやね」

「っ……」

 

 確かに、アウトレットゾンビはこれで終了だが、この場に広がる妙な達成感と、本件の抜本的解決には、何の関連性も認められない。

 

「前回の不甲斐なさは払拭できたけど、やっぱり功労者はシラユキさんね」

 

「そういや、てめぇは妙に真面目な立ち回りだったな。ま、功労者については、言うまでもねぇがな」

 

「――えっ?」

 

「実際問題、あんな正確なナビは相当優秀な証拠やしね」

「はい。狙撃すべき位置についても、随分助けられました」

 

「まぁ、全会一致でMVPってことで……しかも、何気に一発クリアは初だったりするんだよなぁ」

 

「シラユキさん。ありがとうございました。おかげで、繰り返しプレイすることなく終えることが出来ました」

 

 個人的に最も不快な瞬間は、ゲームオーバー表示からまた最初のカウントダウンに戻され、あの風景を見ることではあった。それも、内心ではほぼ覚悟もしていただけに、現状の一発クリアは、大変喜ばしいことだった。

 

「っ……どうやら、無事終了するようです」

 

 そして、現実世界へと戻る2分のカウントダウンが頭上にて開始される。

 

「…………あ、そっか……そういえば……」

 

 驚くべきことに、先輩は現在の状況を本当に一旦忘れていた様子。解決しないのは困るが、一回シラユキさんに制裁を受ける様を見たい気もする。

 

「っ……シラユキ? 身体が……」

「――――」

 

 稀崎先輩の指摘通り、シラユキさんの身体が、明らかに透けている。

 

「えっ? 何で?」

 

「ハァ……今回は疲れたからもういい。どうせ、卒業までは一年以上あることだし」

 

「戻ってもう一回能力封じてリマッチすりゃ、勝てると思うぜ。こいつは女に弱ぇしな」

 

 その言葉に反して、嘲るニュアンスは感じられない。

 

「本当に……貴女はそれでいいの?」

 

 重ねて意外にも、レイカさんは真剣な目でそう尋ねる。

 

「二人共違うから。今回はって言ったでしょ。また適当な感じで罠に嵌めて引き摺り込む。それまでに、ちゃんと考えておいて」

 

「っ……」

 

 シラユキさんの突き出した右手は、先輩の胸を貫通し、その実体は更に曖昧となっていく。

 

「わかった……後、ちゃんと綺麗にするよう、ねねさんに伝えとく。たまに寝る時さ。涎が酷いっしょ?」

 

「……ちゃんと言っておいて」

「私からも伝えておくよ」

 

「ありがとう……貴女達からしたら、迷惑な話なのに……感謝するわ…………区画は八月中で消えるから、最終日は閉鎖することを勧めとく」

 

 言い終わると、もう足から腰の部分までは、身体が完全に消失してしまっていた。

 

「……太刀川シン」

「うん?」

 

 別れを惜しむ面々を見渡し、その視線は再び先輩に戻る。

 

 

「去年の、十一月十三日……多分、何かが変わったんだと思う……知らないけど――――」

 

 

「――えっ? ちょっ!? 言い逃げかよ……」

 

 その指摘通り、文句を言われる前に、その姿は消失していた。

 

「去年の、十一月、十三日?」

 

 言うに及ばず、自分が入学する前の日付である。

 

「ま、その話は後ね。こっちも10秒を切ったわ」

「あ……そういや、コレって何処に戻るん、ですかね?」

 

「区画内のランダムな場所……ですね。最悪、海の底も想定されます」

「マジで最悪な想定から入るのな……」

 

 それこそ、この男から学んだ考え方の一端ではある。

 

「コレ、学園の外で使った場合は何処へ戻るん?」

「市内か区内か町内の何処かだった気がする」

 

 つまり、場合によっては相当範囲が広いということになる。

 

「とりあえず、安全確認のメッセ送って。それか俺から送るわ――」

「――――――」

 

 先輩の言葉終わりでカウントダウンは0へ。一瞬で視界が切り替わる。

 

 

 

「――へぇ、マジでか?」

「…………これは本当に偶然なのでしょうか……」

 

「あ、終わったのね。なら…………あ、繋がった。多分、もう平気だと思うけど、もう少しだけ待ってて。稀崎さんから連絡がいくと思うから。うん……ありがと。飯島? さぁ、見てない。じゃ――」

 

 転移地点は足つぼマッサージの施術室。客は変わらず、児玉先輩のみ。どうやら、これまでの時間で三周目の最後に入っていたらしい。また、急な我々の出現にもその反応は薄く、事務的に連絡を済ませて、再びカウチにその背を預ける。

 

 そして、転移地点が被ったメンバーは私と先輩、麻月さんと久我谷君の四人だった。

 

「よし……後は一応の安否確認で終了か。んじゃ、最もこういう時にヤバいのツモりそうな円谷から掛けてみよう」

 

「……私も、レイカさんに掛けてみます」

 

「私はロビーに戻るわ」

「俺も、一旦そうします」

 

 我々二人も、児玉さんに一声掛け、ひとまず施術室を後にする。

 

『――サヤは何処へ出たの?』

 

「はい、幸運にもホテル内でした。先輩と麻月さん、久我谷君も一緒です。今からロビーの方へ戻ります」

 

『私は空に放り出されたけど、海に落ちるのも面倒だから、パラシュートを開いて、そのままホテルの方にゆっくり戻ってる。後、円谷君以外の三人はビーチにいるみたい』

 

「……了解しました」

 

 無事で何よりだが、何処にパラシュートを仕込んでいたのかだけが不明だった。

 

「――おぅ、多分、もう要らないから消えたんだろ。じゃ、のんびり戻ってくるといいよ」

 

 先輩の方も、どうやら無事は確認できた様子。

 

「円谷も無事で、教会のポータルは消えたって」

 

 若干不吉なフラグを感じていた所だったが、何よりの報告だった。

 

「先輩の言った通り、もう不要になったので、シラユキさんが消去してくれたようですね」

 

 これで、今回の一件は終了と見てよいだろう。

 

 それに関連して、後一週間程の間、ここは本当の意味でリゾート区画になったようだ。

 

 ロビーに戻ると、パラシュートでホテル前に到着した様子のレイカさんと、ビーチから歩いてきた三人が合流しており、それを迎えに外へ出る一年生組の姿も見える。

 

「――うーん……そろそろ夜に切り替わるし……やるなら早めに動いた方がいい、か……」

「っ、何がですか?」

 

 歩いている間も、また何処かへメッセを飛ばしていた様子の先輩。

 

「中原、外のヤツも巻き込めるだけ巻き込んで、とりあえず食材と機材を大量に調達してこよう」

 

「っ……あぁ、そういうこと、ですか……」

 

 時刻は現在午後6時過ぎ。確かに、動くなら迅速に動くべき時間ではある。

 

 その目的は、ある意味で学生会の不手際と呼べる本件の誤魔化しだと推測出来るが、邪推に類すると考えられるため、心の奥へと伏せておく。

 

 今更驚くことでもないが、代金は全て先輩持ち。

 

 

 この後、平和が訪れたリゾート区画にて、学生会による無料バーベキュー大会が突貫的に開催された。明らかに悪ノリも含まれた提案だったが、レイカさんは呆れつつも了承、結果的には、学園生ほぼ全員が参加するという大イベントに発展した。

 

 そしてイベントとは言っても、その実態は何処までも緩く、それぞれが仲間内で集まり、ただ食材を焼いて食べて騒ぐだけ。そんな光景が、ビーチ全域に夜通しで広がり続ける。

 

 これは多くの学生が口にしていたことだが、タダでバーベキューが出来て、文句を言う人間はいない。

 

 自分としても、心から同意出来る真実だった。

 

 実際、きっと先輩にしても、本心ではただ騒ぎたかっただけなのだろう。

 

 思えばこの日の夜が、夏休みで唯一純粋にレジャーと呼べる時間の過ごし方だったように感じられたのだが、何となくその事実については、一旦目を背けておくこととした。

 

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