オタメイト~幻想浪漫旅行~   作:まぐろ

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九話「旧都」

 地霊殿から脱した咲は旧都を歩いていた。

 旧地獄をある程度観光できたため咲は満足し地上へと向かっていた。

 

 (さて...どうやって地上へでるか、当てずっぽうで探ってもいいが...あまり時間をかける訳にもいかないからな...スキルを使うのはめんどいし...聞くのが早いか)

 

 咲は地上へ出るために現地の住民に聞こうと考え、たまたま通りかかった住民2人に「すまない、少し訪ねたいのだが」と思わず声をかけた。

 よく見ると、その容姿は緑髪のツインテールをしロープで吊るされた桶にすっぽり入った少女と金髪で茶色い大きなリボンで結びポニーテールな髪型にした少女だった。

 緑髪の少女は驚き金髪の少女の背に回り覗くように咲を見て、金髪の少女は緑髪の少女を気にかけつつ振り向き「私達の事かな?」と聞いた。

 咲は頷き、金髪の少女は「いいよ~何が知りたい?」と陽気に答えた。

 

 「地上へ出たいのだが、出入口の場所が知りたい」

 

 (出入口?住民なら誰もが知ってるし、地上から来たのなら普通にわかるはずだから...)

 

 金髪の少女は深く考えた後、あることに気がついたのか、ハッとした顔をし「もしかして外から来た?」と咲に聞くと「ああ、気づけばここにいてな」と答えた。

 

 「それは災難だね~出入口の場所はこの先真っ直ぐ行くと橋があるんだけど、それを渡って更に真っ直ぐ行くと上へと続く穴があるから、そこが出入口だよ」

 

 親切に教えてくれた少女に咲は「礼を言う」と会釈をし出入口へと向かおうとしたが少女に呼び止められた。

 

 「なんなら橋まで付き添うよ」

 

 「いや、そこまで気を遣わなくていい、気持ちだけ受けとる」

 

 「遠慮する事はないよ!それに私達も橋に用事があるから、ついでだよ」

 

 咲は「そうか...重ねて礼を言う」と再び会釈をすると金髪の少女は慌てて「好きでやってる事だから」と制止しようとした。

 

 「だけど、そっちは良いのか?儂の事を怖がっているみたいだが」

 

 「あ~、この子は内気だからね~馴れてない他人とはだいたいこんな感じだから気にすることないよ」

 

 咲は「ふーん」と言い緑髪の少女をチラッと見ると覗いていた少女は、ハッとしてささっと隠れる姿を見て「なるほどな」と納得した。

 

 「そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は『黒谷 ヤマメ』こっちは『キスメ』気軽にヤマメとキスメって呼んでいいよ」

 

 ヤマメがキスメの事を紹介すると隠れていたキスメはヒョコっと顔をだし小さく会釈をした。

 

 「ヤマメとキスメ...儂の名前は狐龍 咲...適当に呼んでくれ」

 

 「咲ちゃんね。なら早速向かおうか」

 

 ヤマメはそう言うと歩きだし、キスメはヤマメの右手に引っ付き、咲はキスメとは真逆の位置で歩いた。

 

 「咲ちゃんって狐の妖怪だよね?」

 

 「まぁ見た目がこうだからな、そう思われて当たり前だな」

 

 まるで自分は妖怪じゃない言い振りにヤマメは思わず「え、違うの?」と聞き「いや今は妖怪で合ってる」と難しい答えにヤマメとキスメは頭を悩ました。

 

 「そういうヤマメは土蜘蛛、キスメは釣瓶落としだったか?」

 

 「あれ?私達の事よく知ってるね」

 

 「名前を聞いてピント来てな、地底でさ迷ってる時に小耳にはさんでな」

 

 『黒谷ヤマメ』種族『土蜘蛛』能力『病[主に感染症]を操る程度の能力』少々好戦的だが話せばわかるタイプで気さくで明るい性格から地底の妖怪達からは大人気である。

 『キスメ』種族『釣瓶落とし』能力『鬼火を落とす程度の能力』かなりの内気で狭いところを好み普段は洞窟や井戸にいる。

 

 (ま、実際は外の世界で知った情報だがな)

 

 ヤマメは意外な顔をしながら「そうなんだー」と言うと隣で引っ付いていたキスメが「ヤマメはここでは人気者[アイドル]だから」と呟くと満更でもない表情をしながら「も~褒めてもなにもでないよ~」と言いながら飴をキスメにあげるヤマメだった。

 その2人の行動を眺めていた咲に「咲ちゃんもいる?」とヤマメは飴を勧め、素直に頬張る咲に(意外とかわいい人だな)と思ったキスメだった。

 そうこうしている内に3人は大通りに出ると、そこでは住民である妖怪達が酒を呑んだり騒いだり喧嘩をしたりとは賑わっている旧都の中心とも言えるであろう『旧地獄街道』へたどり着き活気の良い街を見て咲は思わず「...凄いな」と呟いた。

 

 「そうでしょ!...というよりここに来るのは初めてなの?」

 

 「間近で見るのはな」

 

 「そうなんだ...あ、咲ちゃん時間とか今は大丈夫かな?すぐに地上へ行きたい感じ?」

 

 咲は脳内に[?]が浮かんだ。

 

 「そうだな...あまり時間はかけたくないな、上であいつらが待っているだろうし」

 

 「そっか...地上で待ってる人達がいるだね。それは仕方ないね」

 

 少しシュンとしたヤマメを見て咲は察し「まぁ...街を回る時間はあるぞ」と照れくさそうに言うとヤマメはパァとあからさまに元気になった。

 

 「良かった~咲ちゃんに見せたいものがいっぱいあるんだよね...あ!咲ちゃんってお酒っていける口?」

 

 「嗜む程度にな...だけど儂なんかにかまっていいのか?橋に用事があるって事はそこの『番人』にだろ?」

 

 「あー別に気にしなくていいよ約束とかしてないし、私達が一方的に会いに行くだけだし、そんな事より早く行こ!時間は限られてるんだから!」

 

 ヤマメは咲の手を引き、咲はなすがままに引っ張られ街の奥へ進んだ。

 

 「ここのお酒美味しいんだよ!飲んでみて♪飲んでみて♪」

 

 ヤマメに進められた酒を手にとり口をつけて飲んだ咲は美味しさのあまり口元が緩み「...旨いな」と微笑んだ。

 

 「そうでしょ!ここのお酒を作っている主人は素材にこだわりにこだわった物を使ってるから最高なんだよね!」

 

 楽しそうにお酒の説明をしているヤマメの後ろで「私も大好き」とボソッと呟くキスメだった。

 

 「確かに最高だな...あいつらも呑みたがるだろうな」

 

 「地上で待っている人達の事?」

 

 「ああ、酒好きが2人いてな」

 

 するとキスメが恐る恐る「どんな人?」と聞き咲は呆れたような口振りで「バカとアホだな」と答えた。

 

 「特にアホが無類の酒好きだな」

 

 「だったらお土産で買って行く?...あ、でも外の世界から来たんだったら通過は...」

 

 通貨の事で心配をするヤマメだったが「いや、金ならある」とがま口の財布を取り出した。

 

 「かわいい財布を持ってるんだね...というより外から来たのによく持ってるね」

 

 「もらった...て言うか配られたな、一応言うが財布も配られたやつだからな」

 

 「本当かな~」とのニマニマとするヤマメとキスメを見て咲は刀を取り出して斬る体制をとり、それを見てヤマメは「冗談だよ」と宥めた。

 

 「お酒が好きならつまみも欲しいんじゃない?」

 

 「そうだな...なかったら文句言うだろうな...特にバカが」

 

 「それなら、いい土産屋があるよ、おすすめのがいくつかあるから、そこにもよって行かない?」

 

 咲はめんどくさ気な表情をしたが、どうしても案内したいヤマメは目を輝かせ、その圧に咲は折れ渋々ヤマメ達に付き合った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「か、買いすぎた...」

 

 咲は両手で荷物を抱え窮屈にしていた。

 

 「大丈夫?持とうか?」

 

 「いや平気だ」

 

 「私が無理やりつれ回したんんだから、それぐらい持つよ」

 

 ヤマメはそう言うがそれでも咲は断り、荷物を下ろし袖から手のひらサイズの布地の何かを取り出し咲はそれを広げると布地の正体は袋だった。ヤマメは「それは?」と聞くと、咲は「見たらわかる」と言い荷物を袋に入れ初めた。

 全て入れ袋はパンパンになった。

 すると咲はパンパンになった袋を畳み始め、みるみると袋は小さくなり、なんとサイズは手のひらサイズに収まった。

 その光景に思わずヤマメとキスメは「「なにそれ!どうなってるの!?」」と驚いた。

 

 「?この幻想郷では珍しくないだろ?」

 

 「珍しくはないけど、魔力とか妖力みたいな物が感じられないから、驚いているんだよ!」

 

 「あー...確かに、そんなものは感じないな、これも配られた物だから儂もよくわからない」

 

 咲の返答にキスメは心配そうに「それって大丈夫なの?」って聞くが咲はしれっと「いけるだろ」と答えながら咲は畳んだ袋を袖に戻した。

 

 「にしても財布といいその袋といいまるで観光に来たって感じだねw」

 

 「ああ、観光しに来たからな」

 

 ヤマメは冗談で言ったつもりだったが、咲の肯定に二人はドン引きした。

 

 (このやりとり地霊殿でもしたな)

 

 「世の中には色んな奴がいるって訳だねーまぁ咲さんの妖力を見た感じ、よっぽどな事がない限り心配なさそうだし」

 

 「...わかるのか?」

 

 「うまい事隠していると思うよ?だけど私はわかるよ~咲さんかなり強いでしょ?」

 

 咲は素っ気なく「さあな」と答えた。

 

 「まぁそうやって隠すのは正解かな、ここは血の気があるのが多いからね~」

 

 旧地獄は忌み嫌われて封印された妖怪が多く力も強力かつ、強え奴がいたらオラ、ワクワクするぞ!と言う思考の者がほとんどで喧嘩事が日常的なのだ。

 

 「一応確認だが、お前が見せたいって言う場所は終わりか?」

 

 「本当はいくつかあるけど、ある程度は回れたからオッケーかな?」

 

 「そうか、なら出入口に向かうか」

 

 咲がそう言うとヤマメは「そうだね」と答え歩きはじめ、咲はそれについていった。

 歩いている道中ヤマメが「見つかったら面倒だな~」と呟き、少し歩くペースを早めた。

 咲は察してヤマメ同様に早め三人は出入口付近の橋へ向かった。

 橋へ向かう三人から少し離れた居酒屋から一人の女性が居酒屋の店主に「また来るさ」と言いながら出てきた。

 

 「さーて、次は何処にするかね...ここ最近暴れ足りないから退屈だn...ん?」

 

 女性は橋に向かうヤマメとキスメに気がつき目をこしらえた。

 

 「あれはヤマメとキスメと...」

 

 女性は咲に目を向けるとニヤリと笑った。

 

 「退屈しのぎになりそうだな」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 旧地獄にある橋には『橋姫』という妖怪が番人している。その姿は金髪のショートボブで緑眼、ペルシアンドレスのような服を着た容姿、能力は『嫉妬心を操る程度の能力』で名前のとおり相手の嫉妬心を操る。

 

 その名はッ!

 

 「やっほーパルスィ!」

 

 ( ´・ω・`)...『水橋 パルスィ』と言う。

 

 (誰か落ちこんでいるような気がする...)

 

 呼ばれたパルスィは一息つきヤマメの方に振り向き「何の用?」と聞いた。

 

 「先週私が建築作業してた時、差し入れ持ってきてくれたでしょ?そのお礼だよ」

 

 「あれ美味しかった~」

 

 そう言うとヤマメは先ほど咲と一緒に店を回っていた時に買ったであろうお酒をパルスィに渡すと、パルスィは「あれは、ただの気まぐれよ」と受け取ろうとしない。するとヤマメはぐいっお酒をパルスィに押し付け。

 

 「本当に素直じゃないんだから!好意は受けとるべきだよ」

 

 お礼でプレゼントしているはずなのに何故か説教している風になり、パルスィは恥ずかしそうに受け取り、ぼそぼそとした声で「ありがとう」と言った。

 そんな2人を眺めていた咲にパルスィは気付きヤマメに「誰?」と聞きヤマメはパルスぃに咲の事を紹介した。

 

 「ふーん、咲って言うんだ...綺麗な銀髪で妬ましいわね」

 

 「出会ってそうそうそれかよ、流石は橋姫...嫉妬の塊だな」

 

 パルスィの僻みを咲は煽り返し、パルスィはむっとなった。

 

 「...ふーん私の事知っているみたいね」

 

 「ああ、嫉妬心の妖怪...嫉妬でしか自身を表せない哀れな妖怪」

 

 「まぁ実際あってるわ...だけど失礼じゃない?」

 

 「始めたのはお前からだろ?」

 

 「あぁぁ、あの程度怒るとか沸点低すぎない?」

 

 2人の間に不穏な空気が流れた。今にも戦闘が始まりそうな雰囲気にヤマメが「意地悪な事言わないの!」とパルスィに言うと。パルスィが「だってこいつが」と抗議しようとしたが「やめなさい」と更に圧されて「わかったわよ」と渋々了承した。

 

 「にしても幻想郷へ旅行とか何考えているのよあんたの仲間は...頭おかしいんじゃないの?」

 

 「ちょっと!意地悪な事は言わないって言ったでしょ!」

 

 「気にするな黒谷、儂もその意見には同感だからな...困った奴らだ」

 

 「それでも付き合ってあげる咲ちゃんはやさしいよね」

 咲は糸目を見開きヤマメを睨み「おお...怖い怖い」とパルスィの後ろに隠れた。パルスィは呆れた表情をした。

 

 「今回ばかりは案内してもらった恩があるから許してやる」

 

 そう言うと咲は歩き始めた。

 するとヤマメが「あ、咲ちゃん!」と呼び止めると咲は「ん?」と振り向いた。

 

 「また地底に遊びに来てね。次はお友達もいっしょにね」

 

 と満面な笑みをしたヤマメに「ああ」咲はニコッとし出入口へ向かった。

 

 「咲の仲間...いったいどんな奴なのかしら」

 

 パルスィの意見にキスメも「ちょっとだけ気になる」と同意した。

 

 「きっと良い人達よ!」

 

 「...こんなところで旅行する奴らなんだから頭がおかしいやつらに決まってるわ」

 

 ヤマメは頬を膨らませ「もう!そんな事言わない!」とパルスィを叱った。

 

 「そう言えば咲ちゃんのお友達に人間が1人いるって言ってたよね」

 

 「あーそうだったよね...離れ離れになってるから妖怪とかに襲われてなければいいけど...」

 

 キスメとヤマメは鮪麗の事を心配した。あったこともない鮪麗の事を心配してくれる優しい二人だ。

 

 「大丈夫でしょ咲の仲間なんだし」

 

 「ま、まぁそう言われたらそうなんだけど...」

 

 「ヤマメが煽ってた時に見せたあの殺気からして相当...あれと絡んでいるのだから、お仲間は全員強力でしょ」

 

 流石はパルスィわかっている...だが残念、その人間はクソザコであると言うこと。

 

 「姐さんが聞いたら言っても立ってもいられないだろうな~」

 

 「目があった瞬間即バトルね」

 

 「ここに来るまで出会わなくて本当に良かったよ~」

 

 ヤマメが一安心したのかふにゃふにゃになっているとパルスィは複雑そうな顔をしていた。それに気づいたキスメが「どうしたの?」と聞くとパルスィは言いづらそうに口を開けた。

 

 「...悪いけど貴女達の苦労は...無駄、だったかもしれないわね」

 

 ヤマメとキスメは何を言っているのか一瞬理解できなかった...が、次第にヤマメは嫌な予感がし始めた。

 

 「ま、まさか...来てるの?」

 

 「そのまさかよ」

 

 ヤマメは崩れ落ちた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ヤマメ達と別れた後、咲は地上と地底を行き来できる出入口らしき物を天井にあることに気がついた。それは洞窟のようで咲は見上げるが地上からの光は見えず、光が届かないぐらい深いのかはたまた洞窟が要り組んでいるのであろうと咲は考えた。

 

 (どちらにせよ地上に出るのは時間がかかるか...)

 

 咲はめんどくさ気に頭を掻き穴に向かって飛ぼうとした。

 

 「もう行くのか?もう少し観光していけばいいのにさ」

 

 背後から声をかけられた咲は後ろを振り向くとそこには金髪のロングヘアーに体操服を思わせる格好をした女性が立っていた。一見、人間のように思えたがある箇所を見て人間ではない事がわかった。

 

 (頭の赤い角、黄色い星形の模様...)

 

 「鬼...『星熊 勇義』か」

 

 「ほー私の事知ってるんだ」

 

 名前を看破された鬼は不適に笑った。

 星熊 勇義、種族は鬼、『山の四天王』の1人にして『怪力乱神を持つ程度の能力』を持つ強力な鬼だ。

 

 「そりゃあ、あんたは有名だからな」

 

 「そいつは結構、今は私の説明なんかか必要ないからな...」

 

 勇義は咲に近づき2人の距離が数センチ程にまでになると勇義はニヤリと笑った。

 

 「あんたの事が知りたいからさ」

 

 「知って何になるんだ?儂の事を知っても何も特にならないぞ」

 

 「そんな事はないさ!私はあんたに興味があるから知りたいんだ、名は何て言うんだ?」

 

 まじまじと見る勇義に咲は不満を覚えていた。勇義が咲に興味があると言うのは人間性では無く戦闘性に興味があるとわかるからだ。

 

 「狐龍 咲...お前が興味あるのは強さだろ?」

 

 「ああ!街道でヤマメ達とつるんでるのを見てから気になって仕方なかったのさ」

 

 咲は不思議に思った(あの『力の勇義』と呼ばれるこいつがなぜその時に仕掛けなかったんだ?)と。

 

 「つけてきたのか?お前がそんな真似をするとわないが」

 

 咲がそう言うと勇義は大笑いをした。

 

 「つけてはないよ先回りしたのさ、楽しそうに観光していたから邪魔しちゃわないようにな」

 

 「お前の事だから関係無しだと思ったがな」

 

 「あんた、私が何も考え無しに喧嘩吹きかける奴だと思ってないかい?」

 

 咲は「え?実際そうだろ?」と言わないばかりの顔をした。

 

 「否定はしないがな!」

 

 咲は「いや、しろよ」とツッコミ勇義が「鬼は嘘をつかないのさ」と返した。

 

 「街道でやり合ったらめちゃくちゃになるからな、あんたかなり強いだろ?」

 

 隙をついて逃げようと考えていたが不可能だとわかり半ば諦めていた。

 

 「見たらわかるぜ、抑えているようだが、その垣間見える妖力...ただ者じゃないってのがよ」

 

 「まるで獲物を見つけた獣だな、つまり儂は餌と言うわけか...」

 

 「ああ!あんたは私の退屈を解消してくれる餌さ!」

 

 「...気にくわねぇな」

 

 咲は目を見開きギロリと勇義を睨むと勇義はニヤつきが更に増し凶悪な笑顔をしていた。

 

 「いい顔をするじゃねーか!ますますそそるなァ」

 

 そんな殺伐とした2人を岩から眺めている3人の人影がいた。ヤマメ、キスメ、パルスィの3人だった。

 止めに急いで来たのに既に手遅れだった事にたいして「お、遅かったかー」とヤマメは頭を抱えた。

 

 「うっっわー今にも勃発するじゃんあれ?」

 

 「ど、どうする?今から止めに行く?」

 

 キスメの案にパルスィは「いや無理でしょ」「自殺しに行くの?」と即答した。

 

 「それでも止めないと!このままじゃあ咲ちゃんがケガしちゃうよ!」

 

 「ケガだけで済むのこれ?」

 

 「ともかく2人を止めn」

 

 ヤマメがパルスィ達の手を引き咲達を止めに行こうとした瞬間だった。

 

 ドゴオォン!!

 

 と凄まじい爆音が鳴り響き、辺り一面に土煙で埋め尽くされた。

 3人は見上げるとそこには咲が刀を振りかざしそれを片手で掴む勇義の姿だった。

 「始まった...」と3人は口をそろえた。

 

 「お前は獣だ、狩人[ハンター]に狩られる獣だ」

 

 「ははっ狩人か!精々私に喉元を喰われないようにする事だな!」

 

 勇義は握った刀ごと咲振り回し投げ飛ばした。

 吹き飛ばされた咲は壁際に刀を突き刺し静止した。

 

 「あの野郎...壮大に吹き飛ばしやがってぶった斬ってやるッ」

 

 咲が愚痴を吐いていると追い付いた勇義が近づき「女性に対して野郎なんて失礼じゃないのかい?」と言い「人を片手でぶん投げる奴の何処が女だよ」と返しながら咲は刀に力を込めた。すると刀から冷気が溢れだした。

 

 「...雪符『氷柱』!」

 

 咲がそう言うと刺さった刀の根元から凍り始め鋭い刺状の氷が勢いよく突きだし勇義の方へ向かった。

 氷柱が突き刺さりそうになる瞬間、勇義の拳が氷柱を砕いた。

 

 「お前の技はこの程度かァ?狐龍ッ!」

 

 咲の方へ目線を向けた勇義だが、そこには咲の姿はなかった。

 勇義は咲が何処に行ったのか探ろうとするが背後から感じる冷たい殺気に気がついた。

 咲は刀を横降りした。しかし殺気に気がつかれた事により勇義は刀を握った。

 

 (ちっ斬るのは無理だな...だったら)

 

 「...雪符『氷結釘氷』」

 

 すると刀を掴んでいた勇義の手が徐々に凍り始めた。

 

 「ほーう...私の手を使えないようにする気だな、だがッ」

 

 勇義は腕に力を入れると凍る速度が遅くなり次第に溶け始めだした。

 

 (キッショ!?こいつ力を入れる事で体温を上げて溶かしてやがる!?)

 

 咲はあまりにも驚愕な光景に顔が引釣った。

 咲は勇義からの攻撃を避ける為に刀を手放し間合いをとり、刀は勇義の腕同様に溶け出し刀がなくなった。

 勇義は腕に付いた溶けた氷の水滴を払った。

 

 「どうした狐龍!その程度の力かァ!」

 

 「儂がお前の力[パワー]に敵うわけ無いだろ?」

 

 勇義は大笑いしながら「そりゃそうだろ!」と言い、そんな自信満々な物言いに咲は内心イラッとした。

 すると咲は新たな刀を出現させ刀の持ち手を掴んだ上体で低く構えた。

 

 「儂は力より...速さ重視だ」

 

 「その構え...抜刀か!」

 

 勇義が楽しそうにし今から咲がするであろう抜刀を受けようと構え、咲もそれと同時に親指を鍔を柄の方向へ出した。刀の刃が顔を出すや否や光沢とは別の輝き電と火花が現れ、瞬間咲の姿が閃光のようになり目にも止まらぬ速度で動き勇義の正面へと行き刀を鞘から抜いていた。

 

 「雷符『電光石火』」

 

 まさしく雷の如く、その姿に勇義は度肝抜かれたが、その顔は楽しさと嬉しさに満ち溢れていた。

 刀は勇義の腹腰を捉え切り裂いた。

 しかし切った際に「ガキンッ」と音がなりまるで岩でも切ったかのような感覚に咲は眉間にシワを寄せた。

 

 「言うだけはあるな狐龍、天狗並み...いやそれ以上に速いな」

 

 勇義は褒めたが煽り文句にしか聞こえなかった咲は「そいつはどうもッ!」なていいながら蹴飛ばし勇義に刺さった刀を抜いた。抜いた箇所から血が流れはじめ勇義はそれを拭い、手にベットリついた血を眺めニヤリと笑った。

 

 「おまけに出血してやがる...刃物で血が出るのはいつ以来だっけな?」

 

 (真っ二つにするつもりだったのに血が出た程度かよ...まじの化け物じゃねーか)

 

 余裕そうな勇義に嫌気をさす咲だった。

 すると勇義が右肩を回しながら「よぉし次は私の番だ」と言った。

 

 「鬼符『怪力乱神』ッ!」

 

 勇義は回していた右腕の拳を握りしめそのまま地面を殴ると地表が砕き咲の足場は崩れた。

 

 (ば、バランスが崩れ、あいつ何のためn...ん?)

 

 落下する最中ふと目見上げるとそこには勇義の姿はなかった。

 咲は嫌な予感がした。勇義の気配が下から感じその方へ目線を向けると目の前に拳が現れた。

 

 「...ッ!」

 

 (これを避けるか!やるな)

 

 咲は間一髪で躱すが勇義の放ったアッパーによる風圧で咲は吹き飛ばされ壁にめり込んだ。

 

 (風圧でこれかよ!直撃だったら即落ちだな)

 

 咲は壁から抜け出そうとしたが勇義は「力業『大江山嵐』!」とスペルカードを使い巨大なエネルギー弾を咲に向けて投げ続け隙を与えなかった。

 

 「どうしたどうした!さっきまでの威勢はよ!」

 

 勇義は絶え間なくエネルギー弾を当て続け土煙が溢れかえった。しかし土煙の中から鋭利な刃物のような物が飛び出し勇義の肩を斬った。それでもかすり傷程度だが動きを止めるには充分だった。

 

 (な、何だ?...これはあいつの斬撃か?触れた感じ鎌鼬の術によく似てるが...)

 

 土煙の中から服や顔が汚れた咲が現れた。

 

 「ボコスカやりやがって...調子のってんじゃねーよ」

 

 勇義は元気ありありな咲を見て大笑いをした。

 

 「やるな狐龍!さっきの斬撃は風か」

 

 咲は「よくわかったな」と言い刀を見せるように突き立てた。刀には風のような物を纏っており、勇義はそれを見て嬉しそうに口笛を吹いた。

 

 「まだまだいけそうだな...これならどうだ、枷符『咎人の外さぬ枷』!」

 

 勇義は更にスペルカードを使用し、先ほどより小さなエネルギー弾とリング弾を放った。

 

 「...風符『塵旋風』」

 

 咲は刀に纏った風を凪払うと斬撃が飛びリング弾を真っ二つに斬り裂き、その間を抜けた。

 

 (さっき私の肩を切った技だな)

 

 エネルギー弾を躱しながら無数に来るリング弾を斬りながら咲は勇義に近づいて行き2人の距離が2メートル未満に達した瞬間勇義はスペルカードを止め右手を握り締め地面を踏むように足を開いた姿勢をとった。

 

 (右ストレートか避けても風圧で吹き飛ばされるのが確定だな...技で相殺がましか)

 

 咲は斬るから姿勢から右手で鍔付近の柄を持ち左手は柄頭握り刀を頭部横にした突きをする姿勢へと切り替えた。

 

 (私の拳を真っ向から受けるつもりか!)

 

 勇義は「おもしれぇ!」と叫びながら拳を咲の刃先に向けて撃った。

 

 「!?」

 

 勇義は違和感を覚えた拳から感じるであろう刃先の感覚とは違う存在に...勇義は目を凝らしてみると咲の姿が揺らめいているに気がついた。まるでそれは水の波紋のように揺らいでおり、勇義はそれが咲の刃先から出た水の盾だと理解した。

 

 「雨符『水面波紋』」

 

 咲は突きを繰り返し波紋を出し続け勇義の右ストレートの威力を相殺し最後の一突きで勇義を後退りさせた。

 

 (ふぅ...どうにかなったな)

 

 「氷に雷、風に雨か...お前天候操作[ウェザーリポート]か」

 

 咲は一呼吸整え「ああ」と答えた。

 

 「多才だな...だがまだ引出しはあるんだろ?」

 

 咲は沈黙した勇義は咲が無言の肯定と認識せ「やっぱりな」と答え。

 

 「もっと見せてくれよお前の力をよ!」

 

 勇義は歯をむき出しに笑いながら構え咲は「言われなくても見せてやるよ!」と言い口元が緩んでいた。

 

 「気に入った!もっと愉しませてあげるから、駄目になるまでついてきなよ!」

 

 勇義が意気込み地面を蹴るように走り咲はそれを柄を両手に持ち天へと向け構え勇義を撃つつもりだった。

 二人の距離が狭まり、互いの攻撃が今か今かとなる最中、突如爆音が鳴り響いた。

 咲と勇義は動きを止め爆音のする方へ目線を向けた。

 

 「な、なんだ?」

 

 「この音...街道からか?」

 

 街道方面をみるとそこには黒煙と火が溢れかえっている事に気がついた。

 

 「どうなってやがる!」

 

 (一体何が...)

 

 二人はあまりの光景に呆然としていた。

 そんな2人に「姐さん大変だよ!」と聞きなれた声で呼び掛ける女性の声がした二人は声のする方をみるとそこにはヤマメとパルスィとキスメ、そして声の主であるお燐が2人を呼んでいた。

 お燐の姿を見た咲は「うげぇ」と嫌そうな顔をした。

 

 「あ、あれ?咲さんもいたのかい?」

 

 「お燐か!一体どうしたんだ!」

 

 「あ、そうだった!姐さん街道に来てくれないか!大変なんだよデカイんがバーッと出て街がグシャッ!てなって!」

 

 慌てているのかお燐はパニックになっており語彙力が失っていた。

 

 「落ち着けよ、言ってる事がわからんぞ?」

 

 今のお燐では説明が出来ないと判断し代わるようにヤマメが前に出た。

 

 「デカイバケモノが現れて街がめちゃくちゃになってるらしいんだよ!」

 

 「あの火災はそいつの仕業か!」

 

 「恐らく、私もお燐ちゃんから聞いた話しだからよくわからないけど....とにかく街のみんなを助けないと!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 黒煙と火の海が広がり街並みは崩れていた。

 瓦礫で下敷きで身動きできない者、負傷により足を引きずる者、大切な人が倒れ動かない体を泣きわめきながら揺する者、栄え活気に溢れていた街道は悲惨な光景で溢れた。

 その中心、黒煙の中から数十メートルにも及ぶ生物の尻尾が伸びた。

 それは四足歩行で背面を覆うように立ち並ぶ無数の棘、岩盤を容易に砕く剛爪...下顎から伸びる豪壮な牙、身体中には鋭く黒光りした鱗を身に纏った全長約30メートル、体長約10メートルの...巨大な龍だった。

 

 「キ"ュ"ゥ"ア"ゥ"ーン"!!」

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