シャーレの先生 アカシア   作:電シャーク

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お待たせいたしました、次郎編もといトリニティ崩壊RTA編、はーじまーるよー(ゆっくりボイス)


(次郎編にあたっての注意事項)

時系列的には、3話のペロロジラ出現より前になります。
そのため、これまであーかいぶっ!等でアカシアとナギサの絡みが多数掲載されてきていますが、この次郎編時点では接点はほとんど無いものとご承知おきください。


次郎編では、ブルアカのキャラが痛い目に遭う描写が入ります。
彼女たちに愛着があり、酷い目に遭うのを見たくない、という方は、読み飛ばしていただきますよう、お願いいたします。
なおその描写が入るのは(3)の予定です。



以上注意事項を踏まえた上で、お読みください。






次郎、トリニティにて咆哮する(1)

「失礼いたします、アカシア様」

 

とある昼下がりの、シャーレのオフィス。

やって来たのは次郎。先週レッドウィンター連邦学園の学区内で発見され、数日ほど同学園の用務員として働いていたが、生徒と共謀して高級ブランデーの泉を発掘し酒盛りをしていたことが判明し、クビになったばかりである。

アカシア達との再会を喜んだのも束の間。その場で即座に正座を命じられ、足の感覚が無くなるまで延々正座させられ続けた事件は、誰の記憶にも新しかった。

 

「ああ、よく来てくれた次郎。早速だがお前に紹介したい仕事があってな」

 

そう聞かされて、次郎が内心でグッとガッツポーズをする。

自分以外の家族が自分より先に漂着し、それぞれ仕事を見つけて働いているにも関わらず、自分だけが一週間も経たないうちに飲酒でクビになり、職も家も稼ぎもない、という現状の情けなさが、じわじわと胸を焼いてきたところだったからだ。

その内心を知ってか知らずか、次郎の返事を待たずにアカシアが話を続けた。

 

「お前には、特定の学校ではなく、キヴォトス内の各校で教える巡回講師になってもらいたいんだ

「巡回講師…ですか?」

 

次郎が疑問符を浮かべながら聞き返した。

 

「ああ、キヴォトス内にある各学校を巡って、戦闘技術を教える臨時講師だ。主にはノッキングの仕方や猛獣の生態、近接戦での立ち回り方とかだな」

 

そう言うとアカシアが、書類の束を次郎に手渡した。受け取った次郎が斜め読みしたところ、アカシアが現れて以来キヴォトスに出没するようになった猛獣やその生態、併せてキヴォトス内の各校における生徒たちの戦闘能力についてまとめられていた。

 

「我々がこの世界に来て間もなく一か月になるが、短い期間のうちに私たちの世界に居た猛獣たちが数多く現れるようになった。グルメピラミッドが最たる例だが…危険なことに、生徒たちの成長が、出現する猛獣たちの力に及んでいない。グルメ細胞の定着率は高いが、未だ成長途上。個人レベルでは最高でも捕獲レベル20クラスに届かないのが現状だ。その分集団での戦闘力には目を見張るものがあるがな」

「我々の世界では軍隊でもない限り、集団で戦闘する機会は少なかったですからなぁ。連携では彼女たちの方が上かもしれません」

 

書類をめくって読みながら次郎が唸る。次郎もこの世界に来てまだ一週間程度だが、生徒たちの大凡の実力は掴めている。アカシアの見立て通り、個々の才能や集団を組んだ時の性能には、キラリと光るものを感じていたが、全体的にまだまだ発展途上、というのが正直な感想だった。

 

「逆に言えば、個の力が高まれば集団としての力も当然あがるわけだ。今後猛獣たちのレベルも比例的に上昇していく可能性が高い以上、彼女たちの戦闘水準の向上は喫緊の課題だ」

 

そう言うとアカシアはぽん、と次郎のたくましい肩を叩いた。

 

「正直に言うと、一番頼りになる男が来てくれて、嬉しい限りだ」

「はっはっは…!そう言われては断れませんのう!まあ元から断るつもりなんてありゃしませんが!」

 

アカシアの全面的な信頼に満ちた言葉を貰い、次郎も嬉しそうに破顔一笑する。

了承した、の言葉すら口にせず、ただがっしりと、強い握手で以てアカシアの申し出を請ける意を示した。

 

「それで、いつから着任ですかな?いや、どこから行けば良いので?」

「うむ、それを説明するために、紹介したい人物がいるんだ。入って来てくれ」

 

アカシアがそう声をかけると、扉がガチャリと開き、亜麻色のロングヘアと白い翼が目立つ、清楚な美少女が入ってきた。

 

「初めまして、次郎先生。私、トリニティ総合学園生徒会『ティーパーティー』の一員で、桐藤ナギサと申します」

「ほぅ、トリニティの―――ということは?」

 

ナギサの自己紹介をうけた次郎がアカシアの方に向き直ると、アカシアが笑顔で頷きを返した。

 

「ああ、最初に着任してもらうのは―――トリニティ総合学園だ」

 

 

 

 

 

「お?」

「げ」

 

アカシアとナギサを交えた話し合いが終わり、シャーレのオフィスの外に出た次郎は、ちょうどシャーレを訪れた三虎に出くわした。

次郎は嬉しそうに、三虎は面倒臭そうに顔を歪めた。

 

「なんじゃいなんじゃい三虎、ワシを見るなり顔を引き攣らせよってからに。それが兄弟子に対する態度か」

「生徒の教育に悪い輩と出くわしたんだ。引き攣りもするだろうよ」

「んん?生徒…?」

 

絡んできた次郎に、さも鬱陶しそうに答える三虎の後ろを見ると、緊張した面持ちの女生徒4人が付き従っていた。

 

「その子らが、アカシア様の言うとったお前の生徒か?」

 

アカシアや一龍から聞かされていた、現在三虎が先生として指導を行っている生徒たち。実際に目にするのは初めてだったので、確認の意味も込めて尋ねた。

 

「は、初めまして!アリウス分校特殊部隊・アリウススクワッドのリーダーを務めております、錠前サオリと申します!」

 

次郎の質問に、先頭に立っていたキャップを被った少女が答えた。それに引き続き、他の3名も続々と返事をする。

 

「お、同じくアリウススクワッドの、秤アツコです…!」

「…戒野ミサキ、です」

「つ、槌永ヒヨリ、です!み、三虎先生の兄弟子様のお噂はかねがね…!」

「ほっほ、自己紹介ありがとう。ワシはこいつの兄貴分の次郎という。不肖の弟弟子が世話になっとるの」

 

そう言って次郎が慇懃に挨拶をすると、4人揃って強く首を横に振り始めた。

 

「ふ、不肖だなんてとんでもないです!三虎先生は我々を救ってくださった大恩人で…!」

 

アツコの否定の言葉に、ミサキが合いの手を入れた。

 

「…アリウス学区に居る生徒たちはみんな、三虎先生に救われました。それだけじゃなく、今は将来の私たちの生き方についても一緒に考えてくれて…感謝してもし足りない、父親のようなお方です」

 

アツコとミサキの言葉に、残る3人が今度は大きく首を縦に振る。当の三虎はそっぽを向いて、次郎に顔を見られないようにしていた。照れ臭いのを隠そうと必死の三虎をからかおうとしたが、その気配を察した三虎が話を変える方が早かった。

 

「…で、アカシア様に何か用事だったのか?風の噂じゃ、勤めてた学校の用務員クビになったと聞いたが」

「うむ、来週から戦闘技術を教える巡回講師に就くことになってのぅ。今日、その学校の子と顔合わせしてたんじゃよ。トリニティとかいう学校の―――」

 

トリニティ、というワードが出た瞬間、女生徒たちが強く反応した。

一様に嫌悪と困惑の混じった複雑な表情を浮かべ、次郎から気まずげに目を逸らしており、三虎の服の裾や袖口を不安げに掴む者も居た。

何か不味いことを口走ったか、と次郎が目で問うと、三虎が裾を掴む生徒たちを宥めながらそれを否定した。

 

「…俺の生徒たち、というかアリウス分校とトリニティには、ちょっと因縁があってな。ジジイにとっちゃ大したことじゃない。気にしないでくれ」

「そうか。だがすまん、生徒たちに不快な思いをさせてしまったようじゃ。この通りお詫びする」

「い、いえいえ、大丈夫です!顔を上げてください!次郎さんが悪いわけじゃないですので…!」

 

尊敬する三虎の兄弟子に頭を下げられたことで呪縛が解け、アリウススクワッドの面々が慌てて頭を下げ返す。

謝罪合戦の様相を呈してきたことに溜め息を吐いた三虎が、パンパンと手を叩いて場の空気を元に戻した。

 

「アカシア様に呼ばれてるんでな。この辺で失礼するぞジジイ。今度、ウチの学校に来る時の日程と内容を調整しよう」

 

先生らしいことを言いながら去っていく三虎に、おう、と返答して見送る。

すると、一番後ろに居たヒヨリが次郎を手招きして、次郎に耳打ちした。

 

「三虎様、次郎様のことをジジイだなんて呼んでますけど…普段はちゃんと『兄者』って呼んでらっしゃってるんです。自分如きでは足元にも及ばない、尊敬すべき偉大な兄たちだ、って」

 

次郎はもう一度三虎を見た。

ひそひそ声とはいえ、三虎ならば確実に聞き取れていたはずだ。その証拠に、微かに耳が赤くなっているのが見える。

次郎は一瞬考えた後、こう声をかけた。

 

「三虎よ、今お主、満腹(しあわせ)か?」

 

次郎の言葉に対し、明確な返答はなかった。

その代り、右手を軽く挙げて、ひらひらと小さく振って見せた。

 

それを見届けて、次郎も背を向けてシャーレを去る。

その足取りは、どこか軽やかだった。

 

 

 

 

 

「アカシア先生から正式に話がありました。昨日レッドウィンターにて“保護”された新たな訪問者―――次郎殿を、戦闘技術顧問として各校を巡回する臨時講師に任命、その最初の赴任先にこのトリニティが選ばれました」

 

―――同時刻。トリニティ総合学園、ティーパーティーの居室。

アカシア、次郎との会談を終えたナギサが、残る2名に報告をしていた。

 

「いやー、ようやくトリニティにも専門家が来るんだね☆」

 

ティーパーティーの一人、聖園ミカの声は明るい。

彼女が首魁として率いる派閥内から、散々要請されてきた要望が、ようやく通ったからである。

 

「派閥内からの突き上げ凄かったもんねー。いつまでゲヘナに先を越させたままにしとくのか、って!フローゼ先生がゲヘナに着任したの、誰のせいってわけでもないのにねー」

私の派閥(フィリウス)も概ね同じですよ。ゲヘナやミレニアムの後塵を拝し続けるのは、トリニティの名折れだ何だと。だったら自分たちでヘッドハンティングでも何でもしに行けという話ですが」

「サンクトゥスも変わらないよ。着任前の挨拶にナギサが行ったことについて、陰口叩いてる連中も居たけど」

 

ミカとナギサの愚痴に、ティーパーティーの最後の一人、百合園セイアも同調する。

学校としての規模が大きく、歴史も古いトリニティでは、複数の派閥による学内暗闘が絶えず、その中でも勢力の大きい派閥の長でもあるナギサ、ミカ、セイアの3人は、日々他派閥を出し抜こうとする自派閥内からの強い突き上げに辟易していたのだった。

 

「美食屋かぁ。ナギちゃんセイアちゃんの所は、どんな反応?」

「美食に興味はあっても、美食屋には興味なし、という人が大半だよ」

「右に同じですね。美味しい食材が見つかったら教えてくれ、ってスタンスです」

「あははっ!私のところも!どこも変わんないねー。口開けて餌が落ちてくるのを待ってる雛鳥みたいじゃない?」

「そんな良いものじゃないでしょう。人に苦労させて旨い汁だけ吸おうっていう魂胆なんですから」

 

ミカの例えに、ナギサが肩をすくめた。

 

「要するに皆が欲しいのは、次郎先生の教えじゃなくてコネクションだからね。今やキヴォトス全域に広がった美食文化。その中心的人物で、あらゆる学区に大きな影響力を及ぼし、連邦生徒会からの信頼も篤いアカシア先生。彼との友誼を深め、強固な関係性を築き、あわよくばキヴォトスの中枢に食い込む…その辺りまで考えているのかもね」

 

トリニティで派閥を形成しその中核を担う人物たちが狙っているのは、結局のところ、現在のキヴォトスの政治・経済の中心となっているアカシアと、強いコネクションを築くことのみ。

そうと知りながら、その派閥を率いる当の3人の顔は白けきっていた。

 

「うーん、アカシア先生はそういう人じゃないんだけどなぁ。ガララワニの食事会お呼ばれして、会ってすぐ分かったもんね。どの組織にも贔屓や肩入れ等することなく、困っている人に手を差し伸べてくれる、シスターフッドが揃って崇拝しそうなくらいの聖人だって」

 

ミカの意見に、ナギサとセイアも言葉に出さず同意する。

アカシアに誘われてガララワニを食べに行った記憶は、未だに新しい。そこで感じたアカシアの人柄と、彼の提供したワニ肉の美味しさは、キヴォトスに訪れた新しい時代の潮流を否が応にも感じさせた。

彼女たちの派閥のメンバーは、ワニ肉に気味悪さを感じたのか、アカシア主催の食事会には参加していない。だが、参加していない彼女たちもグルメ時代の到来とそれによる大きな変化の訪れは敏感に感じ取っていた。

その感覚自体は正しいものだが、アカシアという人物の為人を知らずして、その大いなる変化の根幹を掴むことは出来ないだろう、というのが、実際にアカシアと会った3人の結論だ。

 

詰まる所、派閥の長たる彼女たちは、各々の派閥メンバーたちの野望など成就するはずがない、と悟っているのである。

 

ティーパーティーの3人としても、アカシアや次郎とコネクションを築くつもりはあるが、その本質としては、派閥だけの益ではなく、トリニティ全体の益としていくことを狙っている。

各々の派閥内で突き上げられたように、ゲヘナやミレニアム等の学園に一歩先んじられていることは間違いない。ティーパーティーとしては、ここで次郎との接点を得ることで、まずは後れを取り戻すことを最優先として、今後のグルメ時代の潮流に乗り遅れないようにしていく、という考えである。

 

「まぁ、連邦生徒会への影響力拡大までは考えていなくとも、次郎先生をトリニティに留めるぐらいは考えている人が多そうだね。その次郎先生はどんな人だったんだい、ナギサ?」

 

結局のところ重要になるのは、キーパーソンである次郎の為人である。

それを確認するため、面会した感想を聞いたセイアだったが、尋ねられたナギサの顔は渋い。

 

「んー…私では測りかねるというか…正直に言うと、ただの酔っ払いのお爺さん、という印象でした。アカシア先生にとっては、息子にも等しいお弟子さんとのことですが…アカシア先生より老いて見えましたし…」

「…大丈夫なのかい?それ」

「ミカさんが付いてきて下さってたら、正確に実力も測れたかもしれませんが…少なくとも、アカシア先生は相当お強いのですよね?」

 

ティーパーティーの中で唯一の武闘派であり、トリニティでも屈指の戦闘力を誇るミカに、アカシアの実力について改めて尋ねた。

するとミカは、それまでの明るい様子から一転、すっと真顔に変わり、二人を諭すような口調で告げた。

 

「…相当どころの話じゃないよ。トリニティ、ミレニアム、その他全学校の全生徒が揃って銃を向けたとしても、傷一つつかないし―――その気になれば一瞬でキヴォトス全土を制圧することも出来る」

 

いつになく真剣な声と表情のミカに、ナギサとセイアが小さく唾を飲む。

しかし当のミカは、おそらく自身が感じ取ったアカシア先生の強さの、その半分のイメージすら二人は持てていないだろう、と察している。元よりナギサとセイアは武闘派からは程遠い。一般人がプロのスポーツ選手の超絶技巧のプレーを見ても、それがどう凄いかを把握できないように、アカシアの強さがどれ程隔絶しているかを一朝一夕に理解してもらうことは難しいだろう、と踏んでいた。

 

「…とりあえず、各自派閥内の人間が、次郎先生に接触しようとしている件については、放置で良いでしょう。彼の為人や実力など、詳しく把握しておきたいですし」

「まあ、それはその通りだね…ミカは何だか不安そうだね?」

「うーん…あんまり詮索して、アカシア先生の怒りを買うことにならないといいな、と思って」

「…アカシア先生の不興を買う、というのもあまり想像が出来ませんが…確かにアカシア先生に嫌われてしまっては元も子もありませんね。開始前に接触し過ぎないように―――」

 

(やっぱり伝わってないか…)

 

それでも、自身が抱いた危惧が伝わるようにと働きかけたミカだったが、二人の反応が最後まで鈍いことに、落胆を禁じ得なかった。

 

(アカシア先生と私たちとの差は、天地以上に隔絶してる。それは戦闘面だけじゃない、経験も人格も、何より生きていた世界そのものが違うのだから、常識の土台からして違ってる…そんな人たちの不興を買うのは、破滅と同義だ…)

 

あまりにかけ離れた実力の差を認識しているからこそ、冷静に最悪の事態を想定するミカの判断は、間違いなく正しいものであった。

 

(ナギちゃんの言う通り、アカシア先生自身はそうそう怒らないだろうけど、肝心の次郎先生については未知数な以上、アカシア先生にすら会ってない子たちを野放図に次郎先生と会わせて良いものか…とはいえ何も知らないのは確かだし、情報収集の必要性も否めない…私のところだけ、最低限の接触に留めるよう周知しておこうかな?)

 

しかし、相手のことをほとんど何も知らない、という事実が、ミカの認識の足を引っ張る。

次郎のパーソナリティを把握することが、起こり得る事態への対処にも繋がる、という判断がミカの天秤を揺るがせ、結果としてナギサの提案を否定せず、まずは情報収集に徹する、という方針に固まってしまった。

 

(実力未知数の、一見普通のお爺さんか…どうだろう、彼を警戒した方がいいのか…?しかし情報が少な過ぎる…)

 

一方、ミカとは異なる理由で判断に迷っていたのが、セイアである。

彼女が隠し持つ『予知夢』の能力は、的中率100%を誇る。セイア自身この能力を疎ましく思いながらも、その予知を疑ったことはない。

だが今回彼女が見た予知夢は、これまでとはいささか趣が異なるものだったのだ。

 

(誰も居ないトリニティの校舎…過程が全く見えず、ただそれだけが映る予知夢…今までになかったパターンだ…)

 

これまで予知夢を見る際は、ある程度原因と思われる情報が混ざり込んでいた。しかし次郎の来訪にあたり彼女が見た夢は、ただ無人のトリニティ学園の校舎のみ。長らく放置された状態ではなく、いつも通りの学園の日常から、生徒の姿だけごっそり抜けおちたような、寒々とした欠けっ放しの光景だった。

人が居ないので会話もなく、校舎は窓ガラス一枚も割れていない。そのため、夢の内容から何かしらのヒントを掬い上げることすら出来なかった。

 

(原因も何も分からないんじゃ、予測の立てようもない。次郎先生が原因だとしたら、彼の何を気をつけた方が良いのか、調査が必要だよね…積極的に接触を図ってみようか…)

 

次郎が原因となるかそうでないのか、予知された未来の不明瞭な部分を探るためにも、最低限の情報は得たい。

セイアもまた、そう結論付けて、自派閥のメンバーによる次郎への接触を良しとした。

 

この後、大まかな意見と方向性をまとめてティーパーティーの会議は解散となったが―――

 

彼女たちの失敗は多岐に渡る。

 

ナギサは面会時に、次郎の為人を一定以上把握しておくべきだった。「一家の誰より気が短く、戦闘能力が高い」という情報が得られていれば、各派閥のメンバーによる次郎への接触を制限するに至ったはずだった。

 

ミカはナギサの代わりに次郎と面会するべきだった。次郎の秘めたる実力を感じ取れるのは、唯一の武闘派である彼女にしか出来ない芸当であり、それを感じ取れていれば、もっと強硬な姿勢で反対していただろう。

 

セイアは自分が見た予知夢の内容を、包み隠さず話すべきだった。ナギサもミカも、彼女の話を疑うことなどしない。ナギサはアカシアに対してより次郎について深掘りし、ミカは次郎の実力を見聞しに行くはずだった。

 

そして何より彼女たちが各派閥の長として、不用意な接触や言動を禁じ、きちんと統制をはかることで、確実に防げる事態であった。

 

しかしいずれの可能性も潰え、各派閥の各員が野放しになり。

結果、火薬庫に繋がる導火線に火をつけるが如き所業に繋がってしまった。

 

後にキヴォトスで永く語り継がれる大事件。

“トリニティ総合学園壊滅事件”の引き金は、こうして静かに引かれたのだった―――――

 

 

 

 

 




RTAチャート
①まず次郎をクビにします
②無職になった次郎をトリニティに派遣します
 この時、派遣開始までにアリウス生徒を連れた三虎を会わせておきましょう
③トリニティ生が次郎と接触することを許可します


次郎編は計4話(+その後編あーかいぶ)の構成です。
2話目は明日8日の同じ時刻に投稿いたします。
3話目以降は12(金)以降に順次投稿していく予定です。

感想お待ちしております!

どれが見たい?

  • 前菜×梅花園
  • 魚料理×セミナー+ヒマリ
  • 肉料理×シスターフッド
  • メイン×連邦生徒会+カンナ
  • デザート×陰陽部
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