■DEAD OR KNIGHT
マリー「先生の世界にも宗教はあったのでしょうか?」
アカシア「宗教かぁ。もちろんあったが、その大半は食材や料理そのものを神格視するものだったな。ペロロジラ教ではないが、類似するものは数多くあったよ」
マリー「あ、やっぱり食材が主神扱いになってたんですね」
アカシア「しかし一番有名なのはグルメ教だな。食糧危機の時代から生まれた宗教で、自然のままに命を委ねるという思想のもと、粗食や施しの精神などの戒律の実践に重きを置いた宗教だった。特に、グルメ騎士という直属の騎士団を有していてな。戒律に殉ずる崇高な精神とそれに見合った肉体を兼ね備えた、心技体揃った強い戦士たちだ」
マリー「素晴らしいです…!言葉だけでなく行動を伴う信仰だなんて…!それに、戒律を重んじてその身を捧げる騎士だなんて、宗教騎士の理想の体現といえます!我々シスターフッドも見習わないといけませんね…!」
アカシア「シスターフッドは充分立派だと思うが…しかしグルメ騎士は非常に厳しい修練を長年積んでいるからなぁ。簡単に見習えるものじゃないぞ?」
マリー「やはりそうなのですね…一体どんな修練だったのでしょうか?」
アカシア「三大行経想といって、三つの過酷な修行だ。ひとつめが『グルメ行脚』と呼ばれる無償奉仕で、豊穣豊漁の地で収穫作業を行う修行だ。その間収穫された作物は、一切口にしてはならない」
マリー「なるほど、豊作の土地での無償奉仕…」
アカシア「これを不眠不休で一年間」
マリー「死にますよね?」
アカシア「次にこれまでの人生で食べた食材ひとつひとつに感謝のお経を読み上げる修行だ。これを100日間不眠不休かつ断食断水」
マリー「死にますよね?」
アカシア「最後に人の涙でしか開花しない涙花を咲かせる修行。開花するまで何か月でも何年でも、食糧危機で苦しんだ人々を悼む涙を流し続け、花を咲かせなくてはならない」
マリー「…それも不眠不休なんですよね?」
アカシア「…涙を流し続けないといけないから、必然的にそうなるかな」
マリー「不眠不休で励むことが戒律になってるんですか…?」
アカシア「いや、流石にそんなことは無いと思うけどな…」
アロナ(というか、アカシア先生ご自身が神様と同義なんですけどね…)
■グルメ界の生物殺すのに刃物はいらぬ
ペア「…で、これが件のヘイロー破壊爆弾か」
マエストロ「ええ、切り札のひとつとして密かに製造していたのだがね。このまま隠し持ってたら、アカシア先生の怒りを買うだろう?」
ペア「懸命だな。万が一隠し持ってるのがバレたら、敵認定されて壊滅してたと思うぜ」
黒服「最早ここまで世界が変容してしまった以上、これまでの我々の備えはほぼ無意味になりましたからね。今後の我々の活動の在り方も含め考え直すべき時が来た、ということです」
ペア「これまでのゲマトリアの活動との決別の証がコレってわけか。とりあえずご愁傷様と言っておくべきか…ふむ(ペロッ)
黒服「あ、舐めた」
マエストロ「やっぱりそうなるんだね」
ペア「不味っ!!?まっっっっっず!!?」
『え?』
ペア「ぺっぺっ…!何だこれ、食えたもんじゃねぇ…!?アナザ食べてる俺が食えないとか、常軌を逸してるぞ!?」
マエストロ「そ、そんなに酷い味なのかい?」
ペア「廃ガソリンの臭いと溶けたゴムの食感、アルカリ性トイレ用洗剤みたいな味…」
黒服「味の例えに生物が食べれるものがひとつも入ってない辺り相当ですね」
マエストロ「…ひょっとしてこれ使えば、アカシア一家打倒出来たのでは?」
黒服「早まらないでくださいマエストロ。味覚にダメージ与えた分怒りが増大するだけです」
ペア「まさか俺たちにすら食べられないものを作り上げるとはな…やるじゃないかマエストロ…」
マエストロ「その褒められ方は非常に心外だなぁ…」
■テンションあげみざわであざまる水産
一龍「お呼びですかなフローゼ様?」
フローゼ「わざわざ来てもらって悪いわね、一龍。けどあなたが一番この食材について詳しいと思ってね…早速だけど、これを見てくれるかしら?」
一龍「む、これは…ビックリアップルでは?」
ビックリアップル?「キャハハハ!」
一龍「…いや、この満面の笑み、それに匂い…明らかに普通とは異なる…もしや、キヴォトス産のビックリアップルから派生した新食材ですか!?」
フローゼ「やっぱりそうなのね…!帰宅部の子たちが持ってきた時は、まさかと思ったのだけど…」
一龍「帰宅部の子たちが?それは一体?」
フローゼ「それが―――」
キララ『フローゼ先生はろはろ~!』
エリカ『突然ごめんね、フローゼ先生。実はこないだこんなの見つけたんだけど』
キララ『地面に落ちてて何かなーと思ったんだけど、顔ついてるリンゴなんて珍しくってさー!』
エリカ『撫でたり突っついたりしたら表情変わるのが面白くって、しばらくオモチャにしてたんだ。友達が給食部で育ててるリンゴじゃないかって言うから、持ってきた』
キララ『え、どれぐらいかって?うーんと、3日くらい?その間デコったりプリ撮ったりしてた!』
エリカ『何か最初の頃と違って、ずーっと笑顔になっちゃってさ。何かマズかったかな?』
一龍「なるほど…おそらくジュリちゃんへ納入する際に零れ落ちたものを拾ったのでしょうが…数日間楽しい日々を過ごすことでこうなるとは…!」
フローゼ「キヴォトスの土と水で育ったことで、通常種とは異なる生育条件…生態?を獲得したのかしら?匂いは明らかに原種とは異なるから、おそらく味も大きく違うわね…!」
一龍「名付けるなら『ニッコリアップル』というところでしょうか。すぐにアカシア様に報告し、新種の食材として登録しましょう」
フローゼ「ならエリカちゃんとキララちゃんを呼ばないとね!一龍、ビックリアップルの種や実はまだあるかしら?もう少し彼女たちに持たせてリンゴの成長を観察しないとね!それに味見して調理方法も考えないと!ふふふ、腕が鳴るわね…!」
一龍「おぉ、やる気に満ち溢れておりますなフローゼ様!しかし、キヴォトスの地質が食材の生育に及ぼす影響か…ミレニアムでも研究を深めてみるべきかの…」
ジュリ「一龍先生にお茶持ってきますね!」
パンちゃん「キシャシャー!」
普通のビックリアップル「ヒィィィ…!」
アキラ「そのうちゲヘナに大規模なリンゴ農園が出来そうですね、フウカ部長」
フウカ「アビドスのビナー並の名物になりそうね、ゲヘナ産リンゴ」
■色んな意味で目ん玉飛び出る
アカシア「おぉーーーい!!ニヤ!カホ!その処刑、ちょっと待ってくれー!」
ニヤ「にゃは、これはこれはアカシア先生。突然いらっしゃいませ。ただ少々お待ちくださいませ、今ちょっと忙しいので」
カホ「ええ、このとんでもない悪戯しくさりやがった魑魅一座の阿呆共を釜茹でにしないといけませんので」
アラタ「ぎゃーーー!!助けてくれぇーーーいアカシア先生ぇーーー!!」
一座メンバーA「アタシらも知らなかったんだーーー!!」
一座メンバーB「ただの悪戯グッズとしか知らされてなかったんだーーー!!」
アカシア「うん、その悪戯グッズのことだが…枝豆の件で間違いないな?」
ニヤ「ええ、百鬼夜行の飲食店組合の名を騙って、陰陽部宛に差し入れと称してこの枝豆を…」
カホ「ですがその枝豆を食べようと、莢を押し潰して出てくるのは…」
つ 目玉のようなナニカ
カホ「この目玉が、ぶりゅっと、というわけですね。チセちゃんは悲鳴をあげて気絶しました」
ニヤ「にゃははは、私なんて気付かずに数個食べちゃいましたよー。不思議な食感だとは思いましたが、塩気が利いて美味しくて…ええホントに、コイツらの目玉も抉り出して食べてやろうかと思うぐらい」
魑魅一座『ヒィィィィィ…!!』
アカシア「うん、ニヤがブチ切れてるのは理解出来た。理解出来たんだが…その…」
ニヤ「?」
アカシア「…実はそれ、本物のグルメ食材なんだ」
『え?』
アカシア「『枝魔目』といってな…本物そっくりの目玉のような豆が出てくる枝豆だ。ニヤの感想通り、ちょうどよい塩気が利いた美味しい枝豆で…次郎も酒のアテに好んで食べる食材だ。だからその…食べられないわけではないというか…結果的に美味しい食材を陰陽部に差し入れしただけって話になるわけでだな…」
ニヤ「………(プルプル)」
アラタ「…するってぇと、アタシら一座の罪は、飲食店組合の名前を騙ったことだけで…」
カホ「…結果的に、我々陰陽部のビビリ損?」
ニヤ「………あぁぁぁもぉーーー!!何でそんな不気味な食材がまかり通ってるんですかねぇ!?食べれりゃ何でもオッケーなのかもしれないですけど、これ見たら食欲下がらないですか普通!?」
アカシア「食欲が…下がる…??」
ニヤ「何ですかその初めてそんな概念に触れたみたいな反応!?」
アカシア「いや、仕留めた猛獣の目玉とか、割と普通に食べるし…」
ニヤ「なるほど確かにそうですねぇ納得ですよチクショウ!!」
カホ「ニヤ様お気を確かに…!?」
アカシア「あれ、何かまずいこと言ったか…?」
アラタ「アタシが言えた義理じゃあねぇが、もうちょい食に関してフツーの感覚持ってくれていいと思うぜアカシア先生よぅ…」
シュロ「え、手前が唆したアレ、本物のグルメ食材だったんです?」
コクリコ「…やっぱり今のキヴォトスで、食材を絡めた謀は禁物だねぇ…妙なところで躓いちまう…」
■余談:お祭り運営委員会の目玉商品
フィーナ「さァさよってらっしゃい見てらっしゃい!新発見のグルメ食材、『枝魔目』を使った料理デスよ!見た目は不気味だが味は一級品!『串焼き枝魔目』、おひとつどうデスかー!?」
シズコ「枝魔目を使ったチャレンジメニュー、『枝魔目ずんだ』いかがですかー!?ご自身ですり潰して作っていただく、新感覚ホラー体験グルメ!我こそはと思う方、挑戦どうぞー!」
ニヤ「…にゃははは…流石、商魂たくましいですねぇ…」
チセ「いざ挑む、目玉の恐怖、乗り越えて…」
カホ「無理しなくていいよチセちゃん!?」
知らずに枝魔目出されたら間違いなくブチ切れると思う。
来週はお休みをいただき、再来週より一龍編を投稿いたします。
感想お待ちしております!