シャーレの先生 アカシア   作:電シャーク

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ギリギリ間に合いました。


グルメあーかいぶっ!⑳

 

■この世の摂理を知る者達

 

アカシア「こんにちはツムギ。もうすぐコンサートかい?」

ツムギ「おやこんにちは、アカシア先生。私が間もなく迎えるであろう未来を、よくお分かりになりましたね?」

アカシア「その手に持っているのは、ハードロックソルトだろう?喉の薬としても用いられることの多い岩塩だ。しかし声の調子に悪いところは無さそうだから、近々のコンサートに備えているのかな、と思ったのさ」

ツムギ「流石の御明察です。というより、食材が絡めばアカシア先生に隠し立てなんて出来るはずもありませんでした。尤も隠すつもりもありませんでしたが」

アカシア「もしよかったら、その岩塩を喉薬として用いる場合の比率や温度を教えようか?」

ツムギ「素敵です。さながら―――『ウィザード』。先生はおとぎ話の良い魔法使いのように、輝きの舞台へ導いて下さるのですね」

アカシア「ふふ、そこまで褒められるとこそばゆいな。私は先生として当たり前のことをしているまでだよ」

ツムギ「本当に謙虚な方ですね。それでは優しい魔法使いさんに報酬を。こちら、今お話していたコンサートのチケットです。お時間に余裕があれば、見にいらしてください」

アカシア「ありがとうツムギ。もちろん行かせてもらうよ」

 

 

 

ツムギ「キィエエエエエエエエ!!!!!」

ツムギ「人間共はエサになれ!!!猛獣共のエサになれェェェェェ!!!!!」

 

『死ね!死ね!喰われろ!死ね!死ね!喰われろ!』

 

 

 

アカシア「ふむ、自然界では人間もまた食材ということか。深いな」

アロナ『絶対そんなつもりで歌ってませんよ!!?』

 

 

 

■給食部戦力拡大中

 

アキラ「パートナー猛獣、ですか?」

フローゼ「ええ、腕利きの美食屋や料理人、グルメ関連の様々な技術士が相棒として行動を共にしている動物ね。飼い主を乗せて空を飛んだり海を潜ったり、時には食材を調達したりね。有名な研ぎ師のパートナーが、契約しているシェフの元に飛んで行って包丁の受け渡しをしている、なんて例もあるわ」

フウカ「へぇ…では、灰汁獣というのは?」

フローゼ「うーん…灰汁獣は自然の生き物じゃなくて、複数種の生物を混合させて作り上げた合成獣でね。戦争や大量破壊、人間や希少な生物の拉致を目的として人間の都合で作り出される凶悪な生命体なの。三虎の手前あんまり否定したくはないけど、好ましくない手法なのは確かね」

ルミ「なるほど、それじゃあ…(チラッ)」

 

ジュリ「パンちゃんたち、その荷物はこっちに持ってきてー!」

 

パンちゃん(大)「ギシャー!ギシャシャ、ギシャー!」(←捕獲レベル60相当)

パンちゃん(小)×20体「キシャー!キシャー!」(←捕獲レベル20相当)

 

ルミ「…今給食部で飼ってるパンちゃんたちは、パートナーか灰汁獣かどっちなんですか…?」

フローゼ「ごめんなさい、あの子たちは私たちの常識の外にいる生き物なの」

ルミ「つまり分からないと」

アキラ「アカシア先生も一龍教授も同じこと仰ってたんですが」

フウカ「あと明らかにジュリが作った数より多くいるんですけど、独りでに増殖してませんかアレ」

フローゼ「お願いだからあんまり問い質さないで…!ジュリちゃんの料理だけは本当に何ひとつ理解が及ばないの…!」

 

 

 

 

 

■エビのような歯応え、クリーミーな食感

 

ユキノ(私たちFOX小隊が、アリウス分校…もとい、アリウスグルメスクールに招聘されて、間もなく一か月…)

ユキノ(旧知のRABBIT小隊がアカシア先生と三虎先生を伴い、私たちの元を訪れ…)

ユキノ(そして、アリウスグルメスクールの教導部門に就いてくれないかと頼まれた時は、とてつもなく驚いた)

ユキノ(防衛室長の件もあって路頭に迷いかけていた私たちは、RABBIT小隊の皆の熱心な勧誘に乗り、4人揃ってアリウスグルメスクールに着任したのだが…)

 

「あ、お疲れ様ですユキノさん!」

「ユキノさん、先日の弾倉交換時の動き方について質問が…」

 

ユキノ(この学校は、とても居心地が良い)

ユキノ(アリウスの生徒たちは荒削りだが素養があり、素直で吸収力も高い)

ユキノ(同門たるRABBIT小隊の皆も、最後に会った日から別人のように成長している)

ユキノ(何より、アリウスグルメスクールの校長である三虎先生の適確な指導が行き届いている。これほど充足感に満ちた日々を送れる学校は、キヴォトス中を探しても見つかりはすまい)

 

ユキノ(ただ…たった一つ。たった一つだけ、どうしても許容できないことが…)

 

サオリ「お待たせ、今日の昼ごはんは食用イモムシだ。養殖してたのが大量に収穫できたからな」

ミヤコ「素揚げ、塩茹で、バター醤油炒めの3種類です。欲しい所に並んでいってください!」

 

ユキノ(…アリウス生たちも、RABBIT小隊も、昆虫食に抵抗が無さ過ぎることだ…!)

 

ヒヨリ「うう、やっぱり塩茹でも美味しそうです…そっちにすればよかったかなぁ…」

ミサキ「いいよ、そっちのと数本ずつ交換しよう。私もバター醤油炒めちょっと食べたかったし」

アツコ「私の素揚げとも交換しよう?」

ヒヨリ「ありがとう二人とも…!じゃあ遠慮なくもらいますね…!」

ミサキ「…ちょっとヒヨリ。一番大きいの選んで持ってくな」

アツコ「あと交換レートも不平等。何で一本しかくれないのに三本も持ってくの」

 

モエ「くひっ…素揚げしたイモムシに山盛りのセイン糖をぶっかけて…ああ、ただでさえ甘いイモムシがさらに甘く、砂糖たっぷりの揚げバターのようで破滅的な味わい…!」

サキ「…モエ、アンタの破滅って糖尿病になることなの?」

ミユ「こ、ココアマヨネーズも美味しいですよモエちゃん…?」

 

三虎「…無理して食べなくていいからな、ユキノ」

ユキノ「いえ、ミヤコや皆が和気藹々と食べてる中、年長の私が断わるわけには…というか何であんなに抵抗なく食べられてるんですか!?」

三虎「…前任の馬鹿女が、現地での食糧調達訓練と称して虫を食べさせていたらしくてな。その時の蛆虫みたいな奴より遥かに美味いし養殖も簡単だからと、すんなり受け入れてな…RABBIT小隊は公園で暮らしていた時に飢えに耐えかねて食べてた時期があったそうだ」

ユキノ「済まないRABBITの皆…!私たちが不甲斐ないばかりに…!」

三虎「というか、クルミとオトギは外食しに行ったぞ。着いていかなかったのか?」

ユキノ「初耳なんですが!?裏切ったなアイツら!?」

三虎「それとニコは今日の食事当番だから作ってる側だ」

ニコ「皆さん、お代わり持ってきましたよー♪」

ユキノ「順応早いなニコ!?」

 

 

 

 

 

■誰がための幸運の象徴

 

アスナ「こんにちは、アカシアせんせー!あ、一龍先生もいる!」

アカシア「お、いらっしゃいアスナ」

一龍「いらっしゃいアスナちゃん。また何か見つけたのかね?」

アスナ「うん!凄そうなの見つけたよ!」

リン「…あのですね、アスナさん。以前全学校に周知したように、新食材と思しきものを発見した場合は下手に触れたりせず、写真を撮影してシャーレに送付し確認もしくはアポを取ってから…」

アカシア「いや、いいんだよリン。アスナの場合、そのひと手間が致命的になりかねない食材の発見が多いから」

一龍「写真を撮る時のフラッシュで毒化したり跡形もなく溶け去ったりする食材も珍しくないからのう。触れずにというのはそういう危険を避ける意味もあるんじゃよ」

リン「…そんな食材をどうして彼女は普通に手に持って来れているんですか…?」

アカシア「まあ、アスナだし」

一龍「アスナちゃんじゃからの」

リン「ええー…」

アロナ『そ、それでアスナさん!今回はどんなのを見つけたんですか!?』

アスナ「はいこれ!」

リン「これは、シロツメクサ…クローバーですか?」

アロナ『わ、すごくたくさん葉っぱが…ブーケみたいです!』

 

百葉のクローバー

 

アカシア「………………」

一龍「………………」

 

アカシア「………………(ゴシゴシ」

一龍「………………(ゴシゴシ」

 

つ 百葉のクローバー

 

「「………………………………は???」」

 

リン「ど、どうなさったんですかアカシア先生、一龍先生?目が真球みたいに真ん丸になってますよ?」

アカシア「…グルメ界の植物、それも次郎のフルコース、その前菜に採用された食材だ」

アロナ『え゛』

アスナ「次郎先生のフルコース!?」

アカシア「…それも、グルメ界に自生する植物の中では最上位クラスの採取難易度、調理難易度を誇る、我々の世界でも幻のメニューと呼ばれるほどの食材なんだ…」

リン「そ、それって、捕獲レベルだとどのぐらいなんですか…?」

アカシア「…少なく見積もっても、3000以上…」

 

『………………』(しーん)

 

アスナ「次郎先生のフルコースなんだ…じゃあ教えてあげたら喜んでくれるかな?よし、連絡とろっと!」

アカシア「待て、待ってくれアスナ。私たちに現実を受け容れるための時間をくれ」

一龍「あとジロちゃんにはワシらから伝えるから。多分ショック受けるから。グルメ界で命がけで獲ってきた食材のはずじゃから」

リン「か、箝口令…箝口令を敷かないと…いえ、まずは周辺地域からの住民の退避…?(オロオロ)」

アロナ『もしもしペアさんですか!?今すぐシャーレまで来ていただけないですか!?ちょっと私たちだけじゃ事態が…というか現実が飲みこみきれなくて…!!?』

 

アスナ「???どしたのみんな???」

 

 

 

 

 

■余談:駆け付けたアカシア一家+α

 

orz ←次郎

 

フローゼ「そ、そのね、次郎?キヴォトスであっさり採取出来たからといって、次郎が懸命に採ってきた経験が無駄になるわけではなくてね?」

三虎「俺が美食會のボスをやってきた時でも兄者のフルコースは食べられなかったし、キヴォトスで兄者と一緒に食べる機会に恵まれて嬉しく思ってるぞ、うん…」

ペア「じ、実際グルメ界にあったそれとキヴォトスで採れたこれが同一ではない可能性だってあるしな?落ち込むにはまだ早いというかだな…」

 

アカシア「食運…これ食運で片づけていいのかなぁ…食運だけで捕獲レベル3000超の食材ゲットできるかなぁ…?」

一龍「実際出来てしまってますので…どうにかしてちょっと抑えられんかのネルちゃん?」

ネル「何をどうやってだよ」

 




百葉のクローバーは作中未登場で捕獲レベルも明かされませんでしたが、それぐらいはあるかなと。
あと次郎のフルコースはグルメ界の8大陸で一つずつ見つけてそうなイメージです。百葉のクローバーは、マザースネークの花畑とかかな?

次話は給食部メイン回です。仕事が忙しいので再来週の投稿になります。

それでは感想お待ちしております!
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