シャーレの先生 アカシア   作:電シャーク

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お待たせしました、話の〆となるあーかいぶです。
前後編となりますので、明日の同じ時間に投稿させていただきます。


…本当は、以前お話したもう一話と合わせてこの3連休で投稿する予定だったんですが、手違いでその一話のデータを紛失してしまいました…萎えるぜ…。


グルメあーかいぶっ!㉔

■陽ひらく彼女たちの狂想曲

 

ヒナ「こんにちは、フローゼ先生。依頼されてたヒノム火山の石じゃがとマントル芋、採取してきました」

フローゼ「お疲れ様、ありがとうヒナちゃん。フウカちゃん、お茶出してくれるかしら?」

フウカ「はーい。…あれ?委員長、また背が伸びたんじゃない?」

ヒナ「ええ、先月より+2センチ」

フローゼ「ヒナちゃんは以前からオーバーワーク気味だったからね。ちゃんと食べてちゃんと休まないと、成長に悪影響を及んじゃうもの。逆に言えばそれさえ採れれば、人並み以上の速度で成長出来るわ」

ヒナ「そうですね、次郎先生と初めて会った時も、開口一番『寝ろ』って言われました。戦闘能力は他の生徒と比べて群を抜いてるから、私がやるべきは身長と体重をつけることだ、って」

フウカ「おまけにゲヘナには師匠もいらっしゃいますからね。食事が栄養満点で美味しいのはもちろん、師匠の威光でゲヘナ生がぐっと大人しくなりましたから」

ヒナ「ええ、おかげで犯罪発生率も仕事もほぼ半減よ。加えてアカシア先生からもらったサボテンドクターのおかげで、疲れも残らないわ。それに適合食材も見つかったのよ。フグ鯨の白子と蜜蝋燭。どっちもフルコースに入れようと思ってるわ」

フローゼ「あら、どっちも滋養強壮効果が非常に高い食材ね。今の調子なら、数年後には三虎と肩を並べられるんじゃない?」

ヒナ「それは…ちょっと大きくなり過ぎかな?」

フウカ「というか、三虎先生ぐらい大きい委員長って…プッ!」

 

『アハハハハハ!』

 

アコ「ハッ!!?ヒナ委員長があどけない笑顔を…じゃなくて、助けを求めている気配がします!急行しましょうイオリ!!」

イオリ「駄目。逃げようたってそうはいかねえよ。ちゃんと反省文書いてその後は書類仕事に従事しろ、アコちゃん」

アコ「大体何で私が反省文書かないといけないんですか!?委員長が成長に伴って服がきつくなってきているようだったからサイズ図ってただけで変質者扱いなんて、納得いきません!!」

イオリ「世間一般では人のロッカー開けて私服漁るヤツを変質者って言うんだよ!!」

 

 

 

 

■思い描くは美味しい未来

 

ミナ「お、今回の灼熱オレンジ、上手く調理出来てるな」

キサキ「うむ。油分が飛んで瑞々しい果汁だけがしっかり残っておる」

ルミ「でしょ!?いやぁ、火力と着火時間のバランス、ようやく見極めポイントが見つかってね。フウカ部長みたいに食材の声が聴ければ早かったんだけどさぁ…」

カグヤ「灼熱オレンジは特殊調理食材ですが、油分を飛ばす調理さえ出来ればかなり楽な部類と聞き及んでいます。これなら山海経の特産物として売り出すことも可能なのでは?」

キサキ「大規模生産過程での調整は必要になるが、光明は見えたのう。カイザーの影響力もかなり削いだし、そろそろ栽培に乗り出すべきか…」

ルミ「…にしてもカグヤ、貴女随分と丸くなったわね。昔は外来の食文化の積極的導入なんて認められないー!山海経の伝統に背く気かー!ってキサキに噛みつきまくってたのに」

カグヤ「うっ……そ、それを指摘されると痛いですわね…」

ミナ「あの時カグヤが食べてたのって何でしたっけ門主様?」

キサキ「トロウナギじゃったな」

カグヤ「ちょっとミナ!?門主様まで!?」

 

 

 

カグヤ『ウナギですって?はぁ、まったく…長く気高き伝統をもつ山海経に、何の食材で立ち向かおうとしているのかと思えば…。たかがウナギ程度で、山海経の歴史ある食文化に名を連ねようなど、夢のまた夢───』

 

カグヤ『──────!!?!?』

 

カグヤ『ま、まあ?確かに大口を叩くだけの味ではありますね?こ、ここまでの美味しさなら、ええ、山海経の伝統を損なうものではなさそうですし…仕方ないですから、認めてあげなくもないですけど…!』

 

 

 

キサキ「即落ち3コマじゃった」

ルミ「くっ殺のお手本みたい」

カグヤ「ううう、仕方ないじゃないですか…!あんな隔絶した美味しさだなんて思いもよらなかったし、あの味に匹敵するものがこれからどんどんキヴォトスに溢れるって聞いたら、伝統とか歴史とかまったくよぎらなくなって…」

キサキ「どんなに意固地でも胃袋掴まれたら人間は勝てんということじゃな」

ルミ「三大欲求のひとつを完璧に満たしちゃうんだものね。七つの大罪に暴食の罪が入っている理由が理解できるわ」

ミナ「ちなみに、山海経の歴史と伝統をかなぐり捨てて、外来の食材をガンガン取り入れてる今の状況は、どう思ってるんだ?」

カグヤ「グルメ時代最高!美味しいもの沢山で嬉しい!」

キサキ「後悔はなしか」

ルミ「山海経の未来は明るいわね」

 

 

 

 

 

■感謝の芽吹きを待ち侘びて

 

ユカリ「百鬼夜行学区内の治安が悪化している…ですの?」

レンゲ「アカシア先生一家の来訪以来、キヴォトス全体の犯罪発生率は低下の一方だって聞いてるけど、違うのか?」

ニヤ「にゃはは、そうなんですが…ウチは例外というか。とりあえずこれ、こないだ発生した事件の詳報なんですが、見ていただけます?」

キキョウ「───うっわ、これって…」

ナグサ「芋煮同好会が嗜好の違いから内部分裂、各々の主張をぶつける会議がヒートアップし銃の撃ちあいに発展…最終的に無関係の一般市民をも巻き込み人や建物に甚大な被害…」

カホ「御存知の通り、百鬼夜行は趣味嗜好による独立独歩の風潮が強いですからね。個々人の主張がぶつかり合うのは当然といえば当然…ではあるのですが…」

ニヤ「芋煮に入れるのは甘味牛かガーリッ牛か、貝豚かとうがらし豚か、ベースは醤油か味噌か、それをどこから採るか…全く同じ意見はふたつとない、ってレベルで意見が食い違って、到底収められる余地なんてない、って話でしたよ。にゃははは…はぁ」

ユカリ「食材が豊富過ぎるのも考え物ですわね…」

キキョウ「けど、一番マズいのは、相手の主張を否定し合う事態の末にこうなった、って所よ」

カホ「その通り。他人の食を否定したり邪魔したりっていうのは、アカシア先生たちが一番嫌う所業ですからね…介入される前に何とかしないと、最悪トリニティの二の舞…百鬼夜行の統治能力が疑われる事態になってもおかしくありません」

レンゲ「とはいえ、力ずくや頭ごなしに押さえつけるだけだと、火種が残ったままになるよなぁ…どちらか一方に肩入れしてると思われるわけにゃあいかねーし…」

ユカリ「あちらを立てればこちらが立たず、ですわね。せめて身共、調停委員会の手に収まる範囲内まで収束出来れば良いのですけど…」

 

ナグサ「…要するに、騒動を起こすのを防ぐのではなく、他人の食を否定するような行動を防ぎたい、っていうのが第一の目的なのよね?」

ニヤ「…まあ、そうなりますかねぇ」

キキョウ「何か案でもあるの?」

ナグサ「まあ、案というほどじゃないけれど…アカシア先生から教えていただいた食材で───」

 

 

生徒A「…」

生徒B「…」

生徒C「…」

生徒A「…あ、あの…本当にこれで咲くんですか…?」

ユカリ「ええ、何度も見せた通りですわ!感謝の念を捧げることで種から発芽し、ハムで出来た花を咲かせる食材、ローズハム!芋煮同好会の皆さまは、これを開花させるまでこの修行場から出ることは叶いませんわよ!」

生徒B「やっぱり嘘だよう!?さっきからずっとありがとうって心の中で唱え続けてるけど、びくともしないじゃん!」

生徒C「さっき30分で咲かせたのも、何かトリックがあるんでしょ!?そうなんでしょ!?」

ユカリ「何度も言うように、全くありませんわ。純粋に食材への感謝で心を満たし、その鉢植えの前に座すことでしか、ローズハムは成長しません。それにホラ、実際に発芽した方もいらっしゃいますでしょう?」

生徒D「は、発芽、したけど…4時間感謝し続けてようやく芽が出ただけだし…足が、もう、痺れて…」

生徒A「うわーん、二度と芋煮のことで喧嘩しないから許してぇぇぇ…!」

 

 

ナグサ「白魚そうめんをアカシア先生からいただいた時に聞いたお話なんだけど、先生の世界では食への感謝を学び育てる食義というものがあるそうなの。その食義を極めるための訓練施設で、修行食材として使われていたのが、私たちにくれた白魚そうめんや、あのローズハムなんだって」

レンゲ「なるほどな。食への感謝という概念が希薄だからこそ、相手の食への否定という軽挙に繋がるわけだから…」

キキョウ「感謝の心を学ぶための食材を、実践体験してもらうというわけね。実際かなり難易度高いし、完了する頃には食への感謝が根付いている、と」

カホ「私も試してみたから分かりますが、咲かせるまでってのはかなりのスパルタですね。実質罰みたいなものですし、その分食を重んじる態度の矯正効果は高いかと」

ニヤ「にゃははは。少なくとも、再犯の見込みはぐっと低くなりますねぇ。これで連邦生徒会にも良い報告が出来そうです。流石は調停委員会さん、見事なお裁きでした」

ナグサ「ありがとうございます。…まあ、あれを30分未満で咲かせられるユカリさんが居てこその策ではありますが」

レンゲ「アタシらだと最低でも1時間はかかるもんな」

キキョウ「真面目で純粋な性格なのが、こんな風に作用するとはね」

 

ユカリ「咲かせたローズハムはご自身で食べてくださって結構ですわ!とても美味しいですから、頑張れ頑張れ、ですわー!」

「「「「「むーりー!」」」」」

 

 

 

 

 

■エデンのうどん

 

セイア「ねえ、ナギサ」

ナギサ「何ですかセイアさん」

セイア「今日はトリニティとアリウスの初めての公式会談、そして友好条約締結の日で、キヴォトスの歴史にも残る重大な出来事だと思うんだが」

ナギサ「間違いなくそうですね」

 

セイア「…じゃあ何で私たちは、アリウスの学舎にやってきて、うどん生地をこねているんだい?」

ナギサ「こねてるんじゃなくて、踏んでるんですよセイアさん。ほらもっと力入れて」

セイア「揚げ足にもなってない返答をするんじゃないよナギサ。後これが私の限度なんだ、ミカの馬鹿力を基準に考えないでくれ」

 

サオリ「顔を突き合わせて話し合いするよりも、こちらの方が建設的だと思ったのだが…やはり、不満だったか?」

セイア「いや、不満というわけじゃ…いやどうなんだろう、何でこんなことしてるのか意味分かってないから、不満といえば不満なのかな…」

三虎「…やはりまだ、トリニティに対して複雑な思いを抱える生徒も少なくなくてな。首脳陣である我々の間で話し合いによる解決が成されたとしても、一般生徒の間に聳える感情やしがらみの壁は越え難い」

ユキノ「だからこそ、協力して何かを作るという行動を以て、平和的収束への足掛かりにしていこう、というわけですね。私は素晴らしいと思いますよ。仮に話し合いになった場合、SRT代表として無関係の私も同席するのは確実でしたし…正直こうやってうどん捏ねてる方が圧倒的に気が楽です」

サクラコ「私もです。一緒に食事を作って、一緒に食卓につくというのは、グルメ時代の先鋒と期待されているアリウスらしい在り方ですし、グルメ時代のキヴォトスの象徴ともいえます。何より───」

 

 

 

「いち、に、いち、に…!」

「お、踏むのが様になってきたね」

「ええ、何となくコツが分かってきましたわ。 とはいえちょっと疲れてきましたけど・・・」「あはは、箱入りお嬢様にゃやっぱり厳しいかー。 後やっとこうか?」

「舐めないでくださいまし! コツさえ掴めれば体力消費も抑えられますわ! まだまだやれますわよ!」

「お、根性はいっちょ前じゃん。 へへっ、 それじゃ息を合わせて、せーのっ!」

「「いち、に!いち、に!」」

 

「へえ、シスターフッドも料理当番は持ち回り制なんだね」

「そうなんです。 一度に数十人前作るのって大変ですよねぇ…」

「うんうん、終わった後身体バキバキになっちゃう。料理って結局のところ体力勝負だよ」

「こうしてうどん踏むのも、 体力要りますしね…そのせいでしょうか、何だかお腹が空いてきました」

「私も。早く食べたいねー」

 

「えぇ、絶対冷やでぶっかけでしょ!? 薬味と天かすたっぷり乗せてさ!」

「いいえ、釜揚げです。 薬味なしで濃いめのつゆに漬ける。 これが至高です」

「いやいや、 身体動かした後に食べる冷やは食べ応えあって美味いよー?」

「天かすを入れるというのがナンセンスですわ。うどんの食感の邪魔になるではないですか!」

「むう、そこまで言うなら試してみろー!アタシはアンタが推す釜揚げ食べてやる!」

「良いでしょう、天かすたっぷりの冷やうどんぶっかけ、受けて立ちますわ!」

 

「…双方美味しいって言うに一票」

「私も。てか賭けにならないでしょ」

「そりゃそうだ。うどんはどう食べても美味しいしね」

「だよね。…じゃあさ、 トリニティ学区に美味いうどん屋あるんだけど、今度一緒に行かない?」

「…ん、いいよ。 私もアリウスでオープンしたばかりの喫茶店、 紹介するね」

 

 

 

サクラコ「実際に、トリニティ生とアリウス生が手を取り合っている。それだけで充分だと思いますよ」

ミサキ「…不思議なもので、直前まで貴女たちトリニティに対してモヤモヤとした感情を抱いていたんだけどさ…」

ナギサ「…こうしてうどん生地踏んでると、自然とそれに集中してしまうせいか、何か色々どうでも良くなってきますよね」

三虎「そう感じてもらえるだけでも願ったり叶ったりだ。詰まる所、こういうのは相互不理解の極みだからな。口先と文章だけで友好関係を結んだからといって、互いに抱いた不信感が無くなるわけじゃない。結局一番良いのは、こうして同じ食卓について、同じ食を分かち合うこと…少なくとも、俺や、アカシア様、フローゼ様、兄者たちはそう信じている」

ナギサ「はい、理解できます。今こうして一緒にうどんを作っている両校の生徒は、同じ未来を…一緒に食事を作り、食事を共にする、明るく楽しい未来を見据えています」

サオリ「そうだな。言葉でも文書でもなく、行動によって示され、築かれる絆…それはきっと、これまでの暗い歴史を、本当の意味で過去にする、確かな繋がりになると、そう信じられるよ」

セイア「…まったく、そんな風に言われたら、私一人悪者みたいじゃないか。仕方ない、とびっきり美味しいうどんを作って挽回しないとね」

 

「「あのー…」」

 

ミネ「…良い話をしてるところ申し訳ないのですが…」(←簀巻きで吊るされてる)

ミカ「そろそろ私たちも復帰していいんじゃないかなー、なんて…」(←簀巻きで吊るされてる)

 

セイア「地面ごとうどん生地踏み抜いて瓦礫と混ぜた人たちが何か言ってるよ」

ナギサ「うどん踏むのに震脚使うような人は、厨房には立たせません」

ミカ「わざとじゃ無かったんだってばぁナギちゃん!美味しいうどんを作ろうと気合入れて踏み込んだら、力込めすぎちゃったってだけで…!」

サオリ「いや、だからといって、友好条約締結に来て学舎を破損させるのは…」

三虎「正直に言うと、俺でも庇い切れん。条約破棄、宣戦布告と見なされても仕方ないぞ?」

ミネ「…あの、私も駄目なのでしょうか」

サクラコ「ダメに決まってるでしょうミネさん。うどんを踏むのはコシを入れるためと聞いて、腰を入れてシールドバッシュするとか、いつも以上に正気を疑いましたよ?」

ヒヨリ「というか何でうどん作りで地割れ起こす人が二人も居るんですかぁ…?私たちが知らなかっただけで、トリニティって脳筋集団なんです…?」

セイア「ほら、余計な誤解与えてる…初手で有り得ない真似したミネも、それを目の当たりにしながら力の加減を間違ったミカも、トリニティ戻ったら覚悟しときなよ?」

ナギサ「友好条約締結の場を文字通り踏み荒らした怪獣一号二号は、そのまま吊るされててください。ツルギさん、申し訳ないですが引き続き見張りお願いします」

ツルギ「キヒヒヒ、任せろォ…私もうどん作り、したかったんだけどなァァ…!」

((私怨も入ってて普段より倍増しで怖い…!))

 

 




明日もう一話アップします。
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