シャーレの先生 アカシア   作:電シャーク

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お待たせしました、本作の最終回にあたるストーリーの投稿を開始いたします。
以下、注意事項です。

①今日と明日、そして来週の土日の計4回に分けて投稿いたします。
②独自設定、独自解釈一辺倒のお話になります。
③ブルアカ本編で未開示の設定に関しても、独自解釈を行っています。
④既存の設定と矛盾している箇所が見受けられるかもしれません。そういうのが許せない方は読むのをお控えください。
⑤否定的な感想を投稿することもお止めください。


以上の事柄を守れる方のみ、お読みいただきますようお願いいたします。

それでは本編をどうぞ。


美食神とキヴォトスの未来①

要塞都市エリドゥ。

ミレニアムサイエンススクールの生徒会長である調月リオが、自校の予算から多額の横領を行い密かに建設していた都市だ。来るキヴォトスの危機に備え、ミレニアムの歴史上でも屈指の才女であるリオの手腕を余すところなく発揮し建設された攻防一体のこの都市は、現在アカシアの手により別の役目を担っている。

 

「待たせたわね、ヒマリ」

 

エリドゥの秘密入口の傍で、一人ぼんやりと佇んでいた明星ヒマリに、やって来たばかりのリオが声をかける。

 

「貴女にしては遅いですね、何かありましたか?」

「出てくる途中でノアに捕まっちゃってね。私と貴女、それに一龍先生の間で何か秘密の会合が行われているものと勘づいてるみたいだわ」

 

悩ましげにそう語るリオに、ヒマリも同調して溜息をついた。

 

「そりゃ勘づきますか。共有の予定表見れば、私たちの予定がちょうどすっぽり抜けてるのが丸わかりですしね。ノアもユウカも、あとはチヒロとかウタハとか、充分参加資格はあると思うんですが」

「正直私もそう思うわ。けれど、みんな一龍先生が目をかけてるみたいだし、いずれ自力で見つけ出すと信じているんでしょう」

「ですね。あの子たちなら近い内に物証を見つけて突き付けてくるでしょうし、我々の招待枠を使うまでもないでしょう」

「…招待枠といえば、エイミを誘うって言ってたはずだけど、その件はどうなったの?」

「…断られました。私と会長が居てアカシア先生たちも居るんなら、頭脳面でも武力面でも私が居る必要ないでしょ、ですって。本当にマイペースな子ですよね…」

 

はぁ、と揃って溜息をつきながら、舗装されたエリドゥの道をまっすぐ進んでいく。

やがてひと際大きいビルの入り口までやって来たところで、見慣れた小柄な人影が目に入った。

 

「よっ、会長」

「お疲れ様。貴女がここに居るということは、一龍先生からの依頼はなく完了したのね?」

「当たり前だろ。要人の護送なんざ屁でもねえ。今はアスナたちが傍についてる」

 

リオたちに気付き近寄って来たネルが、リオの問いかけに肩をすくめてみせた。ビルに入り、エレベーターに乗り込みながら、3人は他愛もない会話を交わす。話のネタは主に、他の参加者についてだ。

 

「なー、いい加減他校の武闘派連中も呼んでいいんじゃねえか?ゲヘナの風紀委員長とか、トリニティの正実の委員長とかよ。会長たちからも口添えしてくれよ」

「その二組、そんなに必要かしら?両校の代表は出席してるし、アカシア先生たちが居て武力に不足があるとは思わないでしょう?」

「つってもよぉ、アタシら実力でここに参加してるわけじゃねえからさ…会議の内容聞いてもチンプンカンプンだし、ちょっと気まずくて…」

 

普段の彼女からすれば珍しく、所在なさげにブツブツとぼやく。そんなネルに、気持ちは分かりますけどね、と前置きして、ヒマリがフォローを入れた。

 

「本当に立ち入る資格がないなら、アカシア先生が許可していませんよ。アスナさんの存在を差し引いても、C&Cの皆さんはメンバーとして名を連ねることは許可されているんです」

 

チン、という音と共に、エレベーターが動きを止め目的階に到着したことを告げる。開いた扉の向こうには、大きな長机とそこに腰かける数名の姿が見えた。

 

「キヴォトスの食と、その裏側に潜む世界の真実、そして未来を担うこの秘密機関───」

 

ここは要塞都市を一望する楼閣の頂上にして、キヴォトスの真実に光を当て照らし出さんとする未来への灯台。

その名も───

 

「キヴォトス第0ビオトープの一員として」

 

 

 

 

 

 

入口の警備に戻る、と言って帰っていったネルと別れ、リオとヒマリが部屋の中央部に進むにつれて、芳しい匂いが鼻をついた。

会議場にはとても長い机がひとつ置かれ、その上には所狭しと美味しそうな料理が並んでいる。勿論フローゼの手作りであり、席に着いたものから自由に食べていって良いルールだ。

 

この第0ビオトープへ参入する条件は、主に3つ。

一つ目は、主要メンバーであるアカシア一家から招待された者。

二つ目は、自力でこの会議の存在にたどり着くこと。

そして三つ目は、アカシア一家に招待された者が所有している招待枠に入ることだ。

 

リオとヒマリは一つ目にあたり、ネルたちC&Cは二つ目にあたる。…というより、アスナが例の如く勘でこの会議の存在を見つけ出してしまったために、このルールが制定されたのだが。アカシアや一龍が頭を抱えたことも言うまでもない。

とはいえ、会議参加者のほとんどが頭脳労働型のメンバーで、実働を担うのはワカモとトキ、アキラぐらいだったため、偶然とはいえC&Cが参加してくれたのは、アカシアたちにとっては渡りに船であった。

 

すでに半分以上のメンバーが席に着き、思い思いに料理を楽しんでいる姿が目に入る。

連邦生徒会の七神リンと扇喜アオイ、岩櫃アユムの3名は、ペアを間に挟んでゲマトリアの黒服、マエストロと何やら話しているようだ。

その列の端には、前回の会議から参加した「プラナ」と名乗るGTロボが座っている。アカシアの秘書を務め、リオとヒマリも製作に携わったGTロボ「アロナ」の二号機だ。他メンバーとの関わりを避けている…ように見えるが、実際には稼働当初のアロナ同様、“美味しい”という感覚に耽溺しているだけだったりする。

 

そんな彼女たちの居る列を避け、もう一方の列の空いている席を選び座ると、一番近くに座っていた女生徒から声をかけられた。

 

「御機嫌よう、ミレニアムのお二方。何やら入口のところで、美甘さんと揉めてたみたいだけど?」

「こんにちは、百合園セイア。別に揉めてたわけじゃないわ。ゲヘナの風紀委員長やそちらの正実の委員長を、そろそろ招いたらどうかって相談を受けてただけ」

 

声をかけてきたのは、トリニティ代表として参加している百合園セイアだ。

そしてその横では、浦和ハナコもにこやかな微笑みを浮かべている。

 

「なるほどね。私としてもそろそろ、招待枠を誰かに使いたいと思っているんだが…やっぱりサクラコが最適かな、ハナコ?」

「そうですね、もちろんサクラコさんは有力な候補ですが…美甘さんの仰る通り、ツルギさんとハスミさんを招待するのもアリだと思います。お二人とも聡明ですし、何より旧派閥の連中に嗅ぎつけられにくいですから」

「そうなんだよね、未だに派閥の流れや影響下にある連中に、この第0の存在を知られるのは拙い。はぁ、ようやく煩わしい派閥の悪習から逃れたと思ったのになぁ…」

 

現在トリニティのティーパーティーは、次郎とアカシアによる指導および介入により、歌住サクラコや蒼森ミネ、剣先ツルギら各集団の長を加え新生を果たしている。

が、実際はまだ稼働したてで探り探り動き出している所であり、学内の各派閥は解散させられたとはいえ、旧ティーパーティーの3名───桐藤ナギサ、百合園セイア、聖園ミカと、彼女たちが率いていた派閥の影響力は、新興ティーパーティーメンバーであるサクラコたちの比較すると、未だ根強い。

そのため、旧ティーパーティー3名で一枠として席が設けられ、会議の際は3人のうち誰かが出席する、という形を取っている。いずれは新規加入メンバーにも参加権を渡すつもりではあるが、彼女たちがティーパーティー主要メンバーとして定着してからの話になるだろう。

 

そしてハナコは、そんなトリニティの複雑な事情を慮ったアカシアが、直接勧誘し参加している。

ハナコが普段からひた隠しにする能力の高さと、ペロロジラ教やアリウス、正義実現委員会など、トリニティ内で派閥を越えた広いコネクションを有することを見込んだ上での依頼だった。

 

「こんにちは、百合園セイア、浦和ハナコ。アズサは元気か?」

 

そんな風に挨拶しながら、ハナコたちの向かいに座ったのは、アリウスの代表である錠前サオリだ。後ろには七度ユキノも居る。

 

「こんにちは、サオリさん。もちろん元気ですよ。先日地下墓所で見つかった岩窟乳の採取ライン作りで、ヒフミちゃんやコハルちゃん共々忙しくしてます」

「ああ、アリウスの秘密通路の途中に湧いた天然のミルクか。まさかあそこであんなものが見つかるとはな。…そしてそれを他ならぬアズサが見つけてくれたというのがとても嬉しい」

「私も飲ませてもらったけど、濃厚なのに後味がスッキリしていて、とても美味しいね。紅茶にうるさいナギサが、アレを使ったミルクティーを絶賛していたよ」

「ヒフミちゃんも、あのミルクを使った料理をフルコースに入れてますしね。プリン美味しかったなぁ…!」

「私はミルクセーキが気に入ったよ。ニコやオトギは、エッグノッグにして飲んでいたな」

 

トリニティとアリウスの間で友好条約───通称“ウドン条約”が結ばれて以来、両校の交流は盛んに行われている。実戦演習ではSRTの戦闘技術を仕込まれたアリウススクワッド率いる部隊が、ツルギとハスミ抜きの正義実現委員会の小隊に勝利を収めたことが大きな話題となった。遺恨を拭い去り、未来に向かって共に歩みだしている両校の姿は、キヴォトスで非常に好意的に受け止められていた。

 

「どうぞ、お茶でーす!」

「ん、ありがとう。牛牧ジュリ」

 

席についたサオリの背後から、ジュリがお茶を差し出した。そしてリオたちにも配っていく傍ら、ゲヘナの代表であるフウカがサオリの横の席に腰かけた。

 

「お疲れ様です、フウカさん」

「美味しくいただいているわ、愛清フウカ」

「ありがと…まあほとんどフローゼ先生の手料理なんだけどね」

 

ゲヘナの代表としてフローゼに指名されたフウカとジュリだが、どちらかといえば会議で出される料理を作るフローゼの手伝いとして参加しているのが現状だ。

 

「…毎回思うけど、なんで私がゲヘナの代表なのかしら」

「確かに毎回口にしているな」

「その度に言ってるけど、万魔殿の現代表では不安があるからよ」

「正直フローゼ先生が貴女を連れてきてくれてホッとしました」

 

ぼやくフウカに、他校の代表たちが万魔殿議長を貶す形でフォローを入れる。

実際には、アカシアもフローゼもマコトの手腕を疑っているわけではなく、彼女の情報収集力を以てすれば、いずれ自力で辿り着くだろう、と考え、フローゼの直弟子であるフウカとそのサポート役としてジュリを優先して登用した形だ。もっとも、今や給食部はゲヘナ学園の三大権力組織の一角だ。万魔殿よりフウカとジュリを優先したとて、マコトが不満を口にすることは無いだろう。なおヒナは、マコトがこの会議の存在に気付いたタイミングで招待枠を使おうとフウカたちが画策している。

 

「すみません、遅くなりましたっ!」

 

入口から大きな声が響く。振り向いた先に居たのは、アビドス高等学校の代表である十六夜ノノミだ。

 

「こんにちは、ノノミさん。まだアカシア先生たちはいらしてないから大丈夫ですよ」

 

ヒマリが微笑みながら返答し、席に着くよう促す。ノノミは頭を下げながら、GTプラナの対面となる机の端の席に座った。

 

「今日は奥空アヤネは居ないんだね?」

「はい、お留守番です。毎回二人で抜け出してたら怪しまれちゃいますから」

 

アビドスの代表はノノミとアヤネだ。キヴォトスの根幹に関わる多くの秘密を砂漠内に抱えるアビドスの参加は、他の各学校の代表者も歓迎するところではあるが、元々5名しか在校生の居ないアビドスで、毎回特定の人物が欠席すれば、否応なく目立ってしまう。

そのため、最初に招聘されたノノミがアヤネを招待し、互いに交代しながら会議に出席する形を取っているのだ。

 

だが、それは建前であり。

会議の性質上、確実に強い反応を示すであろうホシノに勘づかれないようにしてほしい、という密命を貰っているが故の措置でもあった。

 

「おまたせ。ああ、立たなくていい。座ったままで、何なら食べ続けてくれて結構」

 

ノノミが席に着いたタイミングで、第0ビオトープ所長であるアカシアがやって来た。フローゼ、一龍、次郎、三虎も続いて入って来る。生徒たちは起立して挨拶しようとしたが、それを押し留められたため、また食事に向き直った。

 

「さて、今回の会議だが───フルコースがひとつ見つかった

 

しかし、続くアカシアの言葉に、食事を再開しようとしていた全員の手が止まった。

 

フルコースとは、美食屋たちが人生の目標、ひいては自身の人生の集大成として、前菜、スープ、魚料理、肉料理、メインディッシュ、サラダ、デザート、ドリンクの8つから構成される食材や料理のメニューであり、アカシアたちの世界ではその美食屋の実力の指標とされていたが、このキヴォトスでは単に、その人の大好物や思い入れのあるメニューが並べられるものとなっている。

しかしここで会議されるフルコースとは、そういった一般的な意味でのフルコースのことではない。

 

この場で言及されるフルコースとは、『星のフルコース』のことだ。

アカシアたちの世界において、地球が調理される過程で地表にじみ出た、地球そのものの旨味成分。 そしてその性質故に、地球という世界の構築に大きく関わっており、星のフルコースを解き明かし探し求めることは、その星の性質や成り立ち、世界の構成を紐解くことに直結していた。

 

そしてこのキヴォトス第0ビオトープは、『キヴォトスにおける星のフルコースの解明』、ひいては『キヴォトスの成り立ちと今後起こり得る未来の予測』を目的として活動している秘密組織なのだ。

 

「私たちが漂着して以来、密かに捜索を続けていた、キヴォトスにおける“星のフルコース”。各校のみならず、連邦生徒会やゲマトリアの協力も得ながら仮説を立て、検証していたわけだが……今回新たにひとつフルコースが確定すると共に、これまでの仮説を裏付ける、重要な証拠を入手した。これにより合計4つ…実質5つのフルコースが確定することになる

 

アカシアの言葉に、生徒たちの間で目の前の食事など最早目に入らないとばかりに緊張が走る。

第0ビオトープの会議はまだ両手で数えられる程度しか開かれていないが、その一回一回が、キヴォトスに隠された大いなる秘密、そしてキヴォトスそのものの存続に関わる内容ばかりだった。

そして星のフルコースについては、専門家と言っても過言ではないアカシアたちにより、非常に壮大な仮説"が建てられている。参加している生徒たちは納得しつつも信じ切れないといった様相でその仮説を受け止めていたが、それを確定させるような証拠、そして新たに解明されたフルコースのひとつが明かされるとなれば、この第0ビオトープ創立以来屈指の重大事だ。

 

そんな生徒たちの緊張を感じ取りつつ、アカシアは裏手に向かって呼びかけた。

 

「では、入ってきてもらえるか」

 

その呼びかけと共に、カリンとアカネに先導され、二人の女生徒が姿を現した。

 

「初めましてではないですね、にゃはは。百鬼夜行連合学院陽部部長、天地ニヤです」

「同じく百鬼夜行連合学院、百花繚乱紛争調停委員会副委員長の、御陵ナグサです」

 

 

 

 

 

 




学校別代表者まとめ

アビドス:ノノミ、アヤネ
トリニティ:ハナコ、ナギサ、ミカ、セイア(3名で一枠)
ゲヘナ:フウカ、ジュリ、アキラ
ミレニアム:リオ、ヒマリ、ネル、アスナ、カリン、アカネ、トキ
アリウス:サオリ、ユキノ
連邦生徒会:リン、アオイ、アユム、ワカモ(シャーレ直属エージェント)
ゲマトリア:黒服、マエストロ、ゴルコンダ、デカルコマニー
箱舟:プラナ、クロコ(名前のみ)、アサルディー(名前のみ)
百鬼夜行(新加入):ニヤ、ナグサ
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