とある暗部の少女救命(サルベージ)   作:エビセン

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序章 溺れる者が掴んだ藁 He_got_a_"dream_item".

 走る。走る。走る。ビルとビルの間を、街中に蜘蛛の巣のように張り巡っている路地裏を、小さな影が駆け抜けていく。見上げれば細長いビルとビルの間から 十月の晴れ渡る秋空が覗くが、のんびりと見上げる余裕は無い。薄暗いビルの隙間を縫うように走り抜ける。

 その影の正体は十二歳程度の小柄な少年。パッと見ただけでは性別も分からないような幼い顔立ち。セミロングの茶髪を黒いジャケットの耳付きフードで覆い、それに合わせるような黒系のショートパンツとブーツ。それらとは対照に、鮮やかなスカイブルーのインナーとソックスが印象的だ。

 この街の名は学園都市。人口二百三十万人、その内の八割が学生であり、その全員が科学的な超能力開発を受けている街。その科学技術は「外」の世界と比較して、二・三十年分の開きがあるとされる。東京都西部三分の一程をクッキーの型で正円にくり抜いたようにして生まれたこの街は、第一から第二十三学区までの二十三のエリアに分けられている。中でもこの第七学区は中高生が多いエリアとして知られていた。

 そして、そのような場所では、このような輩も多い。

     

「ウロチョロ逃げ回りやがってガキがぁッッッッ!」

 

 後ろを振り返ればざっと三人程度。大柄な肉体に加え、鉄パイプや大型の改造スタンガンなどで武装した男達。武装無能力者集団(スキルアウト)と呼ばれる、この街では典型的な不良だった。

 この街の超能力者は、無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)までの六つの能力強度でランク付けされる。この街の学生は、およそ六割が能力を持たない、もしくは顕微鏡レベルの力しか発揮できない無能力者(レベル0)である。無能の烙印を押された無能力者(レベル0)達には、高位能力者へのコンプレックスから、不良行為に手を染める人間が後を経たない。それが武装無能力者集団(スキルアウト)である。

 武装無能力者集団(スキルアウト)は、上位能力者に対抗するため、街の外から仕入れた違法な武器で武装していることも多い。そんなどうしようもなくイリーガルな存在が徒党を組み、明確な敵意を持って少年に迫っている。

 体格、筋力、武器、少年が勝てる要素を探す方が難しい。追いつかれたらそこで終わりだ。

 その小柄な体をより狭い路地へねじ込んで行きながら、少年は思考を巡らせる。

 

 (単純な走力じゃあいつらに絶対勝てない。なら窮屈な道に誘い込んで、そこに苦戦している間に振り切る。それができなくても、時間を稼いでいる間に警備員(アンチスキル)風紀委員(ジャッジメント)に通報できれば!)

 

 しかし彼は失念していた。そもそも路地裏とは彼らのナワバリ。とっさにそこに飛び込んだ時点で少年に逃げ場は無い。

 

「よおッ!」

 

 少年が走っている狭い路地の先を塞ぐように、今まで彼を追っていたはずの不良達の内の一人が、突然現れる。

 

(――っっ先回り!? 逃げ道を読まれてる!)

 

 そこを避けるように、側面の幅の広い路地に逃げ込み、進み続ける。

 しかし。

 

「なぁオイッッ!」

 

 そこにまたしても、狭い通路を塞ぐように、少年を追う不良の1人がまた現れる。

 

(また先回りだ! 完全に誘導されてる!)

 

 別の路地、別の路地と進む度に、まるで行く先を予見していたかのように不良が現れ続ける。少年が望む道に逃げ込もうとすることを、彼らは許さない。

 少年では立ち塞がる不良を押しのけて進むような腕力は無い。蜘蛛の巣に体を絡み取られる虫のように、自由な選択肢が奪われていく。

 

 三方をビルに囲まれた行き止まり。そこが少年の終着点だった。

 

 まだ日が昇っているというのに、その場所は影に覆われて薄暗い。スキルアウトの溜まり場にでもなってるのか、辺りには空き缶やペットボトル、ビニール袋などのゴミが散乱していて、ケミカルな色の落書きがビルの壁面のあちこちに描き殴られている。街の中心から離れているからか、街の喧騒どころか自動車のエンジン音すら全く耳に届かず、不気味なほどの静寂に満ちていた。

 

 「ここまでよく頑張ったじゃねえか」

 

 その低い声が、この場の静寂を不躾に破る。まるで自分が、この場所のルールそのものだと言わんばかりに。三人の不良の中でも最も大柄な、リーダー格の男だった。頭をスキンヘッドにし、レザー生地のジャンパーが張り裂けそうなほどシルエットの膨らんだ、筋骨隆々の大男。その手には大型改造スタンガンでも、拳銃でもなく、先の潰れた長さ一メートルほどの鉄パイプ。武骨、あるいはシンプルともいえるその得物は、高圧電流や鉛玉よりも己の腕力による一撃の方が強力であるという自信の表れか。

 

「だがこれで詰み(チェックメイト)だ。もう諦めろ」

 

 男はそう言うと、茶髪の少年を見下すようにしてニヤリと笑い、ゆるりと鉄パイプの先端部を突きつける。

 小柄な少年は、背中の壁を伝ってずるずると腰を落とし、後がない事を知る。少年を追い立てた三人の男が、ニヤニヤと笑いながらゆっくりとにじり寄る。追い詰められた袋の鼠はじりじりと迫るケダモノに対してぶるぶると体を震わせることしかできない。

 

「持ってんだろ? インディアンポーカー。それもSランク相当の」

 

「そっ、それは……」

 

 唇の震えが止まらない。恐怖でまともに喉を震わせることすらおぼつかない。血の気が引いていくのが自分でも感じられる。

 

 「おい、答えろよガキィ!」

 

 リーダー格の男がガンッと音を立てて壁に足を叩きつけ、凄む。それでも小刻みに震えたままで返事のない少年に苛立った大男は、大きく舌打ちをして鉄パイプを振り上げる。

 

「そ、そんなもの、ぼくは……!」

 

 少年は、体感的にゆっくりと感じる時間の中で、追想する。

 どうして、こんなことになってしまったんだろう。

 ただ、誰かに自慢できるものが欲しかった。

 能力なんか無能力者(レベル0)で、いつも何かあると泣いて、うずくまって、自分で何か大きなことを成し遂げられたことなんて一度も無くて。

 インディアンポーカー。

 カードに記憶された他人の夢の内容を、別の人間が追体験することができる装置。その上、その夢で追体験した知識や技能は現実で習得することができるという文字通り夢のアイテム。

 自分の中には何も無い。

 だから縋った。

 「外」から力を得ることのできるこのカードに。

 でも、結局はこうだ。

 がむしゃらに街中を駆け回り、血の滲むような思いで手に入れたこのカードも、最後には力のある人間に奪われる。

 目尻に大粒の雫が浮かぶ。こうして鉄パイプを振り上げられている今も、うずくまって震えることしかできない。

 力が欲しかった。

 でも、それはそれは誰かを、身近な人を守るための、自分が胸を張って生きるための能力(ちから)だ。

 

「ぼ、ぼくは……」

 

 間違ってもこんな、他人を脅し、傷つけるための暴力(ちから)じゃない。

 暴れる心臓を押さえつけるように胸に手を当てる。迫り上がる緊張と恐怖で干上がった喉を無理矢理振るわせた。全身の力を引き絞るようにして、なんとか言葉を紡ぐ。

 

「ぼ、ぼぼっ、ぼくはっっっ!! ぼくはそんな物知らないっっ!!!」

 

「そうかよ。ならとりあえずボコってからゆっくりと調べさせて貰うだけだ」

 

 時間の流れが現実に戻る。小さな少年は両目をぎゅっと瞑り、深く被ったフードごと両手で頭を抱え込む。男が振り上げた暴力が、恐るべき破壊力を秘めた一撃が、小さな少年の体に振り下ろされる。

 

 ……まさにその直前だった。

 

 ドバッッッッッ!!! という音と共に、リーダー格の男を含む三人の不良達と少年の意識が、正体不明の爆音に纏めて吹き飛ばされたのだ。

 そこに立っていたのは、小柄な少年よりも少しだけ背の高い高校生くらいの少女。碧眼とウェーブががった長い金髪の上に被ったベレー帽が特徴的だった。スレンダーな体を覆うのは紺色のブレザー系制服とミニスカート。すらっと伸びた脚を覆うのは黒タイツと、同じく黒系のハイヒール。

 荒れた地方のヤンキー校にハリウッドスターが紛れ込んで授業でも受けているような。不釣り合いほど眩い存在感。こんな薄暗い路地裏よりも、もっと輝かしい場所でカメラの前に立っている方が正しい。そのような印象を与えてくる少女だった。

 どうにか先程の爆音を耐え抜いたのか、リーダー格は男はのそのそと立ち上がり、突如として現れた闖入者である、金髪の少女をギロリと睨む。

 

「おい、何モンだテメェ。腕章つけてねぇってことは風紀委員(ジャッジメント)じゃねぇな。」

 

 金髪の少女は、リーダー格の男の裏で伸びている小柄な少年に人差し指を指す。そして張り詰めた空気に毛ほども気圧されず、平然とこう言った。

 

「その子の友達」

 

 金髪碧眼にベレー帽の少女の回答。それとほとんど同時だった。男は大きく踏み込み、躊躇いなく彼女に向かって長さ一メートルほど鉄パイプを垂直に振り下ろす。

 少女は交戦的な笑みを浮かべ舌を出し、その一撃を軽くステップを踏むように後ろに飛んで躱す。さらに右脚を軸に体を捻る。ミニスカートがひらりとゆらめき、無防備な彼の鳩尾に強烈な後ろ回し蹴りが叩き込まれる。

 しかし、その直前。

 

「おらあァッ!」

 

 激昂した男はそれらを鉄パイプを振り上げ、力任せに少女の一撃を上に弾き飛ばそうとする。

 

「あっぶな!」

 

 あくまで笑みを崩さない少女は咄嗟に足を引っ込め、バックステップで距離を置く。そしてスカートから『何か』を取り出そうとする。しかし、どこか諦めたようなしかめた顔をすると、手を引き抜いて、そのまま固く握りしめた両手で構える。

 

 「結局、私としては知り合い巻き込みかねないトコで『こっち』は使いたくはない訳よ。よってアンタは私が徒手で倒す。オーケー?」

 

「似た武器を使う知り合いに覚えがある。さっき俺達の意識を飛ばしてくれたのは火薬系の音響兵器ってトコだろ。とするとテメェの獲物は火薬系の爆発物。威力が高すぎるもんで後ろのガキ巻き込まねぇために威力絞って衝撃波だけぶつけたんだろうが、肝心要のそいつが倒れて、俺がピンピンしてちゃ世話ねぇな」

 

プレッシャーが、増す。

 

「ダイレクトに音を操る能力者なら、能力の起点に火薬なんざ扱いの難しいもんは使わねぇ。要するにテメェ、無能力者(レベル0)だろ。おいおい、俺たちゃ能力者狩るために鍛えてんだぜ。無能力者(レベル0)が、武器も無しに、しかもこの路地裏で、俺に勝てるって?」

 

 たかが街のチンピラとはいえ、能力者を日常的に相手取ることになる彼らは、プロのアスリート並みの肉体を有する。確かな努力とそれに裏打ちされた実力を持ち、それでいてその力の使い道を決定的に間違えた連中。

 その理不尽な暴力性が、獰猛に牙を剥く。

 しかし金髪の少女は、まるで姿鏡の前に立っているようにな調子で先程の戦闘でズレたベレー帽の位置を整えていた。それでいて人形のように端正な顔には獲物を前にしたハンターのように好戦的な笑みが浮かぶ。舌舐めずりさえして、あくまでも『狩る』側の表情を浮かべたまま、答えた。

 

「当然」

 

 返答から瞬きの間すらもなかった。

 

「っらあッ!!!」

 

 ビャウ!!!! と風を切り裂く音を立て迫る力任せの一撃。長さ一メートルほどの鈍器が、膝を少し下げた少女の頭を砕くように横薙ぎに振るわれる。

 それを少女は膝をさらに思いっきり縮めて潜り抜ける。頭のベレー帽を掠める間一髪の回避。

 続けざまに両手をアスファルトにつけ、片足を回転軸にした足払いをしかける。

 

「うおぁッッ!!!?」

 

 鉄パイプを振り抜いたことと足払いのタイミングが重なった事で男の重心が急に傾いた。バランスが大きく崩れる。

 そんな男に対して、少女は屈んだ姿勢から立ち上がる勢いを利用する。両膝をバネにして、左手で押し出した右肘を男のアゴに向けて鐘撞きのように打ち込む。

 

「がぼあッッッッッ!!!!!」

 

 クリーンヒット。男は鼻と、唇の端から血を垂れ流しながらもなんとか意識を保つ。ふらつきながらも、なんとか二本の足で倒れまいと踏ん張る。

 

「あれ、舌噛んじゃった?」

 

 ギリッ!! と歯を食いしばり、男は長さ一メートルほどの得物を剣道の竹刀のように正面に構え直す。

 

 (さっき一撃を喰らって分かった。スキルで負けてても、パワーならこっちが勝ってる! つまり強引に一発耐えれば、チャンスは来る。クロスカウンターの要領で確実に仕留められる!!!)

 

「……とか思ってんでしょうけど」

 

 確かに、純粋な膂力で少女は男に勝てない。しかし、そもそも彼女の専門はそちらではない。

 少女は握り込んだ両手を開き、男の両耳を包み込む。

 余りに格闘戦のセオリーから外れた動きに、男の反応が遅れる。

 パン!と、クラッカーが弾けるような軽い音が辺りに響いた。

 それだけだった。

 

「か、あッ……あッ……!」

 

 それだけで、あれだけのタフネスを誇った筋骨隆々の大男の意識が途切れ、アスファルトにバタリと倒れ込んだのだった。

 先程何かした少女の手には、ラッパを逆向きにしたような形状の、長さ数センチほどの奇妙な筒が握られていた。

 

「『音響収束(サウンドコンバージェンス)』。ようはメガホンの逆。結局、音を拡散させるんじゃなくて収束させることで、少量の火薬で効率的に鼓膜を破壊する音響兵器って訳よ」

 

 さらりと言うが、それはつまり少女は手の中で小型の爆弾を起爆したということだ。例えばファイアーパフォーマーなんかは特殊なジェルや発火剤などを用いることで手のひらに乗せた炎を変幻自在に操るが、少女はそれを炎より遥かに危険な火薬で行っている。にも関わらず少女の白くきめ細やかな手のひらには、火傷一つ無い。つまりは『こちら』こそ彼女の本領。

 

()()()()()()()()()()()()()()()。私は格闘もやるけど本職は『こっち』な訳だし。ルール無用の路地裏を根城にしてんのにこんなブラフにかかるなんてさー。結局、正々堂々相手の土俵で勝負なんて、公正な正義馬鹿のやることって訳よ。同じスキルアウトでも、うちの浜面とかのが骨があるんじゃない?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そもそも、爆薬を使わずに戦うと腹を決めているのに、わざわざ道具を探す仕草をする必要などない。そんなことをすれば不用意に隙を晒すだけ。であれば、リスクを晒すには晒すだけの理由が存在して然るべきだ。

 

(結局、最初に爆音であの子の意識ごとぶっ飛ばしちゃった時点であの子をノーダメで救出するのは失敗したみたいなもんだし)

 

 彼女はただ純粋に善意に従い、街のチンピラに追い詰められ、理不尽な暴力を振るわれそうになっていた子供を助けただけ。なのに、飛び出す手段は火薬、嘘、騙し、不意打ち。正々堂々とはほど遠い手段を、玩具を与えられた子供のように簡単に振り回す。悪行への引き金が軽いとかそういったレベルを超えている。善悪の区別すらなかった。少女の心にはピュアな善性と、邪悪な嗜虐心が、何故か一切の矛盾なく納めまっている。いったいどれほどの『闇』に浸かれば、こうなるのか。

 それとも、それは最初から持っていた彼女の特性なのか。

 

「ふうッ、そんじゃ!」

 

 彼女以外の人間が全員気絶し静まり返った路地裏で、少女は自らの頬を軽く叩いて、血生臭い戦闘からスイッチを切り替える。

 そして、力無く倒れているリーダー格の男の側を通り抜け、その後ろで気を失っている小柄な少年へ近づき、肩を何度かゆする。反応が無い。

 

「う〜ん。結局、威力が強すぎたかな?」

 

 そう呟くと懐から何かを小瓶を取り出し、内容物を手のひらを団扇のようにパタパタと仰いで少年に嗅がせる。するとようやく反応があった。ビクーン! と小柄な身体が勢いよく飛び上がる。彼の深く被った耳付きのフードが後ろはらりと落ちた。訳もわからず目をぱちくりとさせる少年の視界に、覚えのある人物が写る。顔見知りの少女が何だかあたふたしながら右手を差し出している。

 

「うわっ起きた! さっすが原料のアンモニアから調合した私特製気付け薬!!! じゃなくて! えーと、加納ちゃん大丈夫? 怪我とかない? 結局、緊急時とはいえ思いっきりやっちゃったけど鼓膜は無事? 一人で立てる?」

 

 近接戦闘に織り交ぜられるレベルで火薬の扱いに熟知し、一切の情け容赦なくスキルアウト三人を打ちのめした少女と同一人物とは思えなかった。あたふたと不安そうに言葉を投げ続ける様は、赤ん坊がなぜ泣いているかと悩みながらアレコレ手を尽くす母親のようだ。

 まだ、意識がぼんやりとした少年が状況を把握するだに辺りを見渡すと、あれだけ恐怖の象徴だった三人の男が完全に伸びている。この金髪の少女がやったのだろう。しかし、これだけの事をやっておきながら、まるで自分には何事もなかったかのように、少女は少年の心配をしていた。そのことが胸をくすぐるように嬉しくて、つい表情が緩む。

 そして、金髪の少女が差し出した白い右手を、己の素顔を曝け出した少年の幼い右手が、しっかりと掴み返した。

 

「うん、大丈夫。ありがとう、フレンダ。ぼくを助けくれて。」

 

 金髪の少女の名は、フレンダ=セイヴェルン。

 小柄な少年の名は、加納神華。

 街中でたまに出会う相手。携帯のメールアドレスを交換した間柄。誕生日を把握しプレゼントを送る計画を立てている関係。どれも確かに、彼らの関係性を表している言葉ではある。

 だが、簡潔に言うならば。

 

「助けるに決まってるじゃん。結局」

 

「アンタはこの私が認めた、大事な友達の一人なんだから」

 

 そう言って、フレンダ=セイヴェルンが加納神華の腕を引く。彼もまた、その力に合わせて腰を持ち上げる。目の前の少女と友人であることが、小さな少年には世界の何より誇らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きっと、きっと、きっと。この瞬間にはすでに、その運命は決まっていたのだろう。

 

 

 

 

 だが、彼らはまだ、数日後に訪れる別れを知らない。どす黒い血と暴力に塗れた、あまりにも決定的な、極彩色の世界の破滅を。

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