とある暗部の少女救命(サルベージ)   作:エビセン

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行間 一

 

 

 

 

 

「弓箭のヤツがとうとうやられたらしい」

 

 学園都市第三学区。

 立ち並ぶ各種の国際展示場を始めとして、学園都市の中でも『外部』の客を招くことに特化したその学区は、プライベートプールや宿泊施設が多く建設されている。

 その内の一棟だった。

 第三学区に数ある高層ホテルの上層。ワンフロアの半分を占めるほど広いスイートルームの一室にて三人の男女が向かい合う。

 

「ええ、私も小耳に挟んだわ。現場、第十五学区のダイヤノイドに残されていた爆破跡からして、例の標的が返り討ちにして警備員(アンチスキル)に捕まったみたい。『暗部』の人間なのは間違いないでしょうけど、何物なのかしら? これからの作戦の障害になるようなら、今の内に対処したいところだけど」

 

 幅広のソファの上で組んだ足の爪を整えながらそう気だるげに返事をしたのは、外見は十四歳程度、しかしながらその年に見合わない豪奢な桃色のドレスを身に纏う少女だ。

 

「弓箭に標的の情報を提供したのはオレなんで、ソイツの身元なら把握してるっス。名前はフレンダ=セイヴェルン。知っての通り爆弾使い。所属は『アイテム』。チームの役割は学園都市内の不穏分子の削除・抹消スね。『ピンセット』を強奪するにあたって、ソイツ含めてチーム丸ごと上層部から派遣される可能性は高そうっス」

 

 座椅子にもたれかかるように立つ、土星の輪のように頭を覆う特殊ゴーグルから大量のケーブルを垂らした四白眼の少年がドレスの少女の呟きを拾う。

 そのドレスの少女は頭を上げて視線を足元から移した。

 

「あらあら、『アイテム』って言ったら()()第四位のチームじゃない。こちらから先制攻撃でも仕掛けておく?」

 

「逆にいやあチームのトップで()()()()第四位、だろ。この俺からすればそこまでの用心が必要な相手でもねぇ。それにまだ敵対すると『確定』した訳でもないしな。むしろ気になるのは弓箭がパクられた方だ。殺してねぇのは兎も角、捕虜にすらしてないってのはおかしい」

 

 ドレスの女の視線の先をシャンデリアが照らす。そこに立っていたのは、ジャケットのボタン外したセットアップのスーツを纏う長身の男。彼の若く整ったルックスからか、その衣装は学生服にもホストスーツにも見えた。

 

「下部組織の派遣が遅れたとかじゃないスか? それに気になるといえば俺も一つあるっス。『アイテム』の滝壺理后。照準担当で第四位に隠れて目立ってないみたいっスけど、太陽系外まで追跡するソイツの『能力追跡(AIMストーカー)』に一度補足されると逃げようがないっス。もしぶつかることがあれば最優先で狙うべきはコイツっスね」

 

「とすると弓箭(あの子)の回収も視野に入れおきたいわね。私の能力なら多少壊れていても強引に追従させられるわ。『スクール』側にも標的の追跡を担当できる人間がいれば、滝壺理后を有する『アイテム』相手でも『追われる側』から『追う側』に回れるもの」

 

「『アイテム』と正式に敵対した場合はそうするかもな。……つか誉望。何処の誰が俺の意見に被せて良いなんて寝ぼけた事言った?」

 

 長身の男が睨むとゴーグルの少年はうっぷと口元を抑える。とある事情により、彼はこの男にトラウマを植え付けられているのだ。

 

(獄彩さんからの意見は素通りなのに何でオレだけ…………!)

 

「……………まだおしゃべりが足りねぇのか?」

 

「むぐむぐぅ!?」

 

 邪な内心を読み取られたゴーグルの少年は口元を抑えたまま素早く首を振る。

 セットアップのスーツを纏う長身の男………学園都市第二位の少年は告げた。

 

「ぶっ壊れちまった弓箭の回収はあくまで保険だ。現状はスペア要員っつー学園都市外部のスナイパーを使う」

 

 笑う。

 

「『ピンセット』の情報は集まった。『電話』の連中はアビニョンに掛かり切りだ。第四位も『アイテム』も関係ねぇ。他のチームが何組あろうが知ったことか。俺は俺のやり方で全てを手に入れる」

 

 この街の全てを嘲るように、あるいはこの街の全てに挑みかかるように、少年は……垣根帝督は不敵で壮絶な笑みを浮かべていた。

 第四位など無論眼中に無い。垣根帝督が見上げ続けるのは常に『上』だ。

 

 

 

 

 誉望万化。

 獄彩海美。

 そして垣根帝督。

 彼らは『スクール』。かつては『アイテム』と同じく『暗部』にて仕事を請け負う小組織。そして現在は『アイテム』の標的たる、学園都市そのものに牙を剥く反乱分子のそのものである。

 

 

 

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