魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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第12.5話「騎士と剣士」

 

トウカとシグナムが戦った日の深夜。

はやてが眠った後、シグナムは騎士達全員を公園に呼び出した。

 

 

「いきなりどうしたんだシグナム?」

 

 

あまり良い報告でない事を察したのか、ヴィータは先ほどから神妙な表情をしている。

 

 

「突然呼び出してすまない。お前達には話しておかなくてはいけないことがあってな。」

「……何かあったの?シグナム。」

 

 

シャマルは心配そうに声を掛ける。

シグナムはしばらく黙した後、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……実は今日、管理局の人間と戦った。」

「え、そうだったの?!」

 

 

驚いているのはシャマルだけではない。ザフィーラとヴィータも同じく驚いていた。

特に驚いているシャマルは微量の魔力の反応があった場合や結界を張られた場合いつでもわかるように密かに町中に網を張っている。

なのにも関わらず、シャマルだけではなくこの場にいるザフィーラもヴィータもシグナムが戦ったことに気づいていなかったのだ。

 

 

「見たことが無い結界を張られていた。恐らく魔力を感知させない結界だったのだろう……それよりも重要な話はここからだ。」

 

 

シグナムは今日戦った名も顔も明かさない黒いフードの男のことを話した。

その男が自分達の本当の目的に気づいている可能性が高いということも。

そしてその男の実力も。

純粋な近接戦闘でほぼ互角、いやそれ以上の相手だったことを含め男と戦った内容を全てヴィータ達に話していた。

その話を聞いたヴィータ達はまさかシグナムと近接戦闘で互角に戦える人間が管理局の人間にいるとは到底思えなかったが、戦った当事者であるシグナムが言うからには信じざるを得なかった。

 

 

「……その男。一体何が目的だ?」

 

 

次に口を開いたのは、今まで黙って話を聞いていたザフィーラーだった。

 

 

「わからない。味方ということはないが、敵……とも言い切れない妙な男だった。」

 

 

普段から意見をしっかりと言っているシグナムにしては珍しく、歯切れの悪い返答だった。

 

 

「へっ!そいつが時空管理局の人間だってんならそいつは敵ってことだろ?」

「……とにかく、黒いフードの男に会ったら気をつけろ。」

 

 

シグナムは最後にそう忠告して話は終わった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

同時刻。

高町家の道場に一人の男が正座で瞑想していた。

その男の名は高町恭也。

高町家の長男であり、永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術の後継者である。

恭也はかれこれ道場で2時間ほど瞑想しているが彼の中で疑問が晴れないでいた。

その疑問とはつい先日、恭也はここでトウカと試合したことについてだった。

実は恭也は最初は本気で戦うつもりはなかった。

トウカがある程度武術の心得があるとの事だったので、軽い運動程度、練習、あまり対外試合の経験が無いので腕試し程度と考えていた。

 

 

(最初に対峙した時のあの目……明らかに只者ではなかった。)

 

 

試合前のことを恭也は思い出していた。

対峙した時、恭也は筆舌にしがたい程のプレッシャーをトウカから感じたのだ。

それだけじゃない、ほんの一瞬トウカの目つきが変わったかのように見えた。

 

あれは、獣の目だった。

 

まるで狩りをする狼のように獲物を観察する目のようだったと恭也は感じた。

しかしトウカが構えた瞬間にそのプレッシャーは消えていた。

この時恭也は悟った、トウカは実力を隠して戦いに来ると、そして同時に純粋に試したいと思ってしまったのだ。

だからこそ最初からトップギアで戦いに臨んだ。

一切の手加減も無く。

一切の油断も無く。

最初の一手までは恭也の予想範囲だった。

 

 

それまでは。

 

 

さて話を戻そう、では恭也は一体何に対して疑問があるのか。

それは、トウカが木刀の構えを変えてからのことだった。

あの力ない構え、大振りすぎる動き、太刀筋と言えるのか疑問な剣捌き。

恭也から見たらどう考えても素人としか思えないような動きだった。

しかし、最終的にはあの動きに翻弄され、結果は引き分けに終わった。

結果が不服だったわけではない。

恭也はなぜ自分があの動きを対応することができなかったのかがずっと不思議でならなかったのだ。

しかし、今でも恭也はその答えを見つけれずにいた。

 

 

「恭也、まだ起きてたのか。」

 

 

様々な思考を巡らしていると、後ろから声を掛けられた。

 

 

「父さん……」

 

 

後ろを向くと恭也の父であり、師でもある士郎が立っていた。

大怪我のため既に現役を引退した身だが、実力は今もなお健在でその身体は百戦錬磨の剣士だった頃と全く遜色ない。

 

 

「何か考え事かい?」

「この間の試合がどうしても腑に落ちなくて。」

「先日のトウカさんとの試合のこと?」

「うん……父さんから見てこの間のトウカの動きは審判側からみてどう思った?」

「ふむ……まず恭也がトウカさんの戦ってどう思ったのか話を聞かせてくれないか?」

「わかった。」

 

 

それから恭也は士郎に自分が戦って感じたことを全て話した。

最初から本気で戦った理由や、特にトウカが構えを変えてからの動きについて疑問に思ったことを。

士郎は恭也が話したことをしっかりと口を挟むことなくしっかりと聞いた。

そして恭也が話を終える頃、ようやく口を開いた。

 

 

「はっきり言ってしまうと、最後に構えを変えた後の動き、特に意味なんて無いと思う。とりあえず今の状態で戦いやすい方法をとっただけで。」

「え、それはいったいどういうことなんだ?」

「トウカさんが戦う前に言っていたことを思い出してごらん?」

 

恭也はトウカが言っていたことを思い出す。

 

 

”それにしても動きにくい服だなぁ……”

 

 

「あっ……」

「気づいたかい?トウカさんは胴着で練習したことが無いんだろうね。」

 

 

恭也はスポーツウェアだけでなく、胴着で鍛錬することが多いのですっかり慣れてしまっているが、実は胴着の袴は慣れていなければ決して動きやすいとはいえない。

 

 

「慣れていない袴で細かい動きをすれば、下手をすれば裾を踏んでしまう。だからこそ、トウカさんはあんな動きで戦うことにしたんだろうね。」

「でも、例えそうだとしても、結局俺はトウカの剣を見抜くことができなかった理由にはならない。」

「うーん・・・たぶん、恭也の性格を見抜いたのかもしれないな。恭也はあの時どんな考えで対応しようとしてたんだい?」

「えっ、それは……トウカがどんな動きをしてくるのか様子を見ようと……」

「それだ。恭也は相手の戦い方を見るのに必死で攻撃よりも守りに徹しようとした。そこにトウカさんは目を付けた。あの後トウカさんは様々な動きを織り交ぜてきただろう?あれは単純に相手の行動を見極めようとさせず、とにかく自分の攻撃を継続させるためだったんだろうね。」

「そうか……そんな単純な手に俺は引っかかったのか……」

 

 

まだ未熟であることは自覚しているが、御神流の後継者としてそんな簡単な手に引っかかる自分が少し情けないと感じていた。

戦いにおける立ち回り、読み合い、剣の使い方等の”知識”はあるが、まるで剣を使って戦った”経験”が無いような感じだったとあの時感じていた違和感がようやく解明された。

トウカは単純に胴着で戦うことに慣れていなかったのだ。

つまり、状況的に見ればトウカに圧倒的に不利な条件で戦わせてしまったことになる。そのことに恭也はショックを受けていた。

 

 

「とはいえ、これはそんな簡単にできることでもないよ。相手に考えさせて攻撃の手を少なくさせる心理的優位に立ちつつ、それを悟らせないために戦う方法を変えていくなんて中々できることじゃない。」

「父さん。もし、トウカが普通に動けている条件で戦えたならあの試合どうなったと思う?」

「それは戦ってみないとわからないよ。でもトウカさんはまだ何か隠してるみたいだったしね。」

「そっか……」

「落ち込んでる……って感じじゃなさそうだね。」

「あぁ!俺はまだまだ強くなりたい。そしてまたトウカに勝負を挑みたい。」

 

 

それまで神妙な表情だった恭也は今までに無いほどすっきりした表情になっていた。

 

 

これから恭也はどんどん強くなっていくだろうと士郎は感じていた。

恭也がどのような道に進んでいくのかわからないけれど、自分のように大怪我するような危険な仕事はして欲しくない。

ただ自分の子供達の恭也や美由希が自分の技を受け継いでくれることはとても嬉しく感じていた。

トウカのような切磋琢磨できる存在がいれば、技だけじゃない、精神も磨かれていくだろう。

 

 

士郎はこれから未来を担っていく彼らがどのような成長をしていくのか、とても楽しみにていた。

 




ということで12.5話でした。
主人公と戦った恭也とシグナムの話でおまけ的な感じで作りました。

そういえばこの主人公、今までの戦績1敗2分なんですよね。弱い(確信)
やはりもっと強くしたほうがいいのかな?と考える今日この頃。

あ、それと先日初めて評価頂きました。
とても嬉しかったです。ありがとうございました。

やはり評価していただけると執筆のやりがいを感じますね。

ではではまた次回、お会いしましょう。
それでは、失礼いたします。
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