魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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第13話「サブストーリーフェイト編1」

とある平日の夕方。トウカは暇を持て余していた。

クロノ、リンディ、エイミィ、アルフの4人は管理局でベルカの騎士達についての報告と対策会議があるとのことで朝から出掛けていた。

本当なら早めに終わる予定だったのだが、昼過ぎに一度クロノが連絡がありどうやら帰ってこれるのが夜遅くなるとのこと。

トウカは何かがあったとき直ぐに連絡できるよう海鳴市で待機するように言われている。

というわけで、下手に出歩くこともできず、先日図書館から借りてきた本を読んでいるところだった。

ちなみに、借りている本は10冊ほどあるのだが、既に全部読み終わって内容も覚えてしまっている。

なので読み返しても特に必要がないのだが、暇なので仕方ない。

 

 

「あー暇だ……ん?」

 

 

そんなことをぼやいていたら、玄関のほうでガチャリとドアが開く音がした。

どうやらフェイトが帰ってきたようだ。

ちなみにフェイトは学校があるのでトウカと一緒で居残り組である。

 

 

「おかえり、フェイト。」

「た、ただいま……です。」

 

 

トウカはリビングに入ったフェイトに声をかけたが、フェイトはぎこちない返事をすると足早に部屋に入っていってしまった。

 

 

「うーんやはり進展無し。流石にそろそろ何か進展がないとあまりよくないなぁ。」

 

 

クロノやリンディさんも二人の微妙な関係を心配していることはトウカ本人も知っている。

ちなみになのははフェイトとトウカが二人で話しているところを見たことが無いので、微妙な関係であることに気づいていない。

なので、いい加減なんとかならないものだろうかとトウカは考えていた。

 

 

(あれ?そういえばリンディさん達帰ってくるの遅くなるってことは……今日の夕食フェイトと二人っきりか。それにまだみんなが今日遅くなること言ってなかった。)

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

 

トウカに声を掛けられたフェイトは部屋に入ると制服のまま部屋のベットに飛び込んだ。

 

 

固まること数秒後。

 

 

「……またやっちゃった。」

 

 

フェイトは涙目で先ほどのやり取りを思い返していた。

最初にトウカと話した時はいつもニコニコしてて掴み所の無い人という印象だった。

しかも記憶喪失、高い戦闘技術、正体不明のデバイスを使ってたこともあって最初はかなり警戒していた。

ただこの数日を過ごし、様子を見ていたが悪い人ではないのが分かってきたどころか、なのはと仲がいいのでどうやら完全に自分の誤解だったのではないか、ということがだんだんわかってきた。

 

 

いや、実はそれ以上の理由がフェイトにはあった。

 

 

それは、年上の男の人とどう接したらいいのかわからない。

 

 

ということだ。

 

 

フェイトは今まで年上の男性と話すといった経験がほとんどなかった。あってもせいぜいクロノくらいである。

管理局で保護された時は局員と話といっても事情聴取の時の事務的な会話が多く、簡単な世間話もしたがそれでもせいぜい数回くらいである。

さらに、先日入学した聖祥小学校にも男子はもちろんいるが、入学したばかりだということもあるのだが、今はなのは達とよく話しているので実は同年代の男子ともまだまともに話していなかった。

 

 

つまり、フェイトは。

 

 

今までどうやって接すればいいかわからずつい素っ気無く接してしまうだけで、トウカの事を嫌っているわけではなかった。

 

 

「うぅ……きっとトウカさんに嫌われちゃってるかも……」

 

 

フェイトは本来心優しく、争いを好むような性格ではないので、今まで素っ気無い態度をしてしまった罪悪感、そして言い表す事のできない恥ずかしさもあり、フェイトはベットの上でじたばたしていた。

 

 

その時だった。

 

 

「あの~……フェイト?」

「えっ!?」

 

 

フェイトが声の方向を向くと、そこにはトウカがドアからひょっこりと顔を出していたのだ。

 

 

「……な……な……」

 

 

一方のフェイトは突然トウカに声を掛けられた驚きのあまり、言葉にならないといった様子で顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

 

 

「ごめんね。ちゃんとノックとドアの外から声かけたんだけど返事がなかったから開けちゃったんだけど・・・取り込み中だった?」

「い……いえ……」

「そっかそれならよかった。ところで今晩リンディさん達遅くなるらしいけどフェイトの方にも連絡きてた?」

 

 

「えっ?」

 

 

その瞬間、フェイトは固まった。

 

 

「あーやっぱり聞いてなかったか。みんな今日は日付が変わるくらいの時間に帰ってくるらしいんだけど……」

 

 

フェイトは今日、トウカ以外の人達が管理局に行くことは今朝聞いていた。しかし、まさかそんなに遅くなるとは思っていなかったのだ。

ということはフェイトにとって一つの問題がでてくる。

 

 

「それで、今日の晩御飯どうしようか?」

 

 

そう、つまりフェイトは今夜はトウカと二人で食事をしなくてはいけないのだ。

 

 

(ど、どうしよう……!)

 

 

今のフェイトにはこれを機にトウカとの距離を縮めようとか、そんな事を考える余裕すら無くなっていた。

 

 

「よし、じゃあ俺が料理に挑戦してみるよ。フェイト嫌いなものとかある?」

「いえ……ないですけど……」

「ふむ、そっか。じゃあ色々考えて見るよ!じゃあ買い物行ってくるね~」

「はい……いってらっしゃい……です。」

 

 

そう言ってトウカはさっさと出かけてしまった。

 

 

(そういえば……トウカさん料理できるのかな?)

 

 

と、フェイトは一瞬夕食のことで心配していたのだが。

 

 

(それよりも、さっきのベットでじたばたしてる所みられちゃったかも……!)

 

 

夕食の心配よりも、先ほどの光景を見られたのかと思うとフェイトはだんだん顔が赤くなってゆき。

 

 

(──は、はずかしい……!)

 

 

あまりの恥ずかしさにベットに潜り込んでしまうのであった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

一方、フェイトが恥ずかしさに悶えているのを知らないトウカは今日の夕食をどうしようか悩みながら買い物に向かっていた。

 

 

「さて、じゃあどんな料理しようかな。」

『そもそもマスターは料理できるんですか?』

「いや全く。」

『……』

 

 

ヘイムダルはあまりにも衝撃の言葉を聞いて絶句していた。

この世のどこに料理ができないのに自分から進んで料理をすると言う人間がいるのだろうか。

 

いやここにいた。

 

 

「できないって言うのは語弊があったな。料理をした記憶がないだけで料理の知識はあるぞ。」

『それはできないと同義だと思うのですが。』

「気にするな、些細なことだ。もしかしたら記憶を無くす前は料理人だったかもしれないぞ?」

『それだけは断じて無いと思います。』

 

 

トウカは過去の記憶を全く覚えていない。

一般的な常識、言語、魔法等の”知識”はある程度覚えているが、一方で”経験”に関してはほとんど失っている。

だから、料理の知識はあっても料理をやった記憶が無い。

料理をしたことがあるかもしれないが、それを覚えていないのはかなり不便なものである。

そんなことをヘイムダルと念話で話しているうちに、近所のスーパーに到着した。

夕方と言うこともあって、夕食の買い物に来た奥様方でひしめき合っている。

 

 

「どいてどいて!!」

「そのタマゴは私の物よ!」

「なによ!!」

 

 

と、様々な怒号が聞こえてくる。

どうやらタイムセールスのようで、奥様方が鬼のような形相で様々な商品を取り合っているようだ。

 

 

「うわぁ……すげぇ人。ってかこえー……」

『ここにいまから行くんですか?死にますよ?』

「いや死にはしないだろうけど……まいったな。」

 

 

流石のヘイムダルもこの光景にドン引きしている。

とりあえず、今ここであの中に突撃するのは無理があるので仕方なく人の少ない惣菜コーナーに向かうことにした。

サラダ、煮物、フライ等、商品棚には出来上がった料理が並べられている。

 

 

『おお、これは素晴らしい。これなら無謀な賭けをせずとも素晴らしい食卓にできそうですね。』

「やかましい。まぁ確かに来合いのものを買うのもいいが、せっかくフェイトと仲良くなれる機会だし何か考えたいんだよ。」

『そんな無駄な努力を……』

「いい加減その口閉じないとスクラップにするぞ。」

『残念ながら私はデバイスなので口は無いのですが……』

 

 

こいつはいつかぶっ壊すと心にトウカは決めた。

 

 

さてヘイムダルとくだらないことを話していても仕方ないので、どんな料理にするか考えるためにスーパー内でブラブラしていると。

 

 

「あれ、トウカさん?」

「お、はやてじゃないか。」

 

 

声をかけられて振り返ると車椅子に乗った茶色の髪の少女、はやてがそこにいた。

 

 

「トウカさんとこんな所で会うなんて奇遇やなぁ。お買い物ですか?」

「うん。ちょっと今日の晩御飯を考えててね。でも俺料理したことないから出来合いの惣菜でも買おうかなってね。っていうかまさか一人で来たの?」

 

 

はやての家がどこにあるのかわからないが、こんなところに車椅子で来るなんてかなりの労力だろうし、夕方のスーパーは非常に人が多い、人ごみに巻き込まれて危ないかもしれないのでトウカは疑問に思った。

 

 

「あっいえ、実は家族と一緒に来てて、今あそこに……」

 

 

はやてが指を差す方向を見ると、そこにはタイムセールスの品を取り合っている奥様方がいる。

 

 

「もしかして……あそこに?」

「あはは……そうなんです。今日は月に一度の大セールスやからはりきっちゃって。しかも家族多いからたくさん買ってこなくちゃって一人で行っちゃったんです。」

「なるほど、それではやてはここで待ってるってことか。」

 

 

再びタイムセールスをやっている方向をみる。

先ほどよりも更に人が増えもはや何の商品を取りあっているのかわからないほどである。

しかし、その中で明らかに異色な人間が一人いた。

異色といっても目だった特色のあるという意味である”異色”ではなくそのままの色という意味での”異色”

 

 

「みんなのために私がやらなきゃいけないんです!どいてください!」

「外人さんなかなか根性あるね!でも負けないよ!」

 

 

なんと、おばちゃんと負けじと野菜を取り合っているショートボブのブロンドヘアの女性がいた。

後姿だけしか見えないが、主婦の中に一人だけブロンドヘアの女性がいたのでつい目に付いたのだが。

 

 

(んー……どっかで見たことあるような……気のせいか?)

 

 

と、トウカはその後姿の女性をどこかで見たことがあるような気がしてならないのである。

とはいえ、管理局の人間にあんな風貌の女性がいた覚えはないのでトウカは思い過ごしということにした。

 

 

「そうや!トウカさん、待ってる間暇やからよかったら一緒に晩御飯のメニュー考えましょか?」

「え、いいのか?それならすごく助かるけど、はやてと一緒に来た人が……」

「いいんですいいんです、あの調子やったらしばらく帰ってこうへんやろうし。さっ!行きましょ。」

 

 

と言うことでトウカははやての車椅子を押しながらスーパー内を案内してもらいつつ、今日の夕食のメニューを一緒に考えることになったのだった。

 

 




ということで今回からフェイト編が少しだけですが始まります。
主人公とフェイトの仲が進展するのか否かという話ですね。

ではではまた次回、お会いしましょう。
それでは、失礼いたします。
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