魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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第25話「 はやての家族」

八神はやてにとって、ここ半年の出来事は非常に目まぐるしい毎日だった。

ある日、当然。闇の書の主として覚醒し、そして沢山の家族ができた。

この世界に生まれ、育った彼女からすれば魔法というものは自分が好きな本の中の話だけの事だと思っていた。

しかし、現実はそうではなかった。その証拠に彼女の所有している大きな本から彼女たちが現れたのだから。

最初はとても驚き、そして戸惑った。

しかし、彼女にとってそれ以上に嬉しかった。

幼い頃からずっと一人で暮らしてきた自分に家族ができたのだ。

 

――――それだけでも彼女にとっては幸せだった。

 

しかしそれだけでは終わらなかった。

彼女にとって更に幸せに思えることが最近あった。

この足のせいで学校が行くことができない彼女に最近、二人の友人ができたのだ。

一人は月村すずか。

彼女は同年代ということもあり、直ぐに仲良くなることができた。きっと闇の書の秘密を打ち明けても笑ってくれるだろう、と思うほどはやては彼女の事を信頼している。

そして二人目はトウカ。

年上の男性と関わったことが今まで医者くらいしか機会がなかったはやてにとってトウカは不思議な存在だった。

図書館で一人本を読んでいる時に時折寂しくなることがあるが、そんな時はいつもトウカが隣にいてくれた。

話しをするときはトウカは家族の事や自分の足の事も必要以上に深入りすることなく、自然に接してくれた。

そのおかげか、はやてはいつの間にか自分の病気や家族の事を自分から話していた。

そんなトウカは、はやてにとって友人でもあり、兄でもあり、甘えたいと思える初めての存在だった。

辛いこと、苦しいことを一人で抱え込む癖があるはやてにとって誰かに甘えたいと思うのは初めての経験だった。

 

 

彼女は今幸せだった。

 

きっと彼女はこれ以上望まないだろう。

 

――――彼女は平穏な日々が続いてくれればと願っている。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「この間教えてくれた本読んでみたけど面白かったよ。」

「あっ!本当ですか?トウカさんっていつも難しい本ばかり読んでるから気に入ってくるとは思いませんでしたわ。」

「じゃあ今度は俺が面白かった本をおすすめしようかな。」

「お願いします!」

 

 

今、トウカは風芽丘図書館にて、のんびりとした関西弁を喋る少女、八神はやてとエントランスで最近読んでいる本について談笑していた。

 

 

「あ、そういえばこの前の鍋の一件ありがとうね。」

「確か……居候させて貰ってるお家の人との仲良くなるために、トウカさんが作るって話ですよね?上手くいきました?」

「うん。おかげさまでね。」

 

 

毎日というわけではないが、トウカが図書館に来るとはやてに会うことが多く、よくこの場所で話す機会が多かった。

お互い本が好きで気が合うのか、本の話だけではなく、家族の話や料理等、本以外の話をすることが多くなった。

 

 

「そっかぁ!それはよかったです!」

「最近、家の人達みんな忙しそうにしてるから、俺が最近夕食を担当することが多いくらいでね。この間はシチューを作ってみたよ。」

 

 

というように最近の夕食はトウカが担当する日が多い。

リンディやエイミィは料理ができないわけではない、というよりむしろ上手なくらいなのだが、如何せん二人とも普段は忙しい。

クロノも同じ理由で忙しいのもあるのだが、そもそもあまり料理はしない。アルフは食べる専門。

となると手が空いてるのはフェイトとトウカの二人になる。

そこで一番時間が空いているトウカは普段この家に住まわしてもらっているお礼も兼ねて、家事の中でも特に料理と掃除を担当している。

洗濯に関しては女性が多いこの家でトウカ主にがするわけにもいかない……というよりトウカ本人が拒否したため、フェイトにやってもらっている。

というのが今のハラオウン家の家事事情である。

 

 

「トウカさんの作る料理かぁ……一度食べてみたいわぁ……」

「まだまだ勉強中だけどね。今度はハンガリー料理のグヤーシュでも挑戦しようかと思っててね。」

 

 

そのおかげか、最近は主夫スキルがかなり上がっている。

最近は日本料理だけではなく、この世界の様々な国の料理に挑戦している。

先日はヒラメのムニエルとキノコのキッシュを作った時は皆を驚かせただけでなく大絶賛だった。

その時、クロノに悪気はなかったのだが『魔導師よりも家政婦の方が才能あるんじゃないか。』言われトウカはかなり落ち込んでいたというのはまた別の話である。

他にもイタリア料理、中華料理、ロシア料理なども挑戦してみようかと考えているところだった。

 

 

「あ!そしたら今日あたしの家でごはん一緒に食べませんか?!」

 

 

唐突にはやてがそんなことを言い出した。

外国から来た親戚と一緒に住んでいると聞いているが、トウカははやての家族達と直接会ったことは無い。

というか、小学生の女の子が突然大人の男性を家に招き入れるというのは常識的に考えて大丈夫なのだろうか……

 

 

いや当然全く大丈夫ではないのは考えるまでもないだろう。

 

 

「え?でもはやての家にも家族いっぱいいるんだったよね?その人たちに迷惑じゃないかな?」

 

 

当然、トウカは遠回しに遠慮しようと試みようとするが……

 

 

「大丈夫です!みんなちょーっと変わってるけどええ子達なんで。それに、もうみんなにトウカさんのこと話して食事会しようかってこの間話してたとこなんです。早速みんなに連絡せなあかんな~」

 

 

既に手は打たれていた模様。

というよりもトウカの返事を聞く前にはやては携帯を取り出してメールを送っている様子だった。

トウカは少しの間唸りながら悩んだ末。

 

 

「うーん……それじゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな?」

「やった!それじゃあ夜ごはんの食材買いにスーパー行きましょ!じゃあちょっと待っててくださいね。いつもは迎えに来てもらってるんですけど、今日は友達と買い物してから帰るって連絡するんで。」

「俺も連絡しなくちゃな。」

 

 

こうして、トウカははやてに誘われ、トウカははやて家に向かうことになった。

しかしそれは、トウカにとって思いがけない出会いが待っていることを彼はまだ知る由もない。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「うーんどうしようかなぁ……最近は寒くなってきて、お鍋が多かったからそれ以外がええねんけどなぁ……」

「今日安いのはトマトと合挽き肉か。」

 

 

トウカははやての車椅子を押してスーパーに移動した二人は夕食のメニューを考えていた。

ちなみにトウカはこの世界の主な通信手段である携帯電話を持っていないので、トイレに行くと言ってはやてから一旦離れ、念話でリンディに連絡を取った時の事。

 

 

『もちろんいいわよ。トウカさんのご飯が食べられないのは残念だけど、あんまり遅くならないようにね。』

 

 

というように二つ返事でOKを貰っている。拍子抜け、というかあまりにもあっさりと許可がもらえるのでむしろトウカの方が心配しているくらいである。

 

さて、夕食の話に戻ろう。

 

冬の定番ならやはり鍋料理が定番である。こだわらなければ手間もあまりかからず、食費も抑えることができ、やはり今の寒い時期にはピッタリの料理である。

他に冬にピッタリの料理といえばおでん、煮込みうどん、シチュー、グラタン、ラーメンといった様々な料理がある。

その中でトウカが思いついた料理とは。

 

 

「ふむ。じゃあロールキャベツにしよう。」

「あぁ!それえええですね!」

 

 

ロールキャベツ。

挽肉に野菜などをまぜてつくった具を、キャベツの葉で包むといういたってシンプルな洋食である。

更に、今日特売されているトマトでトマトソース煮込みにすれば冬にピッタリのメニューになる。

 

 

こうしてメニューが決まり、食材を買った二人はいよいよはやて宅に向かうことになる。

 

 

「ふふっ、楽しみやなぁ~。トウカさんが来たらシグナム達、どんな反応するんやろ。」

 

 

「シグ……ナム……?」

 

 

――――シグナム。

 

 

今、目の前の少女は確かにそう言った。

 

 

トウカは自分の聞き間違いかと思ったが、そんな滅多に聞かない名前を聞き間違えるはずがない。

 

 

そしてトウカは当然だがその名前に心当たりがあった。

 

 

穏やかかと思われた日々。

 

――――しかしその歯車は彼女の知らないところで少しずつズレていく。

 




少しの間お休みしてたお詫びという事で短いですがもう一話投稿しました。
かなり久しぶりにひと月に2話投稿しちゃいました。
こんな調子に投稿できたらいいなぁと思うのですが……がんばります。

では次回もよろしくお願いします。

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