魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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さて前話で短めと言いつつ、一話目もそんなに長くないんじゃない?っていうのは言わない約束ですよ?


第1話「予想外の出来事は気まぐれである。」

 

突然だが予想外の出来事というものは気まぐれにやってくる。

とはいっても、予想外の出来事というのは大抵、その本人にとって予想外な出来事というだけで他人にとっては大した出来事ではないと思われてしまうこともあるだろう。

 

 

だが、世の中には本当の意味で予想外の出来事に遭遇した人間もいるというのは言うまでもない。

例えば、高町なのはという少女は魔法という存在と初めて遭遇したというのは予想外の出来事と言えるだろう。

そして今、ベンチの上で寝ているトウカは記憶を無くし彷徨っていたら少女に魔法弾をぶつけられて気絶させられるという出来事は一体誰が予想できただろうか。

 

 

 

「うっ……うぅ……」

「大丈夫ですか?」

「う、うん。まぁね……もしかして、君が運んでくれたのかい?ありがとう。」

 

 

 

目の前の少女がわざわざベンチまで運んでくれたことに気づいたトウカは頭を痛そうに抑えながらもニッコリと微笑んだ。

長い髪に中世的な顔立ち、まるで女性のようなトウカの笑顔になのはついドキッとしてしまい、頬を赤くして少しうつむいてしまう。

 

 

「?? どうしたの?」

「え?!いいえ!何でもありません!で、でもどうして、あんなところに倒れていたんですか?」

「実はちょっと散歩をしていてね、人の声が聞こえたからその方向に向かって歩いてたら、いきなり硬い物体が頭に当たってそのまま気を失ったみたいなんだ。近くででボール遊びしてる人でもいたのだろうか・・・君何か知らない?」

「えっ!」

 

 

その硬い物体は恐らく、いや間違いなく自分が放ったディバインシューターだろうことになのははすぐに気づいた。

今までに無いくらい上出来だった練習のうれしさのあまり、最後までしっかり操作せずに勢いよく飛ばしてそのままにしてしまっていたことを思い出した。罪悪感を感じたものの、魔法という概念が存在しないこの世界で魔法のことを簡単に話すわけにはいかず「あははは・・・わかんないです。」と、なのはは苦笑いをするしかなかった。

 

 

「ん~まぁいいや。そういえば、まだ自己紹介がまだだったね。始めまして、僕はトウカ。」

 

 

そう言って、トウカは右手を差し出す、なのはもそれに応じる形で右手を出してお互い握手を交わした。

 

 

「あっ……始めまして。高町なのはです。」

 

 

お互いの自己紹介を簡単に済ませると、トウカとはスッと立ち上がり、その場で大きく伸びをして軽くストレッチをした。

 

 

「さてと、それじゃあそろそろ行こうかな。」

「もう大丈夫なんですか?」

「うん、こう見えても頑丈だから。それじゃまた会えるといいね。」

 

 

トウカはそう言うと、そのままスタスタと歩き去ってしまった。

なのはは呆気にとられながらも嵐のように去っていった青年が歩き去っていった方向をただポカンと口を開けながら見つめていた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

(いやぁ~さっきは焦った……しかし、この世界に魔導師がいたとは思わなかった)

 

 

のんびりと歩きながらトウカはそんなことを考えていた。更に言うならば、まさかあんなものが飛んでくるとはさすがに驚いた。

それはさておき。普通なら自分のことを話して助けを求めるところだが、ここがどこかわからない上に、自分が現在置かれている状況を理解していなかったのでなのはに同じ魔導師というのを言わなかったのだ。

 

 

 

 

それはトウカがなのはと出会うほんの少し前。記憶を失ったことを把握し、歩き出した直後のことであった。

 

 

 

 

トウカは今現在の場所がどういう所なのか、そもそもどういう世界なのかを確認するために高い場所を探そうと動き出したのだが、偶然にも目が覚めた林を抜けた場所が高台だったので、そこから周りを見渡していた。

ちょうどトウカがいる高台からすぐ目の前には大きな町が広がり、さらに奥には海が見える。とはいえ別段変わったところは見えない。わかったことと言えば、確実に自分はこの世界の人間ではない、ということだった。

少なくとも人が存在する世界のようでトウカは安心し、胸を撫で下ろした。

 

 

『わざわざスキャンするまでもありませんが、どうやらこの世界には魔法が存在しないようです。とはいえ、町並みを見ている限り文化レベルは高いと判断します』

「だな。さて、これからどうするかねぇ……文化レベルが高いとなるとこの格好はまずいよなぁ……」

 

 

トウカが今着ているものは薄汚い白いローブただそれだけである。

もし、これが記憶を失う前の自分なりのファッションというのならば一体自分はどんな生活を送っていたのだろうと不思議でならない。

この世界の人間がどういう服を着ているかはわからないが、さすがにこんな格好で歩くわけにはいかなかった。

 

 

『マスター。近くに人の気配がします。しかもこっちに向かってきます。』

「仕方ない。こんな格好を見られるのもまずいだろうし、隠れるか。」

 

 

トウカはすかさず近くの茂みに隠れて様子を伺う。

しばらくして現れたのはジャージ姿の中太りの中年の男だった。どうやらただランニングをしているだけのようで、男は息を切らしながら近くのベンチに座り、肩にかけたタオルで汗を拭いている。

 

 

「なんだ普通の男か。……あ、いいこと思いついた。ヘイムダル、あの男の着ているものを調べてくれ。」

 

 

トウカはなにか思いついたようで、ヘイムダルに今走っている男の服を調べさせる。

 

 

『了解。』

 

 

五分くらい男が走り去った後、ヘイムダルはスキャンを完了させた。

 

 

『完了しましたが、どうされるのですか?』

「それじゃあ、あの男が着ていた服を再現してくれ。この格好のままではいられないだろう?」

『なるほど。そういうことですか。かしこまりました。』

 

 

ヘイムダルに先ほどの指示をしたのは簡単に言ってしまえば、見た目が先ほどの男が着ていた服そっくりの物を作り出すことだった。バリアジャケットを作り出す方法を応用しているのでそれほど難しいことではなかった。

ヘイムダルから放たれた光がトウカを包みこんでやがて収まると、ジャージを着たトウカが現れた。

 

 

「うーん。まぁ動きやすい服だけど少し寒いな。」

『体温調整はこちらで管理しますのでご安心ください。見た目はともかくバリアジャケットなので。』

 

 

とはいえ、ようやく普通に人前にでられそうな服を手に入れたトウカは再び思案する。

まずはこの世界を知ることが大前提である。まずはこの世界の言語、文化等々……何もかもすべてが情報不足である。

しかも、それをどうやって調べるかが問題だった。適当に歩いて町並みをみれば少しは情報が入るだろうがそれでは明らかに少ないだろう。

さらに現実的な問題だが、やがて空腹になるであろう自分の体である。

人間は何も食べずに生きることは不可能である……となれば必然的に食事の確保が必要である。この世界で食事をするとなると、必然的に文化レベルが高いこの世界には通貨が存在するだろう。

となると、通貨で購入することがになるわけだ。

当たり前だが、今のトウカには持ち合わせはない。

最終手段は生きている動物を捕まえて食べればいいが、できればそんなことはしたくない。これは本当に最終手段である。

 

 

等々、そんなことをあれこれ考えているとふと、ヘイムダルが何かに気づいた。

 

 

『マスター。再び人間の反応です。しかも、微かにですがこの世界に存在しないはずの魔力の反応もです。』

「……ん?確かに魔力の反応が……ヘイムダル。今の服が魔力で作られていることを気づかれないようにすることってできるか?」

『どこまでできるかわかりませんが、やってみせます。』

 

 

意識を向けてみると確かに近づいてきている気配にほんの少し魔力を帯びているような感覚がある。

魔法が存在しないはずのこの世界で自分と同じく魔導師の可能性があるということは、もしかしたら自分を知っている人間かもしれないが、逆にそうじゃない可能性も考えたトウカは気配を消して静かに茂みに隠れ様子を見ていた。

すると。

 

 

『気持ちの良い天気だね、レイジングハート。近くに誰かいないよね?』

『はい、マスター。近くに人の反応はありません。』

 

 

やがて現れたのは10歳くらいの小さな少女であった。どうやらトウカのことに気づいていないようである。そのうち少女は魔法の練習を始めたので、トウカはその様子を伺うことにした。

 

 

(こんな所で少女を覗き見とは、あまり良い趣味ではないですね、マスター。)

(うるさい。好きでこんなことしてるんじゃないんだ。あまり念話で話していると気づかれるぞ。)

 

 

しばらくして少女は片手の缶を上へ投げ、魔法弾で落とさないように打ち上げる練習を始めた。

トウカは内心。(お、なかなか器用なことしてるな。しかも基礎もしっかりしてる。)などと関心しながら見ていると、最後に少女が思いきり放った魔法弾がトウカ目掛けて飛んできたのである。

 

 

「はぁ!!??」

 

 

トウカは予想外すぎる出来事に驚き、避けようとしたが、時すでに遅く、少女が放った魔法弾はトウカの額に見事命中したのであった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「いやーびっくりした。あ~まだ痛いわ……それにしてもどう思う?さっきの子。」

 

 

と、首からぶら下がっているヘイムダルに問う。

 

 

『マスターはあの年頃の少女がお好みなんですか?』

「……」

『冗談です、マスター。そうですね、普通の少女とは思えないほど強力な魔力を感じました。おそらくですが……かなりの実力者かと。』

「あ、やっぱり?俺も思った。」

 

 

ヘイムダルが最初にとんでもないことを言った気がするが気のせいであろう。とはいえあの少女から感じる魔力と技術を考えると、あの娘はかなりの実力者なのだろうということは安易に予想できた。

あの少女……なのはという少女はトウカが魔導師と気づいていなかった。というよりもまさか魔導師がこんな所にいることを考えていなかったので魔力サーチもしていなかっただろう。魔力サーチをされていたらどうなっていたかわからないが、結果的にバレていなかったので良しとしよう。

 

 

「また……会えるかもな。」

 

 

そんなことより、今は情報収集が先だ。ひとまず、ここはどんな世界か知っておくべきだろう。今からすぐに情報収集ができそうな場所は先ほどの高台から見えた町ぐらいだった。

そして、トウカは町を目指して歩き出したのであった。

 

 

 




という感じで一話でした。
主人公がいきなり気絶から始まる小説ってどうなんだろうか・・・
もっと展開を早くしたいのですがまだ序盤なので許してくださいな。
もうちょっとでとある出来事に遭遇するのでそこかから話が進むはずです。

感想お待ちしています。今後ともよろしくお願いします。
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