魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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第26話「 はやての家族2」

「あの~……ちょっと言いにくいんですけどいいですか……?」

「なんでしょうか、ご友人。何なりとお申し付けください。」

「そうですよぉ~はやてちゃんの友人さん。」

 

 

今、トウカは八神宅のソファに座っている。

それ自体に問題はない。

トウカの両脇にシグナムとシャマルの二人がトウカの両脇に座ってガチガチに監視しているという点を除けば。

 

 

「なんで二人とも両脇に座ってるんですかね?あと、わざわざそんなよそよそしい呼び方しなくても……」

「いや特に意味はない。ご友人はお客様なのでここでおとなしくしておいてください。」

「そーだぞ!そこから一歩も動くな!それか今すぐ帰れ!!」

「そんな口のきき方あかんでヴィータ、トウカさんに失礼やろ?シャマルもシグナムもや。トウカさんごめんなさいね、普段はこんな子達じゃないんやけど……」

 

 

一方、ヴィータははやてが料理の段取りをしている傍に寄り添ってしっかりガードしている。

 

 

「あ、あぁ……大丈夫大丈夫。気にしないで、それよりも何か手伝おうか。」

「トウカさんはお客さんなんやからゆっくりしといてください。」

 

 

はやてはそう言ってくれているが、トウカはこれ以上今の場にいたくなかった。

 

 

「いやいや、そうはいかないよ。せっかく一緒に買い物したんだし。」

 

 

どうしてこうなった。

なんでこうなった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

時は少し遡り、はやて宅に向かう途中の事。

 

 

「ところで家族の人に迎えに来て貰わなくてよかったのかい?」

「はい。トウカさんも一緒ですし、買い物してから帰るってさっきメールしたんで大丈夫です。あ、そこの角を曲がったとこが私の家です。」

「ここの角を曲がるっと……」

「あ、ここですここです。」

「おぉ結構立派な家じゃないか。」

 

 

角を曲がったところにはやての家はあった。

一見すると普通の家だ。特徴といえば日本では一般的な一軒家よりもずっと大きいということくらいだろうか。

 

 

「トウカさんどうぞ上がってください。」

「あぁ。」

 

 

はやてに言われ家の敷地内に足を踏み入れようとした直前。

 

 

「!?」

 

 

トウカはあることに気が付いた。

最初、トウカはこの普通の家だなと思っていたのだが、それは一瞬で覆された。

 

 

(こんな家が日本にあってたまるか……っていうかなんだこれ。)

 

 

その家には結界が貼られていた。

しかも一つや二つではない。

探知防壁、防壁結界、いつでも発動できるようにしてある対魔導士用のトラップ等々……この場ではすべてを把握することはできないが、恐らくこの家全体に結界やトラップが張り巡らされている。

更にここまで近づけないと気づけないほどの非常に巧妙に張られている結界やトラップの数々。

そしてこの張られている魔法の数々とこの魔力の感じをトウカは見覚えがあった。

 

 

『マスター!これはベルカ式の……!』

 

 

言うまでもなく、それはベルカ式の魔法だ。

 

 

『落ち着けヘイムダル。分かってる、ここは感知されてないか?』

『大丈夫です。今すぐステルスモードに切り替えます!』

『ここまで厳重に結界が張り巡らされてるんだ。下準備もなく、中途半端にステルスモードにしたら気取られる可能性がある……ここは完全に機能を落としておくのが無難だろう。』

『しかし!それではマスターの身に何かあったら……』

『その時は何とかする。』

『承認できません。』

 

 

ヘイムダルはどうしても引く気はないらしい。

 

 

『……わかった、じゃあ三時間だ。それだけ時間をくれ。それ以上時間がかかっても俺から起動しないようなら自動で再起動するように設定しておいてくれ。じゃないと、そこの排水溝に投げ入れるぞ。』

『……仕方ありませんね。了解しました。マスター、お気をつけて。』

 

 

そこでようやく折れてたヘイムダルは機能を完全に落とした。これならば直接デバイスを調べられない限り、ヘイムダルがデバイスであることに気づかれることは無いだろう。

 

 

「……?トウカさんどないしたんですか?」

 

 

ほんの少しの間とはいえヘイムダルと念話で話していた為、はやてからすればぼーっとしているように見え、はやては心配になって声をかけた。

 

 

「ん?あ、あぁ何でもない。大きい家だなって思ってね。」

「あぁ、確かにそうかもしれませんね。一人で住んでた頃はちょっと不便なくらいでした。でも最近は賑やかになったんでちょうどええくらいなんですよ。」

 

 

(ということは、はやてが言っていた家族というのはつまり……)

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「ハジメマシテ。ワタシハトウカトイイマス」

「どうしたんトウカさん?そんな片言で。」

「「「「……」」」」

 

 

はやてが帰ってきたと気づいたシャマル、シグナム、ヴィータの三人はすぐに玄関に迎えに行ったものの、その場で固まってしまった。

その三人の視線の先には片言で挨拶しているトウカに集中している。

 

 

「それにどうしたんみんな?メールで言ってたと思うけどこの人が図書館で言ってたトウカさんや。」

 

 

シグナムは思い出す。以前はやてが言っていた言葉。

『カッコイイっていうより……きれいな人って感じかなぁ。あとその人な、背が高くて、髪が長くてきれいやねん!』

 

 

「えぇ……確かに聞いていました。年上の男性という事も聞いていました。」

 

 

確かにはやてはそう言っていた。

はやてがあまりにも楽しそうにいつもトウカの話をするというのを聞いていたのでシグナムは完全に失念していた。

 

その友人の年齢を。

 

はやてはまだ9歳の少女だ。その年上のお兄さんという事だからせいぜい中学生くらいだろうとシャマルもシグナムもヴィータも思っていた……いや、勝手に思い込んでいた。

それがまさか見た目二十歳前後の青年とは夢にも思わなかったので三人は完全に面をくらっていた。

 

 

「は、初めまして。寒いですし、とにかくあがてください。」

 

 

シャマルが何とか心の中の整理が出来たようでぎこちない……というか苦笑いでトウカを中に招き入れる。

全員がとりあえずリビングのソファに腰かけたところでまずトウカが切り出した。

 

 

「えぇっと……とりあえず自己紹介しましょうか?俺はトウカっていいます。」

 

 

トウカの目の前に座っている騎士たちの表情は様々だった。

ちなみにはやては仲良くしてもらっているトウカを騎士たちに紹介するのが嬉しいのか、ずっとニコニコしている。

まずはシャマルは戸惑いながら。

 

 

「始めまして。私はシャマルっています。それでこっちが……」

 

 

シグナムはトウカを値踏みするように。

 

 

「……シグナムだ。」

 

 

最後にヴィータは敵意というより殺意交じりの視線で。

 

 

「……」

「こーらヴィータ。ちゃんとご挨拶せなあかんよ?」

「……ヴィータ。」

 

 

(うん。知ってる!全員名前も知ってるし顔も知ってる!そしてこんな小さい女の子がこんな大人の男連れてきたら警戒されて当たり前だよな!!大丈夫それが普通の反応だよね……!!)

 

 

帰りたい!!!

 

 

トウカは表情には出さないものの、内心は今にも泣きそうになっていた。




というわけで少し短めですが、25話でした~
八神家の話はもう一話ほどですのでもう少々と付き合いください。

では次回にまたお会いしましょう。

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