魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師──   作:六道 天膳

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第2話「小さな出会い」

12月2日 P.M10:00 桜台。

 

 

 

 

「ヤバイ……どうしよう……」

 

 

 

 

いきなりだがトウカは途方に暮れていた。

 

 

 

 

「う~ん……問題はこれからどうするかだけど……」

 

 

服装をこの世界に合わせた物にしたおかげで不審に見られることは無かったものの、トウカは丸一日歩いてこの世界のことを知るために情報収集していたため疲労困憊であった。

今は最初に目が覚めた桜台のベンチに座って空をボーっと眺めながら休憩中である。

昨日から一日中バリアジャケットを応用して作り出した服を展開していたため、魔力も底を突きかけていたので昨夜は目が覚めた場所に戻り、元々着ていたローブに着替えていた。

この寒い時期にローブ一枚で寒さで凍えそうかと心配だったが、思ったよりもローブの耐寒性が高かったため、問題なく夜を乗り切ることができた。今も魔力節約のためローブを着ている。

 

 

「それにしても、お腹すいたなぁ……」

『ずっと歩き続けてましたからね。』

 

 

一日中町の中を歩き続けたため腹も減っていた。

しかし、トウカはこの世界のお金を持っていないので何も買うことができないため仕方ないことではある。

 

 

「まだ自分が何者かわかっていないのにこのまま行き倒れはさすがに嫌だぞ……本当に……」

 

 

ひとまずここの世界のことでそれなりにわかったことがいくつかあった。

 

 

────1つ目は自分はこの世界の言葉を理解できる事。これは最初になのはと出会って会話した時に確認できたことである。

とはいえ、街を歩いて様々な文字を見かけたが、この世界の文字までは読むことができなかった。これは後々覚える機会があった時に覚えればいいので、すぐに覚える必要が無いため、そこまで大きな問題ではない。

────2つ目はこの町の治安は良いようだった。

見ているかぎりでは大きな騒ぎや争いは起きていない。おそらく、ここは比較的平和な世界だろうということ。

──3つ目は最初に調べた時にわかっていたことだが、やはりこの世界で魔法を使える人間はいないということだ。

しかし改めて考えると先日会ったなのはが魔法を使っていたのは不思議でならないのだが……

 

 

 

 

だがこんな所で立ち止まっているわけにもいかず、魔力も何とか回復してきたので再びトウカはジャージ姿になり歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

歩き出したのはいいものの、トウカは現段階で得ることができるであろう情報は一通り得てしまっている。

この世界の言語、歴史、文化などまだまだ知らないことだらけだがそれらは今すぐ必要というわけではない。

しかし、たとえこの世界のことを知ったところでもっと大きな、そして最も重要な問題があった。

 

 

「ハラヘッタ……」

『マスター、大丈夫ですか?いくらマスターでもこれ以上何も食事を摂らないのは危険です。』

「いや、大丈夫だ。もうしばらくはいけるさ。」

 

 

そう。今後の食料問題と住居である。

 

 

このまま浮浪者のような生活は我慢すればなんとかなるが、食料問題は大きな課題である。

現に今も空腹で倒れそうである。最悪あと2日は飲まず食わずにいても何とか動けそうだったが、この現状を打開しなければこのままではいずれ行き倒れになってしまうだろう。

目が覚めた時に動物を生け捕りにして食べようかとも考えていたが、やはり気が進まない。というよりそんなことをこの世界でそんなことをしているのを誰かに見られたら騒ぎになりかねないという恐れがある。

やはり誰かに助けを求めたほうがいいのだろうか、例えば昨日出会った同じ魔導師であるなのはという少女とか……

などと考え事をしながら歩いていたのだが、

 

 

「……あれ?」

 

 

トウカはいつの間にか知らない場所に立っていた。見覚えの無いというところは昨日歩いていなかった場所であろう。

 

 

「はぁ……ちょっとボーっとしすぎたな。」

 

 

と、来た道を戻ろうと思ったがふと、目の前の店に目が留まった。緑色の看板の小さな店である。

ちらっと店内を見ると、どうやら普通の飲食店のようである。空腹で倒れそうなトウカだったが、お金が無いので入ることはできない。

 

 

「はぁ……おなか減ったなぁ……」

 

 

と、ぼやきながら店の前を通ろうとしたときだった。

 

 

「や、やめてください!!」

 

 

同時にバンっ!という大きな音と同時に店の扉が開いた。

出てきたのは男三人組、さらに三人の中で一番大柄の男に腕を掴まれたこの店の店員らしき女性だった。

 

 

「いいじゃねぇかよ!」

「そうだよ綺麗なお姉さん!こんなところで働いてないで俺たちと遊ぼうぜぇ!」

「や、止めてください!」

 

 

トウカは目の前で突然起こった出来事に目を丸くしていた。というより、正確には呆れているといった方が正確だった。

柄の悪い、そして明らかに頭の悪そうな男三人組が茶色く長い髪の綺麗な女性店員をかなり強引に連れ出そうとしていた。

女性の店員も必死に腕を振り解こうとしているが、やはり体格差もあるため振り解くことができそうにない。

トウカはこの世界で目が覚めて一日しか経っていないがこの街の中を一通り歩き、様々な人を見た。

比較的この街は平和そうだったのにこのような頭の悪そうな連中がいるとは思っていなかった。

 

 

 

さて、トウカは一日中歩き、マメな情報収集をしているものの、性格的に少々めんどくさがりな点がある。

もちろんそれは本人も自覚している。

なのはに最初、自分が魔術師であることを明かさなかった理由には目覚めた直後で状況判断がしにくかったという事ももちろんあったが、単に”めんどくさい”という理由もあった。

更に言うとトウカはこの世界で目覚めた時から騒ぎになるような事には巻き込まれたくないと思っていた。

 

ずばりめんどくさいからである。

 

しかし現実は自分が願っている反対のことが起こる場合が多い。

今の状況はまさにそれである。

 

 

とはいえ、めんどくさがりの部分があるトウカだが目の前で起こっていることを見過ごすほど冷たい人間ではない。

トウカはやれやれという感じで声をかけた。

 

 

「ちょっとあんた達、こんな昼間っから何してんの?やめときなって。」

「あぁん!?なんだおめぇはよぉ!」

 

 

すると三人組の中でも一番小柄の男がグイグイとトウカに近づいてきた。大きい態度の割には小柄、その上に鍛えて無さそうな体、髪はおそらく染めているのであろう金髪。

極めつけはこの寒い時期だというのに黒いタンクトップ、ジーンズにはジャラジャラと鎖のアクセサリーをつけていた。

トウカの身長は大体180cmほどに対して小柄の男は160cmくらいなので一見すると大人と子供のような差だった。

 

 

「俺たちはよぉ、ずぅっと前からこの店員さんに目付けてたんだわ。普段はここのオーナーがいるから無理だったけどよぉ……今日はいねーみてーだから連れていっちまおうってことよぉ!邪魔すんなら相手になんぜぇ?俺らマジヤバイからよぉ??」

 

 

などと聞いてもいないことを話し出していた。

しかもこの話し方は一体なんだろう。この世界の男性はこんな話し方でもするのだろうかとトウカは一瞬考えたがもちろん、そんなわけがないのはわかっている。

とにかく、この男の話し方を含めて言っていることを半分くらいトウカは理解できなかった。

 

 

「まぁまぁ落ち着いて。その人も困ってるみたいですし……」

 

 

こんな相手に話が通じるとは到底思っていないが、何とかして争いごとを回避しようとトウカは穏便に話を進めようとした。

助けを求めようにもどうやらこの時間帯は人が少ない時間帯のようで、車は通っているものの、トウカ達以外には人の姿はなかった。

どうやってこの場を収めようかと考えていたトウカだったが、三人組の中の茶髪の男が次に言った一言で状況は一変した。

 

 

「あれぇ?っていうかさ、お前女か?髪もなげーしさ!女の割りにデケーけどモデルとかやっちゃってんじゃね!?黒髪だからわかりにくかったけど顔とかべっぴんさんじゃね!?日本人と外人のハーフっぽいし!」

「そーいえばそうだな!ねーねーおねーちゃん。もしかしてあんた、俺達と遊びたかったから声かけてきたのぉ?それなら早くそう言えって!」

 

「……。」

 

 

ピクッ

 

と一瞬トウカの体が僅かに震えた。

次にトウカと同じくらいの身長で三人の中でも最も体格の大きく、スキンヘッドにサングラスをかけた男が女性の店員の腕を掴んだまま会話に入ってきた。大柄の男はほかの二人とは違い明らかに筋肉の量が多い。

トウカと身長はほとんど一緒だがトウカの方が小さく見えてしまうほどの体格差だった。

 

 

「えーモデルかぁ?その割にはジャージってだっせー服来てんだな!」

「バカお前あれだろ。モデルとか有名人って意外にふつーの格好してるんだぜ!テレビで言ってたことだけどな!」

 

 

ギャハハハハハハ!!!

と三人の下品な笑い声が住宅街に響き渡る。

 

 

トウカは確かに中世的な顔立ちをしている。

後髪は背中の真ん中よりも下ほどまで伸び、前髪も少々長めではあるが、伸ばしっぱなしにしているような不潔な印象を持たれるようなことは無いような髪型。

色は染めているのかと思うような濃い黒で漆黒と言っても過言ではない。極めつけにはクセ毛も一切ないので余計に女性と思われてしまいそうな雰囲気である。

とはいえ、身長は180cmと高身長、体格は痩せているわけでもなく、太っているわけでもなくいたって普通の体格なので女性の様な華奢さはない。声も男性のわりには高めだがれっきとした男性の声質である。

先日のなのはもトウカの声と身長で男と判断できていた。逆に言えばそれがなかったら女性と思われていた可能性もあるのだが……

 

 

とにかく。目の前の男達はいわゆる”バカ”なのでトウカが男という事に気付いていなかった。

 

 

「はー!笑った笑った!じゃあ行こーぜ!こんな所いつまでもいられねーし、一緒に楽しいことしようぜぇ?」

 

 

笑い疲れたのか、息を切らせながら小柄の男がトウカの腕を掴もうとした瞬間、強い風が吹いた。

 

 

「あ、あれ……?」

 

 

そして小柄の男はいつの間にか自分が宙に浮いていることに気がついた。

 

 

 

アギャーーーー!!!

 

 

 

という声と共に小柄の男は数メートル先まで吹き飛びそのまま動かなくなっていた。

 

 

「な、なにしやがんだテメー!」

「なにって、触ろうとしてきたからぶん投げただけだ。痛い目にあいたくなかったら、さっさとその人離して帰ったほうがいいよ?」

「ふざけんな!!!」

 

 

今度は一番大柄な男が女性の手を乱暴に離し、トウカに殴りかかってくる。

 

 

「ちなみに言っておくが俺は男だ。」

 

 

トウカは身体を翻し軽々と男の拳を避け、そのままの勢いで脇腹に思い切り回し蹴りを叩き込んだ。

大柄の男はうげぇ!という声を漏らし小柄の男同様、その場に倒れて動かなくなってしまった。

 

 

「こ、小林くんが……関東でも暴れ牛と恐れられた小林君が一撃で……」

 

 

最後に残った茶髪の男が大柄の男まで駆け寄って身体を揺するが、小林と呼ばれた男は完全に白目を向いていて動く気配はなかった。

仲間を一瞬で倒され、茶髪の男は顔面蒼白でこの世の終わりを見ているような表情だった。

 

 

「さて、後は君だけど……まだやる?」

「え……あ……いや……すみませんでしたあああああああああああああああああああああああああ!!!もう来ませんんんんんんん!!!」

 

 

と、男は泣きながら仲間二人を回収し、そのまま走り去っていった。

逃げる時の手際の良さにトウカは呆れた表情で走り去った男を見送り、いなくなったのを確認するとその場で座り込んでしまっている先ほどの女性店員に手を差し伸べた。

 

 

「えっと……大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。助けてくださって本当にありがとうございます。」

 

 

とても穏やかそうな雰囲気の女性の店員はにっこりと微笑んだ。

 

 

「怪我とかしませんでした?」

「掴まれてた腕がちょっと痛いですけど、大丈夫です。」

「それならよかった。それではこれで。」

 

 

女性の無事を確認したトウカはこれ以上この場に留まる必要がなかったので、再び歩き出そうとした。

 

 

が、立ち去ろうとしたトウカの腕を女性店員が掴んだ。

 

 

「待ってください!何かお礼させてください!せっかく助けて頂いたのに……」

「い、いやぁ、そんなつもりで助けたわけじゃないですから大丈夫ですよ。」

「そんなわけにはいきません!」

 

 

などと話していると、

 

 

グーーーー

 

 

と、トウカのお腹から音がでた。

一日以上何も食べていない上、余計な運動をしたため、トウカの胃袋が限界を迎えたのだろう。

ふと、トウカは目の前の女性が何かいいこと思いついたのか、先ほどよもにっこり微笑んでいることに気が付いた。

 

 

「もしかして……お腹減ってるんですか?それでしたら是非うちで食べていってください。あなたのお名前は?私は高町桃子いいます。」

「あ、俺はトウカっていいます。で、でもお金ないんで……」

「それなら気にしないでください!ほんのお礼ですから。」

 

 

……なんでだろう。この人の笑顔がものすごく輝いて見えるのは気のせいだろうか。

 

 

この時のトウカはそう思った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「なーんでこうなっちゃったんだろう……いやまぁ助かるけどさ……でもこの量は……」

 

 

目の前には色とりどりの食事。食事。食事。パスタ、サラダ、ハンバーグ、サンドイッチなど様々な食事が並んでいた。

 

 

トウカは先ほどの店の女性店員。高町桃子と名乗った女性に半ば無理やり店内に連れ込まれ、席で待つように言われ待つこと10分。次々と目の前に食事が並べられていった。

 

 

「たくさん食べていってくださいね。」

「妻を助けて頂いたそうで、本当にありがとうございます。」

「は、はぁ……こちらこそありがとうございます……」

 

 

そしてもう一人、頭を下げているこのお店のオーナーである男性、彼もまた桃子同様に穏やかそうな雰囲気の男性だ。

桃子さんが料理を作っている最中にこの男性が帰ってきた。名前は高町士郎、このお店は夫婦で経営しているらしい。

どうやら、食材を買いに行っていたらしく、その隙にあの男達が押しかけてきたというわけだった。

帰ってくるなり、桃子が士郎に事情を説明すると、ものすごい勢いで頭を下げながらお礼を言われ、桃子以上に張り切って料理を作り出したため、こんなにも大量の料理が並んでいるということだった。

 

 

そんなことより、せっかくなのでトウカはお言葉に甘えてその食事達を頂くことにした。

すると、食べているトウカに桃子が質問を投げかけた。

 

 

「えっと、トウカさんでしたよね。どちらからいらしたんですか?日本語お上手ですけど外国の方なんですか?」

「うぐ……!」

 

 

痛いところを疲れてしまった。記憶喪失だなんて言えない。いやそれよりもどこから来たと聞かれても答えようがないのだ。

 

 

「じ、実は世界中を旅をしていまして……ここには偶然立ち寄っただけなんですよ。お金が無いのは歩いていたらいつの間にか落としてしまったみたいなんです。言葉は独学で……文字は全然なんですけど。」

 

 

我ながら苦しい言い分と思ったが、こう言わざるを得なかった。トウカはまさかこんな言い分が通るわけないと思ったが。

 

 

「そう……大変だったんですね。もうしばらくこちらに滞在する予定なんですか?」

「そうですね。もうしばらく近くにいる予定ですけど……」

 

 

と、桃子は本当に心配している様子だった。それは質問をした士郎も同様であった。

まさかこの話を信じてもらえるとは思っていなかったトウカは少し罪悪感を感じていたが、本当のことを言えるわけもなく、サンドイッチを一口齧る。

 

 

そんなことを話しているとカウンターで話を聞きながらお皿を洗っていた士郎が声をかけてきた。

 

 

「だったら、困った時はいつでもうちに来てください。食事でしたらいつでも出しますよ。」

「もし泊まる所に困っているんでしたら、よかったらうちに泊まっていくのはどうでしょう?」

「お、それはいい考えだね。」

 

 

このまま話を続けられると、話が決まりかねないのでトウカは二人の話の間に割って入った。

 

 

「そこまではさすがに申し訳ないので……でしたら、食事だけ時々食べに来てもいいですか?」

「そんなことでしたらいつでもいらしてください!」

 

 

トウカはこれ以上自分の素性を探られるのは不都合という思いもあったのだが、これ以上迷惑を掛けるのも申し訳ないと思ったからだ。

ただ、こんなにも良くしてくれるこの二人の善意はこの世界にたった一人で迷い込んだトウカにとって純粋にありがたかった。

 

 

「そういえば。この近くに図書館みたいな所はありますか?ちょっと調べたいことがあるんです。」

 

 

ふと、トウカは話題を変えるために桃子に問うた。

 

 

「そうねぇ……この辺りで大きい図書館だと……風芽丘図書館かしら?」

「良かったらその風芽丘図書館の場所を教えてもらえませんか?」

「ええいいわよ。」

 

 

よし!と、トウカは心の中でガッツポーズを作った。図書館だったらこの世界についてもっと詳しく知ることができる。

ここにいつまでもお世話になるわけにはいかないので、ひとまずその風芽丘図書館という所に行くことを決めた。

それから、少しだけ3人で談笑をしながら軽く食休みをして、12時ぐらいになったころ。

 

 

「ごちそうさまでした。」

 

 

全部食べ終わったのはそれから30分ほど経ってからだった。本当にお腹が減っていたので、あっという間に食べてしまった。

 

 

「本当にありがとうございました。でも本当に良かったんですか?」

「えぇもちろん。気にしないで。」

 

 

さすがにこれ以上お邪魔しているのも悪いので、そろそろ行こうかと席を立った。

 

 

「それじゃあ俺はそろそろ行きます。本当にありがとうございました。」

「いいえ。また来てくださいね。これは図書館の地図よ。」

 

 

と、桃子はポケットから二つ折りの紙を一枚取り出すとそれをトウカに手渡した。どうやらトウカが食事をしている間に書いておいてくれたらしい。

紙を広げて見てみるとそこにはこの店から図書館までの道が丁寧に書いてあった。

 

 

(そういえば、高町って……もしかして昨日会ったなのはの親族……?まぁいいか。)

 

 

ふと、トウカはそんなことを考えたが今更聞くことでもないので、トウカは桃子にお礼を言いい、貰った地図を頼りにその風芽丘図書館という場所を目指した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「たぶんここかな?」

 

 

 

時は流れて30分経った頃。

桃子からもらった地図を頼りに、トウカは風芽丘図書館を見つけることができた。

早速入ってみると、時間帯がまだ早いためか人は疎らだった。館内はとても広く蔵書数もかなりありそうだ。この町では大きい図書館という話は本当のようだ。

この世界を丸々一日歩いて判明したこともあるが、まだまだ知らないことは多い。それに、まさかこんなにも早く文字を覚える機会があるとは思わなかった。

 

 

こんなにもトウカが知識を求める理由。それはトウカが単に知識に対する好奇心が旺盛ということもあるのだが、何よりも今知りたいことは自分とこの世界の関連性を見つけるためでもある。

 

 

(さて、ここでようやく本格的にこの世界を知ることができそうだな。)

 

 

トウカがこの世界の人間ではないというのはわかっている。だが目が覚めたのがなぜこの世界なのか。魔法も無く。文字も読めず。自分を知っている者が誰もいないこの世界で。

つまり、何も知らず、デバイス以外は何も持たず、何も覚えていないこの自分とこの世界との関連性を見つけることができれば、自分が何者なのかということに一歩近づけると考えたのだ。

 

 

(一番最悪なのは、本当に偶然で全く関係の無い世界だった場合だ。)

 

 

そんなことも考えたが、ひとまずトウカは図書館の奥にある辞書のような大きい本や誰も読まなさそうな様々な大きさの本、さらに文字を覚えるために子供用と思われる本等々、まさに種々雑多な本を適当に選ぶと席に座って読み始めた。

この世界の文字はトウカにとって始めて見るというのもあり、ひとつの言語を覚えるのは容易ではない。この世界で会話が通じるということは少なくとも音声言語は一緒なので文字を覚えるのは慣れればなんとかなりそうだった。

 

 

「さて、気合入れていきますか!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「つ、疲れた……」

 

 

トウカが本を読み始めて数時間ほど。この世界にはたくさんの言語があるようだがひとまずこの国。「日本」の言語をなんとか習得することができた。ついでにこの日本の歴史、常識、文化様々な知識を大雑把にだが得ることができた。

 

 

 

しかし、ようやく文字を覚えて本を理解できるようになったものの、トウカの疑問はますます深まっていた。

というより頭を抱えていた。

 

 

「……やっぱり。どの本を読んでもこの世界にとっての魔法は神秘的で超常的な力みたいだな。」

 

 

どの本を読んでも魔法メルヘン、おとぎ話、オカルト、あるいは奇跡等々、最初からわかってはいたが、やはりこの世界には魔法というものは存在していなかった。

しかし、それだとやはりなのはが魔法を使えるのはおかしいとしかトウカは思えなかった。

突然変異や偶然であの女の子に魔力が宿ったのだろう。しかし、彼女がなぜ魔法を使えるのかというのは別問題である。更に言うならばなぜ自分のデバイスを持っているのか。

そして、一番最悪なことが判明した。

それはこの世界とも関連性を見つけることができなかった。この世界を知ればなにか思い出すかもしれないという期待もあったのだが、どうやら空振りに終わってしまった。

 

 

とはいえ、本当に知りたいことを知ることができなかったトウカだったが、本人はこの世界に対する興味は更に深まっていた。

 

 

(色々歴史の本を読んではいるが、この世界は面白い。全く退屈しない。)

 

 

世界の歴史とはずばり、人の歴史でもある。この世界の人種、国家、宗教、戦争。様々な出来事がトウカの知識に対する好奇心や探究心を更に膨らませていた。

真新しい知識を得ることに楽しんでいたトウカがふと気が付くと、いつの間にか大量に持ってきていた本を全て読んでしまっていた。

 

 

「もう読んじゃったのか。さて、それじゃあ新しい本でも取りに行こうかな。」

 

 

席を立って図書館の時計を見ると、いつの間にか4時30分を過ぎてしまっていた。

 

 

再び適当に本を数冊選び席に戻ろうとした時だった。とある二人の少女が目に付いた。

一人は髪の長い小学生ぐらいの学校の制服を着た少女。もう一人は車椅子に乗った少女。

 

 

しかし、どうも様子がおかしかった。

 

 

髪の長い女の子は車椅子の女の子のために本を取りたいようだがその本は本棚の一番高い段にあるらしく、どうやら届かないようで困っている様子だった。

 

 

「ねぇ。どれを取りたいんだい?」

 

 

さすがに放っておくのも気が引けるので、トウカは二人に近寄って話しかけた。

 

 

「あっ……一番上の段の緑色の本です。」

「えっと……これかな?」

「そ、それです!ありがとうございます!」

 

 

と、本棚の一番上の段にある緑色の本を手に取り、特徴的な言葉に訛りのある車椅子の女子に渡す。

 

 

「いいえ。どういたしまして。」

「……すみません。私が取ろうと思ったんですけど、届かなくて。」

 

 

もう一人の長い髪の礼儀正しそうな少女は申し訳なさそうにトウカに謝った。

 

 

「いいよ。気にしないで。」

 

 

そう言って、トウカはそのまま席に戻ろうとしていた途中。

 

 

 

「さっきの人、綺麗な人だったね。」

「男の人……やったよね……?」

 

 

 

そんな会話が聞こえてきたがトウカは気のせいということにした。

 

 

 

 

 

 

この小さな出会いが車椅子の女の子”八神はやて”の運命を左右することになるとはこの時、トウカも含め誰も知る由もなかった。

 

 

 

 

 




本当はもっと早く投稿するつもりだったのですが、この表現が納得いかないと色々手直ししながら考えていたらなんだかんだ一ヶ月掛かってしまいました!

すみません!


さて今回でなのはの両親、すずか、はやてとのちょっとした出会いを書きました。
モブででてきた三人組は恐らく一生出ることはないでしょう。


しかしまだここまでで本編の一話。まだまだ先は長そうです。次もいつになるかはわかりませんが、できるだけ早く投稿するつもりです。


感想お待ちしています。今後ともよろしくお願いします。
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