魔法少女リリカルなのはA's──記憶を無くした魔導師── 作:六道 天膳
時空管理局の訓練場、数多くの局員がここで日々訓練している。
この訓練場はドーム状の造りになっていて面積も非常に広く、空中戦の訓練も可能という巨大な訓練場である。
今ここには二人の男が対峙している。
一人はクロノ、そしてもう一人はトウカ。
「……本当にやるの?」
「もちろんだ。」
即答だった。
クロノはすでにバリアジャケットを展開し、やる気満々という様子だ。
「はぁ……仕方ない。ヘイムダル、俺のバリアジャケットを」
『All right. 』
トウカは白いバリアジャケットを展開する。
そして、トウカの左手には純白の長槍……”ランサフォーム”のヘイムダルが握られている。
長さは2mほどで槍といっても、スピアのように三角錐状の槍でもなく、トライデンのように3つに分かれた槍でもなければ派手な装飾があるわけでもない。
特徴といえば穂先の刃が少し長いという事と、柄から刃まで純白の槍。それ以外は一見、普通の槍である。
武器としては非常にシンプルだが、突き、払い、斬り、跳ね飛ばす、叩き潰す等、槍という武器はありとあらゆる状況に対応しやすい。
だからこそ、あらゆる武器の中でもトウカが最も愛用している形状の中の1つだ。
「さて、いくか……ヘイムダル、サポート頼むな。」
『任せてください。』
圧倒的な力の差があるというのにトウカの瞳からは怯えや諦めなど微塵も感じられなかった。
『set.』
「それじゃあいくぞ。」
呟いたクロノのデバイスの先端から魔力光弾が出現する。
『Sonic Ray.』
「はいよ。」
対してトウカは周囲に純白の魔力弾を5つ出現させる。
「はっ!」
「ショット!」
攻撃は同時だった。両者の放った攻撃がぶつかり合う。
お互いに容赦はない。
もちろん魔力では圧倒的に有利なクロノでも同じだ。
たとえ魔力で勝っていて自分の方が有利だとしても、油断すれば足元をすくわれかねない。
たとえ誰であろうと手は抜かないとクロノは決めていた。
「はぁっ!」
クロノの声とともスティンガースナイプは加速し、トウカの放った5発の魔法弾は一瞬のうちに全て迎撃される。
「スナイプショット!」
クロノの発した言葉によって光りの弾丸は更に加速し、トウカに襲い掛かる。
「ふむ……」
ある程度こうなるだろうと予想していたこととはいえ、まさか一瞬の足止めすらできずに迎撃されるとはトウカは思っていなかった。
しかし、それでもトウカは動揺をしている様子はない。
「フォースシールド。」
トウカはすかさず手を正面に突き出し”フォースシールド”を展開して身を防ぐ。
だが、Bランク程度の魔力しか持っていないトウカがクロノの魔法を防ぎきれるはずもなく。
「……チッ!」
光りの弾丸はトウカの守りを軽々と破り、トウカは地面へと吹き飛ばされていた。
◆◆◆◆◆
一方、なのは達はメンテナンスルームで彼らの戦闘をモニターで見ていた。
「あーあ……クロノ君かなり本気モードだよ」
エイミィはやっぱり、という感じで呟いている。
それは今まで何度もクロノと模擬戦をしているフェイトや彼と共に戦ったことがあるなのはも同じく感じていた。
見ている限り一方的にクロノが攻撃し、トウカを圧倒しているとしか思えないこの戦闘。
「大丈夫かな……トウカさん。」
心配そうになのははモニターを見つめていた。
◆◆◆◆◆
「いてて……遠慮ないなぁ……ったく。」
吹き飛ばされ、地面に激突したトウカは辛うじてダメージはほとんどないものの、ヨロヨロと立ち上がる。
「もう降参か?」
「してもいいならしたいところだけど遠慮しておくよ。」
クロノは上空でトウカを見下ろしている。
(さて、どうするか……)
トウカは冷静に思考を巡らす。
相手との魔力の差は圧倒的。
今の魔法の攻防でトウカかクロノとの火力と防御力の差がはっきりした。
つまり魔法同士のぶつかり合いは無謀。
かといって逃げ回っていても持久戦はジリ貧になるだけ。
「まぁ、全く手がないってわけじゃないんだけど……」
今のトウカはこの絶望的な魔力の差を埋めなければならない。
トウカは槍を構え真っ直ぐクロノを見据える。
「……さていくか。」
そうつぶやくと、トウカは飛翔し一気に槍の間合いまで距離を詰める。
「やはりそうきたか……」
クロノはトウカが近づいてくることを読んでいたのか、迫るトウカに動じることなく魔法弾、"スティンガーレイ"を複数放つ。
クロノは近距離であろうが、遠距離であろうがあらゆる魔法を使いこなす汎用型の魔導師である。彼にとって苦手な距離は無いと言っても過言ではない。
だがクロノは先ほどまで魔法による遠距離の攻防を行っていた。
理由として、クロノは先ほど聞いたデバイスの特性からトウカが武器をメイン使用し戦う魔導師と判断したからというのがまず一つ。
二つ目は魔力量にアドバンテージがあるからこそ遠距離魔法による火力で一方的に攻撃しようという考えがあったからだ。
なぜクロノがこのような回りくどい戦法を選んだか、それはトウカがどのように対応するかを見るためだった。
そしてこの状況でトウカが次に行う行動は距離を詰め、武器による中距離~近距離戦を挑むであろうと。
結果としてクロノの読みが見事に当たった。
トウカに迫る魔法弾。
先ほど放ったスティンガースナイプより威力は少々劣るものの、バリア貫通力が優れたこのスティンガーレイはトウカがたとえすぐに防御魔法を発動したとしても貫くだろう。
しかし、クロノのこの予想は外れることになる。
「……フッ!」
トウカは次々と迫る魔法弾を軽々と切り払い、一切減速することなく真っ直ぐ突き進んできたのだ。
あっという間に距離を詰めたとトウカはクロノに高速の打突を放つ。
「くっ!」
迫る穂先を辛うじてデバイスで防ぐクロノ。
先ほどの魔法弾を軽々と切り払った槍捌きを見たクロノは近距離戦は危険だと判断し距離を取ろうとするが、トウカの槍はそれを許さない。
次々と繰り出される高速の突き。
クロノは何とかそれらをデバイスで槍の柄を打ち、軌道を逸らすことによって防ぎつつ防御魔法を展開する。
ガン!という音と供に火花が散り、トウカの槍はクロノのシールドに阻まれる。
その一瞬の隙をクロノが見逃すはずもなく、トウカから距離を取るが、
次の瞬間には目の前にいたはずのトウカが既に消えていた。
(どこに!?)
「はぁ!!」
頭上からの声。
クロノが上を向くとそこにはいつの間にかトウカは槍ではなく、片刃の剣、エスパーダフォームに持ち替えたトウカがいた。
シールドで防がれ、距離をとられたトウカはそのまま一気にクロノの上まで移動していたのだ。
その瞬間。
クロノは妙な感覚に襲われた。
(──嫌な予感がする。)
最初の思惑通り、距離を離すことはできた。
しかし、魔力という絶対的な差あるというのに心の奥から何かが込み上げてくる。
それが不安か、ただの思い過ごしか。
どちらであれ、トウカからは今までとは違う妙な気配をクロノは感じた。
トウカは持っている剣に魔力を一点に集中させ、刃を振り下ろす。
「はぁああああ!!」
『Cortar Impact』
同時に刀身から純白の光刃がクロノに向かって放たれた。
クロノのスピードであれば避けることもできたであろう。
だが、彼は避けようとはせず目の前に手をかざし前方にラウンドシールドを展開した。
なぜクロノは避けなかったのか……いや避けられなかった。
先ほど感じた”嫌な予感”という一瞬の迷いがクロノの行動を1秒鈍らせた。
ぶつかり合う光刃と盾。
「くっ!やるじゃないか……!」
トウカの渾身の一撃がクロノの盾を砕こうとするが、AAA+ランクは伊達ではない。
たとえトウカの全力の一撃であったとしても、魔力量ではクロノの方に分がある。
トウカが放ったこの光刃はクロノのシールドを破ることはできないのは目に見えていた。
「はぁぁぁ!」
いつの間に移動したのか、クロノが後ろを振り向くとすでにトウカは目の前、しかもその手にはいつの間にか先ほどの槍ではなく片刃の剣が握られている。
トウカの先ほどの攻撃はクロノのシールドを打ち砕くためではなく、目的は別にあった。
相手の守りを破れないのであれば、わざと防がせればいい。
防ぐ方向に意識を向けることさえできれば、それ以外……つまり背後に一瞬だけ隙が出来る。
「はあぁぁぁ!!」
──そう。トウカの今までの行動はこの隙ができる瞬間をつくるためのものだった。
トウカの刃がクロノに襲い掛かる。
「……っく!」
クロノは片手で光刃をシールドで防ぎつつ、もう片方の手に持つ杖でとトウカの剣を防がざるを得ない状況になった。
このままではまた再び態勢を整えられる可能性があった。
しかし、トウカはそんなことをさせるつもりは無い。
トウカはクロノの手元を狙ってすかさず二撃目を繰り出し、クロノのデバイスを叩き落したのだ。
落ちていくクロノのデバイス。
「しまっ……!」
その瞬間、光が二人を包み込む。
クロノはデバイスに気を取られ過ぎたため、シールドの防御を緩めてしまったのだ。
シールドを緩めたせいでトウカのコルタールインパクトがクロノのシールドを破り、爆ぜた。
吹き飛ばされる二人。
何とかお互い体制を立て直すも、トウカの手には剣が握られているが、クロノのデバイスは先ほど落としてしまったため地面に転がっている。
デバイスが無ければ丸腰も同然。
隙だらけのクロノにトウカは一撃を与えようと迫り、剣を振り下ろした
しかし刃がクロノに当たる寸前のところでトウカは動けなくなっていた。
「……あ。」
体を見てみると、なんとトウカの体はいつの間にか魔力の鎖によって拘束されていた。
「バインドか……」
「最後の詰めが甘かったね。実は君の姿を見失ったときに詠唱をしていたんだ。」
先ほど爆ぜた瞬間にクロノは密かに設置型のバインドを発動していたのだ。
「僕の勝ちだな。」
「……だな。」
こうして戦いの勝敗が決した。
あとがき。
まず最初に、遅くなってすみません!
仕事が忙しく本当にバタバタしていたので書けませんでした……
これからもなんとかあきらめずにがんばっていきます!
さて本編に関してですが、主人公の強さに関しては魔力がBランク程度しかないため単純な火力も防御力は低いけれど、戦闘技術、戦術などに関しては優秀という感じです。
戦闘描写は楽しいですがやはり難しいですね。
ではまた次回に。