だいたい殴れば解決する   作:三回転半ドリル土下座

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交流会団体戦7 特級呪霊

 成った。黒閃を極めた悠仁を見て、大地はそう確信した。

 呪力から幼さが消え、立ち振る舞いすらもが洗練される。恐らく、呪力操作に気を遣うことがなくなったためだろう。たった一度の黒閃が呪力を呼吸と同様に扱えるようにし、ひな鳥を龍に変える。良くあることだ。

 いきなり落ちてきた特級呪霊にも惑わされず交戦し、やり遂げて見せた。見事、ただその一言に尽きる。

 葵も褒めなければなるまい。彼は指導が基本的に下手だが、合う奴にはとことん噛み合う。悠仁はメンタルの調子も相まって、完璧に歯車を回した。

 葵の言った、黒閃をキメられずオマエがどんな目に遭おうと見殺しにする、という宣言。一見非道にも見えるが、これは期待の裏返しだ。わざと告げて、悠仁の精神をさらに高ぶらせた妙手。かくいう大地も、負けず劣らずの期待をしていた。応えてくれた悠仁には感謝しかない。

 全く、何度見ても色あせないものだ。人が羽化する瞬間とは。

 

「さて」

 

 肩を回して、ごきりと鳴らす。ここまでのものを見せられたなら、自分の力も見せるべきだ。

 

「待つんだ親友(ブラザー)

 

 が、それは葵に制止される。

 

「どうした親友(ブラザー)

「虎杖の成長期は未だ続いている。今必要なのは、試練と飛躍だ。ここは任せて貰うぞ」

「だが、悠仁だけでは死ぬぞ」

 

 試すように笑いながら言うと、葵もまた、ニヒルな笑みを返した。

 

「その通り。だからここからは俺も戦う!」

「お前の意思は受け取った」

《貴方たちは頭がおかしいのですか?》

 

 なぜか、やたら困惑した様子の呪霊。奴としても、自分が特級だという自負くらいはあるのだろう。それが品定めされていると知って、憤りを覚えたのか。いや、これは単にないがしろにされたが故かもしれない。

 

「おっと、主賓(ゲスト)を待たせすぎてしまったようだな。安心しろ、俺は手出しをしない。この二人と、じっくり睦み合うがいい」

《会話をしてください。お願いだから》

 

 なんだか妙に呆れられた気がしたが、まあどうでもいい。

 

《私としては、貴方にも参加してほしかったのですが……》

「馬鹿を言え、俺が混ざったら一瞬だ」

 

 それは強さという意味でも、術式という意味でも。はっきり言えば、悠仁と葵ごとき瞬殺できないようでは話にならない。これは二人を侮っているのでもなんでもなく、純然たる事実だ。

 

《まあいいでしょう。ならば出てこざるを得ないようにするだけです》

「ああ、できるものなら楽しみにしている」

 

 これは明確な挑発だったが、反応はなかった。案外と言うべきか見た目通りと言うべきか、随分と冷静だ。

 どうでもいい事はさておき。呪霊、もしくは呪詛師側の目的の一つに、大地がいると分かった。この程度で倒せるとは思っていないだろうが。恐らく、術式くらいはせめて解明したいのだろうと察することができる。

 大地は特級の中だと一番知名度が低い。それは情報の少なさとイコールだ。

 悟と大地。同じ相伝術式を扱う特級でも、中身はまるで違う。相伝術式をそのまま――言ってしまえばお利口に使っている悟と違い、大地がぐっちゃぐちゃに弄ったせいでもはや別物だ。大地の能力を曲がりなりにでも全て知っているのは、恐らく大地当人を抜けば与幸吉ただ一人だろう。敵にしてみたらとてつもなく不気味だし、多少の犠牲を払ってでも解き明かしたいに違いない。

 逆に言えば、無下限呪術の詳細はすでに抜き取り済み、という意味でもあるが。

 

(……本格的に戦争でも始めたいのか? それも呪術師全員と)

 

 あるいは、もっと大きな枠を壊そうとしているのかも。どうであれ、大地はさぞ目障りな存在だ。

 悟の気配がかなり遠くにあり、しかも動いていない。締め出しをくらったか。手段はどうあれ、それを実行できる実力と胆力があるわけだ。

 考えていたほど、酔狂で済ましていい組織ではないのかもしれない。首魁は淡々とすべきことを行っている。そんな印象を受けた。

 ならば、ここで大地が手を出さないのは、思いのほか大きな意味があるかもしれなかった。無論、そうこちらに思わせているだけという可能性も大いにあるが。だからといって、わざわざ見せてやる義理もない。

 残る侵入者らしき呪力はあと二つ。あくまで呪力による査定だが、目の前にいる特級呪霊よりは格段に劣った。誰が遭遇しても即死亡という事はないだろう。誰かが危なくなったとしても、自分ならば即座に駆けつけられる。

 

(つまり、何の問題もなし)

 

 いざとなったら()()()()()殺すこと程度、大地に取ってはさしたる労力ではないのだから。

 自分より圧倒的な弱者、それも術式すら使用していない二人に、互角の戦いを演じさせられている。これに、呪霊は困惑を隠せないようだった。

 呪霊はいかにも強者らしく、持っている力の合計値で勝負が決まると思っているようだ。どうやら悠仁と違って、あの呪霊は未だ蛹らしい。連携と意思が、どれだけ力を与えてくれるか理解していない。

 ましてやここには葵が居る。どれだけ難解な術式を持っていようと、彼を出し抜くのは難しい。葵を圧倒したいなら、圧倒的な威力と早さで力押しするのが一番だ。それこそ小細工は逆効果。彼の頭脳を上回るのは、殴り合いを制するより数段困難だ。

 だが。それであっさりと圧倒されるほど、特級呪霊も柔ではない。人間ではありないほどの早さで適合――いやこれは進化か――している。物量を生かした攻撃で、強引に綱を引き戻そうとしていた。しかも、今までのように大味なものばかりではなく、上手く小技まで挟んでいる。こういった小さな気遣いのようなやり方こそ、上手く機能さえさせられれば敵を追い詰める。

 

「戦いに楽しみを見いだしたか」

 

 例え顔から感情が伝わらずとも、切々と感じる。どちらの方が強い、という死ぬほど下らない事を追求する嘉悦。ただ力を追求し、高める快楽。

 

「強くなるには不可欠なものだが……気づくのに少しばかり遅れた。それがお前の敗因だ」

 

 何せ葵も自分と同じく、相手が強ければ強いほどアガるタイプ。呪霊の成長こそが、皮肉にも本気にさせた。術式を披露するタイミングも絶妙、強引に持っていた流れを強制的にリセットするものだ。

 東堂葵。さすがは大地が知る者の中でも最高の戦闘技巧者。機を見るに敏という意味では、それこそ悟でも遙か及ばない。

 葵の術式である不義遊戯(ブギウギ)は、一定の呪力がある存在同士を入れ替えるという、至ってシンプルなものだ。扱いは至極単純であり、手を叩く事をトリガーとして発動する。しかし単純だという事は、決して簡単だという事に繋がらない。

 術式に攻撃能力がなく、発展性も低い。効果が極めて限定的が故に強制力も強く、術式に抵抗するのもほぼ不可能だが……これは術式そのものに危険性が皆無であるという証左でもあった。はっきり言って、この不義遊戯(ブギウギ)は後方で撤退支援以外に使い道はない。術式所持者が東堂葵以外であれば。

 相手の思考を完全に読み切り、呪力の位置を把握し続け、常に裏をかく。このなんと難しいことか。

 葵と位置を入れ替えられ、自滅してから呪霊の転落は始まった。

 術式の開示により、不義遊戯(ブギウギ)の強度はさらに上がる。こうなると、大地や悟であっても抵抗は不可能だ。それはつまり、戦場の主導権をたった一人が握り続けるという意味でもある。

 悠仁の動きも迷いがなくていい。これは不義遊戯(ブギウギ)を織り込んでいるのではなく、葵を信頼しての選択だ。

 ただし。ここまで一方的でなお、呪霊を祓うに至らない。

 攻撃力の不足は深刻だ。融通の利く術式に、防御方面に飛び抜けた肉体。これを突破するには、ただ呪力を乗せた打撃では難しい。

 現状を覆す手札が、葵に存在しないわけではない。しかし、彼はそれを実行しなかった。大地にも手に取るように分かる。これは期待であり、待っているのだ。悠仁がもう一度覚醒するのを。葵風に言えば――退屈が裏返る瞬間を。

 

《グァッ》

 

 呪霊の悲鳴と共に、黒い火花が咲く。本日二度目の黒閃。

 

「ぉお!」

《ギッ》

(二連続!)

 

 いくら一度目の黒閃発動後は黒閃が出やすいとは言えど、あくまで比較論。そもそも黒閃はそうほいほいと出てくれるものではない。十万分の一秒の世界とはそういう世界だ。大地とて、二連続で出せた経験は多いと言いがたい。

 時空のひずみで生まれる華は、なおも止まらない。

 三度、四度――! 黒閃連続発生記録保持者に並んだ。

 目の当たりにした天童の体が、ぶるりと震える。

 得てして黒閃とは、何気ない状態の時に出るもの。追い詰められ際の際で、そう出てくれるものではない。誰しもが理想とし、不可能な事を。彼は土壇場であっさりと実現して見せた。

 間違いない。虎杖悠仁は、黒い華に愛されている。

 

「はは」

 

 自分でも不思議なほどに自然と笑みが漏れた。

 めちゃくちゃ()()()。こんなものを見せられて興奮しないわけがなかった。混ざりたい。ぐっちゃぐちゃに、死ぬほど戦いたい。これが悠仁と葵の糧だと分かっているからこそ最後の一線は保っているものの。許されるならば、すぐに突撃していただろう。

 

(お前達はどこまで行くんだ? 見せてみろ!)

 

 もしかしたらその果てに、自分の地位にまで届くかもしれないという願望を込めて。

 いつまでも見ていたかったが。ここまで長々戦っていれば、さすがに誰もやってこないという事はあり得ない。遠くから飛翔してきた三つ――いや、二つか――の呪力が、大地の近くへと着地した。

 

「おい、なんでまだ祓えてないんすか。アンタの近くに落ちた筈でしょ」

 

 と、やや毒を含んだ口調で言ってきたのは恵だ。主に戦っているのが悠仁と葵という事で、全く事情を理解できないという顔をしている。

 

「そう結論を急ぐな、伏黒。今あの二人は、急速な勢いでレベルアップしている。彼らの成長を邪魔することは、何人たりとも許されない」

 

 葵の事は分からずとも、悠仁を見れば合点がいくだろう。彼の呪力がとんでもなく洗練されているという事実に。

 

「いや、強さなんて後からいくらでも……」

 

 彼の言葉がそこで止まったのは、憲紀が肩に手を置いたからだった。

 

「無駄だ伏黒。こうなった天童に言葉は通じない」

「……京都校って会話できない奴多すぎないですか?」

「安心しろ。私は常日頃からそう思っている」

「クソかよ」

 

 よく分からないやりとりをしているが、まあとにかく仲は悪くなさそうなのでヨシ。

 彼らのやりとりを見ながら、ふと閃いた。

 

「丁度いい、お前達もあそこに混ざってこい。そして二回りでも三回りでも好きなだけ強くなれ」

「ついにイカれたか?」

 

 なぜか、恵の口調から丁寧なものが剥がれたが。そんなものは気にせず、続けた。

 

「あの二人を見ろ。うらやましいと思わないか? あそこに混ざって死ぬほど戦いたいという願望、お前の中にないと言わせんぞ」

「ねえよ。会話しろ」

「謙虚な奴め。しかしそれは、こと強くなるという意味において欠点だぞ」

「話聞け。日本語話せ」

 

 階級を上げたいとは、呪術師ならば誰もが思う。数字に固執している訳ではない。ただただ、より高みを目指したいのだ。

 目の前に強い敵が居て、強くなる見込みがある。これに飛びつかない者などいない。

 

「ついでに黒閃の一つでも経験してこい」

「冗談にしては笑えねえ」

「俺はいつでも本気だ」

「じゃあはっきり言ってやった方がいいか? 黒閃の八割は()()()に発動するものだ。残りの二割だって、黒閃経験者が殆ど。出そうと思って出るもんじゃないからありがたがられてるんだよ」

「ええい、ぐだぐだと……」

 

 両手を伸ばして首根っこを。右手に恵、左手に憲紀をしっかり掴んで。目の前の戦場へと放り投げてやった。

 

「あああ!」

「またお前……」

 

 元気よく投げ出された二人を満足げに見送りながら。大地はうんうんとうなずいた。やっぱり呪術師たるもの、こうでなくては。

 呪術師は辛気くさいだねちっこいだと言う奴が多いが、大地はそうは思わない。結局の所、呪術師とは戦士だ。強さに対し真剣で真摯な者こそが呪術師であり。つまるところ、不純物たる呪詛師や呪霊との最大の違いはそこだ。

 乱入の瞬間こそ、双方共に多少の混乱はあったが、さすがと言うべきか、どちらもすぐ立て直す。

 特級呪霊の強度と安定感は凄まじく、この状況でも崩れなかった。まあ、これに関してはある程度分かっていた結果ではある。

 人数が二人増えたからと言って、当然、戦力が二倍になどならない。はっきり言って、恵と憲紀では火力に難があった。

 先ほど、悠仁と葵では攻撃力不足だと言ったが、それでもあの二人は、学生では屈指の打撃力を持つ。こいつらが階級不相応の火力を持つだけで、後から混ざった二人とて十分階級相応の力は持っているのだ。

 これは単純に、目の前の植物型特級呪霊がそれだけ飛び抜けた存在だというだけである。特級呪術師である大地とて遭遇したことのない呪力を持っているのだから仕方ない。

 参加して有利に働いた点と言えば、葵の交換素材が増えた点だろう。

 恵はいち早くからくりに気がつくと、玉犬の他に脱兎を呼び出し、目くらまし兼移動先として扱っている。当然、主力の玉犬で呪霊を狙うのも忘れない。玉犬は常に呪霊の死角かついつでも飛び込める位置に待機させていた。これは、周りに隠れられる程の障害物がないせいもあるだろうが。

 憲紀は、恵をさらに迷彩として扱っている。本人は遠距離から貫通力に特化した穿血を狙うと見せかけ、脱兎の中に呪力を込めた物体を潜ませる。呪霊はまだ、葵の術式を『自分と誰かの交換』と誤認しており、不義遊戯(ブギウギ)の真価である『一定以上の呪力を持った物体を好きに入れ替える事ができる』事を知らない。

 確かに、何がどうなろうと呪霊の勝ちは揺るがない。根本的に、四人には仕留めきる手段がないのだから。とはいえ、それはあくまで四人が『地力で』仕留めきる事を考えた時だけの話であり。勝利条件を帳の解除まで全員が生存するとした場合、勝利は揺るがない。

 だからこそ、相手に手札を切らせるには十分だった。

 生徒四人――もしくは、大地を入れて五人。未だ相手の目的がつかめないものの、戦果と呼ぶには十分な結果だ。

 

《まさか生徒がここまでやるとは思っていませんでした。だが、それもこれまで》

 

 呪霊が跳ねて距離を開け、地面に手を突いた。その姿に、憲紀が舌打ちをする――仕込みの大半が無駄になった為だろう。

 周囲の植物が、一斉に枯れ始めた。朽ちていく木々に比例して、呪霊の呪力が高まっていく。

 呪術師の中では、植物は呪力を持たない、もしくは持っていても極端に微弱だと言われている。故に、あの呪霊が呪力を周囲から吸っているとは考えがたかった。仮に吸収だとしても、この上がり幅はあり得ない。ということは、奴は生命力を呪力に変換する術式、ないしは呪力特性を持っている。

 同時に、今まで蕾だった呪霊の左肩が、花を咲かせた。中には目があり、吸収した呪力を一点集中。吸収した呪力の大砲、それが呪霊の選んだ手段だった。

 

(それだけではない)

 

 呪力を集中し、体外に放出する。これは中級者の技術だ。そして、実践では滅多に使われることはない。

 理由はいくつかある。

 呪力は基本的に、術式として出力した方が遙かに優秀だ。呪力単体で放つより、肉体に纏った方が強度が高い、つまり同じ呪力なら後者が必ず勝つ。そしてこれが最大の難点なのだが、命中させるのが案外難しい。当てやすくすれば威力が下がるし、一点集中すれば避けられやすいというジレンマを抱えている。これを必殺に昇華するならば。

 

《領域展開》

 

 呪霊は空いていた右手で、掌印を編んだ。

 そう、領域展開の内部ならば、呪力砲を術式として組み込み、必中させる事ができる。

 

(さあ、正念場だ)

 

 それでもなお大地は動かなかった。

 四人が、領域の中でどれだけ抵抗できるかを見ていない。きっと無力などではなく、結果的に失敗しようとも、最後まで足掻くだろう。動くならば、それを見届けてからでも遅くない。

 特級呪霊の洗練された領域展開を経験したというのは、きっと彼らにとって大きな財産となるだろう。

 だが。領域が閉じられる前に、変化があったのは外の世界だった。帳が急速に上がる……

 呪霊はぎょっとして領域展開を中断し、上を確認した。空には、鋭い目をした五条悟。最強の男の視線が、特級呪霊を飲み込んでいる。

 

《引かせて頂きます。五条悟と戦えるとは思っていま……》

 

 言葉が、最後まで紡がれる事はなかった。台詞を中断させたのは、喉から大量に溢れた自分の体液。

 相手が勝負を投げた。そう判断した時点で、命脈は決まっていたのだ。逃げる相手を生かしてやる理由はどこにもないのだから。

 特級呪霊の腹には、亜人型式神の太い腕が、背中にまで突き刺さっていた。

 

「気づかなかったか? 俺は常に、必殺の間合いを維持していた。お前が何をしようと、どうにでもできるようにな」

《特級……呪術師! まさかこれほど――》

「お前はもう死んでいい」

 

 すでに、末期(まつご)の言葉を聞いてやるほど興味は無い。呪霊の頭部は、一瞬にして殴り飛ばされ、粉微塵に消し飛んだ。

 

「つ……」

 

 幾ばくか、沈黙のあと。悠仁が絞り出すように呟いた。

 

「つっえぇー」

「よく覚えておけ、兄弟(ブラザー)。あれが現代最高の異能、五条悟に唯一並ぶ男の力だ」

 

 式神の体から、残骸を振り払い。消した後、大地は四人を見た。

 

「さてお前達、強くなれたか? なれたなら重畳。力を実感できなかったとしても悔やむな、いずれ必ず機会は来る」

「くっそ、疲れた……。こんな簡単に終わるなら、最初からやっとけよ」

「あれほどの呪霊であっても、天童にとっては玩具同然か。頼もしいと言えばいいのか、恐ろしいと言えばいいのか」

 

 全員がへたり込むのを見ながら、大地は大きく頷いた。立ち続けるのも億劫なのは、戦いで全てを出し切った証だ。急激なレベルアップでなかったとしても、ほんの少し前の自分より強くなれる。こういった積み重ねが、強者を作るのだ。

 悟がこちらを放置した時点で分かっていたが、他所にいた敵も終わっていた。一人は逃げおおせ、一人は捕らえられた様だ。という事は、あちらにいたのは呪詛師。何の成果がなくてもおかしくなかったのだから、捕虜一人でも十分と言うより他あるまい。

 生徒は全員生存。損害はなく、多少のトラブルはあったにせよ、概ね収まるところに収まった。生徒としては悪くない結果だ。高専としては敗北と言うより他ないだろうが、まあそれは教師が考えること。大地が知ったことではないし、干渉されても鬱陶しいだけだろう。

 教員達は大いに悩めばいい。もしかしたら、上層部も。これが生徒の特権ならば、そちらは大人の特権だ。注文されれば言われた通りにするが、それだけ。

 ともあれこうして、交流会団体戦、もとい高専襲撃事件は幕を閉じた。

 

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