現代の日本に転生したかつての勇者は学園生活で青春を謳歌する 作:虎武士
「それでは皆さん、お互いの自己紹介をしましょう。皆さんの中に小学校や中学校、はたまたお知り合いの方がいるのかもしれませんが、改めて御自分の名前と出身地などの紹介で仲良くなれる方がいるかも知れません」
「では出席番号順から自己紹介をお願いします。先ずは1番、天川君お願いします」
「はい」と返事して席から立ったのは先程女子生徒に囲まれていた金茶髪の美青年、一部の女子から色めき立つ声を浴びながら彼は自己紹介を始める。
「
謎めいた自己紹介だったが女子生徒達は気にせずに黄色い声を上げる。
王牙は「あんのイケメン野郎…」と嫉妬全開で睨んでいるが。
「は、はい。この様な感じで自己紹介をお願いします」
困惑しがちだが弥生は続行を促す。
次に立席したのはおかっぱ頭で大人しそうな男子だ。
「た……
緊張しているのか顔を赤くして真琴は中々言葉に出せずにいる、オドオドするその可愛らしい容姿と性格から臆病なのだと察せられる。
「あの子緊張してるのかなぁ? まあ初めての人ばかりだから、気持ちは分からなくもないけれど」
「い……以上、です」
赤面のまま真琴は席に座った。その様子を三人の男子が下衆な笑みを浮かべて、可笑しそうにクスクスと小声で笑っている。
特に気にする様子もなく進むと、とある男子が立席する。
「……
何処か古風の侍被れの口調で彼──狂一は自己紹介し、着席する。
時代錯誤な彼はさておき、次に立席したのは王牙だ。
「
瞬間、女子全員の冷ややかな視線が王牙に突き刺さる。
下心隠す気無しじゃねえか、とばかりの視線に本人は「うっ!?」とたじろぎ、居た堪れない様子で着席。
気を取り直して、次はあの亜麻色のショートヘアの女子だ。
「妾は
「……!?」
「ゆーくん?」
「い、いや……何でもない」
歯切れのない返事を返す勇作に疑問に思うさきだが、今は少女──真央の自己紹介を聞くべきだ。
「生家の事を語るのは難しいが、妾は己の夢の為にこの学び舎へと参った! 皆、この一年宜しゅう頼もうぞ!」
威風堂々と力説し、真央は着席する。
次々に自己紹介は進んでいき、残るは勇作とさきだけとなった。
「では次は姫野さん、お願いします」
「はーい!
天使の様な笑顔を振り撒くさきはまさに天使だろう、その姿に勇作は
お淑やかで容姿端麗な美しい王女、作法も完璧な上、国民的にも人気があった。
さきと決定的に違うのはスタイルの良さや性格。
フェリア姫は慈悲深くて優しくて、スタイルも抜群だったのが正反対で、さきは天真爛漫で明るくて天然ボケが目立つ傾向があり、スタイルも慎ましくて、雲泥の差がある。
「ねえゆーくん」
さきとフェリア王女とでは中身も性格も全然違うというのに、さきを見ているとどうしてか分からないがフェリア王女と重ねてしまう。
「ゆーくん、次ゆーくんの自己紹介だよ?」
「………へ!?」
そう言えばまだ自己紹介の最中だった。
残る勇作一人となっている為、弥生を含めて教室にいる全員が自分に視線を注いでいる事に気付き、勇作は慌てて立席した。
考えていた所為ですっかり忘れていた。
「う、
皆関心を持っている、しかし次の瞬間には大きな失態を犯す事に。
「それと……僕にはある記憶があります」
「ってちょっと、ゆーくんまさか…!?」
さきは勇作が何を言おうとするのかを察し、静止しようとする──だがもう遅かった。
「──僕には前世の記憶があります。僕は魔法と剣の世界で
正直過ぎる大暴露にさきは頭を抱えた。
「……ぶふっ!」
『あははははははははは!!』
吹き出したのは誰だろうか。それを皮切りに教室内は大爆笑の渦に包まれた。
「勇者って、夢見過ぎだろ!」
「そうそう! ゲームやなろう系の小説じゃないのに、宇野川君って実は痛い系のキャラ?」
「マジウケる〜!」
可笑しそうに笑い声が響き渡る。
「おいおい…幾ら何でもそりゃねーわ」
「あの男、受け狙いのつもりかのう? じゃが…」
だが誰しもが笑うわけではない。
王牙は呆れていて、真央は訝しむ様に見ている。
真琴はオドオドしていて、狂一はフンッと鼻を鳴らして視線を逸らす。
「………」
教室が笑いの渦にある中、桃士だけは意味深な眼差しを勇作に向けていた。
意味深に勇作に向けている視線は何を意味するのか、それを振り払うかの様に弥生がパンッと両手を鳴らす。
「はい皆さん、自己紹介なのに笑ってはいけませんよ? 人にはそれぞれの個性的な一面が存在します、それを否定するということはその人への侮辱行為です」
笑い声があっという間に収まり、一気に静寂な空気となった。
何て器の大きい先生なんだ、と誰しもが思った。
「以上です」
居た堪れない空気の中、勇作は静かに着席するのだった。
お淑やかに微笑み、弥生は言う。
「この一年、実りのある学園生活である事を健やかにお過ごしましょう。それでは歴史学の授業を始めましょう」
勇作達は教科書を取り、勉学に励む。
これ絶対変人のレッテルを貼られるだろうな、と勇作は胸中で思うのだった。