現代の日本に転生したかつての勇者は学園生活で青春を謳歌する 作:虎武士
──4月6日
入学式及び初日の授業から三日が経過、在校生に混じって勇作を初めとした新入生達も登校していく。
桜が舞い散る通学路の道中、勇作はさきと共に歩く。
「もう三日目だねぇ、高校生活が始まって」
「嗚呼。まだ誰とも打ち解けていないけど、学園生活は始まったばかりだ」
「オッス、二人揃って登校か〜?」
人混みを掻き分け、背後からあの野生児じみた同級生がやって来る。
「あ、王牙君おはよ〜」
「朝から元気だね……打ち解けているのが一人いたか」
「あ? 何か言ったか?」
「いや此方の話」
王牙を加えた三人がテクテクと歩道を歩く。
「そういやお前等って幼い頃からの付き合いなんだよな?」
「うん!
「………王牙?」
急に黙り込んだ彼に勇作が声を掛ければ「隣同士の家……また美味しいシチュエーションかよ」とまた黄昏れ始めた。
こんな獣じみた外見で恋愛物に疏通している様子、かなりのギャップがある。
まあそれはそれとして。
「にしても時高って、学力はちげーよな。先公達も優秀過ぎて頭が追いつかねーっつーか、なんか身が入らねえって感じだわ」
「そうだよね〜。苦手な科目が出来る様になりたいけど、問題が難しいって言うか何て言うか」
「得意になってきたと思ったら、急にハードルを上げてくるからね。個人的にはその方がやりやすいと思うけれど」
なんてチャレンジ精神……とさきと王牙は勇作のポジティブ思考に脱帽、同時に感服を覚えるしかなかった。
「っつーかあの自己紹介なんだったんだ? 前世が勇者なんて、ゲームかラノベの影響受けてんのか?」
あの自己紹介は王牙でなくとも疑問に思うのは仕方ない。
呆れて何とも言えない表情の彼に、勇作は「あはは……」と頬を掻いて苦笑いする。
「王牙は笑わないんだね」
「笑うどころかツッコミ所満載だったわ。あんな事を言うなんて、なんか理由があるとしか思えねえと感じただけだ」
的を得た言い分に勇作は苦笑い、さきは「まあ確かに」と呟く。
「子供の頃……小学生の頃からかな? ゆーくんがそんな事を言う様になったの。私は流石に笑いのネタになってるから、普通に流してるけどね♪」
「え? さきって僕の話、そんな風に思ってたの?」
「地味に傷付くなぁ…」と気落ちする勇作、そんなやり取りをしている内に校舎が見えてきた。
「おはよー」
「おはよう」
「オーッス」
教室に入って三人は教室内の同級生達に挨拶する。
「おはよう! 今日も良い朝日じゃな!!」
「み、御門さん。今日も元気だね」
「おはよー」
「元気過ぎなだけじゃね?」
尊大な口調と共に挨拶してくる
「何を言う。妾は単に学友達に挨拶を交わしているだけだ、挨拶は他人との会話術の一つであろう」
「確かにね。御門さんとは仲良くなれそうだ……僕はそんな気がするよ」
「ふふっ、此方こそだ」
真央は不敵に微笑み、手を差し伸べる勇作に向けて手を伸ばそうとする。
握手をしようとした、その時だった。
「──気安く
「ふぶっ!?」
頬に足蹴が決まった。吹っ飛ばされた勇作は床に沈み、教室内のクラスメイト達は驚く。
勇作を吹っ飛ばしたのはこの教室の生徒ではなかった。
濃い青髪に鋭い眼光を宿す青年、着崩したブレザーを肘まで捲り上げている。
突然の乱入者に全員が驚く中、真央は深い溜息を吐く。
勇作は頬を押さえながら立ち、自分を足蹴にした相手を見る。
「あれ…? 確か君は隣のクラスの……蒼龍君?」
「あ、良く見たらB組の……何でこのクラスに?」
その青年──
「入学式ん時に見かけたが、これが初対面だったなァ。宇野川勇作よォ、お嬢と同じクラスになったとはいえお触り厳禁だぜ?」
眉間に青筋を浮かべて海人は眼光を光らせ、困惑顔の勇作を睨み付けている。
「えーと、どうして他所のクラスの人がウチのクラスに?」
「決まっておるやん、戦線布告や」
更に続けて三人の人物がA組に入ってくる。
緑のショートヘアに八重歯が特徴的な、小柄な少女。
逆立った金髪に好戦的な笑みが特徴の男子。
黒髪ロングヘアーに凛とした、豊満なスタイルの少女。
三人共別クラスの生徒、しかも独特な雰囲気を持っている。
「1年B組、蒼龍海人!」
「C組、
「D組、
「E組、
名乗った四人は陣形を組み、独特のポーズを取る。
『我等! 御門真央親衛隊!!』
何処かの戦隊モノのポージングを取り、背後で謎の爆発が起こる。
『………』
トンチキな光景にA組の生徒全員が無言となり、真央の方は頭痛がするのか頭を押さえる。
関わりたくないとばかりに視線を逸らす彼女に気付かず、海人達四人は勝ち誇った笑みを零す。
「っしゃあ! 決まったなァ!」
「当然や! うちらのスペシャルなポージングは完璧や!」
「ええ。こんな芸当、誰にも真似出来ないわ」
「もし笑う奴がいやがったら、その場で〆るけどな」
四人は嬉々とした表情で豪語する、勇作達は真顔で海人達を見て呆れるしかなかった。
「ダサーい」
さきの何気ない一言が教室内に木霊すると、四人は一斉に彼女の方へ振り返った。
「は?」
「おいアンタ、何て言うた今!?」
「だってダサいんだもん」
きっぱりと言ってくるさきの不満そうな言葉に四人は眉間に青筋を浮かべ、海人が彼女の前に立つ。
「てめえ……女だからって、あんま図に乗んなよ」
眉間に皺を寄せて海人はさきを見下ろす、さきは「えー」と怒りを剥き出しにする彼に呆れていた。
「ちょ、ちょっと待って! 朝から喧嘩は無しだって!」
「ハン、
「え…?」
勇作はその言葉に何か違和感を覚えるが、「と、兎に角! 喧嘩はダメだってば!」と制止を掛けるが、海人達は頑なに動こうとしない。
「──御主等、いい加減にせぬか」
突如、真央から威圧感を漂う声音が発せられた。
『お、お嬢…』
「真央ちゃん…」
「真央…」
四人は先程までの威勢は何処に行ったのか、まるで親に叱られる子供の様に萎縮し始めた。
「御主等、何のつもりだ? 早朝から堂々とこのクラスに参った?」
「いや、それは! お嬢が心配で…」
「こんな馬の骨とも知れない連中に真央を近付かせるわけにいかないわ! ましてやこんな芋臭い一般人共と!」
「オイコラ、芋臭いって何だ、芋臭いって!」
「ちょっぴりカチーンって来るんだけど!」
さきと王牙が反論するが、四人は聞こえていないのかスルーして真央への問答を続ける。
「せやで! 特にこの宇野川って言うの、勇者の生まれ変わりだとか言う痛い奴やないの!?」
「この意味分からねえ野郎と同じクラスとか、団子同断だ!」
「……それを言うなら言語道断じゃない?」
勇作が小さく突っ込む、海人達の発言を聞いた真央はふう……と息を吐く。
「海人、樹里、飛鳥、虎太朗。御主等の気持ちは分かっておる。こんな妾の御身を気遣い、そして心配してくれて感謝しておる」
慈悲深い眼差しを向けて真央は海人達四人を諭す、彼等も慕うべき相手にそう言葉を投げられては逆えない。
「じゃが、妾の友は妾が決める。そこに御主等の横槍は不要じゃ。さっさと己の教室に戻るがいい」
真っ直ぐな真央の眼差しは何者も恐れぬ、人々を導く者の意志を感じさせるものがあった。
「………分かったよ」
「真央が言うのであれば仕方ないわね」
「せやな」
「チッ、命拾いしたな」
悪態を吐きながら四人は大人しく引き下がり、そのまま1-Aの教室を出て行った。
(面倒臭い事になっちゃったなぁ)
勇作は一人、心の中でこの状況に悩みの種が出来た事に苛むのだった。