現代の日本に転生したかつての勇者は学園生活で青春を謳歌する   作:虎武士

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相棒たる元聖剣は重い(精神的に)

 今でも覚えている──あの出会いを、あの運命的な邂逅を。

 

 エクシオン──そう呼称されたその聖剣は、遥か昔からアーケディア王国を守護してきた剣。

 

 気の遠くなる程の長い年月、100年──400年……もっとかもしれない。

 

 いつ何処で作られたかも分からないが、王国で無駄な長い時を過ごしてきた。

 

 時には錆びついてはならんと思い、専属の刀鍛冶に磨いてもらったりもする。

 

 だがそれでも無用の長物とならんとしていた中、魔王が誕生した。

 

 世界に仇なさんと力を振るう魔族や魔物達の王(諜報員曰く極上の美女らしいが、人間の感性は理解出来ない)。

 

 この世界を正す為だと聞こえはいいが、やっている事は世界を蹂躙している事に変わりない。

 

 貧困に喘ぎ、絶望視して死にいく人々の姿を王国は苦悩し、彼等は希望を見出さんと聖剣の担い手となるであろう若者を捜索した。

 

 百人以上探したが、それらしい若者は見つからなかった。

 

 誰もが絶望感を募らせる中、その若者は堂々と王城に姿を見せた。

 

「──エミルと言います。王国の小さな村から来ました」

 

 純真無垢な眼差しを瞳に宿し、鮮やかな茶髪の青年だった。

 性格は至って平凡な上、無抵抗の相手を見逃すと言う甘い一面があった。

 聖剣(エクシオン)にはそれが理解出来なかった。

 

《何故敵を見逃すのです? 相手は魔王の手練ですよ?》

 

 魔族や魔物は敵、一人残さず根絶やしにするべきだ。

 それなのにこの青年はあろうことか、敵を見逃した。

 何故そんな甘い事を考えるのか聖剣(エクシオン)は問うと、勇者(エミル)は純粋に答える。

 

「そんな事をすれば可哀想じゃないか。それだと僕達は魔王軍と何ら変わりない醜い人種だよ」

 

 聖剣(エクシオン)はそれ以上の言葉を紡げなかった。

 そうだ、これでは魔王と変わりないではないか。

 知らずの内に世界の平和=魔王軍の殲滅に置き換わっていた。

 思わず面を食らい(剣だけど)、これまでの自分を恥じる思いだ。

 

「僕が魔王軍と戦うのは対話の為だよ。どうして魔王がこんな酷い事をするのか、どうして世界を侵攻するのか。僕はそれを知りたい。この世界に光を齎す為にも、降り掛かる火の粉は出来る限り全て振り払うさ」

 

 目がないのに目頭が熱くなってくる。

 端から聞けば甘い精神論だろうが、聖剣(エクシオン)にはそれが希望に思えてきた。

 もしいつの日かそれが叶えば、人間と魔族が和解する日が来るかも知れない。

 だからこそ聖剣(エクシオン)は惹かれた、この密かな想いを込めて伝えたいと願って──

 


 

「じゃ、じゃあ天川君は……その勇者の持つ聖剣の生まれ変わりって事…!? ほんとだったんだ、そんな気持ち悪い剣の話」

「姫野さん、さり気なく失礼ですね」

 

 桃士は本人の前で堂々と毒を吐くさきを冷めた目で睨む、王牙も彼女と同様に引き攣った表情を浮かべている。

 突然土下座して自分を敬う彼に二人は混乱してしまい、勇作は漸く確定した彼の前世を明かした。

 明かした結果……カオスな状況になった。

 

「お……おいおいおいおい! あれマジな話だったってのか、っつーかお前等マジで異世界転生……否、この場合現代転生した身ってわけ!?」

 荒唐無稽だと思っていた王牙はまさかの実話と言う事実に驚く程、しかも自分が好きな要素の一つでもあった。

「後イケメン野郎! てめェの前世碌でもねえなぁ!? 端から聞いてみりゃホ◯じゃねえか!」

「勘違いをしないで頂けますか? 私はホ◯ではありません、彼を──宇野川君基勇者様を敬愛していたのです、この身となった時から春夏秋冬、四六時中ずっと彼の事を忘れた日など決してあり得ないのですから!」

「大して変わんねーよ!!」

 

 余計にタチが悪い。まさかクラス一のイケメンにこんな本性が隠されていたとは、学園中の女子に日下に晒された日には侮蔑の目を向けられるに違いない。

 さきが既に桃士からササっと距離を置いている時点で既に手遅れかも知れない、だが勇作だけは拒むことなく──前世の様に彼に接している。

「まさか人間に生まれ変わっていたなんてね。一体いつから前世の記憶が?」

「幼稚園児の時からですね、今生の母曰く急に大人の様な子供になったと零しておりました」

「それでもずっと会いたかったよ、前世の仲間に。天川君……否、桃士と呼んでいいかな?」

「遠慮なさらずお呼び下さい。私も勇作と呼ばせて下さい、我が主人(マスター)よ」

 また先程の様に恭しく土下座の姿勢をすれば「頭を下げるのは止めてくれるか?」と指摘されるが、本人の耳には届いてない様子である。

 

「変な人に好かれちゃったねえ、ゆーくん」

「さき。可哀想だと思うならその笑いを堪える仕草なに?」

「っつーか大丈夫かよ? こんなホ◯野郎と一緒になっちまって、嫌だったらはっきり嫌って言えよ? ホ◯野郎がうぜえと思ったら頼れよな」

「さっきから五月蝿いですねえホ◯ホ◯と、そう言う獅子堂君は万年非モテ男ではないですか? そんなだから女性に惹かれないのですよ」

「ああん!? モテねえとか言うなや、イケメンホ◯野郎!」

 双方の見解が違えど火花を散らす男子二人、やれやれと言った雰囲気で勇作とさきは苦笑いする。

 口論する二人を他所に、茜色の空を飛ぶ烏が「アホー」と鳴くのだった。

 

 

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