テロリストと元エース、どちらがお強い?   作:かむじ

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第1話

荒涼とした地形を模した戦術試験区域の中央では、対峙する2機のMSの間に静かな緊張が張り詰めていた。ベネリットグループ本社プラントの一角にあるこのエリアは、MSによる模擬戦や試験運転を行う事を目的として作られたものであるため、当然のことであるが生きて動くものの気配はない。

 

先程まで行われていた激しい戦闘により巻き上がっていた砂埃は時間と共に落ち着いてようやく視界が晴れていき、はらはらと崩落する土砂や機体のラジエーターが作動して空気の抜ける音だけが辺りに響く。そのうちの一機は濃い紫色で塗装が施されたグラスレー社のベギルペンデ。ドミニコス隊司令官、ケナンジ・アベリーが搭乗していた。

 

『ビームトーチもエネルギー切れか。もうこれで最後だな。』

 

ケナンジはベギルペンデのコックピットから50m程先で斜めに倒れたデスルターを確認する。損壊したそれには元ドミニコス隊リドリック・クルーヘルが搭乗していた。

彼の機体は片腕片脚を失いスラスターも破壊されて動けずその場で倒れ込んでいる。流石にこれ以上の抵抗は不可能であろう。自機のベギルペンデも無傷ではなくシールドは破損、ビームライフルのエネルギー残も心許ない状況。

 

世代として機体性能はこちらが格上の筈が損害は大きくブランクがある事を言い訳にはできない。ケナンジは一時の平静とはいえ、奴相手に小休止する程の甘さは持ち合わせていなかった。

しかしこの程度で額に汗を滲ませるとはな、と日頃の己の怠惰さを自嘲する。未だ沈黙を続けるデスルターを油断なく睨みながら、武器の換装を行うため素早くサブコンソールを操作。ライフルは背部にあるアタッチメントへ収納、代わりにビームサーベルを再装填しその出力を上げていく。

 

『とどめは刺されていた方が、負けた方も気持ちが晴れるか?リド。』

 

若き日ならばもっと早くに決着がつけられていただろうか、などという事は考えるだけ無駄だ。ベギルペンデは素早くサーベルを構え機会を伺う。今まさにデスルターへ最後の攻撃を仕掛けようとしている所であった。

 

 

◻︎◻︎◻︎

 

 

 遡る事3時間。

ジェターク社にある会議室の一角では、2人の大柄な男性が今まさに一触即発の状態で向かい合っていた。

 

「リドリック、本当にそれが最善案だと思っているのか?」

「ああそうだ。だいたい俺と意見が合わないからって、毎回突っかかってくるのはやめろ。」

 

ケナンジとオルコット、その両名により会議室内の空気はかつて無い程張り詰めていてた。そのいざこざ、と呼べる程些細なものではない争議による威圧感で、ただの一般社員ではとうてい2名の間に入る事など不可能な状態。

話を聞きつけたグエルが部屋へ飛び込んできた時にはもう事態の収拾が出来ない程、彼らの対立は限界に達していた。

 

「落ち着いて!何があったんですか?」

 

昔の確執か因縁か、他者の言葉にはとても耳を貸せない程両者の間にある溝は埋めようもなく深い。ふとグエルは彼らの間にあるテーブルに置かれている資料に気が付き、それを手にして驚愕した。

 

「なっ、これを何処で?!」

 

それを見た社員の1人が恐る恐る耳打ちをするが、その報告を聞いた彼は表情を歪め「極秘にしておけと言っただろう。」と吐き捨て資料を握りつぶした。

 

「ケナンジ、この件に関して俺は一歩も引く気はない。」

「ほぉー奇遇だな。俺もだ。ではどうする?昔みたいに、殴り合って決着でもつけるか?」

 

勘弁して下さいよ、とどよめく会議室内の空気など2人は気にも留めない。グエルすらその不穏さに冷や汗をかいて、巻き込まれる事だけは避けたいとばかりに数歩後ずさりをした。

 

「殴り合うには、この会議室は狭すぎるな。」

オルコットのその言葉に、皆がホッと胸を撫で下ろした。

「そうでしょう?だから2人ともそんなにカッカしないで、」

「ここの試験区域でMSによる決闘を行い、決着をつける。」

 

会議室のテーブルと椅子ががちゃんと音を立てたかと思えば、同時にCEOは膝から崩れ落ちる。慌てて駆け寄ってきた社員が彼の身体を支えてくれた。

 

「いい提案だ。丁度乗ってきた艦にMSの用意があってな。」

「グエル、俺のデスルターを出せ。預けてあったやつだ。少しコイツのダイエットに付き合ってやる。」

 

オルコットのその言葉はますます火に油を注いだ。余計なお世話だ久しぶりに揉んでやるよ、と口元に笑みを携えながらも目は全く笑っていないケナンジと、司令官どのは今から負けた時の言い訳をしっかり考えておいた方がいい、と自身の首に巻いたマフラーを剥ぐようにして取り去るオルコット。

 

グエルは火花を散らす2人の戦いを止めることは不可能と判断。もういっそそれで事が済むのならと覚悟を決め、半ば諦めの気持ちを抱きながら彼らに付き合う事にした。

 

 

◻︎◻︎◻︎

 

 

会議室でのやり取りから数時間後、2機はMSコンテナからのパージを終えて戦術試験区域内でスタンバイに入る。周辺で業務にあたる作業員の退避も終え準備は整っていた。グエルは唯一の頼みだから攻撃制御システム(所謂レギュレーション)だけは作動させていて欲しいと説得し、殺気だってイラつく2人であったがしぶしぶ従ってもらえたようだった。

 

『そういえば、勝ち負けはどう判断するんですか?ブレードアンテナ折った方?』

 

ふとした疑問を持ったグエルは、観覧ブリッジからコックピットで待機状態の各パイロットへ投げかける。

 

『学園決闘方式なんぞ、生ぬるい。』

『四肢を落とし頭部ユニットも破壊、完膚無きまで叩きのめした方が勝ち、だよな?』

『聞かなきゃ良かったです。』

 

相手は百戦錬磨、魔女狩りで名を馳せる精鋭部隊出身者たち。日々が熾烈な戦いと隣り合わせの彼らにとって戦闘不能が即ち死を意味する。戦場ではブレードアンテナをもぎ取る程度の事で、勝利を確信する事はできないというのは自明の理であった。

 

『立会人は、ジェターク社所属グエル•ジェタークが務める。』

 

グエルが簡単にアナウンスを済ませる。オルコットの搭乗するデスルターはその右腕のマニピュレーターで無地の旗が取り付けられたフラッグポールを携えていた。

 

『始めるぞ。』

『いつでも。』

 

その言葉を確認して、オルコットはグッと操縦桿を握る。デスルターはポールを持った方の腕を勢いよく掲げたかと思ったらフラッグは高く空に放られた。ビュッと風切音と共に宙に舞ったそれは、バタバタと派手にはためきながら2機の間の地面へと落ちていく。

 

それは決闘開始の合図。

 

ガツンと鈍い音を立ててフラッグが落下し跳ね返ったと同時、両機はスラスターをふかし互いの距離をどんどん詰めていく。まず打って出たのはオルコットの方。

 

素早く構えたライフルでベギルペンデを射撃し先制攻撃を行うが、ケナンジ機は盾でその攻撃を防いだ。そこまでは予想の範囲、防御動作でスピードが緩んだ隙を突くのが狙い。

オルコット機は死角の多いベギルペンデの左側から回り込んでより強力な一撃を喰らわせようとするが、読まれている。すでにビームライフルの射線がデスルターを捉えていた。

 

「ちぃっ!」

 

するどく発射されるビーム攻撃を避けるため急停止し機体を反転。間一髪直撃は避けたものの肩付近に掠ったビームの威力でシールドが一部溶解した。

ベギルペンデは地面を強く蹴って距離を詰め再度狙いを定めてくるが、いち早く体制を立て直したデスルターはすでに射撃姿勢を取りライフルを容赦なく連射する。大した反応速度だと、ケナンジは攻撃を避けつつスラスターを最大で機体を下げた。

 

『今のチャンスで仕留められないなら、腕が落ちたなケナンジ!』

『お前こそ逃げてばかりでは俺に勝てないことは、分かっているだろう!?』

 

確かに奴相手に消耗戦は得策ではない。そう考えを巡らせるオルコットはケナンジ機と一定の距離を保ちながら冷静にそして秘密裏に、その手に握るリモコンで機体の操作とは別に特別な仕掛けの工作も行う・・・

ケナンジ機は後退しつつ最大推力で加速、銃口はデスルターへ向けたまま一気に岩壁を登っていく。上を取るつもりならばさせるものかと、オルコット機もスピードを落とさぬままベギルペンデの後を追う。

ケナンジはデスルターの足を止めようと偏差射撃で牽制。しかしオルコットはその攻撃を掻い潜りながら、徐々に距離を詰めてくる。

 

——食らいついてくるか、ならば。

 

ケナンジは一転、スラスターの出力を絞り急減速し機体を180°転回。同時にベギルペンデの脚部ユニットを拡張し狙いを定める。敵機の急な動きに反応したオルコットは、背筋にゾクリと冷たいものが走った。直感的に危機を感じ急旋回、その爪から逃れようとするが敵わない。あっという間に近付いてきた鉤爪に上腕部を掴まれてしまった。

ベギルペンデはそのままデスルターにのし掛かって圧をかけ今度は地面へ急降下していく。近くで見れば見る程、グラスレー社のMS特有である西洋甲冑風のビジュアルがより一層不気味さを醸し出している。危機的状況にある時ならば、尚更。2機のコックピット内に対地接近警報装置のアラート音が鳴り響いて激しさを増した。地面へぶつかる寸前、ベギルペンデはデスルターを蹴り飛ばし斜めに岩壁へと叩きつけた。

MSが壁に激突した衝撃音と共に激しく砂埃が舞う。デスルターとは逆方向へ飛んだベギルペンデは重心を低くして着地、ガリガリと地面を掻きながらしばらくして停止した。バラバラと小石や岩が崩れ落ちている。砂埃が晴れてきて、倒れ込んだデスルターを視認した。まだまだ、この程度でやられる訳が無い。

 

『流石ジェターク社製は頑丈だな。』

『・・・・・げほっ、やってくれる。』

 

デスルターの左腕は捩じ切れて使い物にならない。強い衝撃で揺さぶられオルコット自身もダメージを与えられていた。クラクラする頭を精一杯に動かして次の動作の為にとグリップを握りしめる。

 

ふと隙なく佇むベギルペンデの姿に、昔のドミニコス隊のある機体を思い出した。純白に薄青紫で飾られたベギルベウ、昔のケナンジの機体だ。あいつは先輩も上官も全部すっ飛ばし、若くしてエース機のテストパイロットから実戦投入までやってのけた。もちろんセンスだけでは無い、彼の努力も悔しさも痛みも全て近くで見て感じていた。同僚としてふざけたり時に今のように本気で喧嘩をしたり。こんな時だというのについ色々思い出して懐かしさに浸ってしまう自分はもう歳なのかと、薄い苦笑を浮かべた。

 

『リド?気でも失ったか?』

 

動く気配のないオルコット機へ、ケナンジが投げかける。

 

『そういう所が甘いんだ。今のうちに討てばいい。』

『まあ、もう少し楽しませろよ。』

 

デスルターはその場で立ち上がり、各部の被害状況を確認する。

 

『懐かしくなってな。ベギルベウの随伴機として任務を行っていたあの頃が。』

『望みなら、今からでも右腕にしてやろうか?』

 

スラスターはなんとか持ち堪えたようだ。武器類も無事、左腕部は損壊使用不可。オルコットは武器の換装を再チェック。そして肩部のグレネードランチャーをベギルペンデに向けてロックオンした。

 

『お断りだ。お前は意外と人使いが荒い。』

 

その言葉を言い終わるか終わらないか、無数の擲弾が発射されてケナンジ機を襲う。

 

—人は選んでいるつもりだがな。

 

ベギルペンデのコックピット内にロックオンによる危機を知らせるアラームが鳴り響いた。その攻撃を盾で防ぐが炸裂する弾の衝撃は一つ一つが重く、いくら重厚な盾でもあまり長くは持たなそうだと判断する。

攻撃の切れ目を待って反撃を狙うが目の前にビームトーチを振りかぶるデスルターが見えた。弾を目隠しにして間合いを詰めてきていた。ジェターク社のビームトーチは他社のサーベルと違って長さはないものの、その分出力を刀身の強度と威力に振っている。

 

そんな攻撃力のある武器で先程ダメージを受けた盾を一気に狙われてしまっては、もう持ち堪える事は出来ない。鋼鉄の盾は焼き切れて真っ二つになる。激しい衝撃音と共に割れたそれは地面に堕ちた。

そんな事で驚愕している暇はない。ケナンジは素早くビームサーベルを取り出して再度振りかぶってくるオルコット機の攻撃を受け止めた。ぶつかり合う事で激しさを増す光線を目の前でビリビリと感じながら、ケナンジは専用回線からオルコットへ語り掛ける。

 

『・・・覚えているか?工業プラント2087。隔壁付近で事故があったと連絡を受けた俺の隊は、救援要請に従い民間人救助を実施。しかし二次災害で新たな爆発に巻き込まれて俺も隊員も負傷。』

 

ベギルペンデはデスルターを切り払う。斜めに飛んだオルコット機を追いかけて地を蹴り、再度サーベルを構える。

 

『温度は下がる空気は抜けてく。絶望の中でそれでも増援が来るまでは、負傷した俺たちしか救助できる人間はいないと懸命に任務に当たった。だが当時の司令は、さらなる被害が出る事を懸念して本隊にストップをかけた。安全が確認できるまで救援には行けないと。』

 

繰り広げられる激しい戦闘には似つかわしくない静かな声色。オルコットはベギルペンデに追いつかれて、その攻撃をトーチで防ぎ再度切り結ぶ。ケナンジ機はサーベルを2度3度振るってデスルターを狙う。ギシギシと機体の軋む音は激しくなっていく。

 

『リドリックお前の隊は、そんな司令の命令を無視して俺たちを助けにきてくれた。自分も同じ状況になるかも知れないのに。』

 

黙って聞いているだけだったオルコットが、重い口を開く。

 

『ケナンジ、あの時お前は俺を馬鹿だと言ったな。要救助者を増やす事にも繋がりかねないと。』

『そうだ馬鹿だ。あの後のお前は命令違反で降格、現場を外されその後はテロに巻き込まれて行方知れず。俺は医療特化プラントへ運ばれて集中治療。お前の減刑を乞う事すら!』

 

無意識にケナンジの語気は強くなって、苛立ちを増した。ベギルペンデは飛び上がって宙返りしオルコット機の背後へ回り込んでスラスターを狙う。

 

『危険な真似をしてまで救出したのは、お前を死なせたくなかっただけだ。』

『だったら何故!何も言わずに地球でのたれ死んだと思わせて。姿を現したかと思えばテロの容疑者!ジェターク社に匿われ檻のない牢獄で一生飼われるつもりか!』

 

背後からスラスターをやられたオルコット機はバランスを崩してよろめく。その隙をついて、ケナンジは的確にデスルター肩部のグレネードランチャーを破壊し離脱した。まだ弾の残るそこに強い衝撃を加えれば、どうなるか。ランチャーに装填されていた擲弾は炸裂して強く爆ぜる。

 

デスルターは爆発の威力で地に叩きつけられた。機体はそのまま地面を擦り激しい砂煙を上げる。オルコットは強く操縦桿を握りしめてGに耐え体勢を立て直そうとするが、目の端に映ったケナンジ機の銃口は既にエネルギーチャージを終えていた。

 

—しまった!

 

鋭い光を視認した直後左下方に大きな衝撃を感じ、続いて現れた岩壁にぶつかって止まった。

 

観覧ブリッジで固唾を飲んで見守っていたグエル達は、ああっ!と声をあげ、皆岩壁の方へ注目した。ベギルペンデのライフルから発射されたビームはデスルターの左脚部を付け根から分離させた。飛ばされた脚の切断面にはバチバチと青白い電磁波が纏う。

 

——グエル、決着はついたのか?

——いやまだだ、勝利条件は・・・

 

片脚を無くした機体の姿勢制御は両脚を無くしたそれと比較にならない程難しい。ただ動かすだけであっても制御プログラムの微調整、機体感覚、全てに熟練の技が要求される。それが戦いの中とあっては。

ケナンジもそれを分かって、あえて片脚のみを狙った。ズン、と重苦しい音が響くのと同時、デスルターの体幹部は力なく地に着いて、静かに広がっていく砂埃の中で沈黙した。ベギルペンデは油断なくライフルを構え続ける。

 

—柄にもなく、熱くなってしまった。

 

ケナンジの額に汗が滲む。静かに呼吸を整えて、最後の攻撃の準備に取り掛かった。

 

『ビームトーチもエネルギー切れか。もうこれで最後だな。』

 

自機のライフルも、エネルギーの残量はあとわずか。サブコンソールで武器の変更プログラムを実施。ライフルは機体背部のアタッチメントへ取り付けられて、代わりにビームサーベルを右のマニピュレーターへ換装した。

 

サーベルの出力を上げて、ビームで作られた刀身を繰り出し威力を高めていく。いまだ沈黙を続けるデスルターを睨みながら、ケナンジは元同僚に思いを馳せる。あんな機体で良くここまでやれる物だと。昔から何かに突出してるという訳ではない。しかし機体の性能を最大まで引き出し強みを活かす、不利だろうがしぶとく状況に合わせた多彩な戦い方をするのが魅力の男だった。だが頭部ユニットの光が消えた今、もはや打つ手もないだろう。

 

『とどめは刺されていた方が、負けた方も気持ちが晴れるか?リド。』

 

ベギルペンデは、今まさに飛びかかろうと一歩前進した、瞬間。踏み出した右脚部に強い衝撃と爆音。同時に爆炎が上がって機体が大きく揺れた。

 

「なっ?!」

 

ベギルペンデがバランス崩して倒れていく。体勢を立て直そうと操縦桿を握りしめながら何が起きたのかと地面を見れば、踏み出した位置に地雷が仕掛けてある。

 

『ここの地形の理解は、俺の方が上だったな。』

『ぐっ!!移動地雷か!』

 

機体に揺れと衝撃が走り、強いダメージとなってコックピット内を襲う。体勢を崩したケナンジ機の隙を狙ったオルコットはデスルターのコックピットで待っていたとばかりにほくそ笑んだ。

 

移動式地雷装置それはしばしばMSの訓練を想定した区域などで運用され、リモートコントロールにより地下から地雷を配置する事が可能な設備である。まさかそんなものの制御装置を隠し持ち、戦いの最中それを配置するなどと想定するものか。

右脚部のフットユニット損壊、スラスターも一部破損。ケナンジは状況に対処すべくサブプログラムの変更、姿勢制御システムの補助、あらゆる措置を取りながら悪態をついた。

 

—お前の考えそうな事だよ、リドリック!

 

戦況は一転した。

ケナンジ機は迂闊に動くことができない。地雷はすでに、複数自機の周りに配置されているはずだ。

 

—追い込まれている・・!奴は?

 

気づけばオルコット機の頭部ユニットに再度光が灯り、ゆっくりとした動作で立ち上がる様子が見えた。デスルターはビームトーチを繰り出している。エネルギー切れを装った武器で、片脚のままその機体のハンデを諸共せず向かっていった。ベギルペンデもまた体制を崩しながらもサーベルを構えて迎え打つ。

2機は強い光を放ちながら再び・・・・

 

 

◻︎◻︎◻︎

 

 

 観覧ブリッジではもはや緊張感の薄れたジェターク社の社員たちが、だらけて椅子にもたれている。

 

「グエル。あれいつ終わるんだ?」

「わからん。」

「他社の開発部が試運転機を待機させています。このエリアを使う予約はしてあったとせっついてきていますが。」

 

グエルは手に持った端末を一瞥、色々諦めたような顔でいまだ終わりそうに無い戦いの様子を眺めながら藁にもすがる思いで呟く。

 

「なぁ、フェルシー。ちょっといってあの喧嘩を・・・。」

「無理っスよ!」

 

何を期待されてもダメですからね!とそっぽを向き、ランチ行ってきますからとさっさと部屋を後にした。苦笑いするカミルの横でどうしたもんかと腕組みをし、立会人グエルはため息をついて頭を悩ませた。

 

 

 

———おまけ

 

「そもそも何で喧嘩になったんだ?あの2人は。」

「知りたいか?」

 

グエルはカミルに一枚の紙を渡す。

 

【社内公募!】ジェタークCEOけもみみマスコット化決定!【極秘】

 

あのグエル•ジェタークCEOのけもみみマスコット化が秘密裏に決定!ジェターク社の人気ゆるマスコットになってもらうべく、社員の皆様には、社長がなんのけもみみをつけるのが1番可愛じゃなくて素敵かをアンケートで募集することになりました!

みなさまのご意見どしどしお待ちしてまーす!

協賛:ブリオン社

 

「ケナンジ司令はねこみみ派で、オルコット氏はいぬみみ派らしい。」

「こんなくだらない解釈の違いであんな損害の大きい死闘を・・・。」

「喧嘩のキッカケ探しているだけですよね、あの2人。」

 

-end.

 

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