ちょっとゆっくりすぎました…
魔術協会の総本山
『時計塔』
「相変わらず何でも有りだな、ここは」
元学生の獅子劫界離は部屋生造作に置かれたものを見て、そう呟いた。
「何。珍しいだけで、在るとわかっている代物だよ。まぁ、貴重ではあるがな」
召喚科学部長ロッコ・ベルフェバン
まぁそんなことは後でいい…ここに呼び出したわけだが…
ベルフェバンはギシリと年季の入った椅子に腰掛け、机の上で手を組みこちらを見た。
「話は聞いておるな?」
「大体は」
「ダーニックを主にユグドミレニア一族が時計塔から離反。
ルーマニアのトランシルヴァニア地方の外れにある都市、トゥリファス。その都市最古の建築物であるミレニア城塞に大聖杯を補完しそれを回収。もとい離反したユグドミレニア一族を殲滅のため派遣した魔術師五十人。
奴らはこれをサーヴァントで迎撃し一名を残して全滅。」
「その生き残った一名は?」
「我々にメッセージを伝えるために生かされたのだろう。ずっとブツブツと同じことを呟いて脳がイカれてしまっとるわ。脳の洗浄が済むまで半年は掛かるじゃろうな。」
ため息を一つ吐き話を続ける。
「差し向けた使い魔が全てを見ていた。派遣した魔術師たちは一斉に兵に囲まれ、一人のサーヴァントは魔術師の前に突然出現し、笑いながら腕を一振りし…それでしまいじゃ。次の瞬間、一人をのぞいて全員が長い杭に突き刺されて殺されていた」
ルーマニアで杭…ねぇ…
「おい爺さん。サーヴァントと戦えってならお断りだぞ」
戦略を立て、万全の準備をし、全てが思い通りに進んだとしても分の悪すぎる賭けだ。一騎でも脱落できるのならいい方だろう。
「そうは言わん」
ベルフェバンはにんまりと厭らしい笑みを向けた。
「わしの依頼はな、お主に赤のマスターとしてサーヴァントを召喚して戦って欲しいということだ」
「…はぁ?」
聖杯戦争で召喚できるサーヴァントは七騎。そしてマスターが七人のはずだ。
「大聖杯は特殊でな。状況に応じて、令呪の再配布や聖杯戦争に関する補助を行うのじゃ。今回、七騎のサーヴァントが一勢力に統一されたことでその対抗策の予備システムが作動したのだ」
「ユグドミレニアは七人のサーヴァントとマスターを揃えた。そして我々も七人のサーヴァントとマスターを揃えるのだ。」
「…サーヴァントを召喚する触媒はあるのか?」
「もちろんだとも…」
そういい、机の上に何か石のようなものを出してきた。
「これは?」
「かのアーサー王伝説に名高き円卓のかけらだ。時計塔に保管させている星遺物の中でも秘蔵中の秘蔵だよ。
アーサー王に限らずランスロットガヴェイントリスタンなど、有名なサーヴァントの召喚は確実だろう。」
「そうか…他のメンバーは…」
「なぁに、どれも凄腕よ。で、受けるのか?」
「ちょっと考えさせてくれ…」
そういい、一服しようとタバコをだし…
「別にお前が受けぬのなら他のものに頼むだけだ…」
「わかった…それと…あれ…待って行ってもいいか…」
あたり一面を闇が包む墓場の中、適当な石に腰掛け煙草を吸う…
色々と考えることがあるが…
ふぅー…やるか
「
ただ
―
この
墓場が光に包まれ、神々しい光が照らす。
その光が収ままたとかには1人の人がいた。
「セイバーモードレッド!召喚に応じ馳せ参じた!
それで、お前がオレのマスターなんだな?」
全身鎧を纏った小柄な騎士はそう問いかける。
「俺は獅子号乖離…よろしくな」
「…ここは…墓地かよ。陰気な場所で召喚しやがって…ネクロマンサーかお前?
げぇっ!バッカイの死骸とかあるじゃねぇか嫌なところで召喚するなお前。」
バッカイとは超越の儀式に失敗したものが逃げ出したか、あるいは何らかの理由で生き延びた末の姿である。その後彼らを見たものはおらず、どれほどの期間、恥辱の痕跡をとどめたまま暗い墳墓に身を隠しているかは不明で在る。そしてバッカイは聖域を防衛し、そこに在る古代の秘宝を保護する役目を負っている。
「しかしアーサー王の息子、モードレッドが女だったとはなぁあ!」
チャキン
「次に女と呼んだら…おれは自分を制御できん…」
「お、OK」
召喚してから数日が経過した。黒、赤両陣営サーヴァントを七騎召喚し未だ交戦こそないものの水面下では激しい情報戦が行われている。
あれ以降皇帝サマは時々僕のそれをみて指摘はしてくれるものの…それ以降はほぼ姿を見せず、工房に引きこもっていた。
ホムンクルスはおろか、サーヴァントや、他のマスターですら立ち入ることを許さず、マスターである。僕ですらたまにしか入ることが許されない状態だった。
夕方、西日が差し込むなか、キャスターを呼びに工房へ足を運んだ。
「皇帝サマ、ランサーが読んでるよ。」
…
こちらを見ることなく何かに没頭している。
目の前には黄金の巨大な円盤のようなものが夕日に照らされ、光り輝いていた。
「余になんのようだ…」
「ダーリックが読んでるよ。皇帝サマ」
「ふん、あのようなものに従う理由などない。」
そう言い、また背を向け、また円盤の作製をつづける。
沈黙が場を支配する…
僕たちの関係はひどく曖昧で、ダーニックみたいに臣下の礼というわけでもないし…かと言って仲間というわけでもない…先生…と生徒?
僕はゴーレムを作り出し。
まるで先生に構って欲しい子供のように王を呼ぶ。
皇帝サマは僕ができたものを一瞥した後作業しながら改善点を指摘してくれる。そしてそれを改善し、作り直し、また指摘をくりかえす。
しばらくそんな時間が続いた。
「よい。このまま日々精進せよ」
どれくらいそうしていただろうか…
あたりは暗く闇が支配する中、いつのまにか皇帝サマは作業をやめ、こちらをじっと見据えていた。
「はい!」
目的となる人は呼び出さなかったが、僕はいいものを召喚できたと思う。
そんなことを思いながら気になっていたことを聞いてみた。
「皇帝サマの宝具は一体どんなのなんですか?」
なにしろユグドミレニアになっていたアジールに関することはわずか十数ページだけ。しかもページを破れていたりして。いまいちどう言った人物なのか把握できない。
これといった武勇伝もなく、かといって他の逸話もない。
マスターである以上それは把握しておきたいのだ。
「余の宝具はこれよ」
そういって彼が杖で指した先には
さっきまで作業していた。円盤のような何かがあった。
「この太陽の円盤が蘇りしとき、シュリーマは蘇るのだ。」
太陽の円盤シュリーマの象徴…
シュリーマ帝国は大陸全土に広がる栄華を極めた文明を誇っていた。超越者と呼ばれる偉大な神将たちによって築かれたこの帝国は、南部の困窮した人々を一つにまとめ、民族の間に持続的な平和を実現させた。
その国の象徴となるのが太陽の円盤。
それが蘇った時、どうなるんだろうか。
見てみたいなぁ…
そこから具体的なことを聞こうとしても教えてもらえず、太陽の円盤が蘇った時、何か起きるということだけしかわからなかった…。
いつまでそうしていただろう…
「というより急がないと!赤のサーヴァントが領内に入ってきたんだよ!だから一度集まることになっていて。」
「わかっておる」
そういい未だまだ未完の太陽の円盤を一瞥し、出口へと歩いて行った。
コツ…コツ…コツ
工房を後にし、背後に付き従うように歩く途中ふと、
「にしても皇帝サマ、砂塵兵とか用意しなくていいの?サーヴァントが現れてから作り始めてじゃ遅いと思うけど…」
「ふん、そんなことは必要ない。余の帝国は砂の一粒一粒に息づいている。そんな無駄なことをする時間などないのだ」
「そうなんですね!」
正直まだ皇帝が何を考えているかはわからない…何を目的としてるかも。あの円盤が蘇ったとき、どうなるのかも。…それは自分が未熟だからだというわけではなく、信用されてないのかわからない。
ただ、彼が円盤を蘇らせ、シュリーマが蘇るその瞬間を隣で見てみたいものだ…。
傷一つない黄金の鎧をきらめかせ、皇帝は歩いて行く…
歴史は我らが綴るものだ…例え従わずともいずれ目の当たりにしよう。
我がシュリーマの栄光を
次回からはもう少しペースを上げていきたいですね。
閲覧ありがとうございました。