破壊者と幻想の道標   作:鉄線攻種

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にとりは人間が相手の場合、キメる時だけ「盟友」って呼ぶパターンが一番好きです。



第十六話 銀と無遠慮のメカニック

 

 

 

────目覚めよ

 

 

士「………」

 

 

─────目覚め、あっ違う、起きろ!

 

 

士「うーん……」

 

 

 

 

 

???「起きロー!!」

 

士「……ッ!?」

 

 

士の体に衝撃が走る。体内を絶叫が駆け抜けていくような形容しがたい衝撃。

飛び起きた士は周囲を見回してみるが、人の姿などなかった。

 

 

士「…何だ?誰だ?」

 

???「ここだヨ!こコ!」

 

士「………?」

 

 

声はする。

士の胸のあたりから。

 

 

???「苦しいんだヨ!起きロ!」

 

士「起きてるぞ」

 

???「あっそうですカ…失礼しましタ」

 

士「ああ」

 

???「…って違うヨ!ここから出せって言ってんダ!」

 

士「……ここって、どこだ?」

 

???「それが分かったら苦労しないってバ!」

 

士「悪い」

 

???「シャキッとしロ!」

 

 

寝起きでまだボーッとしている士はまだ状況をよく把握できていない。

なんて言いつつ、この声の出所は「だいたい分かって」いるのだが。

 

 

士「……お前か」

 

???「フハーッ!窒息死するかと思ったヨ…」

 

士「お前呼吸するのか?」

 

???「そういう気分だったってこト」

 

士「…だいたい分かった」

 

 

士が内ポケットから取り出したのは昨日文から渡された銀の筒状の何か。

それが今、ロボットのような姿となって士の手のひらに乗っていた。

 

 

士「で、お前は何者なんだ?」

 

???「ボクデミタス、よろしくネ」

 

士「デミタス…お前、道端に落ちてたそうだが、何があった?」

 

デミタス「聞いてくれるかイ?それはそれは長い旅路で…」

 

士「いや、いい。要点だけ話せ」

 

デミタス「哀れな孤児の話ぐらい黙って聞いておくれヨ」

 

士「…何か悟ってるな、お前」

 

デミタス「本当辛かったんだヨ…それは冬が開ける前、ちょうどクリスマスシーズンの…」

 

士「いや、いい。要点だけ話せ」

 

デミタス「聞けヨ!?今聞いてくれる流れだっただロ!だいたッ」

 

 

士はぎゃんぎゃんと喧しいデミタスの蓋を閉じて無理矢理黙らせる。

そこへデミタスの退場と入れ替わる形で霊夢が姿を現した。

 

 

霊夢「あら、今誰かいなかった?」

 

士「気のせいだ。それより海東たちはどうした?お互い用があるって話だっただろ」

 

霊夢「それならあなたが寝てる間に私たちで話し合ったわ。それでだいたい解決。ま、収穫なんてなかったけどね」

 

士「おいおい、主人公を差し置いて…」

 

霊夢「え?」

 

士「…何でもない。なら、要点だけ話してくれ」

 

霊夢「? まあ、いいけど…話すようなことなんてないわよ?」

 

士「いや、何かあるだろ?」

 

霊夢「私F.o.Dの居場所なんて知らない。紫別にいなくなってない」

 

士「うわぁ本当にねえな」

 

 

士は縁側に倒れ込む。

散々歩き回り、戦い、苦労の末にようやく霊夢に会えたのにこの結果では、さすがの士も落ち込んでしまう。

 

 

士「シシガケの奴…あっちから追ってこいとか言っといて、何も手がかりよこさないとはな…」

 

霊夢「世界の破壊者が何愚痴ってるのよ」

 

士「…らしくない、か?」

 

霊夢「そうねぇ。昨夜のアレも含めてねぇ」

 

士「その話はやめろ。それよりもあの犬はどうした?」

 

 

士の古傷が痛み始める。

それを誤魔化すように、縁側から姿を消したドーベルマンの話題を持ち出した。

 

 

霊夢「ああ、サツキ丸なら文が河童に見てもらおうって」

 

士「さ、さつきまる?」

 

霊夢「ええ。ただの犬、じゃ素っ気ないでしょ?だからサツキ丸。名付け親は私よ」

 

士「かわいそうに」

 

霊夢「どういう意味よ!?」

 

 

ともかく、ドーベルマン……否、サツキ丸(仮称)は、文のもとにいるようだ。

既に出発してしまったのなら、後を追うのは面倒になる。

 

 

士「……腹が減ったな」

 

霊夢「みんな言ってるわ」

 

士「みんな朝食抜きか」

 

霊夢「カイトさんは里に降りていったわ。大樹さんは…あら、どこへ行くか聞いてなかったわね。萃香は…あ、そうだ!萃香探してたんだった!どこ行ったアイツ!!」

 

 

士とのやりとりですっかり抜け落ちていた霊夢の用事。

どうやら何かやらかしたらしい萃香を、鬼の形相で探し始めた。

 

 

士「元気だな、あいつら…」

 

文「あ、士さん起きましたか。おはようございます!」

 

士「なんてまぶしい笑顔だ」

 

 

神社内を駆け回る鬼巫女の姿をぼんやりと眺めていると、既に博麗神社を出発したと思っていた文がサツキ丸(仮称)を抱えてひょっこりと姿を現した。

 

 

士「河童とやらのところに行ったんじゃないのか?」

 

文「士さんが起きるのを待ってたんですよ」

 

士「…なにゆえ?」

 

文「道中何があるか分かりませんから。士さんにも付いてきてもらおうと思いまして!」

 

士「…何かするのはお前らの方じゃないのか?」

 

文「状況が状況なので」

 

士「…だいたい分かった」

 

 

士が渋々了承すると、文の表情がぱあっと明るくなった。

 

 

士「空を飛ぶのは御免だぞ」

 

文「それじゃ、ゆっくり行きましょうか!」

 

 

元気溌剌、意気揚々。

そんな文に続いて、いまだ空腹を引きずる士は博麗神社を後にした。

 

 

 

 

 

その、数分後。

萃香を追って霊夢も神社を飛び出していき。

 

さらに数分後。

普通の魔法使い、霧雨魔理沙が博麗神社を訪れ。

 

 

魔理沙「おーい霊夢ー……って、誰もいないのかよ。不用心だなぁ、泥棒が入ったらどうするんだ………ん?」

 

デミタス「!?」

 

 

縁側に取り残されたデミタスを、さも当然のように、これは元から自分のものでしたよ、と言わんばかりにかっさらっていくのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

コウタ「あれ?ここ、どこだ…?なんで俺こんなお花畑に…」

 

???「コウタ…葛城コウタ…」

 

コウタ「うわっ!?だ、誰だ!?」

 

???「葛城コウタ…異世界の仮面ライダー鎧武。ここはお前の夢の中だ…」

 

コウタ「夢って…ってかどうして俺の名を……? いいから姿を現せ!」

 

???「それは出来ない。きっとお前を驚かせてしまう」

 

コウタ「何でだよ!」

 

???2「質問が多い人ね」

 

コウタ「増えた!?いやもう何でもいいから姿を現せよ!」

 

???2「仕方ないわね…」

 

???1「ひっくり返るなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウタ「…俺!?」

 

舞「フフフ」

 

紘汰「驚いたか?」

 

コウタ「…俺、何でそんな恥ずかしい恰好してるんだ…?」

 

紘汰「うるさい」

 

舞「その辺りは触れてはいけないわ」

 

コウタ「汚れが目立ってカレーうどん食べられないな」

 

紘汰「いや、俺カレーうどん食わないから」

 

舞「そういう問題じゃないでしょ?」

 

コウタ「で、結局お前ら何なんだよ。お前は何で俺そっくりなんだ?」

 

紘汰「俺は葛葉紘汰。またの名を始まりの男」

 

舞「そして私は高司舞。またの名を始まりの女」

 

コウタ「始まりの男と、女…?」

 

紘汰「俺たちは己の運命を掴み取った。その結果がこれなんだ」

 

コウタ「後悔してないのか?」

 

舞「もちろん」

 

紘汰「自分が選んだ道だ。後悔なんてしないさ」

 

コウタ「……本当に?」

 

紘汰「…いや、まあ、正直こんなビジュアルになるとは思ってなかった」

 

舞「私は結構気に入ってるけどね?」

 

コウタ「ああ、そう……で、俺をこんなところに呼び出して、何の用だ?」

 

紘汰「………」

 

舞「………」

 

コウタ「暇を持て余したとか言うなよ」

 

紘汰「お前は知恵の実を手に入れたそうだな」

 

コウタ「スルーか!何だよさっきの間は!」

 

舞「極ロックシードは本来なら使い続けるとオーバーロード化が進行する危険な代物よ。私たちの世界ではそういうものだった」

 

コウタ「へ?マジで…?」

 

紘汰「でも貴方が手に入れた極ロックシードは違う。オーバーロード化のリスクはない。バシバシ使っちゃってマジOKじゃねぇ?」

 

コウタ「そ、そうなのか…よかった…あ、もしかして、それを教えるために…」

 

紘汰「お前はいいよなぁ」

 

コウタ「!?」

 

紘汰「どうせ俺(の極)なんて…」

 

舞「私たちと一緒に地獄(ヘルヘイム)へ落ちよう…」

 

コウタ「舞さん!?貴方だけでも戻ってきてください!!」

 

紘汰「いやぁ。怒ってるわけじゃないさ。僻んでるわけでもない。ただ、ちょーっと、気になっただけでさ。怒ってないんだよ。オーバーロード化のリスクは、逆に俺たちに運命を掴みとらせてくれたきっかけのようなものだし。怒ってないから安心しろよ」

 

コウタ「目が据わってるんですが…」

 

舞「私たちその気になればあなたの設定を改変することも出来るの」

 

紘汰「主に改悪だけどな」

 

コウタ「やめてくださいお願いします」

 

紘汰「まあ冗談はこのへんにして」

 

コウタ「寿命を縮める冗談はやめてください」

 

舞「ギャグモードはここまで。これから大事なことを話すからしっかり覚えておいて」

 

コウタ「…なんで俺なんだ?」

 

舞「ディケイドや他の者たちにも試したけど、介入できたのは貴方の世界だけなの」

 

紘汰「よく聞けよ。遥か遠い世界の果てである者たちが動き出した。お前たちがそれと出会うのは、ずいぶんと先の話になるだろうけどな」

 

コウタ「ある者、先の話、って…ずいぶんと気の長い…」

 

紘汰「今の俺たちに話せるのはここまでなんだ。悪いな」

 

舞「ネタバレ注意よ。あ、そろそろ時間ね…それじゃ、頑張って。運命を諦めないで」

 

紘汰「信じる道を行け、葛城コウタ」

 

コウタ「…ああ、分かった」

 

紘汰「暇を持て余した」

 

舞「神々の」

 

紘汰「遊び」

 

コウタ「やってられるかぁーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウタ「かァーッ!!」

 

ルーミア「あ、起きた」

 

 

絶叫とともに跳ね起きるコウタ。傍らにはルーミアの姿。

今の自分の体は布団に収まっていて。見渡す周囲は、何やらがらくたでごった返していた。

正直綺麗とは言えないが、元いた世界ではガレージでの生活が長かったコウタにとっては、むしろ居心地のいい方である。

 

 

コウタ「ルーミア? あれ、ここは…?」

 

ルーミア「河童のお家だよ」

 

コウタ「河童?」

 

ルーミア「うん。気を失ったコウタを一人の河童…えーっと、名前なんだっけ…まあいいや。その河童の子が治療してくれたんだよ!」

 

コウタ「そうだったのか…」

 

ルーミア「それにしてもコウタ、悪い夢でも見たの?うなされてたよー」

 

コウタ「夢…あれは、本当に夢…? やっぱり、ただの夢なのか…」

 

 

ほっとしたのも束の間、「ところがどっこい…夢じゃありません…!」「現実です…!これが現実…!」なんて声が脳内に響いてきた。

悪夢の残滓を振り払うように頬をベシベシと叩く。それ以上声が聞こえてくることはなかった。

 

 

コウタ「夢じゃない…夢だけど夢じゃない…」

 

ルーミア「何言ってるの?」

 

コウタ「ああいや、別に…」

 

ルーミア「何でもいいや。河童の子がね、外で待ってるから起きたら連れてこいって言ってたんだ」

 

コウタ「そうか。んじゃ、行くかぁー」

 

ルーミア「うん!」

 

 

ルーミアに手を引かれて家を出る。外に出てようやく気付いたが、ここは玄武の沢の一角らしい。目の前には清らかな川が流れている。

「河童の家」というのが気になって振り返ってみると、家というよりは住処か秘密基地とか、そういう単語の方が似合いそうな外装。

玄武の沢の横穴のひとつに、ドアを付けただけ。そんな家だった。

 

 

コウタ「河童ってすごいところに住んでるんだな…」

 

???「ここはアジトの一部だよ」

 

コウタ「おわぁっ!?き、君は…?」

 

???「驚かせて悪いね、盟友。私は河城にとり。君をここまで運ぶのは大変だったんだよ?」

 

コウタ「えっ…じゃあ、君が河童の…?」

 

にとり「そうだけど?」

 

 

コウタはちら、とルーミアを見やる。

ルーミアだってこう見えて人喰い妖怪。天狗の文や鬼の萃香など前例もあるが、やはり慣れないものだな、とコウタは思う。

河城にとりは緑の帽子に青い髪の、溌剌とした印象を持てる少女だった。

 

 

コウタ「……すごいな、この世界」

 

にとり「まず自己紹介と、お礼の言葉を聞きたいなぁ?」

 

コウタ「あ、あぁ…助けてくれてありがとな、にとり。俺は葛城コウタだ」

 

ルーミア「ルーミア!」

 

にとり「うん、それは昨日二回くらい聞いたよ。あー、コウタね。よろしく、盟友。んで、いきなりだけど頼みたいことがあってさ」

 

コウタ「ああ、俺も聞きたいことが…」

 

にとり「うん?じゃ、私の用事はちょっと歩くから、その道すがらに聞くよ」

 

コウタ「ああ、そうしてもらえると───」

 

 

ばしゃん。

 

躊躇なく川に飛び込んだにとりにコウタは言葉を失う。

呆然としていると、川の水面からにとりが顔を出した。

 

 

にとり「何してんの?早く行こうよー」

 

コウタ「いや…さっき歩くって…」

 

にとり「歩くよ?」

 

コウタ「水底を?」

 

にとり「そうだけど?」

 

コウタ「無理だけど?」

 

にとり「なーんだ。この下の抜け穴使うと近道なんだけどなぁ…泳げないんじゃ仕方ないね」

 

コウタ「いや、泳げないとかじゃなくて…」

 

 

ばしゃん。

 

 

にとり「さ、行こう!」

 

コウタ「……おう」

 

ルーミア「苦労するね、コウタ」

 

コウタ「……………おう」

 

 

ルーミアに背中を押され、にとりに続くコウタ。

人間と妖怪。コウタはその違いを改めて実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーミア「いのりはーきおくーのーちーへいーせんー♪ひーるめしーめーぐらーせるー♪」

 

 

玄武の沢をぐるりと回り込むように歩を進める三人。

元気に歌声を響かせるルーミア以外、口を開くことなく数分歩いたところで、にとりが突然切り出した。

 

 

にとり「盟友。さっきからずっと黙ってるけど、何か聞きたいことがあったんじゃない?」

 

コウタ「えっ?ああ……」

 

 

幻想郷には他にどんな妖怪がいるのか。

思考を張り巡らせていたコウタはにとりのその一言で用事を思い出す。

 

 

コウタ「倒れた俺を助けてくれたのは君なんだろ?その時、近くに三体のロボットがいなかったか?」

 

にとり「あー、いたいた。ってかね、私が頼みたかった用事っていうのはそのカラクリたちのことだよ」

 

コウタ「へ?そうなのか?」

 

にとり「うん。君を運んだ後、他の仲間と協力してこっちのアジトに運んでおいたんだ。私はあの戦いを最後まで見てたから、だいたいの事情は理解してるよ」

 

コウタ「そうだったのか…あいつら、何とかして助けてやりたいんだけど…」

 

にとり「うんうん。私も同じだよ。なんてったってあいつら、解体しがいが…」

 

コウタ「ん?」

 

にとり「あっ、いや、何でもない何でもない。何でもないよ!それよりさ、カラクリの一体は足をやられて歩けなくなっただけでピンピンしてたから、こっちの話もついてるんだ。それで、助けてくれた君に会いたいってうるさくて」

 

コウタ「そんな…勘違いだったとはいえ、俺もあいつら傷つけたし…」

 

にとり「それは私じゃなくてあいつらに言ってあげなよ。あ、着いた着いた」

 

 

細い道を抜け、開けた場所に出た三人。

にとりがいう「河童のアジト」の一つらしい。所々で河童たちがよく分からない機械をいじくりまわしている。

 

 

ルーミア「さーまようーゆうはー」

 

コウタ「ルーミア、もういいって」

 

ルーミア「ーん?」

 

にとり「こっちだよ、お二人さん」

 

コウタ「おおおお、ジガキュール!!」

 

 

にとりに手招きされ、ついていった先。

5メートルほどの大きな岩の下、数人の河童が無造作に寝かされたジガキュール1号・2号を囲うように座っていた。

岩にもたれかかっていたジガキュール3号が、コウタに気付くなり腕をぶんぶん振り回して叫ぶ。

 

 

ジガキュール3号「お待ちしてました先生ぇー!!」

 

コウタ「せ、先生!?」

 

にとり「そいつがずっとうるさかったんだよねぇ。先生に会わせろーって」

 

ルーミア「コウタ先生だ!」

 

コウタ「先生じゃねえから!!」

 

ジガキュール3号「いーえ先生です!!我ら兄弟の恩人ですから!!」

 

コウタ「こんな奴だったっけ!?」

 

ジガキュール3号「我々は常に『今』に忠実なのです!!」

 

コウタ「想像以上にめんどくせぇよこいつら…」

 

にとり「少し静かに」

 

 

にとりがジガキュール3号の脳天にスパナを振り落とす。

コーン、と小気味よい音が鳴った後、ぷすん、と煙を吐いて3号は沈黙した。

 

 

コウタ「えっ…大丈夫なのこれ…?」

 

にとり「大丈夫大丈夫。なんて言えばいいかな…河城家秘伝沈黙のツボ?」

 

コウタ「ロボットにツボなんてあるか。とにかく、こいつら直せるのか?」

 

 

何故か得意気な笑顔だったにとりは、コウタの言葉にむう、と唸る。

 

 

にとり「私たちの技術を総動員させた。それでも直せなかった。それも用事の内の一つだよ、盟友」

 

コウタ「そんなこと言われても、技術に優れる河童で無理なら俺にはどうしようも…」

 

 

コウタも、釣られてよく分かっていないルーミアも、難しい表情になる。

そんな状況を切り裂いたのは、突然空から降りてきた魔法使い。

霧雨魔理沙であった。

 

 

魔理沙「よーうにとり」

 

ルーミア「魔理沙だ!」

 

にとり「よーうじゃないよ魔理沙。ほんと、いつもいつも突然現れるんだから」

 

コウタ「えーっと…こちらは?」

 

にとり「霧雨魔理沙。こそ泥だよ」

 

魔理沙「おい、そりゃないぜにとり。こそ泥だなんて人聞きの悪い」

 

ルーミア「事実じゃないの?」

 

魔理沙「いやいや違うって、死ぬまで借りていくだけだ。なあ、違うからな?そこのお前も、分かってくれよ?」

 

コウタ「二人も泥棒の知り合いができるとは思わなかった」

 

魔理沙「手遅れか!! …って、お前、その口ぶりからすると…海東大樹の知り合いか?」

 

コウタ「海東を知ってるのか!?」

 

魔理沙「おう、知ってるぜ。何だ、あいつの知り合いか。なら誤解もないな」

 

コウタ「………」

 

魔理沙「何だその目!?」

 

 

海東並みか、もしくはそれ以上の「盗人オーラ」を魔理沙から感じ取ったコウタ。ちょっとだけ警戒モードになる。

魔理沙とは短くない付き合いらしいにとりは、これが日常らしいのか表情一つ変えず冷静に対応する。

 

 

にとり「何でもいいけどさ。魔理沙、今日はどうしたの?」

 

魔理沙「あ、あぁ…ちょっと変な物を拾ってな」

 

にとり「どれどれ、見せてみー」

 

コウタ「…本当に拾った物?」

 

魔理沙「も、もちろん」

 

ルーミア「目が泳いでるー」

 

 

左右から感じる疑心の視線。

魔理沙は上方向へ視線を泳がせながら、にとりに博麗神社で盗…拾った「デミタス」を帽子の中から取り出して渡す。

 

 

にとり「なんじゃこりゃ」

 

魔理沙「何か分からないからここに持ってきたんだよ」

 

ルーミア「食べられる?」

 

コウタ「いや、無理だと思う」

 

 

魔理沙の手のひらの上、待機状態のまま四人に突っつかれるデミタス。

がっしり掴まれ、小突かれ、うっかり落とされ、高く放り投げられ。

そしてルーミアに喰われかけた瞬間に我慢の限界を向かえたデミタスは、ロボット形態に変形し飛び上がった。

 

 

デミタス「いい加減にしローーーーーッ!!!」

 

コウタ「うおぉッ!?」

 

ルーミア「わあ、わぁっ!?」

 

 

己の手から飛び立ったデミタスに、大きな口を迫らせていたルーミアがしりもちをつく。

回転しながら落下したデミタスはそのままルーミアの頭の上に着地した。

 

 

ルーミア「……?」

 

にとり「………」

 

魔理沙「何だ、お前?」

 

デミタス「まずボクに謝レ!散々酷い扱いしてくれたナ!謝レ!」

 

コウタ「す、すまん…まさかロボットだとは…」

 

デミタス「分かればいいんだヨ」

 

 

シリンダー状のボディではまったく分からないが、おそらくふん、と胸を張っているつもりなのだろう。

コウタの謝罪を受けて、デミタスは満足そうに黄色い両目を光らせた。

 

 

ルーミア「降りてよー」

 

デミタス「降りたら喰われるだロ!?」

 

コウタ「そういうわけだ、ちょっと我慢してくれルーミア」

 

ルーミア「食べられないって分かったから、もう噛みついたりしないよ…」

 

デミタス「…個人的な恐怖心だヨ」

 

魔理沙「ロボットに恐怖心を与えるなんて、ルーミア…恐ろしい子…!」

 

 

心なしか小刻みに震えているように見えるデミタス。

そんなデミタスを安心させるかのようにコウタは優しく問いかける。

 

 

コウタ「えーっと…君、名前は?」

 

デミタス「デミタスだヨ。よろしク」

 

コウタ「デミタスか。よし、デミタス。魔理沙に盗み出される前はどこで何してたんだ?」

 

魔理沙「もういいだろ!?」

 

デミタス「何とか神社ってところにいたヨ。門矢士って男のポケットに閉じ込められてたんダ」

 

コウタ「士の!?」

 

デミタス「あレ?お知り合イ?」

 

コウタ「ああ。俺はその士とはぐれて絶賛放浪中だ」

 

ルーミア「私のせいだよ!!」

 

魔理沙「何でそんな自信満々に言えるんだよ…? 神社っていうと、博麗神社かね」

 

デミタス「そうそう、そんな名前だったかナ」

 

コウタ「また、早く帰らないといけない理由が出来たな」

 

にとり「……それは困るね」

 

コウタ「にとり?」

 

 

デミタス登場時からずっと、デミタスを凝視していたにとりがようやく口を開いた。

その瞳には、何やらキラキラと光り輝くエフェクトが……

 

 

にとり「へぇ……ふーん……しかし、これはまぁ……」

 

デミタス「…あんまりじろじろ見ないでヨ」

 

魔理沙「おい、デミタス。お前逃げたほうがいいかもな」

 

デミタス「ヘ?」

 

にとり「逃すかぁッ!!」

 

デミタス「ホヘーッ!?」

 

 

野獣の眼光を携え、デミタスを掴み取ったにとり。

両手でガッシリと掴み、天に掲げた。

 

 

にとり「コイツ中身どうなってるんだろう!?どういう構造なんだろう!?解体(バラ)したい……ッ!!理解(バラ)したい……ッ!!」

 

デミタス「ギャーッ!?人殺しーッ!?」

 

コウタ「落ち着けデミタス!!人じゃない!!」

 

デミタス「ロボ殺しーッ!!」

 

ルーミア「それも違う気がするー」

 

にとり「改造(バラ)させろーッ!!」

 

魔理沙「お、抑えろー!!」

 

 

エンジニアとしての性が暴走したのか、正気を失っているらしいにとりをコウタと魔理沙が二人がかりで押さえつける。

デミタスがにとりの拘束から脱出し、見事な回転着地を披露した。

 

 

デミタス「ここ最近こんなのばっかだヨ!いい加減安らぎが欲しイ……ン?」

 

 

にとりの魔の手から逃れるためその場を離れようとしたデミタスの目前には、横たわるジガキュールたち。

デミタスは彼らがスクラップ寸前にあることを察知すると、ジガキュール1号のデザート迷彩のボディに飛び乗った。

それに気付いたルーミアと数人の河童が、何が始まるのかと興味津々といった様子で集まってくる。

 

 

ルーミア「デミタス、何をするの?」

 

デミタス「こいつらを直してあげるんダ」

 

ルーミア「わあ!そんなこと出来るの!?」

 

河童1「無理だよ、私たちでもダメだったのに」

 

河童2「出来っこないって」

 

デミタス「フッフッフ。まあ見てなっテ」

 

 

デミタスがまず、自分が乗っているジガキュール1号の破損部位に両腕から放つビームを当てる。

すると破損部位がみるみる塞がっていき、完全に元通りになった。

 

 

ルーミア「おお…!!」

 

河童1「う、嘘…何、この子…」

 

河童2「……やるぅ」

 

デミタス「少し時間が掛かりそうだけど、何とかなりそうだヨ。重要なパーツが破損してなくてよかったネ」

 

 

いつの間にか落ち着きを取り戻したにとりやコウタたちも集まっていた。皆、固唾を呑んでデミタスの作業を見守っている。

作業を続けること十数分。ジガキュール1号・2号は完全に修復された。

 

 

デミタス「フゥ、次の方どうゾー」

 

ジガキュール3号「お、俺…?」

 

デミタス「他に誰がいるんだヨ」

 

ジガキュール3号「た、頼んだ…」

 

デミタス「足だけなら楽勝楽勝!」

 

 

今度はあっという間に修復完了。

ジガキュール3号がすっくと立ち上がると同時に、1号と2号も機能を復活させ立ち上がった。

 

 

ジガキュール1号「ここは…一体…!?」

 

ジガキュール2号「我々はたしか…」

 

ジガキュール3号「うおおぉッ兄弟ーッ!!」

 

ジガキュール1号「3号!!」

 

ジガキュール2号「無事だったのか!!」

 

ジガキュール3号「兄弟こそ!!」

 

ジガキュール1号「良かったなぁ、良かったぁー!!」

 

 

ガッシン、ガチャガチャ、ガシャンガシャン、と騒々しい音をたてて再会の喜びを分かち合うジガキュール三人。

 

 

デミタス「お前らなーんか忘れてないかイ?」

 

ジガキュール3号「おお、そうだ!兄弟、このデミタス様が俺たちを直してくれたんだ!」

 

ジガキュール1号「それは本当か!?」

 

ジガキュール2号「礼を言わなくてはならないな。助かった、ありがとう!!」

 

ジガキュール1号「兄弟たちを救ってくれて感謝の極み!!」

 

デミタス「まあネ。これくらい何てことないサ!!ハッハッハッハッハ!!」

 

1号&2号&3号「「「ハッハッハッハッハ!!」」」

 

ルーミア「えーっと、これは…」

 

コウタ「入り込めないな…」

 

魔理沙「ちょっと静かにできないのか?」

 

にとり「解体(バラ)したかったなぁ…」

 

ジガキュール1号「そういえばコウタ先生は何処へ!?」

 

ジガキュール3号「そこにいるだろう兄弟!!我々を救ってくださったのはデミタス様だけではない!!」

 

コウタ【コマンド:→にげる】

 

 

ジガキュールたちの意識が自分に向いた瞬間、コウタは回れ右して逃げ出そうとする。

 

 

ジガキュール3号「お待ちください先生!!」

 

ジガキュール1号「どうか、我々に恩返しをさせてください!!」

 

ジガキュール2号「我々にできることならどんなことでも!!あ、でもキツいのは勘弁で…」

 

 

しかし まわりこまれてしまった!

 

 

ジガキュール1号「さあ、先生!!」

 

コウタ「鬱陶しい」

 

ルーミア「頑張って、コウタ」

 

コウタ「何をだよ…」

 

魔理沙「お前も大変だなぁ」

 

にとり「ねえねえ、解体させてくれって頼んでみてよ」

 

ジガキュール2号「そ、そればっかりはイカン!?」

 

 

一気に騒がしくなった玄武の沢。

ジガキュールたちがコウタを追い回し、その後を諦めきれないにとりが追い回し。

堂々巡りの騒動は、招かれざる客の登場で強制的に打ち切られた。

 

 

 

 

 

コテツ「……騒がしいな。私の苦手な空気だ…」

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

その頃、クレストのバルコニーにシシガケとエル、そしてガラクの姿があった。

ガラクは人里で妖怪の少女から奪ってきた「緑色のボール」をシシガケに渡す。

 

 

シシガケ「…こいつはアーツじゃないな」

 

ガラク「チッ。ダメかぁ…」

 

シシガケ「だが、面白いものを見つけたな……エル!」

 

エル「はい!」

 

 

シシガケはそのボールをエルに手渡す。

エルはそれが何か瞬時に理解したようだ。

 

 

シシガケ「どうだ?」

 

エル「ふおぉ!?これは…!!」

 

シシガケ「…気に入ったようだな」

 

ガラク「うん?どういうことだぁ?」

 

シシガケ「知らないのか?エルは『こういうモノ』なら、無条件で使いこなすことができる」

 

ガラク「つまり…『何にでも変身できる』そういう意味で?」

 

シシガケ「そういうこと」

 

 

エルの手に収まっているそれは、交わることはないはずの異世界のもの。

天空忍者。元の世界では、そう呼ばれていたものだ。

 

 

エル「これで三つ目、ですね…うふふふ…」

 

シシガケ「…試してみたくて仕方ないって顔してるな」

 

エル「はっ!?も、申し訳ありません、つい…」

 

シシガケ「いや、いい。ちょうど誰かに頼みたい用事があったからな。お前に任せる」

 

エル「本当ですか?」

 

シシガケ「ターゲットは蔵間カイト」

 

エル「本当ですかッッ!?」

 

 

エルがボールを高く放り投げて歓喜する。

右腰に下げられたイクサナックルが揺れ。

左腕のブレスに松明の灯が映り。

左腰に収まっていた白い剣と、下げられた銀のキーホルダーが揺れて触れ合い、かしゃりと鳴った。

 

 

 




河童1、河童2は茨歌仙に出てきたモブ河童です。
河童1がおかっぱの子、河童2が髪留めにスカーフの子ですよ。
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