破壊者と幻想の道標   作:鉄線攻種

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仮面ライダーマルスって絶対嵐をモチーフに取り入れてると思うんですよ。
兜とかもうまんまじゃないですか。腹部には鎖帷子っぽい模様も入ってるし。
ただの偶然なんでしょうか。誰に話しても同意をもらえなくてちょっとヘコんでます。

どうでもいいね。本編どうぞ。




第二十一話 吼えろライオンビート

 

 

スプリンガー「本当なのか!?」

 

 

玄武の沢にスプリンガーの咆哮が響き渡る。

士は浮き足立つロボット犬を宥めるように背中を撫で、彼の相棒───メタルダーの現状を話した。

 

 

士「確かに見た。敵に操られて、言いなりになってるみたいだったな」

 

スプリンガー「まさか…あいつがどうして…」

 

文「士さん、どうするんですか?」

 

士「敵の手に落ちているんなら、ほっとくわけにもいかないだろ」

 

文「さっすが!」

 

 

文の瞳が輝く。

それに引きつった苦笑を返して河童のアジトを発とうとした士を呼び止めたのは、にとりだった。

 

 

にとり「おーい、もう少しここにいておくれよ…」

 

文「あ、にとりさん。復活したんですか?」

 

スプリンガー「冗談じゃない、今も相棒は苦しんでいるはずだ」

 

にとり「せ、せめてあのトラ男が来るまで…」

 

士「トラ男? …ああ、だいたい分かった」

 

スプリンガー「おいおい、冗談キツいぜ」

 

士「そう時間はかからないだろ───ほれ」

 

にとり「へ?」

 

 

士が顎をくいっ、と動かす。

それが示した先、隠れ家の入り口付近に、閉じかけのホールを背にしたコテツが立っていた。

 

 

にとり「ひぃッ!?で、出たぁーッ!!」

 

文「あやややや…これはこれは…」

 

 

にとりがガバッ、と文の背後に隠れた。

こちらへと歩み寄ってくるコテツの前に士が立ちはだかる。

 

 

コテツ「……ディケイドか。邪魔をするな。私はそこの河童に頼んでいたものを受け取りに来ただけだ」

 

士「敵を目の前にして棒立ちってわけにはいかないからな。それに、奪い取ったものの修理を元の持ち主に頼むって、どういう神経してるんだお前」

 

コテツ「……それは前にも言われたな。私はただ、命じられただけだ…奪い取ったのは私ではない」

 

士「そうか。お前も大変だな」

 

コテツ「……邪魔をするなら」

 

士「ああ。全力で邪魔させてもらうぜ!!」

 

《KAMEN RIDE...》

《DECADE》

 

コテツ「……愚か者か」

 

ディケイド「お前ほどじゃないさ」

 

 

ディケイドがライドブッカー・ソードモードで斬りかかるのと、コテツが怪人態に変身するのは同時だった。

その次の瞬間にはコテツはディケイドの背後をとり、その巨腕を振りかざしていた。だがその一撃は届かない。わずかに速くディケイドが後方へ放ったライドブッカーの銃弾が、コテツの肩を射抜いていた。

 

 

ディケイド「いきなりそう来るか?見えてるぜ」

 

コテツ「………」

 

 

しなやかに身体を捻って着地したコテツを挑発するように、ディケイドはライドブッカーをクイクイ、と上下に動かす。

コテツはグルル、と低い唸り声を漏らしてディケイドを睨んだ。

 

 

コテツ「……やはり貴様は違うな」

 

 

そう言ってコテツが指を鳴らすと、ホールが開き三つの影が飛び出してくる。影はそれぞれ一撃ずつディケイドに攻撃し、コテツの前に並び立った。

怪人態のガラクと、操られる二体の傀儡。仮面ライダー鎧武、そして…超人機メタルダーだった。

 

 

ディケイド「…コウタ!?」

 

スプリンガー「あれは!?り、流星…!!」

 

ディケイド「おいワン公、下がってろ!!隣にいるのは俺の仲間だ!!俺が何とかする!!」

 

スプリンガー「くッ…おい、流星…!!目を覚ませ流星!!」

 

メタルダー「………」

 

 

ディケイドは飛び出してきたスプリンガーを制し、引き下がらせる。

スプリンガーは下がりはしたものの、メタルダーに呼びかけ続けた。だがメタルダーは反応を示さない。

 

 

スプリンガー「流星…!!」

 

ディケイド「…そういうわけだ。そこの二人は返してもらうぞ」

 

ガラク「んなことさせねえよ」

 

コテツ「………」

 

ディケイド「なッ…お、おい!?」

 

 

ディケイドの意識がガラクに向いている間に、コテツがにとりの元へ一瞬で移動していた。

にとりの元へ向かおうとするが、ガラクたちの妨害を受ける。

 

 

にとり「ひぃぃ!?」

 

コテツ「……例の物を渡せ。そうすれば危害は加えない」

 

にとり「うううう…」

 

文「にとりさん、渡しましょう。何が起きても士さんたちが何とかしてくれます」

 

ディケイド「お前も好き勝手言ってくれるな!?」

 

にとり「で、でも…まだ完全には直せて───」

 

デミタス「オーイ、あの機械直ったヨー!!」

 

文「デミタスさーん!?」

 

コテツ「……ご苦労」

 

 

デミタスが転がしてきた、修復されたメモリーメモリの入った透明ケース。

コテツはそれを拾い上げ、ホールへ消える。この間、わずか二秒の出来事であった。

文もにとりもデミタスも、何が起きたのかと目を丸くさせていた。

 

 

ディケイド「…おい」

 

デミタス「えエ!?僕のせイ!?」

 

ガラク「よそ見してる場合かぁ!?」

 

ディケイド「なッ!!」

 

 

今度はコテツたちに気をとられていたディケイドを、ガラクの鞭と鎧武の大橙丸が襲う。

大橙丸は防ぎつつも鞭で打ち据えられ、さらに締め上げられてしまった。

 

 

ディケイド「くッ…」

 

ガラク「ついでにオメェを絞め殺して、さっさと退散させてもらうぜ」

 

ディケイド「そうはいくか…!!」

 

《KAMEN RIDE...》

《BLADE》

 

ガラク「ぐうッ!?」

 

 

展開されたオリハルコンエレメントがガラク本体と鞭を弾き飛ばした。

ディケイドブレイドにカメンライドし、ブレイラウザーでメタルダーの攻撃をあしらう。

 

 

ディケイドブレイド「お前らは引っ込んでてもらうぜ…!!」

 

《ATTACK RIDE...》

《TIME》

 

鎧武・メタルダー「「!!」」

 

ガラク「何だそれは…!?」

 

 

《スカラベタイム》を発動し、鎧武とメタルダーの時間を停止させて動きを封じる。

残ったガラクは突っ込んでくるディケイドブレイドに鱗を乱射するが、跳躍で回避され、背中を一撃される。

 

 

ガラク「チィッ…やっぱオメェは面倒だ…!!」

 

 

ディケイドブレイドはガラクの振り回す鞭をブレイラウザーで切り落とし、懐へ飛び込んだ。

 

 

《ATTACK RIDE...》

《TACKLE》

 

ディケイドブレイド「はあぁッ!!」

 

ガラク「ぐふうッ…」

 

 

ディケイドブレイドが至近距離から半ばゴリ押しで放った《ボアタックル》を受け、ガラクが吹っ飛ぶ。

受身をとって着地したガラクに追撃を仕掛けようとしたディケイドブレイドに、背後から《スカラベタイム》の効果が切れた鎧武とメタルダーの反撃が入る。

 

 

ディケイドブレイド「くッ…せめて、どっちか一人だけでも…」

 

 

鎧武とメタルダーの猛攻に押され、後退するディケイドブレイド。

ガラクの放った鱗を間一髪で回避し、一気に詰め寄るが、それをガラクが鞭で制止する。

 

 

ガラク「俺がただ闇雲に鱗を放っていただけだと思ったか!?」

 

ディケイドブレイド「何…!?」

 

ガラク「俺が放った鱗は合図一つで爆発する。それがどういう意味か分かるな…?」

 

ディケイドブレイド「…!!」

 

 

彼らが今いる場所は、玄武の沢に開いた洞窟の一つ。壁にはこれまでガラクが放ってきた鱗が至る所に突き刺さっていた。

 

 

ディケイドブレイド「……ッ」

 

ガラク「約束だからな、人質だったこの男は返してやる。退くぞ、ポンコツ!!」

 

メタルダー「………」

 

 

ガラクの指示でメタルダーが跳躍し、彼が開いたホールへ消えていく。

スプリンガーが吠えるが、ついぞその声が届くことはなかった。

 

 

スプリンガー「おい、流星!!待て!!流星ーッ!!」

 

ディケイドブレイド「…くッ」

 

ガラク「あばよ、ディケイドと愉快な仲間たちよ……永遠にな」

 

ディケイドブレイド「!!」

 

 

最後にガラクが残した合図一つ。河童の隠れ家が一瞬で爆風に包まれた。

 

 

ディケイドブレイド「ぐあぁッ…!!」

 

 

崩れ始めた洞窟。激闘の跡地に、奥に引っ込んでいたルーミアやジガキュール兄弟たちも集まってきた。みんな突然の事態に混乱しているようだ。

 

 

河童1「何何何!?何事これ!?」

 

河童2「何が起きたの!?」

 

ディケイドブレイド「この穴から逃げろ、早く!!」

 

1号「な、何が何だか分からんが…」

 

2号「死にたくないーッ!!」

 

3号「脱出!!」

 

デミタス「スプリンガー、行くヨ!!」

 

スプリンガー「くッ…仕方ねえ…流星…!!」

 

ルーミア「ねえ、一体何が…」

 

にとり「話は後!!あんたも行くよ!!」

 

 

爆発の衝撃で開いた横穴から、隠れ家にいた者の大半を逃したところで、まだ洗脳が解けていない鎧武の攻撃を受けるディケイドブレイド。

残っていた文が催促する。

 

 

文「あやややや…つ、士さん!!は、早く!!」

 

ディケイドブレイド「文、行け!!俺はこいつを何とかする!!」

 

文「で、でも…」

 

鎧武「………」

 

 

まずは脱出が先決。

鎧武を強引に横穴から突き落とそうとするが、動き回られ思い通りにいかない。

 

 

ディケイドブレイド「おい、コウタ!!目を覚ませ!!」

 

文「士さん!!」

 

ディケイドブレイド「くそッ…こうなったら…!!」

 

文「士さん!?何か方法が───」

 

ディケイドブレイド「うおおぉぉッ!!目を覚ませ、コウタッ!!」

 

《ATTACK RIDE...》

《BEAT》

 

鎧武「ッ!!」

 

 

渾身の《ライオンビート》が鎧武の頬を殴り抜いた。鎧武がどさり、と膝をつく。

 

 

文「そ、そんな乱暴な方法で正気に戻るわけ───」

 

鎧武「あ、あれ…?俺、何してたんだ…?」

 

文「戻ったぁぁぁぁ!?」

 

鎧武「へ?文?士も…って、何だこれ!?崩れそうじゃねーか!!」

 

ディケイドブレイド「…ちょっとした冒険だったが、上手くいったな。脱出するぞ!!」

 

文「は、はい!!」

 

鎧武「な、何かよく分かんねーけど…!!」

 

 

文が飛び出し、続いてディケイドブレイドと鎧武が脱出する。それと同時に河童の隠れ家は崩れ落ち、完全に埋まってしまった。

ひとまず難を逃れ、ディケイドと鎧武は変身を解除する。

 

 

1号「危機一髪だったな」

 

河童1「あーあ、派手にやっちゃったなあ」

 

にとり「第三隠れ家が…」

 

文「あ、そんなにあるんですか」

 

ルーミア「コウター!!」

 

コウタ「うお!?る、ルーミア…!?な、なあ、士…これどういうことか説明してくれよ…」

 

士「…面倒だな」

 

 

半泣きのルーミアに抱き着かれ、困惑の表情で士に説明を求めるコウタ。

士はため息をひとつ吐くと、これまでの経緯をコウタに説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウタ「そんなことがあったのか…悪かったな、操られていたとはいえみんなに迷惑かけたみたいだ」

 

士「いいさ。俺だって人質にされたら悔しい」

 

 

あれだけの被害が出ただけあって、崩れ落ちた隠れ家の跡地周辺には河童たちが集まっていた。

今はにとりが指揮を執り、河童たちが協力して岩を掘り起こす作業を続けている。

 

 

コウタ「はぁー、ほんと色々あったなぁ…」

 

士「だな…とにかく、博麗神社に戻るか。デミタス、スプリンガー。お前らはどうする?」

 

デミタス「僕はここに残るヨ。メタルダーとかいうのはロボットなんだロ?助け出した後は修理が必要になるだろうシ。その時、またここに来なヨ。だからスプリンガー、絶対相棒を取り戻しなヨ」

 

スプリンガー「ああ。機械と機械の約束ってわけだ」

 

士「頼むぜ、デミタス」

 

デミタス「オウ!」

 

コウタ「ジガキュールたちはどうするんだ?」

 

3号「わ、我々は…」

 

2号「この砲塔を元に戻してもらわねば…」

 

1号「だから我々もここに残ることにした!!河童たちへ恩返しもせねばならん」

 

コウタ「…そうか。んじゃ、ひとまずはお別れだな」

 

3号「先生ッ!!また会いましょうッ!!」

 

士「…お前、あいつらと何があったんだ?」

 

コウタ「は、ははは…」

 

 

デミタスとジガキュール兄弟は河童のアジトに残ることを選んだようだ。

彼らの熱い見送りを受けて、士、コウタ、文、ルーミア、そしてスプリンガーの四人と一匹は玄武の沢を後にした。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

日も落ちきった頃、ようやく博麗神社に帰り着いた士一行。

縁側でお茶を啜っていた霊夢は、士たちに気付くなり退屈そうに手をゆっくり振った。隣には紫の姿があるが、何やら不機嫌そうだ。

 

 

霊夢「おかえりー遅かったわねぇ」

 

コウタ「何かどっと疲れたな…」

 

士「…本当に疲れた」

 

 

到着するなり、縁側に大の字で倒れる士とコウタ。

訝しむ霊夢に文が苦笑を返した。

 

 

文「ところで紫さんはどうして不機嫌そうなんですか?」

 

紫「聞いてくれる?」

 

文「や、遠慮しておきます」

 

紫「緊急事態だってのに霊夢が動いてくれないのよー」

 

文「聞いてませんね」

 

 

勝手に話し始めた紫に、文の表情が今度は呆れ顔に変わる。

そんなことはお構いなしに、もしくは気付いていないのか、紫は愚痴混じりの話を続けた。

 

 

紫「紅魔館が見知らぬ怪物に占拠されたって言っても動かないんだもん。萃香からも何か言ってくれって頼んでも無視してどっか行っちゃうし。もう困ってたのよー」

 

文「とってこーい!!」

 

スプリンガー「うおおん、犬としての性が…!!そ、そんなものに屈するか…!!」

 

霊夢「あのロボット犬直ったのね」

 

士「大変の一言じゃ片付けられない道のりだったな」

 

ルーミア「コウタ待てー!!」

 

コウタ「ちょっ、ルーミア!!何振り回して…その…何それ!?名状しがたいそれは何!?捨てなさい!!ちょ、やめ───アオーゥッ!?」

 

紫「少しは聞きなさいよッ!?」

 

 

誰一人として自分の話を聞いていない紫の怒号が、神社を震わせた。

さすがに悪く思ったのか全員縁側に集合した。石畳の上でのびているコウタと、それをつっつくルーミア以外。

 

 

紫「ふぅ、ふぅ…」

 

霊夢「怪物に占拠されたって言っても、あいつらがそう簡単にやられるわけないじゃない。何か策があるんじゃないの?」

 

士「まず紅魔館が何なのかを知らないからな」

 

スプリンガー「紅魔館たぁ、物騒な名前だな」

 

海東「急いだ方がいいかもね」

 

士「海東!?」

 

霊夢「だ、大樹さん!?いつの間に!?」

 

 

士たちが並んで座る縁側の背後、いつの間にか柱に寄り添っていた海東が口を挟んだ。

しばらく姿を見せていなかった男の登場に士も面食らう。

 

 

霊夢「大樹さん、今までどこ行ってたのよ!?」

 

紫「急いだ方がいいって…紅魔館は今そんなに大変なことになってるの!?」

 

海東「いや?僕が言ってるのはF.o.Dの方さ」

 

士「…何だと?」

 

 

F.o.D、という言葉に士が眉をひそめる。

 

 

海東「きっかけは何てことない散歩の途中さ。偶然F.o.Dの連中…たしかディライト、だったかな?彼女を見つけてね。後をつけていたんだ。それで……少し、マズいことになってきた」

 

士「珍しく深刻そうな顔をするな。お前がそういう顔をする時は大抵ろくでもないことが起きる」

 

海東「奴らは霧の湖に沈めたガドマを蘇らせよとしている」

 

文「ガドマ…と言いますと、あの時のオブジェですか!?」

 

 

文が両手の人差し指で十字架を描く。

大地の魔神ガドマの中枢。F.o.Dの手に渡ってしまったそれを、連中はいよいよ復活させようとしているのだ。

 

 

海東「そう。湖に沈殿した魔力とシシガケの闇を使ったガドマの復活。それは同時に、この幻想郷の危機でもある」

 

霊夢「…ついに私が動く時が来たようね」

 

紫「えっ」

 

士「まあ、待て。何も今すぐにってわけではないんだろ?」

 

海東「幻想郷の時間で明日の昼頃って言っていたね」

 

士「そうか。なら、やることは一つだな」

 

海東「そうだね」

 

霊夢「そうねえ」

 

紫「そう。夜が明けない内に紅魔館を───」

 

士・海東・霊夢「「「寝る!!!」」」

 

紫「すっ飛ばしやがったな!!」

 

 

紫の絶叫は虚しく夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

クレストの、とある一室。そのバルコニーにいつも通りシシガケの姿があった。その手にはコテツが回収したメモリーメモリが収まっている。

と、コンコン、とノック音が二つ鳴り、それに続いて、エルとソギリ、そして見知らぬ女性が入室する。

 

 

エル「失礼します、シシガケ様」

 

シシガケ「帰ったか、エル。どうだ?何か収穫はあったか?」

 

エル「はい……ですがその前に、一つだけお聞かせください」

 

シシガケ「言ってみろ」

 

エル「……やはり、あの世界…私の世界は、もう元に戻らないのですか…?」

 

シシガケ「当たり前だ。それがどうかしたか?」

 

エル「……そう、ですか。いえ、何でもありません。収穫の方ですが……残っていたのは彼女だけでした」

 

シシガケ「問題はそいつが高い魔力を秘めた者かどうか、だ」

 

エル「はい。では……サリシア」

 

 

エルの言葉で前に歩み出たサリシアという女性は、ポニーテールと言うよりもただ纏めただけといったほうが正しそうな長い銀髪と、赤く鋭い瞳を持った、見た目十代後半のエルよりも少し年上といった雰囲気の女性だった。

襤褸に包まれた褐色の体躯は傷だらけで、だが、瞳に宿る意志だけは力強い。

 

 

エル「自己紹介は?」

 

サリシア「……サリシア・アンレビィ。私はエル以外の命令を聞くつもりはない。覚えておけ」

 

シシガケ「いい眼をしている。魔力も……重畳。こいつで決まりだな。すぐに出るぞ。エル、そいつの世話はお前に任せる」

 

エル「了解」

 

サリシア「………」

 

ソギリ「シシガケ様、俺はどうなるんで!?」

 

シシガケ「次からは俺の元で動け」

 

ソギリ「そんな…ずっとエル様に仕えてきたのに…」

 

シシガケ「実行は幻想郷の時間で明日の昼とする。どうせ邪魔が入るからな、用心はしておけよ」

 

 

ククク、と低い笑い声を残してシシガケはバルコニーから退出し、ソギリも納得いかない、と言わんばかりのふてくされた表情のまま消える。

残されたエルとサリシアはバルコニーに残り、ただ何も語らず、計画が実行される時間を待ち続けた。

 

 






困った時のライオンビート。
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