破壊者と幻想の道標   作:鉄線攻種

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今年のMOVIE大戦は今までで一番好きかもしれません。
すべてが終わった後の、戒斗さんのあのシーンで不覚にも涙。




幕間 剣流星

 

 

 

シシガケ「………」

 

 

クレストのバルコニーからガドマ撃沈の一部始終を見守っていたF.o.Dの面々は、ソファに倒れ込んだまま一切の反応を示さなくなったシシガケを気味悪そうに眺めていた。

部屋の中央に現れた巨大なトランプが、ジェネラルシャドウに姿を変える。

 

 

シャドウ「魔神もガラクも倒さたそうだな。想定外、というやつか……どうやら貴様はガドマの力を過信していたようだな」

 

魔神提督「魔神とは名ばかりか。失望したな」

 

シシガケ「いいや、まだだ…まだ終わっていない…」

 

シャドウ「ガドマの力を持ってしても奴らを止めることは出来なかった。これ以上何をするというんだ?」

 

 

シシガケは返答代わりと言わんばかりに、突き出した右手のひらに緑色の光球を作り出す。

それはメモリーメモリの内包エネルギーに酷似していた。

 

 

魔神提督「そ、それは…」

 

シシガケ「念のため、メモリーメモリの力の一部を取り込んでおいた。ガドマクラスを蘇らせるのは不可能だが…この力と、俺の闇…あと何かもう一つ、素材があれば……」

 

シャドウ「…俺の推測だが、ガドマが倒されたのは貴様にとって想定外だったのではないか?」

 

シシガケ「………」

 

スミィ「ああ、確かに想定外だよ」

 

 

返したのはスミィだ。シシガケはスミィを一瞥するが何も言わず、目を伏せる。

 

 

スミィ「だが、てめえの言うような“想定外”とは違うぜ」

 

シャドウ「うん?」

 

 

ジェネラルシャドウが疑問符を浮かべる。つられて魔神提督も眉をひそめた。

 

 

シャドウ「それはどういう意味だ?」

 

スミィ「魔神ガドマの復活は不完全だったんだよ」

 

シャドウ「不完全、だと?」

 

 

あれだけの力を以てしても不完全なのか。ジェネラルシャドウは微かに慄く。

 

 

スミィ「本来なら、かつての何十倍にも力を増幅させて蘇るはずだった。手順も要素も完璧に揃っていた。なのに、不完全な復活を果たした…」

 

シャドウ「成程。想定外とはそのことか…しかし、何故?」

 

スミィ「それが分からねえからボスは頭抱えてんだよ。こりゃまた湖の調査に行かされるぜ」

 

 

めんどくさ、とため息をつくスミィの肩を、シシガケが叩いた。

スミィがぎょっとしてその表情を伺うが、相変わらずの無表情であることに困惑する。

 

 

シシガケ「…少し気にかかることがある。シャドウ、ついてこい」

 

シャドウ「む?構わんが…何をするつもりだ?」

 

シシガケ「調査だ。スミィを連れていこうかと思ったが、どうやら外の砂漠で砂風呂を楽しみたいらしい」

 

スミィ「追い出される!?わ、私も行くッ!!私はやるぜやるぜ!!」

 

シシガケ「そうかやるのか」

 

スミィ「やるならやらねば!!」

 

シシガケ「留守番だ」

 

スミィ「あれぇーッ!?」

 

 

スミィが撃沈したのを生温かい目で見届けると、シシガケはホールを開く。

ホールに足をかけたところでふと立ち止まり、辺りを見回した。

 

 

シシガケ「……ラアデュンシェの姿が見えないが、どうした?」

 

魔神提督「腹が減ったらしい」

 

シシガケ「………」

 

シャドウ「この世界に奴の腹を満たせるものがあるのか…?」

 

 

それ以上は誰も何も言わず、シシガケとジェネラルシャドウはホールへと消えた。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

サポートドロイド・デミタスは頭を抱えていた。

彼が滞在している河童のアジトにあのメタルダーが現れたことでちょっとしたパニック状態になったが、同行していた士たちの弁明でようやく収まった。

士たちの目的は度重なる戦闘で傷ついたメタルダーの修復と、紅魔館を占拠したネロス帝国残党の情報収集だ。

デミタスがにとりと共にスプリンガー以上に困難を極めるメタルダー修復作業を続けている間に、ジガキュール兄弟から情報を得た士たちの次の行動指針は決まったようだ。

 

メタルダーの活躍で壊滅したネロス帝国の残党、戦闘ロボット軍団・暴魂ラステルガは他の生き残りと共にネロス帝国再興を掲げて活動を開始。

新生ネロス帝国と銘打ち、まずは憎きメタルダーを倒すために後を追い続けていた。

構成員はヨロイ軍団・雄闘ロコア、戦闘ロボット軍団・激闘士サンダー、機甲軍団・爆闘士ジガキュール兄弟。

メタルダーを追う中で幻想郷へ辿り着いてしまった彼らは玄武の沢に拠点を置いた。そこでコウタと遭遇し、ジガキュールが離反し…新たな拠点として紅魔館を占拠。現状はこうなっているようだ。

 

デミタスは夜が降りてこない内にと一度博麗神社へ帰っていった一行を見送り、メタルダーの修復作業に戻る。

アジトの隅では残ったスプリンガーが心配そうに作業を見守っていた。

 

 

スプリンガー「………」

 

デミタス「………」

 

 

陽は完全に落ちた。アジトの中は河童製のライトによって闇の侵略を逃れている。

ハイスペックの超人機となれば修理は容易いことではない。だが着実に進むそれは、ようやく終わりが見えてきたころだった。

 

 

デミタス「…スプリンガー、起きてル?ひとつ気になることがあるんだけど、聞いていいかイ?」

 

スプリンガー「……何だ?」

 

デミタス「スプリンガーはさ、このメタルダーってヤツと一緒に戦ってきたんだロ?街とか、人前に出る時はどうしてたノ?」

 

スプリンガー「………」

 

 

スプリンガーが沈黙する。

答えたくないことだったか、と察したデミタスが何も言わず修理を再開させようとした時だった。

 

 

スプリンガー「……流星には人間としての姿もあったんだ」

 

デミタス「……?」

 

スプリンガー「帝王ゴッドネロスとの決戦で破損した超重力制御装システムの暴走から地球を守るために、人間としての自分を捨てた。そして共に戦ってきた仲間たちに別れを告げて旅立ったんだ。自分が剣流星だったという記憶……いや、人格まで失われていた時期もある。空っぽの抜け殻みたいにな」

 

デミタス「…何だか可哀想な話だネ」

 

スプリンガー「俺はそうは思わないな。あいつは生まれてきたことに後悔も何もしていなかった……それに、剣流星としての心も戻ってきた」

 

 

『僕は生まれてきて良かった』

人間としての自分を失う前に剣流星が残した言葉を思い返す。

 

 

デミタス「え、それってどういう……」

 

スプリンガー「あのガラクとかいう怪人に操られるまでは、ずっと空っぽのままだったのさ」

 

デミタス「ってことは…今回の戦いで…」

 

スプリンガー「そうだ、ようやく帰ってきたんだ……剣流星がな。俺はそれが嬉しくてたまんねえんだ。だからよ、早いとこ直してやってくれ」

 

 

すっかり調子を取り戻したスプリンガーの言葉にデミタスがずっこける。

 

 

デミタス「まったく…心配して損したヨ」

 

スプリンガー「何の話だ?」

 

デミタス「ま、いいヤ。まだ話は終わってなくてネ。今の話聞いてたら納得がいったんだヨ」

 

スプリンガー「話が見えないが…」

 

 

ずっと寝そべっていたスプリンガーが腰を上げてデミタスの元へやって来る。

デミタスは視線を動かさないままで告げた。

 

 

デミタス「微かなものだけど、人間の青年のイメージデータを見つけたんダ。これはきっと人間の姿を取り戻す鍵になるはずだヨ」

 

スプリンガー「な、何だと!?本当かッ!?」

 

デミタス「ぼ、僕の力じゃ無理だけド……」

 

スプリンガー「いいや、今はその事実だけで十分だ!!まだ希望はある!!これはすぐにも本人に伝えてやらねえとな!!」

 

デミタス「もうコイツ何なのか分からないヤ…」

 

 

アジト内を飛び回り駆け回るスプリンガーを尻目に、デミタスは修理のラストスパートに取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

メタルダー───いや、“剣流星”は、何もない真っ白な空間に立っていた。

普通の人間なら目が痛くなるような白。流星は周囲を見渡してみるが、やはり何もない。

 

 

流星「ここは…どこだ…?」

 

 

一歩、踏み出してみる。何も起こらないのを確認すると二歩、三歩、と足を進める。

進んでいるような、進んでいないような妙な感覚に包まれた。

 

 

流星「どういうことだ、これは…一体何が………ッ!?」

 

 

ふと、何かの気配を察知して振り返る。

少し離れた位置に立っていたのは───ヨロイ軍団の凱聖クールギンだった。

 

 

流星「クールギン!!いや、ネロスか…!?」

 

クールギン「………」

 

 

クールギンは何も言わず、答えず、その姿を消した。

今自分の身に何が起きているのか理解出来ない流星は、臨戦態勢の構えを意地したまま周囲を警戒する。

 

 

流星「……!!」

 

 

今度はバルスキーが現れ、流星と対峙する。だがそれもすぐに消えた。

ゲルドリング、ドランガー、ビックウェイン、タグ兄弟、クロスランダー……これまで戦ってきた強敵たちの幻影が、現れてはまた消える。

 

 

流星「………」

 

 

バーロック、ベンK、ウィズダム、ヘドグロスジュニア……戦いの中で心を通わせた者たちの幻影が明滅する。

 

 

流星「トップガンダー…!!」

 

 

最後に現れた、共にネロスと戦った独眼竜の名を叫ぶ。思わず伸ばした手はトップガンダーの幻影をすり抜けた。

空を掴んだ手を見つめる流星。今度は暖かな光を感じて、振り返る。

 

 

流星「信吾さん…八荒!! ……舞さん!! ………お父さん」

 

 

皆、微笑を湛えて流星を見つめていた。やがてそれも消えると、遂に何も起こらなくなった。

途端に寂しさを覚えた流星は、それらを振り切るように走り出す。

超人機メタルダーとして生まれ落ちたあの日から、剣流星を失った最後の日までの長い戦いの日々が駆け巡った。

 

 

 

『僕は生まれてきた良かった』

 

『君たちに会えて嬉しかった』

 

『僕はいつか必ず蘇る…!!』

 

 

 

真っ白な世界、目の前に光が広がった。

流星が光の中へ飛び込んだ瞬間───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メタルダー「………ッ!!」

 

スプリンガー「流星!!目を覚ましたか!!」

 

 

目の前に、相棒・スプリンガーの顔。逆光を浴びていつもより黒い顔。

上半身を持ち上げて、自身を確認する。赤い左に青い右。剣流星ではなく超人機メタルダーの姿だった。

 

 

メタルダー「僕は…そういえば…僕を操っていた敵を倒して、それから…」

 

スプリンガー「あの後、蓄積されたダメージが大きすぎて倒れたんだ!!大丈夫か、流星!?どこも何ともないか!?」

 

デミタス「ちょっと、僕たちの腕を信用してないネ!?」

 

メタルダー「………」

 

デミタス「にとりも何か言ってやってヨ!」

 

にとり「あー、うん……まあ、無事起動して何より」

 

 

メタルダーは周囲を見渡す。

スプリンガーにデミタス、にとりの姿を視認する。

 

 

メタルダー「僕は…剣、流星だ…」

 

デミタス「知ってるヨ。今更自己紹介?」

 

メタルダー「あの大蛇と戦っていた時は無我夢中だったが……不思議だ。僕は、剣流星だ…」

 

にとり「…もしかして修理失敗しちゃった?触っちゃいけない回線とか……」

 

スプリンガー「いや、驚いてるだけだ。自分を取り戻したんだからな…」

 

 

それから数十分、ようやく落ち着いたメタルダーは改めてデミタスたちに頭を下げた。

剣流星のイメージが残っていることを伝えた際には、落ち着いてはいるがどこか嬉しそうな口調になっていた。

アジトで束の間の休息を過ごす彼らの元へ何も知らないジガキュール兄弟が現れる。

 

 

メタルダー「…!! ネロスの残党…!?」

 

2号「いいや待て待て!!敵ではない!!」

 

3号「我々はネロス帝国を抜けたんだ!!」

 

1号「メタルダー、直に会うのは始めてだな……ネロス帝国は完全には滅んでいない」

 

メタルダー「それは一体どういう意味だ…!?」

 

 

1号の言葉にメタルダーは喫驚の声と共に返す。

 

 

1号「ネロス帝国の生き残りがいたのだ。今もこの幻想郷の何処かに潜んでいる」

 

メタルダー「幻想郷…?」

 

スプリンガー「俺たちが今いるこの世界のことだ。元の世界に帰れるのかは知らないが…まあ、飽きることはないだろうよ」

 

メタルダー「いつの間にか別世界にまで…折角自分を取り戻したのに、皆にはもう会えないのか…?」

 

 

俯いてしまったメタルダーの姿を見て、デミタスがにとりの肩に飛び乗った。

 

 

デミタス「何だかセンチな奴だナァ」

 

にとり「こういうのは嫌いじゃないけど」

 

スプリンガー「流星のいいとこの一つだ」

 

にとり「ま、帰る方法なら博麗の巫女辺りに話を聞けばいいと思うよ」

 

 

にとりの言葉にスプリンガーが嬉しそうな一鳴きを返すと、アジトの滑り出し窓を開く。

差し込んだ朝日がスプリンガーの目を刺激した。

 

 

スプリンガー「もう朝だぜ。長かったなぁ」

 

デミタス「お前は何もしてないだロ!!」

 

メタルダー「デミタス、にとりさん、お世話になった。ありがとう…僕は博麗神社へ行ってみる。スプリンガー、行こう」

 

デミタス「せわしないネ」

 

にとり「場所、分かるの?案内しようか?」

 

スプリンガー「いいや、俺が知ってる。大丈夫だ」

 

にとり「そっか。んじゃ、もしまた傷付いたらいつでもおいでよ」

 

デミタス「え、僕は元の世界に帰れないノ!?」

 

にとり「しばらくここにいるんだろ?それくらいいいじゃん?」

 

デミタス「ウウウ…バイクルたちに会いたイ…大体、来たくてこんな世界に来たわけじゃないし、そもそも……」

 

 

デミタスの泣き言を聞いていたせいでメタルダーの出発が遅れたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

???「これが幻想郷か……」

 

 

女性的な上半身に、ドレスのように広がったアリのような外殻を纏う下半身。

鎖を目隠しのように巻き付けた顔からは禍々しい口だけが覗いている。

手にした長槍を地面に打ち付けると、口金から下がったいくつもの輪がしゃらん、と鳴った。

 

 

???「美しいな…実に美しい…」

 

 

女王アリのような怪人の言葉に、後ろに控えた大顎を持ったアリの怪人が無言で頷く。

 

 

???「何としても手に入れるぞ、この美しくも残酷な世界を…そのためには…」

 

 

女王アリ怪人の姿が人間態に変わる。

長槍の輪が再びしゃらん、と鳴った。

 

 

 




とりあえず「剣流星」は帰ってきましたよ!
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