破壊者と幻想の道標   作:鉄線攻種

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鎧武のTV本編は衝撃の展開が続いていますが、今作はまったり進みます。




第三話 ベルトを開発した男

 

 

ユグドラシル・タワー内部。

 

ディケイド=門矢士と、彼の協力で勢いを巻き返したビートライダーズの活躍…そして謎の男シシガケの乱入によって、ヘルヘイムの支配者・オーバーロード勢は大打撃を受けていた。

残ったオーバーロードたちは石造りの円卓を囲む。長い沈黙の末、口火を切ったのはオーバーロードの王・ロシュオだった。

 

 

ロシュオ「デュデュオンシュ、シンムグルン、デョムシャン、デェムシュ…犠牲は、多い……」

 

レデュエ「…あの二人の男、一体どこから…」

 

シャムビシェ「奴らの戦力を見るに、これからはうかつな行動はとれない…」

 

 

ビートライダーズの思わぬ反撃に頭を抱えるオーバーロードたち。

そこへ突然クラック…否、ホールが開き、赤い短髪に青い瞳の麗人、火室怜雄が現れた。

 

 

怜雄「ハァイ、オーバーロードの皆さん」

 

レデュエ「…お前、何者だ?どうやってここに…」

 

怜雄「ん~、『通りすがりの仮面ライダー』…って感じ?」

 

ロシュオ「よそものが何の用だ?」

 

怜雄「手を貸してあげようかなー、と思って」

 

 

彼女の言葉にオーバーロードたちが再び沈黙する。

当の怜雄はというと、突然押し黙ってしまったオーバーロードたちに困惑───するでもなく、返事を待つように暢気に鼻歌なぞを奏でていた。

 

 

シャムビシェ「我々が猿どもの力を借りるとでも?」

 

 

口を開いたのは青いオーバーロードのシャムビシェだ。

彼の言葉にレデュエは同意を示すように頷き、ロシュオは沈黙を続ける。

そんな彼らの様子に怜雄は満足そうににっ、と口角を上げると、背負っていた長槍を構える。

 

 

怜雄「まあまあ、まずは私の力を見なさいな───変身!」

 

《KAMEN RIDE…》

《DELIGHT》

 

 

怜雄は構えた長槍───変身槍「ディライドライバー」にカードを装填し、振り上げる。

するといくつもの残像が現れ彼女に重なり、ディケイドに似た燃え盛る炎のように赤い戦士「仮面ライダーディライト」に変身した。

 

 

シャムビシェ「…貴様、その姿……!!」

 

ディライト「あら、その口ぶりだと知っているのね?ディケイドを」

 

ロシュオ「………」

 

シャムビシェ「貴様も奴らの仲間か!」

 

ロシュオ「…やめぬか、シャムビシェ」

 

シャムビシェ「お、王!しかし…」

 

 

いきり立ち今にもディライトに飛びかかりそうな勢いのシャムビシェを、ロシュオが制した。

 

 

ロシュオ「………手を貸す、と言ったな。貴様は役に立つのか?」

 

シャムビシェ「!? 王よ、何を…!」

 

レデュエ「落ち着きなよ、シャムビシェ。王よ、この女は奴らと同じ姿…我々の敵という可能性が高いのでは?」

 

 

今度はレデュエがシャムビシェを冷静に抑え込んだ。

 

 

ロシュオ「…レデュエの言う通り、内側から滅ぼされるやも知れぬ。だが…そうなれば、我々フェムシンムの民がそれまでだったということだ」

 

シャムビシェ「我らフェムシンムの民がそんな理由で滅んでたまるものか!……気でも狂ったか、王よ!」

 

ロシュオ「シャムビシェよ…我々は滅びの道を辿っている。この現状を見れば否定などできまい」

 

シャムビシェ「………何が言いたいのです?」

 

 

肩を怒らせロシュオに詰め寄っていたシャムビシェもわずかに落ち着きを取り戻し、だが未だわずかに疑心を覗かせる口調で尋ねる。

 

 

ロシュオ「覚えているか?我々がヘルヘイムの力を御せなくなりやむを得ずこの世界への侵攻を決意した日のことを。人類が蹂躙されるだけの猿どもだったのなら、何も考えず滅ぼせば良い。たとえ脆弱なものでも抵抗を続ける心強き者たちならば、我々も全力でそれに応え、どちらかが滅びるまで戦う…そう決めたはずだ」

 

シャムビシェ「……人類は"戦極ドライバー”の力で抵抗を続けた…我々はそれに『自らの破滅』を賭けて応える……」

 

レデュエ「あいつら、この街の外の世界はほとんど壊滅してること知らないんだよね…フフフフフ……」

 

 

レデュエの不気味な笑い声を最後に誰もが口を閉ざし、何度目かの沈黙が訪れる。

 

 

ディライト「…あ、喧嘩終わった?んで、結局どーするの?」

 

 

静寂を破ったのは適当な廃材に腰掛け、退屈そうに足をブラブラさせていたディライトだ。

 

 

ロシュオ「シャムビシェ」

 

シャムビシェ「…分かりました、王よ。私はこの女の協力を受け入れることに賛成します」

 

 

シャムビシェの言葉にロシュオは表情一つ変えずにただ一度、頷いた。

 

 

ディライト「決まりね」

 

レデュエ「…それで、女。お前は何をするつもりでいるんだ?」

 

ディライト「ん?んー……私自身は何をするつもりもないわ」

 

シャムビシェ「おい、ふざけているのか?」

 

ディライト「話は最後まで聞けーって感じ。やるのは……この子たちよ」

 

 

そう言ってディライトはディライドライバーに二枚のカードを装填する。

 

 

《KAIJIN RIDE…》

《IVY IMAGINE》

《ORCHID UNDEAD》

 

 

ディライドライバーを振りかざすと、先端のブレードから残像が放出され、二体の怪人へと変わった。

 

 

レデュエ「む…?」

 

シャムビシェ「こいつらは?」

 

ディライト「えーっと…あ、アイビーイマジン……? に!オーキッドアンデッド、ね。どっちも植物の怪人って感じね」

 

ロシュオ「……よかろう。やってみよ」

 

ディライト「はいはいありがとー。んじゃ、出発!」

 

 

鼻歌混じりにホールから退出するディライト。召喚された二体の怪人もその後に続いた。

 

 

シャムビシェ「…ラアデュンシェ!」

 

ラアデュンシェ「ここに」

 

 

シャムビシェが指をパチン、と鳴らすと、血のように赤い体に、山羊の如く捻れた二本の角を持ったオーバーロードがクラックから姿を現す。

彼の名はラアデュンシェ。シャムビシェ配下のオーバーロードである。

 

 

ロシュオ「ラアデュンシェよ、空いたデェムシュの席には貴様が座るがよい」

 

 

ラアデュンシェは無言で頷くと、これまでデェムシュが座っていた席に着く。

 

 

レデュエ「あの猿どもを滅ぼすための作戦会議というわけだ」

 

ラアデュンシェ「…滅ぼす?支配するのではなく?」

 

レデュエ「お前さっきの話聞いていなかったのか?」

 

 

そう言うとレデュエはくつくつ、と気味の悪い笑い声を上げる。

 

 

ラアデュンシェ「…王よ。知恵の実の力を使えばこのようなちっぽけな世界、簡単に支配できるのでは…?私は廃墟を支配するつもりなどありません」

 

 

ラアデュンシェの問いにうーむ、と唸り顎に手を当てるロシュオ。

 

 

ロシュオ「…我々は『王妃』の遺した知恵の実の力で"ヘルヘイムの森”を創り上げた。だが、この森は我々の手には負えぬ程の進化を遂げてしまった。もはや知恵の実に頼ることはできぬ」

 

ラアデュンシェ「何故!」

 

 

突如身を乗り出して憤激するラアデュンシェ。

ラアデュンシェの豹変に動じることなく、ロシュオは彼をじっと見据える。

 

 

ラアデュンシェ「神の叡智に等しい知恵の実!それを手に入れた王に、不可能なことなど…そのような馬鹿げた考えなど…!!」

 

シャムビシェ「ラアデュンシェ!」

 

 

身を乗り出して憤激するラアデュンシェをシャムビシェが宥める。

 

 

ロシュオ「不可能なのだ。恐らくこれはひとつの責務というもの……知恵の実はもう使わぬ。ラアデュンシェよ………貴様、私の持つ知恵の実を狙っていたな?」

 

ラアデュンシェ「なっ…!」

 

 

ラアデュンシェが絶句する。

向かい側には、ほぼ自爆に等しい醜態を晒したラアデュンシェの姿を相変わらずの気味悪い笑い声で嘲るレデュエの姿があった。

ラアデュンシェはちら、とシャムビシェの方を伺うが、無言で首を横に振る彼を見るとそれ以上は何も言わず席に着いた。

それとほぼ同時に席を立ったシャムビシェをレデュエが呼び止める。

 

 

レデュエ「どこに行くつもりだ?」

 

シャムビシェ「…あの女の力をこの目で見届けようと。ラアデュンシェ、大人しくしていろよ」

 

 

そう言い残し部屋を退出するシャムビシェ。

彼の言葉を受け取ったラアデュンシェは、誰にも聞こえない程小さく、忌々しげに喉を鳴らした。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

オーバーロードに占拠されたユグドラシル・タワーの全貌が視界に収まりきれない程近い場所に、その拠点はあった。

この拠点は「0地点」と呼ばれ、ビートライダーズが使う『戦極ドライバー』を開発した科学者・戦極凌馬がここで研究を続けているという。

コウタたち以外の残りのビートライダーズが0地点に集まっているらしく、士もここへ案内された、というわけである。

 

周囲を警戒しながら0地点へ足を踏み入れた士を出迎えたのは二人の男性だった。

一人は二十代後半ほどのすらっとした男性で、もう一人はコウタたちと同じくらいの活発そうな青年だ。

さすがにこの場所は敵の拠点に近いためか、一般市民らしい姿は一人も見当たらなかった。

 

 

青年「おー、無事だったか!で、誰だ?こいつ」

 

士「…初対面の相手にいきなり『こいつ』とは、ずいぶんなご挨拶だな」

 

コウタ「やめろって、士。ああ、悪い、ザック。門矢士っていうんだ。俺たちと同じライダーだよ」

 

 

コウタの紹介にザックというらしい青年は表情を輝かせた。

 

 

ザック「本当か!?このタイミングで仲間が増えるなんて最高だ!ああ、お前らオーバーロード何体か倒したんだろ?逆転の兆しが見えたって話題で持ちきりだぜ!これはもしかするともしかするかもな!さあ、そんなとこ突っ立ってないで座れよ!」

 

士「…鬱陶しい!」

 

 

まくし立てるように早口で詰め寄るザックに圧倒される士。

そんな彼らの様子に場の雰囲気も和やかになる。

 

 

士「………で、そっちのお兄さんは?」

 

ミツザネ「兄さんです」

 

士「兄さんか」

 

ミツザネ「はい。兄さんです」

 

タカトラ「ミツザネの兄の冴羽タカトラだ。ビートライダーズの隊長を務めている。よろしく」

 

士「…ああ、だいたいわかった」

 

 

タカトラと握手を交わした士はザックに差し出された椅子に腰かけると、話を切り出した。

 

 

士「お前らはこれからどうするつもりだ?全員でユグドラシル・タワーに攻め込むのか?」

 

リョウジ「お、なんかそれゲームの主人公みたいでかっこいいな!」

 

士「…町人Aは黙ってろ」

 

リョウジ「んなっ…!」

 

コウタ「おい士…って、このやりとりも何回目だよ……」

 

 

士の態度に心底呆れた様子のコウタはそれ以上は続けようとはせず、士に代わって話を進める。

 

 

 

コウタ「オーバーロードを倒せたのも、士が協力してくれたおかげだ。それと、もう一人…カイトたちが会ったっていう妙な男」

 

カイト「シシガケと名乗っていたな。奴は俺たちが過去に何度も世話になったデェムシュを圧倒していた」

 

タカトラ「あのデェムシュを…?」

 

ザック「それで、その…シシガケ?とかいう奴はどこにいるんだ?」

 

ヒデヤス「クラックみたいなものを開いてどっかに行っちゃったよ」

 

ザック「クラックだと?じゃあそいつもオーバーロードの仲間なのか…?」

 

リョウジ「人間の姿をしたオーバーロードがいるかよ」

 

カイト「この状況下だ、同族殺しもしないだろう。しかもあいつは戦極ドライバーも、見たことのないロックシードも持っていた」

 

 

 

 

 

???「───その話、もっと詳しく聞かせてもらえないか?」

 

 

 

 

 

突如会話に割り込んできたひとつの声。

その場にいた者たちが声のした方を見ると…二階の、粗雑に並んだ怪しい機材の中から顔を覗かせる男の姿があった。

髪に白いメッシュが入った白衣の男は、機材をこれまた粗雑に蹴飛ばしながら一階へ降りてくる。

 

 

士「あんたは?」

 

凌馬「私は戦極凌馬。気軽にプロフェッサー凌馬、と呼んでくれたまえ」

 

ミツザネ「気軽…?」

 

士「ああ、あんたが戦極ドライバーを作ったっていう…」

 

凌馬「話は聞かせてもらったよ。君とも色々話したいことはあるが…まずは、そのシシガケとかいう男の事を聞かせてもらおうかな」

 

 

そう言うと、どこか不機嫌そうな凌馬はぼろぼろに破れたソファーに座り込んだ。

まるで「早く話せ」とでも訴えかけるような眼差しでカイトをじっと見つめる。

 

 

カイト「…残念だが、俺にもよく分からん」

 

ヒデヤス「だよなぁ…突然現れて突然消えたんだもんな…」

 

リョウジ「どこで戦極ドライバーを手に入れたんだー、だなんて聞く余裕もなかったしな」

 

凌馬「…なんだ。つっかえないなぁ、どいつもこいつも」

 

コウタ「おい、そんな言い方ないだろ!」

 

 

心底幻滅したように、深いため息と共にそう吐き出す凌馬。そんな彼の様子に黙っていられるコウタではなかった。

 

 

凌馬「使えない奴に使えないと言って何が悪い?」

 

コウタ「何であんたはそういう言い方しかできねえんだ!」

 

凌馬「それが私だからさ。少なくとも、己の理想も欲望も捨て置いて戦う君たちよりかは、私のほうが人間的にも正しいと思うよ」

 

 

そう言って凌馬はからから、と癪に障る笑い声を上げる。

コウタは掴んでいた凌馬の胸ぐらを乱暴に離すと、やるせなさそうな苦い表情で席に着き、俯く。

 

 

士「…これはいつもの光景なのか?」

 

ミツザネ「…否定できないのが悲しいです」

 

 

士、コウタ、ミツザネのため息が重なる。

先程とは一転、重苦しい空気に包まれる中、凌馬が再び口を開いた。

 

 

凌馬「まーいいか、どうせどっかに落としたものを拾ったんだろう。それじゃ、次の話題といこうか、門矢士くん?」

 

士「……自己紹介が省けて助かる」

 

凌馬「君は一体どこから来た?外の世界は既に……」

 

タカトラ「…ん?」

 

凌馬「ああいや、何でもない。士くん、君は沢芽市の外から来たんだろう」

 

士「知るか。俺は『外』じゃなくて『別』の世界から来たんだからな。そういう意味じゃ、外の世界だな」

 

凌馬「……はぐらかしているのか?」

 

ミツザネ「いえ、本当みたいですよ」

 

凌馬「信じるに値する証拠があるのか?」

 

士「俺がここにいることが最大の証明だ」

 

コウタ「………それはもういいって」

 

 

ようやく落ち着きを取り戻したらしいコウタが小さい声でツッコミを入れる。

 

 

凌馬「ふーん…まあ、異世界から来たのはいいとして…一体何が目的で?」

 

士「俺はいろんな世界を旅してきた。そこで俺は毎回何かしらの『役目』を与えられる。今回はどうやら、この世界を救うことらしい」

 

ザック「つまりオーバーロードを滅ぼす…ってことか?」

 

士「そうらしい。だが…何か違う気もする」

 

ヒデヤス「どっちだよ」

 

士「知らん」

 

 

何をすべきかすぐに分かったら苦労しない、という言葉は口にせず飲み込んだ。

 

 

凌馬「話が進まないな。もういい、私は研究に戻るよ」

 

リョウジ「おう、戻れ戻れ。しばらく出てくんな!」

 

 

凌馬はリョウジの言葉を受けてやれやれ、といった具合に肩をすくめると、それ以上は何も言わず二階の研究スペースへと戻っていった。

その場が再び重い雰囲気に包まれる。誰もが口を閉ざす中、タカトラは士に声をかけた。

 

 

タカトラ「…士、といったか。少しいいか?」

 

士「何だ?」

 

タカトラ「話がしたい。ついてきてくれ」

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

士がタカトラに連れてこられたのは、0地点の真下に広がる地下通路だった。

元々はユグドラシル・タワーへ繋がる隠し通路だったが、ヘルヘイムの植物に飲み込まれ始めたため、近いうちに閉鎖されるという。

そんな場所で、タカトラはしばらく閉ざしていた口をようやく開いた。

 

 

タカトラ「士、といったか。すまない…」

 

士「…こんなところへ連れてきて何をするのかと思ったら…どうした、いきなり」

 

 

突然自分に謝ってきたタカトラに、士は片方の眉を僅かに傾ける。

 

 

タカトラ「凌馬のことだ。彼は私の古くからの友人でな…昔は『人のためになる研究で人類の未来を明るくする』という信念を持っていたのだが…オーバーロードの侵略が始まったあの日から、まるで人が変わってしまったかのように己の欲に忠実な男になってしまった」

 

士「…人のため、か。あの男がねぇ」

 

タカトラ「私は何とかして、凌馬に昔の明るい彼に戻って欲しいと願っている」

 

士「友達想いなこった」

 

 

地下通路に蔓延るヘルヘイムの植物をカメラに収めながら、士は興味と無関心が半々の返事をする。

 

 

タカトラ「だから、お前にも───」

 

 

彼を説得するため力を貸してほしい。

そのタカトラの台詞を遮ったのは、聞き覚えのない女性の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怜雄「───あら、ここからならバレないと思ったのに。そうそう上手くはいかない、か」

 

 

 

二体の怪人を引き連れた火室怜雄が、士とタカトラの前に姿を現した。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

一方、沢芽市から姿を消したシシガケは、どことも知れぬ黒い霧が立ちこめる空間に聳える城のバルコニーにいた。

傍らにはコテツが相も変わらずの無表情で控えている。

そんなシシガケの元に、微かに茶色がかった黒髪に軍服姿の少女が姿を現した。

 

 

シシガケ「エル、報告しろ」

 

 

シシガケの言葉にエル、というらしい軍服姿の少女は凛々しい声で返答する。

 

 

エル「はい。こちらの時間で数刻前、火室怜雄が『鎧武の世界』の『アーツ』を回収するため、オーバーロードに接触しました。まずは彼らの信頼を得るためにビートライダーズ及びディケイドに攻撃を仕掛ける模様です」

 

シシガケ「ずいぶんと悠長だな。まあ、急ぐようなことでもないか」

 

エル「しばらくは火室怜雄の報告待ちとなりますが……いかがなさいますか?」

 

シシガケ「まだ報告することがあるんじゃねえか?」

 

エル「あ………」

 

 

シシガケの言葉にエルははっ、となって手にした書類をぺらぺらとめくっていく。

 

 

エル「ええと…ディエンドの件ですね。どうやらあっさりと断られてしまったようです」

 

シシガケ「だろうな」

 

エル「だろうな、とは…?」

 

シシガケ「最初から期待なんてしちゃいなかったさ。合意してくれたらラッキー、ってな」

 

エル「は、はぁ…」

 

シシガケ「ま、その件はもういい。怜雄の奴、余計なこと喋ってねえだろうな?」

 

エル「恐らくは」

 

 

場が沈黙に包まれる。

 

 

シシガケ「………」

 

コテツ「………」

 

エル「………あの」

 

シシガケ「駄目だ」

 

エル「まだ何も……」

 

シシガケ「目が語ってる」

 

エル「あう………」

 

 

エルが苦笑を顔に貼り付け、目を背ける。

 

 

シシガケ「お前も結構好戦的だからな、少し血が騒いでいるんだろうが……まだ駄目だ」

 

エル「…少しくらいよいではありませんか」

 

シシガケ「駄目だ」

 

 

エルがようやく理解したかのように黙り込むのを確認すると、シシガケはバルコニーに設けられたベンチに腰かける。

 

 

シシガケ「…急ぐことはねえ。のんびり進めていこうや……」

 

 

くくっ、と笑い声を漏らすシシガケと、ふう、とため息をつくエル。

その僅か数秒後に聞こえてきたシシガケのいびきに、エルは絶句するのであった。

 

 






今回は短いですね。いつも短いですが。



しかしヨモツヘグリアームズが一発ネタで終わってしまうとは…
プロフェッサーは某草加の如く首を折られなくてよかった(?)
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