黒い霧が立ち籠める異空間の黒い城。
バルコニーで目的もなく、ただ何もない黒い空を眺めていたシシガケの元にエルが姿を現した。
エル「失礼します」
シシガケ「何の用だ、エル?」
エル「報告することがいくつか」
シシガケ「ああ…なんとなく想像がつくがな」
エルはこほん、とひとつ咳払いをすると、書類を手に取る。
エル「一つ目の報告です。火室怜雄はオーバーロードとの接触に失敗。協力関係を結ぶことを諦めたようです」
シシガケ「…やはりな」
エル「『今後は自分の力で"アーツ”を回収する、あんな脳果汁の奴らと組むなんて二度とゴメンだ』と、大変ご立腹のようでした」
シシガケ「珍しいな、あいつがそこまで怒るなんて」
エル「オーバーロード側が彼女の禁忌に触れたのだと思われます。………では、二つ目の報告。どうやら"この世界”に侵入者が現れた模様です」
彼女の報告にシシガケがずる、と肩を落とした。
シシガケ「……それは一番最初に報告すべきことじゃないのか?」
エル「書類の二番目でしたので」
シシガケ「……次からは重要な報告から順に話すように」
エル「? は、はい……それでその侵入者ですが、いかがいたしましょうか?」
シシガケ「ふむ……俺は一つ目の報告に関して、少し用事がある。コテツも連れていく。怜雄もいない。すると困った、対処できるのは一人しかいない」
エル「………!」
シシガケの言葉を受け少し考えたあと、エルははっとなる。
シシガケ「そういうことだ。お前が排除してこい」
エル「は、はいっ!承知しました!!」
エルはぱあっ、と表情を輝かせ、城を飛び出していった。
コテツ「………よろしいのですか?この城が留守になってしまいますが」
シシガケ「いいさ。どうせただ寝るだけの場所だ……しかし、あいつも血の気が多いこった」
そうため息をつくと、シシガケは静かに立ち上がる。
コテツもそれ以上は何も言わず、ただシシガケの背中についていくだけであった。
~~~
ラアデュンシェ「アファビリェ…!!アファビリェ…!!」
火室怜雄の怒りを買い腹に一撃を受けたラアデュンシェは、ヘルへイムの森で怨嗟の声を上げながら果実を食らい傷を癒していた。
怜雄への憎しみと、一時の気の迷いで猿相手に「悪かった」などと頭を下げてしまった自分への怒り。
とどまることを知らないラアデュンシェの憤懣は、遠く離れた場所にいるインベスさえも震え上がらせた。
ラアデュンシェ「くそっ、くそっ…あの女……!自分から協力したいと頼み込んできておいて何だあの態度は…あの無礼は…!この私に傷をっ…泥をっ…汚らわしい血をっ!!」
傷が完治したラアデュンシェは怒りに任せ手にした大鎌で森の植物を切り裂いていく。
ラアデュンシェ「殺す!この私の手で殺す…!」
???「ずいぶんと荒れてるな」
ラアデュンシェ「!? 誰だ!」
突然かけられた声に振り向くラアデュンシェ。
そこにいたのは………シシガケとコテツだった。
シシガケ「よう」
ラアデュンシェ「貴様は、あの時の…!いつからそこに…!?」
シシガケ「お前と少し話がしたくてな」
ラアデュンシェ「黙れ!デェムシュ様の仇が!!」
シシガケ「なんだ、お前らも仲間のために戦ったりなんてするのか?」
ラアデュンシェ「私はデェムシュ様だけは心から尊敬していたのだ!それを貴様が…!!」
シシガケ「こんなんじゃまともに話もできねえな…まずは黙らせるか。コテツ、下がってろ」
コテツ「………しかし」
シシガケ「いいから下がってろ。こいつは俺を殺したいほど憎いらしいからな」
コテツ「………はっ」
シシガケはコテツを下がらせると、戦極ドライバーを腰に装着する。
《エイジ!》
《ロック・オン!》
シシガケ「変身」
シシガケは仮面ライダーエイジへと変身した。
大鎌を振り回しながら突進してくるラアデュンシェを危なげなく回避すると、大剣で反撃する。
ラアデュンシェ「グッ、このぉっ!」
エイジ「おおっと」
振り回せど振り回せど当たらない大鎌。ラアデュンシェは跳躍し距離をとると、大鎌を一振りし衝撃波を放った。
だがそれも大剣の一振りで相殺され、ラアデュンシェは低い唸り声を上げる。
ラアデュンシェ「おのれ…!」
エイジ「軽く捻り潰すつもりだったが……実験相手にはちょうど良さそうだな」
ラアデュンシェ「何…?」
エイジは戦極ドライバーからロックシードを取り外し、スイッチを押すと再び装填する。
《ゼロノス!》
《ロック・オン!》
《ゼロノスアームズ!追憶 アップデート!》
ゼロノスアームズとなったエイジの手にゼロガッシャー・サーベルモードが握られた。
再び大鎌で斬りかかってきたラアデュンシェを軽くいなし、ゼロガッシャーで一撃、二撃を加える。
追撃の一突きをラアデュンシェは大鎌でガードするが、あまりの威力に後方へ吹っ飛ばされる。
エイジ「隙だらけだぜ」
《ゼロノスオーレ!》
ゼロガッシャーをボウガンモードに変形させ、必殺技《グランドストライク》を放つ。
V字型のエネルギーがラアデュンシェに襲いかかるが、間一髪でこれを回避する。
エイジ「チッ、外したか」
ラアデュンシェ「アファビリェ…!」
エイジ「次はこいつだ」
《リュウガ!》
《ロック・オン!》
《リュウガアームズ!鏡像 ダークサイド!》
リュウガアームズとなり、ドラグセイバーを手にラアデュンシェを迎え撃つ。
ラアデュンシェの懐に潜り込んで大鎌を回避すると、ドラグセイバーで胴を切り裂いた。
ラアデュンシェ「ガアッ…!」
エイジ「おいおい、動きが鈍くなってきてるぜ」
ラアデュンシェ「調子に、乗るな…!猿が!!」
ラアデュンシェが大鎌を投げ捨て、近くに生っていたヘルヘイムの果実を口にする。
雄叫びを上げたラアデュンシェの腕に鋭い鉤爪が生え、角も一回り大きくなった。
エイジ「ほう…」
ラアデュンシェ「貴様ッ…許さん!」
ラアデュンシェは一瞬でエイジとの間合いを詰めると、鉤爪で滅茶苦茶に切り裂く。
想像以上のパワーアップにさすがのエイジも一瞬怯んだ。
ラアデュンシェ「死ねッ、猿がッ!」
エイジ「…そうだ、それを待ち望んでたんだ」
ラアデュンシェ「!?」
あれだけめった斬りにしたはずのエイジが何事もなかったかのような姿でラアデュンシェの背後をとっていた。
リュウガアームズは解除され、通常のエイジに戻っている。
ラアデュンシェ「キ、サマ……!」
エイジ「もっと見せてみろ、お前の強さ」
《スーパー1!》
《ロック・オン!》
《スーパー1アームズ!赤・心・少・林・拳!》
スーパー1アームズを装着し、型を決めるエイジ。
銀の機械の腕───ファイブハンドが光を反射し輝いた。
ラアデュンシェ「ガアアッ!!」
エイジ「ハァッ!!」
ラアデュンシェの凄まじい猛攻を、スーパー1アームズとなり「梅花の型」を身に下ろしたエイジは華麗に受け流していく。
エイジ「ハッ!」
ラアデュンシェ「グガッ…」
猛攻の中に見えた一瞬の隙を突いて繰り出されたパンチがラアデュンシェを吹っ飛ばす。
エイジ「チェンジ…エレキハンド!」
ラアデュンシェ「グ、グゥ…!」
エイジ「発射ーッ!」
ラアデュンシェ「ガ、ア、アアァッ!!」
エレキハンドから放たれたエレキ光線がラアデュンシェに直撃した。
凄まじい電撃が体を走り悲鳴を上げる。
エイジ「チェンジ…冷熱ハンド!発射!」
ラアデュンシェ「グ、ア、こ、これは…ッ!」
続いて冷熱ハンドにチェンジし、超低温冷凍ガスでラアデュンシェの足元を凍らせ動きを封じる。
なんとか抜け出そうともがくラアデュンシェにエイジはゆっくりと歩み寄り───変身を解除した。
ラアデュンシェ「こ、このォッ…!」
シシガケ「頭を冷やせ。お前と話をしに来たんだよ、俺は」
ラアデュンシェ「な、何を…」
シシガケ「まあ聞けや。なあ、オーバーロードさんよ……」
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シシガケが黒い城でエルからの報告を受ける、その数十分前。
士はコウタとカイトのパトロールに同行し、その最中に遭遇したインベスたちと交戦していた。
《イチ!ジュウ!ヒャク!イチゴチャージ!》
鎧武「はあああぁぁ……セイハーーッ!!」
鎧武・イチゴアームズが放った《クナイバースト》がインベスたちを一掃する。
《カモン!バナナスカッシュ!》
バロン「喰らえ!!」
バロンの《スピアビクトリー》がインベスたちをまとめて貫き、爆散させる。
《ATTACK RIDE...》
《TACKLE》
ディケイドブレイド「はああぁぁっ!!」
ディケイドブレイドが《ボアタックル》を放つ………が、インベスたちはヒットする直前に跳躍し空振りに終わった。
ディケイドブレイド「…何なんだこのカードは!」
鎧武「カードのせいかよ」
ディケイドブレイド「ああ、もういい!」
《FINAL ATTACK RIDE...》
《B B B BLADE》
ディケイドブレイド「たあああぁぁっ!!」
ディケイドブレイドが《ライトニングブラスト》を放つ。今度はちゃんとインベスたちにヒットし、残っていた数体をまとめて消し飛ばした。
周囲にインベスがいないことを確認すると、三人は変身を解除する。
士「……このカードはブレイド本人が使った時も当たらなかったに違いない」
カイト「何を言ってるんだお前は」
士「気にするな」
《ATTACKRIDE TACKLE》のカードをライドブッカーに戻すと、士はカメラを構え沢芽市の風景を撮影する。
最初に訪れた時よりもヘルヘイムの侵略が進んでいるように思えた。
コウタ「この辺はもう異常なし、みたいだな」
士「そろそろ0地点に戻るとするか」
コウタ「そうだな。おーい、カイト!そろそろ帰ろ……どうしたんだ、カイト?」
カイト「………あれを見ろ」
コウタ「カイト、どうした?」
インベスたちとの戦いが終わってからずっとある一点をじっと見つめていたカイト。
その視線の先にあったのは───人知れず、開いたままになっていたホールだった。
コウタ「あれはたしか、シシガケとかいう男が使ってた…」
士「あれがホール、ってやつか」
カイト「あの先……奴らの本拠地に繋がっているんじゃないか?」
コウタ「ちょっと待てカイト、お前まさか…」
カイト「…俺はあの男に勝つ。行くのは俺だけでいい」
コウタ「危険だ!もういいだろ、あいつらのことは!」
士「そうだな…この世界にいる以上は、もう関わり合いはなさそうだ。俺はこの先も因縁が続きそうだがな」
コウタ「士、それどういう意味だよ」
士の言葉にコウタは戸惑う。
だがカイトはその言葉の意味を理解したようで、士に不敵な笑みを向ける。
カイト「あいつらは異世界の住人。同じく異世界を旅するお前についていけば、いつでも戦うチャンスはあるってことか」
コウタ「なっ…カイト、お前自分が何言ってるのか分かってんのか!?この街を…この世界を見捨てるのかよ!?」
カイト「強い者と戦えればそれでいい」
コウタ「……だあぁっもう!!とにかく駄目だ!帰るぞカイト!」
カイト「帰るなら一人で帰れ!士、お前もついてこい」
カイトはコウタに掴まれた腕を振りほどくと、ホールの中へと駆け込んでいく。
やれやれ、と言わんばかりに肩をすくめ、カイトに続きホールへ飛び込んでいく士の姿を、コウタはただ呆然と見届けることしかできなかった。
コウタ「嘘だろ、カイト…士……」
コウタの小さな呟きと共に膝が崩れ落ちる音、そしてホールが閉じる音が響くと、周囲は無音になった。
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一方、ホールの中へと踏み込んだ士とカイトは、漆黒の空、立ち籠める黒い霧、そしてそれらとは対照的な輝くほどに白い砂漠の上に立っていた。
周囲には崩れ落ちた塔らしきものや廃屋───つまりは廃墟が広がっている。
そんな世界に踏み入った二人がシシガケの捜索を開始して数十分が経過した頃、カメラで廃屋を撮影していた士がふと口を開いた。
士「……本当にこれでよかったのか?」
士の問いかけにカイトはさも興味なさそうに答える。
カイト「今更なんだ。別に問題などない」
士「…なんだ、その様子だと全部気付いてるみたいだな」
カイト「こんな単純なことに気付かないあいつが悪い。少しからかっただけだ」
カイトがふっ、と鼻を鳴らして笑う。
そんな彼に士は呆れ顔を返すと、撮影を再開する。
カイト「ま、上手くいけばの話だが……な!」
そう言うとカイトはどこからともなく取り出したトランプを廃屋の角に向けて投げる。
トランプは廃屋の柱に突き刺さり、小気味良い音を立てた。
カイト「そこにいるのは誰だ?」
カイトの呼びかけに数秒の間の後、廃屋の陰から軍服姿の少女が姿を現した。
気配は感じていた二人だったが、その正体が十代後半ほどの少女だとは思わなかったらしく、怪訝な表情になる。
エル「バレていましたか」
士「…さっきから俺たちの様子を伺ってたみたいだが…」
エル「お初にお目にかかります。私はエルネード・バラドリエーフ。どうぞお気軽にエル、とお呼びください」
エルは軍帽を脱いでぺこりと一礼し、またそれをかぶる。
エル「此度は図々しくも『霧の砂漠』に踏み込んだ愚かな貴方たちを排除すべく───」
カイト「ガキがこんなところに何の用だ?」
エル「んなっ……」
自分の言葉を遮った上にガキ扱いするカイトに、エルはむっとした表情になる。
エル「ガキ…ですか。そうですか、貴方にはそう見えますか。私からすれば───」
ひくひく、わなわな、と身を震わせ、エルは軍服の前ボタンを外していく。
はだけた軍服から覗かせた、その腰に巻かれていたベルトは───
士「何!?それは、まさか………」
カイト「戦極ドライバーとは違うベルトだと…?」
エル「貴方たちの方がずっとクソガキです!!」
エルの腰に巻かれていたのは「イクサベルト」だった。
右手に装着したイクサナックルを左手のひらに叩きつける。
《レ・ディ・ー》
エル「変身!」
《フィ・ス・ト・オ・ン》
イクサナックルをイクサベルトに装填すると電子音声と共に鎧が出現、それがエルに重なり───「仮面ライダーイクサ」への変身が完了した。
イクサ「その命、神に返しなさい!!」
彼女の怒号で周囲の砂が渦巻き、舞い上がった。
さらに短くなりましたね。おのれディケイド(責任転嫁)
スーパー1アームズのシーン、本当はスーパーライダー月面キックまで出そうと思ったんですが、あの流れだと完全に倒してしまうので諦めました。
スーパー1大好きです。スカイライダーはもっと好きです。
エルは当初「別世界のレオ(仮面ライダーサイガ)、ただし性別変更」って設定でキャラを作り上げました。
でもオルフェノクどころか怪人ですらないエルをサイガに変身させるのはちょっと無理があるかと思いイクサに変更。
エルが何歳なのかはまだ秘密です。まあそんな大した謎ではありませんが。