異世界マインクラフト 作:マグマダイブ全ロス
うっそうとした森の中に建つ古びた家。
ここに見習い魔女のウェンディは一人で住んでいた。
彼女が独りになったのはごく最近。
それまでは西大陸でも指折りの偉大な魔女と言われた祖母と一緒に暮らしていた。
しかし、魔法一つでドラゴンをも殺すといわれた祖母も寄る年波には勝てず、流行り風邪をこじらせてあっけなく帰らぬ人となってしまう。
祖母の跡を継いで立派な魔女となるべく奮起するウェンディだったが、そもそも偉大な魔女となるためにはどうすればいいか想像がつかない。
悩みに悩んだ末、祖母が遺した魔導書に導きを探すことにした。
「えっと、『独立した魔女の第一歩は"使い魔"を得ること』……? 『召喚魔法で自分を助ける使い魔を呼び出せば、その後の修行もスムーズに』……よし!」
『
ウェンディはさっそくキャビネットの上の棚の【右の引き出し】から魔法陣を引っぱり出して、使い魔召喚の儀式を始めることにした。
……なお、『
「よしっ、準備完了……! どんな子が来るのかな……」
使い魔の召喚儀式には大仰な準備は必要ない。
自身を触媒とすることで術者と相性の良い使い魔を召喚する儀式であり、幸いなことに、おかげで『
最悪の場合、かつて西大陸の生命全てを脅かした『冥界の腐王』や東大陸に今も爪痕を残す"大裂溝"を作り出した『星界の魔王』のような存在が降臨することもあり得る魔法であり、人知れず世界の破滅は免れたのである。
「世界の何処かより我が前に出でよ……我が名はウェンディ……!」
本人は至極真面目に儀式を行っているが、魔法陣からするとロクな供物も捧げずに超越存在の一部を使役しようとしているわけで、当然ながら召喚されるものは格落ちに格落ちを重ねた異次元の存在の中でもあんまり強くない存在となることは当然のことだった。
ほぼウェンディの魔力のみを糧に魔法陣が光り輝くと、術式によって異次元存在の
「え?」
それ……いや、『彼』は、四角かった。
顔も、腕も、足も、おおよそ身体のどの部分も角ばった異様な姿であった。
半袖の水色の服、青色のズボンを着た姿は一応人間の男の形をしていたが、いっそ木から削り出した木像の方が曲面が多いほどにはカクカクしている。
「え、ええっと……初めまして、貴方を呼び出した、ウェンディ……です」
異様な姿に気圧されながらも彼女が自己紹介をすると、角ばった男はウェンディの方を向き、直立と前傾姿勢を交互に繰り返した。
「ひ、ひぅ……」
前傾姿勢になるまでの動きが全く見えないカクカクとした動きにウェンディはちょっぴり涙が出そうになる。
この動きが『彼』の一般的な挨拶の一つだと彼女が知るのは、もう少し後のことである。
ウェンディにとって、この人型? の
普通、魔女の使い魔と言えばネコやコウモリなどの小動物と決まっているし、事実、若かりし頃の祖母の使い魔も黒猫だったという。
(でも、もう呼び出しちゃったんだもん! 切り替えていかなきゃ!)
曲がりなりにも成人男性に似た姿かたちをしているのなら、通常の使い魔にはできない仕事もできるはず。
ウェンディは、まず彼に日々の家事の手伝いを頼んだ。
「森で焚き木を集めてください。薪を一から切り出すのは大変なので」
彼女の祖母くらいの熟練の魔女なら煮炊きの作業全てを魔法で終わらせることもできただろうが、ウェンディはまだ見習い魔女。
火を起こしたりはできるものの、全てを魔法でやろうとすれば魔女としての修練のための魔力が足りなくなって本末転倒だ。
魔力の節約のためにも、面倒ではあるが、毎日薪で火を焚き井戸から水を汲まねばならない。
首があるように見えないのに頭を上下に傾けて頷いた彼は迅速に行動に移った。
近くにあった木の幹を素手で殴り始めたのである。
「ちょ、ちょっと! そんなことしたら怪我しちゃいますよ……えぇっ!?」
突然の行動にウェンディびっくり、数秒後に木の幹が砕け散って二度びっくり、幹が途中で消滅したのに何食わぬ顔で木の上の部分は宙に浮かんでいて三度びっくりである。
そのまま彼はその木を全て(宙に浮いている部分含め)素手で砕いて回収してしまい、何をどうしたのか一定の長さの薪? 木の棒? にして地面に投げ落とした。
「え、えっと……ここに置かれても困るので、台所の方にお願いします……」
得体のしれない現象にビクビクしながら彼に頼むと、彼は地面に散らばった薪をまるで吸い込むように拾い集めて台所に向かう。
走るときに何度もジャンプしているのは何か意味があるのだろうか?
(不思議な力……使い魔は召喚されると特別な力を持つって聞いたし、それなのかな?)
『
あまりに破天荒ではあるが、不思議な現象も彼の能力なのかもしれない。
……台所の隅に思ったよりも大量の薪を小分けにして置いてくれていたが、なぜわざわざ六十本と少しという中途半端な数で小分けにされているのかはウェンディには分からない事であった。
「ふわぁ……今日もいいてん……き……?」
とりあえず彼にはしばらく祖母の使っていたベッドで寝てもらうことにして、次の朝。
『
緑色のモザイクのような体色をしていて、縦長なのに四足歩行? をしている。顔も、控えめに言って獣の顔つきではない。
(新種の魔物? 見たところ、鋭い爪も牙もなさそうに見えるけど……)
二階の自室の窓から緑の魔物? の観察を続けていると、その魔物? は手製なのか見覚えのない石斧で家の周辺の木を伐採作業をしていた彼の背後へ近づき……爆発した。
盛大な爆音とともに地面に深い穴を作るほどの爆発。
白い煙が晴れるとそこには彼の姿はなく、彼が伐採して回収していたとおぼしき丸太が転がっているばかりだった。
「~~~~~~~!!??」
声にならない悲鳴を上げてへたりこむウェンディの視界の隅で……玄関の扉を開けて彼が傷一つない姿で出てきた。
あっけにとられる彼女をよそに、彼は先ほどの爆発で出来た穴をテキパキと埋め、散らばった丸太を回収し、何事もなかったように伐採作業に戻る。
情報量が多すぎて気が遠くなるウェンディだったが、とりあえず『彼を心配するのは無駄だからやめよう』と心に誓った。
名前:Steve
職業:マインクラフター
種族:
職業能力:クラフト
・アイテムの組み合わせで新たなものを作り出す。
・新アイテムを入手することで新たなレシピがアンロックされる。
種族能力:異界存在
・一定範囲(読み込み範囲)に異世界のルールを適用する。
・退散の儀式が行われない限り、死亡後に呼び出された世界に