竜娘が巡る終末世界【完結】   作:春の日びより

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学校探索の続きです。


18 学校の探索

 

 

「本気で大根のこと忘れてた……」

 体育館で目を覚ました私は、ビニール袋に収穫した大量の浜大根を見て落ち込んだ。

「……とりあえず鍋を探そう」

 そもそも浜大根を調理する道具を求めてここまで来たのに、何をやっているんだろ、私……。

 一応、一時的にでもここに住民が避難をしていたのなら、調理する場所があるはず。

食べていたのがレトルトだけだったとしても、それを暖めるために大鍋くらいあるんじゃないかな?

 そう考えて探索を……

「……裸のままだった」

 荷物から毛皮の衣装を出して身に纏い、明るくなった学校の探索を始めた。

 誰もいないから裸のままでも問題ないのだけど、人のいた痕跡があると、なんとなく服を着ないといけないような気がしたの。

 

 どうやら重要な施設は全部上の階にあるみたい。広い部屋やホテルのラウンジみたいな場所もあったけど、自販機の中身は全部空になっていた。

 たぶんまだ電気が通じていたときに避難民が全部飲んじゃったんだろうね。それでも残った使えそうな物はゴミ袋に入れておく。

 保健室もあったけど、薬品類は同じく空になっていた。あとはパソコンが並んでいる部屋とか職員室もあったけど、今の私に意味はない。

 しかし――

「図書室だ!」

 本が大量! ……って程に本がないのは、やっぱりパソコンとかの情報端末ですべてまかなえてしまうからなのかな。

 それでも後で何か必要な物がないか確認してみよう。

 

 ……で。結局、鍋も調理する場所も一階……というか、別の建物にあった。食堂かな? 席が乱れていたから全員ここで食事をしていたのかもしれない。

 当然、大鍋とかもあったのでそれを借りて調理をすることにした。でも、ちょっとした問題が発生。樹木が少なくて探索するのは楽なのだけど、薪となる木も少ないんだよね。

 仕方ないから何故か枯れている細い街路樹をへし折って、角槍で砕くように薪にした。

 大鍋を持って川へ行き、鍋を洗って水を汲む。

「持ちにくい……」

 川から数百メートルもあるから水の入った大鍋を運ぶのは、かなり面倒だった。

 もちろん室内で焚火をするのはダメなので食堂の外で火を熾す。

 草原の枯れ草も多いから火を付けるのは楽だった。でも、気をつけないと一気に大火事になりそうなので、食堂のすぐ前のコンクリートの上にした。

 大鍋は水を満杯に入れたのだけど、戻るまでに半分に減っていた……。そこから飲み水にするためにミルク鍋に少し移して、大鍋の水に大根を入れていく。

 もちろん丸のままじゃない。牙ナイフで桂剥き……は無理なので削ぐように皮を削いで、乱切りにして片っ端から鍋にぶち込んだ。

「半分しか入らない……」

 小ぶりでもやっぱり大根十数本は多すぎたので、半分だけにしておいた。

 味付けはお塩を少々。そこに燻製肉をまた削ぐように入れていく。しばらく薪を追加しながら煮込んで、燻製肉の脂が浮いて良い匂いがしてきた頃に、刻んだ大根の葉を入れる。

 

「完成っ!」

 ……したけど、なにこの量! 何十人前あるの!?

「……出来上がったものは仕方ない」

 調理場からお玉と器を借りてよそい、箸も残っていたのでそれを使って食べてみる。

「むむむ……」

 箸の使い方は〝知識〟で知っているのに使ってみると結構難しい。摘まむのではなくなんとか箸にぶっ刺して大口を開けて放り込んだ。

「ん!」

 普通に美味しい! 生のままだと辛かったけど、煮込んだ浜大根は燻製肉の旨みが染みこんで、甘みがあって美味しかった。

 

「海に行こう!」

 前にも同じことを言った気がするけど、今度は食材を探しに行く。大根の煮物はまだ沢山あるけど、もっと海の幸が欲しかった。

 せっかく海に来たのだから、わざわざ川でザリガニを獲るのも違う気がする。角槍とビニールのゴミ袋を一枚、それと学校に残っていたペットボトルだけを持って海へ走る。

 海まで数キロはあるけど、何十キロもある荷物もないし、真面目に走れば三十分も掛からない。途中の川でペットボトルに水を汲み、そのまま問題もなく海に到着した。

「……島クジラはいないよね」

 とりあえず見えるところにはいなかった。向こうがこっちを歯牙にもかけていないとしても、気まぐれを起こされただけでとんでもないことになる。

 案の定と言うべきか海鳥の姿はどこにもない。悪戯をする動物がいないことを確認して、毛皮をビニール袋に入れて角槍に結び、深く浜に突き刺した。

 

 昨日よりも若干波が高くなったように感じる海に頭から飛び込む。

 魚を獲るための釣り道具も学校では見つけられなかったけど、今回狙うのは魚じゃない。尻尾も使って海の中を探して、二回ほど息継ぎをしたあとついにそれを見つけて掴み取った。

「貝、獲ったぁ!」

 結構大きい。これ……アワビ!? あとホタテっぽい二枚貝も見つけたのでそれも獲っていく。

 

 こんな浅瀬に巨大動物はいないとは思うけど、それでも警戒はしたほうがいい。

 あの巨大動物たちは一見、普通の動物をただそのまま大きくしたよう思えるけど、実際はそうじゃない。

 あの巨躯を支えるための強い筋肉。大口径の火器でなければ殺せない強靱な外皮。

 あの肉は生のままでは包丁で切ることも難しく。ジンベエも食べることはできず、ネズミや虫も寄ってこなかった。でも……それ以上に畏れて(・・・)いた気がする。

 それでもあの肉は火を通せばジンベエは普通の肉として食べていた。

 その違いは何か? 生と火を通す以外の違いは何か?

 そして、どうして私だけがアレを生のままで食べることができるのか?

 わかんないなぁ……。

 とりあえず今は貝獲りだ。昨日の失敗を思い出して、獲りすぎないようにアワビとホタテは各三個ずつにしておいた。

 あ、これも採っていこう。昆布らしき物も生えていた。昆布って大きいのがいいの? よく分からないので、ほどよい大きさの物を数枚採っておく。

 本日の収穫はアワビっぽい貝とホタテっぽい貝が三個ずつに、昆布を数枚、それとなんとなく見つけたオカヒジキも一掴み。そして……

「ウニも獲っちゃった」

 

 昨日見かけた、あのトゲの長い変な奴じゃなくて、たぶん普通のウニ。

 でもなんか、全体的に赤っぽいんだよね。大丈夫かな?

 昼にはまだ少し時間はあるけど、ウニと貝は持ち帰らずに浜辺で食べることにした。だって、そういうのってなんか憧れる。

 あっ、牙ナイフを忘れた! そのまま焼いてもいいけど、砂を食んでいると思うので結局二枚貝は爪でこじ開け、アワビと一緒に丹念に海水で洗う。……まぁ適当でいいか。

 また湿っている気がする流木で頑張って火を熾し、洗っている間に火が弱火になってきた焚火に枯れ草を追加して平らに均す。そこに殻を下にして貝を並べていくと……。

 ……じゅわぁぁ。

 縁から煮立ってきたところにちょっぴり海水を垂らして、もう一煮立ちしたところで、爪で摘まんで食べてみた。

「うまぁ……」

 ホタテはプリプリ、アワビはモチモチ。塩味は海水だけだけど、そのぶん凝縮した甘みと旨みが楽しめた。

 ……なんか私、普通に火の中に手を突っ込んでいた気がする。

 手を見ても煤で汚れているだけで火傷はしていなかった。さすがに熱は感じるからまったく火傷をしないということはないけど、数秒程度で火傷をするほど鱗の肌は弱くないってことかな?

「……やっぱり人間離れしているなぁ」

 そしていよいよ、赤いウニ。恐る恐る爪を突き刺すように二つに割り、海水で軽く洗ってから、一切れ食べてみた。

「……っ!!」

 なにこれ、すっごく美味しい! これ一個しかいなかったけど、見つけたら率先して獲るくらいに美味しかった。

 もう一度探しに行こうか悩むけど、切りがないので思い留まり、ペットボトルの水で身体を洗って毛皮を着直し、オカヒジキと昆布をビニール袋に入れて帰る準備をした。

 

 途中の川でもう一度髪まで洗い、ペットボトルに水を汲み直してから学校まで戻ると、昆布はすぐに食べずに屋上のネットに掛けて干しておく。……海鳥はもういないよね?

 食べられるのはいいけど、フンでもされたらさすがに捨てるからね!

 今日はまだ明るいので図書室で本を読むことにした。

「純文学かぁ……」

 私は経験が少ないから読んでもいいけど、図鑑やら歴史書やら〝知識〟とすり合わせになりそうなものから読んでいった。

 日当たりの良い五階のラウンジで、ソファーに転がりながら本を読む。

 何十冊か読んでいると夜になり、星明かりを頼りに本を読み続けた。

夜中にお腹が減って残りの大根煮を食べてから、その日はラウンジで本を読み続け……。

「…………ふわぁ」

 大きな欠伸をするとソファーの上で転がり、私はペラペラとページを捲りながら、寝落ちをするように眠りに就いた。

 

 




すっかりニートに!

次回、『地図を求めて』
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