ありふれない”イケメン“鎌使いは残念だがモテはしない   作:翁月 多々良

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 南雲の兄貴がモテない理由が終始わからんかった野田



プロローグ:梗平ep《孤独の漂流者》

 

 

 自分が死ぬ瞬間って、思いのほか簡単にわかるんだと、このときは呑気に考えていた。

 

 

 ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!

 

 

「うあああああああッ南雲の兄貴ぃいいいい!!」

 

 

 遠くから可愛い舎弟の声が聞こえる。華太の野郎、来るなって言ったのに命令違反しやがって……。

 

 そんな事を思う俺はその思いとは裏腹に安心するような穏やかな顔をしていたと思う。

 

 自分じゃもう、全く動かせないオレの体を抱きかかえる舎弟の姿を俺は掠れる視界で捉える。

 

 

 「兄貴ぃ!!すぐに医者呼んできますから!頼む!死なないでくれぇえええ!!お願いだぁあああ!!!」

 

 

 悪りぃな華太、多分……こりゃもう……駄目だわ。

 

 大粒の涙を流しながら慟哭する舎弟に何か伝えないとと思い俺は出てるかもわからない声を絞り出す。

 

 

 「か………ぶと………やられた………わ……」

 

 「えっ……」

 

 

 でも、いざこういう時何を伝えたらいいのかよくわっかんねぇ

俺も昔、粛清した外道に対して、最後に言い残したことは?とか言ったことあるがそんなもん咄嗟に出るわけがないんだって気づく。

 朦朧とする意識の中で、兎に角頭に浮かんだ言葉を口にする。

 

 1つ目に俺の生涯、始めて決着のつかなかった相手、室屋柊斗(むろやしゅうと)

 執念だけじゃ誰にも負けるつもりは無かったが、奴の執念は凄まじいものがあった……あぁ畜生ッ………悔しいなぁ………

 

 

 あーッそんな事を思ってたら……段々眠くなってきやがった……

 

 

 血が抜けてきたからだろう……寒ぃ………

 

 「かぶ………と………寒い………わ………」

 

 

 あぁ、………あの時は………楽しかったなぁ………

 

 

 そして2つ目、眠たげな俺の脳裏にある光景が浮かぶ……

 

 それは、戦争の暗い気持ちを払拭させるために、親っさんが開いてくれた天羽組みんなが揃った花見の記憶だった………

 

 

 『南雲! お前は女ばっか追いかけてねぇでもっとビシッとしろよ!』

 

 言葉とは裏腹に笑顔で酒気に顔を紅潮させた(カシラ)

 

 『すいません! カシラのような人間性を目指しておりますぅ!』

 

 『嘘つけよぉ!俺はモテねぇぞぉ!』

 

 『ならやめよっかな』

 

 

 

 『南雲 こっち来て飲めえ拒否権は無い』

 

 『フ……』

 

 『グフゥ……幸せ過ぎるぅ……』

 

 『お前はいつまで泣いとんのだ永瀬ぇ……』

 

 

 いつもながらに傍若無人に言葉を発するも、無礼講の席の中その表情とともに語気も穏やかな野田の兄貴、和中の兄貴、永瀬の兄貴、あの場には居なかったけど須永の兄貴……そして工藤の兄貴………………

 

 すげぇ先輩に恵まれて……俺はラッキーだったなぁ

 

 たくさんのことを学ばせて頂いてお陰で俺はここまで男を上げることが出来た……

 

 

 『速水ぃ一升瓶一気だぁ!』ゴックゴック!

 

 『はいぃ!お供させていただきますぅ!!』ゴックゴック!

 

 『同期と飲む酒が一番美味い!!』ゴックゴック!

 

 『うおお!負けねぇええ!!』ゴックゴック!

 

 『南雲の兄貴 メチャクチャです!この場を収集してください!香月の兄貴はもっと擬態してください!!』

 

 『ぐへぇええ………』

 

 『宇佐美ぃいいい!傷はまだ浅いぞぉ!!』

 

 

 こんなにたくさんのかわいい後輩に囲まれて……

 

 俺は幸せだったなぁ

 

 

 楽しかった思い出を幻視しながら俺は自然と口を開いた

 

 

 「カシラが………死んだばっかりなのに……本当にごめんな華太……」

 

 まだまだ戦争は続くってのにこんな連続で………本当に申し訳ねぇ………でも、でもな

 

 

 「天羽組の仲間に囲まれて………楽しくって………最高だった………………」

 

 

 87回も女の子たちに振られても、天羽組のみんなが居てくれるだけで俺は幸せだった。………だから

 

 「お前は………強く………………生きろよ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこまで言い終えた俺は、そのまま意識を手放した……、このあと俺はどうなるんだろう、何処に行くんだろう。

 

 工藤の兄貴やカシラにまた会えるんだろうか?

 

 カシラにはさっきお別れしたばっかなのに直ぐに会いに来た俺に呆れるんだろうな……

 

 工藤の兄貴にもどやされるかも知れねぇ……

 

 

 いっその事、室屋にリベンジするのもありかも知れねぇなぁ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の名前は南雲梗平、気が付いたら俺は美女の乳首を吸っていた………

 

 

 ふぁ!?

 

 「ん〜?どうちまちたかぁ?きょうちゃん(・・・・・・)

 

 

 なにコレぇええええええええええええええんッッ!!??

 

 あれぇ?俺、俺死んだよね??、死んだんだよねぇ?

 

 なのになにこれ?

 気が付いたら全身を柔らかいなにかに包まれて目の前に美女、その美女と赤ちゃんプレイを敢行している……!!

 

 ここが………天国……か……?

 

 

 

 

 

 いや、待てッ平静を装うんだ、

 

 これが一体どんな運命の悪戯か、はたまた俺が今際の際に見た夢かはわからないが、夢だろうが現実だろうが美女は美女、レディには紳士に接する。それが俺、南雲梗平のポリシー、だからここでがっついて引かれないようにしなければ!!

 

 だから、だからッ……平静を装うんだぁ~~~ッ!!

 

 そうだまずは、挨拶をしなければ、名も知れぬレディと懇意になるわけにはいかない、これも彼女と健全な関係を続けていくためには必須の工程。

 

 「バブバブあちゃーいッあうあ………(こんにちはマドモワゼルつ俺の名前………)

 

 

 「う?()

 

 

 「あらあら?どうしたの?おっぱいはもういいの?」

 

 

 「びええええええええええええええええん!!(ナニこれえええええええん)

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 あんなに声を上げて泣いたのはいつ以ら………いや結構泣いてるな俺。

 

 取り敢えず落ち着いて状況を整理した結果、うまく言葉を話せない口に、このサイズ感、にわかに信じられねぇが俺は”赤ん坊“になっているようだ。

 

 

 チュパチュパチュパッ

 

 

 これはあれか?最近巷で有名な生まれ変わりとか転生ってやつか?

 へ〜、俺達極道はみんな仲良く地獄に行くもんと思っていたが神様っていうのは意外とお優しいらしい。こうやって新しい人生を歩ませてくれるってんだからな。

 

 

 チュパチュパチュパッ

 

 

 色々考えてもしょうがない、ともかく今はこの滅多に味わえないベビーライフを満喫することとしょう。

 

 

 チュパチュパチュパッ

 

 「すごい飲みっぷりねぇ〜お腹空いてたの?」

 

 

 「バァブゥ〜〜〜〜!!(バァブゥ〜〜〜〜)

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 どんな運命の悪戯かこの生でも俺の名前は南雲梗平(なぐもきょえへい)になっていた。

 

 俺が生まれたこの南雲家はそこそこに裕福な家庭らしい。前世の俺ん家とは大違いだ。

 

 それもそうだろう、親父はゲームクリエイター、先程のマドモワゼル、俺の母親は少女漫画家だ、今は俺が生まれたことで活動を休止しているらしいが少し時間が空けば俺の側で絵を描いていることが多い。

 お袋達の目を盗んでお袋作の漫画を覗いたことがあるが、なかなかに面白い。ラブコメは前世でも教本として使っていたからそれなりの見識はある。今後とも参考にさせてもらおう。

 

 決して、告白もしてないのに失恋した悲しみを誤魔化したいわけではないッ!!

 

 

 

 そうこうしているうちに俺に弟が生まれた。

 名前はハジメ。

 

 不思議な気分だ。前世で俺は一人っ子だったけど、天羽組ではたくさんの弟分がいた。だから弟なんて今更だと思っていたんだが……。

 

 

 「にんちゃ〜〜ッ」

 

 自分の枕元に座り込む俺に、俺のとは一回り小さな紅葉の葉のようなその手を伸ばしてくる。

 

 俺も大概赤ん坊だが、一人座りができる俺に対して弟は首をキョロキョロしたり、手足をジタバタさせるくらいで、布団に横たわって一人じゃ身動きができない。

 

 俺は弟の目を見つめて自分に伸ばされたその手を徐ろに掴む。

 小さくて、柔らかくて、

 

 俺は実感(・・)する。弟とはこんなにも愛おしい存在なのかと、

 

 “比べた“んじゃない“実感”したんだ!

 

 俺はこの小さな弟に、小林、小峠、飯豊、速水……彼奴等に向けるのと同質な想いを抱いた。

 

 「あじめ(ハジメ)……」

 

 

 転生者でありながら言語発達が他と遅れ気味だった俺は今世の齢3つにして、その日始めて意味のある言葉を口にした。

 

 俺は決めた、親父とお袋、そしてハジメ、前世で最後まで守りきれなかった家族を今度こそ最後まで守り抜くと、例えどんな手を使っても必ず!そう決意した。

 

 その後のその日は始めて発した俺の言葉が「パパ」でも「ママ」でもなく弟の「ハジメ」であったことに喜べばいいのか、悲しめばいいのか、複雑な顔をする南雲夫妻なのであった。

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 あれから3年の月日が経ち、俺がインターネット等を使っても違和感のない年齢になった。

 故に俺は親父のディスクのパソコンでずっと気になっていた(・・・・・・・・・・)ある調べ物をする。

 

 

 「嘘………だろ……」

 

 それは、前世の俺の所属していた天羽組について、戦争の勝敗などのディープな話は流石にお子様が調べられる権限内では出てこないが、組そのものの存在の有無はわかると思い、『天羽組』と検索を掛けた。

 その結果………

 

 

  『 一致する検索結果がありませんでした。 』

 

 

 京極組、獅子王組、天王寺組、空龍街、慌てた俺は他にもいろんなものを調べた、しかし帰ってきた結果はすべて同じだった。

 これによって俺はある結論を出した。

 

 「ここは、日本は日本でも前に俺がいた日本じゃない、並行世界(パラレルワールド)異世界(・・・)だ………。」

 

 

 ショックだった。

 

 

 死んだ人にはもう二度と会うことはできない、逆を言えば死んだ人間は二度と残した人には会いに行けない。

 それは本来普通のことで、でも普通でない今の俺の状況が、そんな普通の事も忘れさせていた。

 

 もしかしたら、またみんなに会えるッそんな淡い希望は露と消え、俺は女の子に振られる以外の理由で久々に大声で泣いた。

 

 そんな悲しみに暮れた日の正午、隣の新築に引っ越してきた家族がうちに挨拶に来た。どうやら俺と同い年の娘がいるらしく、春から俺と同じ小学校に通うらしい。正直今は女の子と聞いて無条件に元気になれる自信がなかったがお袋に言われて共に玄関でお出迎えする。

 

 

 「はじめましてぇ~大阪から越してきました。室屋と申しますぅ~娘共々仲良くしてくださ━━━」

 

 

 「よりによっててめぇか!?室屋っ!!」「よりによってお前かぁ!?南雲ぉ!!」

 

 

 忘れもしない、忘れられるわけがない、たとえ、姿、形、性別(・・)が変わろうと、見間違えるはずもない相手、今だけはお互い、最も会いたくなかったであろう宿敵、室屋柊斗(むろやしゅうと)がそこに居た……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 切りが良かったので、南雲の兄貴の前日譚は前編と後編で分けます。
 
 今日の仕事中、結構後までのストーリーを妄想してたんですけど、その前に南雲の兄貴と室屋をどのタイミングで奈落突入させるかずっと悩んでました。
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